CAFE PACIS

ユルゲンが「カフェで政治が行なわれているんだ」って言う。じゃあ、カフェで平和やるか。

「盗聴大好き」:イラク戦争反対の顔、ドビルパン新首相の別の顔

2005-06-01 16:12:05 | ニュース@海外
Doug Irelandのブログより。
 http://direland.typepad.com/direland/2005/05/villepin_the_wi.html

「ドミニク・マリ・フランソワ・レネ・ガルゾー・ドビルパン――これがフランスの新首相の名前。人生のほとんどを外交畑ですごしてきた貴族政治主義者(外務省アフリカ局の前局長、在インド・フランス大使館で3年、在ワシントンのフランス大使館で5年間一等書記ののち広報担当官)であるドビルパンは、面目を失った元首相アラン・ジュペが外相だった時代の子分(ジュペは、シラクの最大の政治盟友で、シラクの党の元党首。今年はじめ国会議員選挙に落選し、選挙をめぐる財政スキャンダルへの関与が理由でボルドー市の市長の権限を失う判決を受けた。)ドビルパンは、シラク政権で大統領府の事務総長を務めた。つまりシラクの参謀本部長だったということ。大西洋のこちら側では、イラク戦争の際の仏外相として、国連で国民の戦争反対の声を代弁した人物として最も知られている。これは、ドビルパンが反帝国主義者ということではない。イラク侵略は、フランスでは、右も左も、政治家でも有権者のあいだでも国民にほとんど支持されていなかった。世論調査では8割が反対していたほどで、どんなときでも日和見主義者であるシラクは、ブッシュの戦争に強い反対の立場をとることで、フランスで人気が取れると知っていたのである。しかし、右派左派にかかわらずフランス政府は、以前のアフリカ植民地地域に、力で影響力を行使し、特権を維持してきた。で、ドビルパンは、外務省のミスター・アフリカであったときまさにそのような行動を手助けしてきた人物である。外相としては、アフリカにおけるフランスの権益と好戦的な役割を維持するという非常に伝統的な擁護者であった。フランスはアフリカの旧植民地国に頻繁に軍事部隊を送り込んでいる。彼は、反帝国主義者ではない。

 シラクがドビルパンを選んだのは、この70歳の保守的仏大統領が、日曜の国民投票でEU憲法が否決されたことからなにも学ばなかったということだと言えよう。EU憲法否決は、なにもナショナリスティックなものではなく、経済が理由である。つまり、欧州が、多国籍企業の儲けの場とされることの拒否であり、失業率が10%というフランスの深刻な経済危機を反映したものだ。ドビルパンは国内政策の経験がほとんどないだけでなく、選挙で選ばれたこともなければ、フランス人が日々の生活で直面している最優先問題にたいする感覚も薄い。よって、ドビルパンは、EU憲法反対という日曜の政治的反乱をまねいた社会経済苦悩に対する適切な対応だと考えには、彼は程遠い人物である。

 さらに、彼は、選挙戦の駆け引きにおいてはまったくの音痴。1997年、国会を解散して早期選挙を実施するというシラクの決定を実際に決めていたのはドビルパンであった。その選挙で、右派は惨敗。保守政権は、以降5年間、リオネル・ジョスパンを首相とする社会主義者にとって代わられた。散々な解散の「生みの親」として、ドビルパンは、シラクの国民運動連合(UMP)党の国家議員の圧倒的多数から嫌悪されている(昨日、シラクがドビルパンを首相任命する前のこと、フィガロ紙朝刊は、あるUMP国会議員のリーダーの発言を引用。曰く「与党で、ドビルパンという選択を支持する議員は一人もいない」。)

 ドビルパンをめぐる最高に面白い話のひとつが、4月、週刊誌L’Expressが暴いた話、「新首相は、万人を盗聴し、秘密警察ファイルを作るのが大好き」だということ。その対象は、ジャーナリストから政治家におよび、その手腕は政府で内閣官房長官として働いたときに培ったものである。L’Expressによると、外務省のスタッフは、ドビルパンが大臣だったとき、自分たちの電話が彼の指示のもと盗聴されている、と信じていた。さらに、彼は、首相になる前の仕事として内相、つまりフランスの「第一警察」(計画通り、首相にする前に少し国内経験をさせておこうとシラクが彼に与えた職)になったとき、スタッフにこう言っている。「オレは、ジャーナリストが言っていることを全部知りたい。」同誌によれば、ドビルパンは、RG(国家警察総合情報局)から毎日出される機密報告を何時間もかけて読んでいたという。このフランス国家警察は、ありとあらゆる政治家、ジャーナリスト、著名人を監視下におき頻繁に盗聴し、対象者の個人的な生活やフランス国家の政治生命を把握する機関。あらゆる人間の秘密を知り(それを政治的に使い)たい、というこのJ・エドガー・フーバー的ともいえる〔注:米FBIの長官1924~75年〕傾向が、ドビルパンが自分の党の党員からも嫌悪されているもうひとつの理由である。

 日曜の投票の結果、右からも左からも、フランスの政治指導者は、経済・社会政策を根本的に変えるべきだという要求が出されている。シラクの党の議長で大統領職を熱望しているニコラ・サルコジでさえ、否決が明らかになってたったの1時間のうちに、シラク政策との「決裂」を呼びかけた。が、ドビルパンは、提供できるほど革新的な政策はもってないし、彼は、しょせんシラクの忠実な僕である。右派にはこれ以上経済問題で有権者に訴えられるものは残っていないし、ドビルパンはそんなことをできる器ではない。

 ということで、日曜の政治的反乱に対するシラクの対応としては、ドビルパンというのは変わったチョイスである。

追伸、
 ニコラ・サルコジは、ドビルパン政権でナンバー・ツーに任命される人で、ドビルパンに代わって内相に就く。今朝のFrance Infoラジオによれば、これは(シラクのUMP党で選挙で選ばれた議長で、人気が高い)サルコジが以前就いていた職で、法と秩序に沿った厳重な取り締まりの強硬派達人として名と人気を揚げたの職である。ドビルパンとサルコジは犬猿の仲。舞台裏では、2007年大統領選に向け(つまり右派候補になるべく)、次期首相の座をめぐり争い反目してきた。たとえば、サルコジは、今年はじめの政治スキャンダルで、自分に汚名を着せるために、と彼が感じたのだが、ドビルパンが盗聴・機密情報を流したと非難。ドビルパンはもちろん否定したが、政府のインサイダーたちは、部下に対する無慈悲さと敵に対する無情な復讐心で名高いドビルパンを完全に黒と見ている。巧妙でメディアに精通した政治家であるサルコジが、あらゆる機会にドビルパンより優位に出ようとするのはまちがいない。よって、サルコジとドビルパンがチームを組む政府とは、大いに変てこな政府である。」

最新の画像もっと見る