CAFE PACIS

ユルゲンが「カフェで政治が行なわれているんだ」って言う。じゃあ、カフェで平和やるか。

次はイラン。イラクの「教訓」に学んで。

2005-01-25 15:13:22 | ニュース@海外
 このかん米CIAで、ベテラン・スタッフが次々と辞めているとか、新長官が気に食わないやつを追放しているとかの報道がだいぶされていましたが、ようやく情報局も落ち着いてきたようです。アブグレイブの拷問スキャンダルを暴露したベテラン記者のシーモア・ハーシュによれば、このCIA「再編」は、ブッシュとその仲間たちが支配体制をほぼ固めたことを意味しているらしい
("The Coming Wars. What the Pentagon Can Now Do in Secret” The New Yorker. 24-31 January Issue)

 現在、ブッシュ政権は、計画どおり次の標的イランへの攻撃を準備中。イラン攻撃の可能性は、「悪の枢軸」演説の時から公言されてきたことですが、ブッシュの「再選」、再任を前後し、それが近いうち実行されること裏付ける動きが顕著になっています。その重要な部分が、CIAの骨抜き、ラムズフェルドのペンタゴンへの諜報権力集中である、というのがハーシュ記事の要点。

 おさらいですが、中東計画その1イラク戦争で彼らは、イラク人は諸手を挙げて米軍を歓迎し、「民主化」が進むと予測。これが当然大はずれし、戦争は泥沼化、イラクは内戦化し、10万人が死んでいる。30日に選挙を強行すればイラクは確実に取り返しのつかない道に進んでしまうことは多方面から指摘されている――。なのに、繰り返しますが、その計画を再考しようともせず、その2に移ろうとしている。まったく気違い沙汰です。が、その際、彼らなりにイラクの件から教訓を引き出したようで、それがこのネオコン連中が諜報も握るということのようです。

 軍が諜報部を握るとは、今度は、イランが核開発をしている証拠を確実に、またはほとんど確実だと思わせるところまで、しっかりつかむ、ということ。つまり、ネオコンに批判的な人も多いCIAに「大量破壊兵器~?ないかも~」などというヘマな分析は絶対出させないし、国務省にもパウエルのような、ときに正直に発言してしまうような「穏健派」は要らない、ということです。(ちなみに、後任コンドリーザ・ライスは、「天才少女」とか「聡明」とか評されているようですが、彼女の就任のホントの理由は、チェイニーたちにその曇りない虚言癖を買われたから。就任承認を問う公聴会で、バーバラ・ボクサー上院議員に(唯一)正面から、イラク大量破壊兵器をめぐる発言の矛盾をつかれたライスは、「あんた、あたしのことウソつき呼ばわりするつもり」と啖呵を切って逃げた。実際の発言は「私の誠実な言行に異議を挟もうとするのはやめてください(You bitch!と心の中で))

 アメリカは、その1:イラクをめぐる外交論戦では惨敗した。その2:すくなくとも国内的には、フセイン核兵器の恐怖を煽ることに成功した。ですが、その1の外交戦では、イラク並みのCIA情報では今度も負けは確実、その2の世論操作も「ロバも、同じように蹴ったのでは続けて言うことは聞かない」(ハーシュがインタビューした元CIA高官の言葉)。なので、軍部に諜報・秘密作戦を集中することで、イラン領土の標的の絞り込みなどといった軍事的な準備と並び、世論・外交の場での「たたかい」に勝つための布陣を固めたということです。

 CIAの活動は、(一応)法の規制下にあり、連邦議会への報告も義務付けられています。しかし、今回ブッシュがOKした決定では、軍部はそのような規制を受けずに秘密作戦ができます。例えば、CIA諜報員は、教師や宗教者などのフリをして活動はできないが、軍のスパイならOK。実際には敵であるはずのテログループにスパイを送り込み、必要なら一緒にテロ活動させてもOK。アメリカが国家として「テロ組織」と認定しているグループから情報を聞き出すのもOK。ということで、対イラン秘密作戦部隊は、去年の夏からイラン入りして、標的を絞り込むための情報集めをしているそうです。そのうち、外交戦に勝ち、国民も納得させるような「決定的」証拠を出してくるのでしょうか。

 この秘密作戦に協力しているのは、イランにも核兵器技術を売っていたことが明らかになっているパキスタンの闇ネットワークにいた科学者・技術者もいるそうですが、その協力を引き出すために、ブッシュ政権はムシャラフ政権に対し、闇ネットワークをこれ以上追求しないし、パキスタンの核開発続行にも目をつぶると約束しています。(ついでにインドの核も。)

 イランは主権国家として当然原発を開発する権利があり(個人的にはやめといたほうがいいとは思うが)、核不拡散条約(NPT)で原子力の平和利用として認められているように、燃料としてのウラン濃縮をしています(自分たちの石油は中国などに売る方にまわしたいらしい)。なのですが、イランの核開発疑惑は、この濃縮ウランが兵器にも転用される可能性を持つことから主に生じています。

 なので、いま外交の場では欧州連合(EU)が、経済・技術援助、貿易促進などの条件を出しながら、イランが核兵器を開発しないとの客観的な譲歩を引き出し(濃縮をやめるだけでなく、設備自体も解体して)、戦争沙汰を回避しようとしています。しかし、アメリカが交渉参加を拒みつづけている。イランが譲歩すれば軍事攻撃はないし援助もするとの保証は、アメリカが話し合いに入らなきゃまったく意味を成さず、よって、アメリカのタカ派(と少なくないEUの外交官たち)は、この交渉は必ず挫折する、と見ているといいます。で、その失敗したときがイラン攻撃開始の時らしい。

 アメリカの目的は、短期的には、武力でイランの核開発を阻止することにもあるのでしょうが、ホントの目的はもちろん政権交代で核問題はヤクザの言いがかりに過ぎない。ハーシュがインタビューした外交官、元諜報員などによれば、ネオコンたちの政策はこういうことらしいです。「バグダッドで止まるのは根性なしだけ」(The Independent U.K. Jan.19,2005)。

 つまり、イラン政権を握っている強硬な宗教指導者たちもアメリカの軍事攻撃の前にはひれ伏さざるを得ないことをイラン国民が見れば、人権抑圧などの宗教者独裁を終わらせるために、国民がいっせいに蜂起し、イランを「自由」にし、親米政権ができる―――。どっかで聞いたような話ですが、これはネオコンの大失策その2で、こんなことをすれば、今度は中東全土に戦争が広がるでしょう。(ちなみに、イギリスはイラン軍事攻撃にすでに反対しているので、日本の「忠誠度」が試されます。)

 話はすこしそれますが、核兵器廃絶問題で言えば、5月にはNPT再検討会議が開かれます。核を持ってるアメリカが、他の国の核は許せん(NPT未加盟である(それだけが理由じゃないけど)パキスタン、インド、イスラエル、そしておそらく北朝鮮は例外だけどさ)という理由で、外交を妨害し、武力行使を強行するなら、再検討会議の行方はあやうい。だって、外交的に言えば、NPTに入っている非核保有国は核開発しない、という約束を守っているのに、核保有国は核軍縮義務を果たしていないどころか、アメリカの場合必要なら核も使う、と公言しているのだから。自分たちの核は「いい核」で、それ以外の国とくにアラブ諸国のは「悪い」という態度に、みんな、ものすごい差別意識、怒り、嫌悪を覚えているはず。

 ということで、少なくとも、フランス、イギリスは核問題でも理性を発揮し、道徳的な高みに立つべく、自国核兵器を全部なくして欲しい。それに中国にも、「第一にわが国の核は必要最小限であり、第二に専守防衛のための核である」なんてお題目をいつまでも唱えていないで、これに続くべきだし、(ちょっと無理があるかとも思うが)ロシアも経済事情あたりを考えて、核政策を見直して欲しい。

 お決まりの結びのようですが、どう考えても、それぞれの国で、核問題は武力では絶対に解決しない(ホントにしないのだから)ことを強く訴える世論づくりが必要でしょう。

 あい

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