CAFE PACIS

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どう見るイラク選挙 その2 「報道されない『選挙』の実態」

2005-02-03 14:53:46 | ニュース@海外
米国人ジャーナリスト、ダール・ジャマールによるリポート

2005年2月1日 What They're Not Telling You About the "Election"

 「流血と選挙の日が過ぎ、「民主主義」成功のしるしと絶叫する企業マスコミの勢いも下火になてきた。

 イラクで民間人・兵士あわせて50人が死んだこの日、この死亡者数は「予想より低い」と歓迎された。よって・・・ブッシュ政権/企業メディアの許容範囲に入る。所詮、そのうちアメリカ人は一人だけで、あとはイラクの民間人とイギリス兵士だし。

 現行の破綻したイラク占領を正当化するために選挙を利用しようという賭けは、みたところ元が取れているようだ。ただし、主流マスコミの報道を見る限りである。

 アメリカの主流テレビは、「予測より高い投票率」と騒ぎたて、一部は投票率72%という数値を引き合いに出し、そのほかも60%と報道した。

 彼らが報道していないのは、この数値が、イラク独立選挙委員会(IECI)の広報担当ファリド・アヤールの口から、投票箱がしまる前に出たものだ、ということだ。

 記者会見で、投票率の根拠について質問されたとき、アヤールは最初に発表した数値を撤回し、より正確な推定はもっと低くておそらく登録者の60%あたりになろう、との訂正発言をした。

 同報道官は、最初に言った72%というのは「推測しただけ」のもので、「単なる予測だった」のであり、その根拠は、現場から口伝された「非常に大雑把なものであり、委員会が正確な投票率を発表するには時間がかかる」と述べた。

 この二つの数値に言及しながらも、アヤールは、「投票率と投票数は、集計が終了したときに分かりますので、そのときに発表します。…この二つの数値を公式とするにはまだ早すぎます。」と付け加えた。

 この点の重大性もさることながら、主流マスコミが犯した虚偽報道はこれだけではない。

 彼らが報道しなかったのは、投票した人が35%であれ60%であれ、進行中のアメリカによる国の占領に支持票を投じたのではない、ということである。

 それどころか現実に、イラク人はまさに反対の理由で投票したのだ。投票をしたイラク人で私が話した人は全員、近々召集される国会が占領の終了のきっかけをつくるはずだ、と信じていた。

 しかも、彼らは、外国軍の撤退を求める要求が、遠い将来でなく近いうちになされると期待している。

 こうして見ると、歓喜に踊るイラク人の姿を映し出したテレビの映像が違って見えてくるのではないだろうか。

 しかし、アメリカでCNN、FOXはじめメジャーな放送局の番組を見ている人のほとんどにはそうは映らないであろう。視聴者は、「世界は、中東の中心から自由を求める声を聞いている」というブッシュの発言を聞き、それを事実として受け止める。なぜなら、ほとんどの主流マスコミが、混乱と暴力が日常化した地で生きるイラク投票者が喜ぶ姿を写した映像の奥に何があるのかを、報道していないからである。仕事も電気もなく、水の供給も切れ切れで、(イラク人には)ガソリンもない生活をマスコミは伝えていない。

 しかもマスコミは、ブッシュを、イラクに民主主義をもたらした人物として描き出しているが、その理由は、いわゆる――ずさんだった可能性が強い――選挙がされたという単純な事実からだ。どうやら、多数派のシーア派はついに、「政府」で勢力に応じただけの権力を得ることができそうである。

 ブッシュ政権は、見たところ、自分たちが他国を思って選挙を支持したと描き出しているし、主流マスコミもそう宣伝しているが、よく見るならば、このすべてが但し書き付であることが見えてくる。

 しかも、投票に行ったイラク人たちの耳には、占領の終結を求める、という別の大声が聞こえているのである。

 選挙はされたが問題は解決されていない。国会が召集され、10万を超える米軍がイラクに留まり、ブッシュ政権が米軍撤退の日程提案を拒否し続けたなら、何が起こるか。

 すでに国内には米軍の常設基地が4つもできており、それらが撤去されるどころか、チェイニーの古巣ハリバートンにより現在さらなる基地の建設が進められていることを知り始めたら、何が起こるか。

 Foreign Policy in Focusのアントニア・ジュハズは、「選挙」の直前、投票がどうこうとの大騒ぎの只中で消されてしまった問題に焦点をあてた記事を書いていた。

石油である。
 
 中東の中心に民主主義をもたらした者たちがほとんどの人たちに語っていない本日のテーマにぴったりなので、彼女の記事を大部分において再掲したい。

 『2004年12月22日、イラクの財務相アブドル・マフディ氏は、ワシントンDCのナショナル記者クラブにおいて、少数の報道と業界関係者に向け記者会見をおこなった。マフディ氏は、イラクの国有石油会社を外資に解放することを可能にする石油法案を提出したいと思っている、と述べた。「ですから、これはアメリカの投資家、アメリカ企業、もちろん石油会社が非常に期待できるものだと思います」と説明。つまり、同氏は、イラクの石油を民営化し、アメリカの企業の手に渡すことを提案しているのである。

 同財務相によれば、外国人は、「流通・マーケティング」部門だけでなく、「おそらく産油段階」でも投資ができることになるらしい。つまり、外国人がイラクの石油を売り、地下の石油も所有することができるということだ。まさにアメリカが戦争にいったそもそもの理由、と多くが指摘する点である。

 ディック・チェイニー副大統領が、1992年に出していた「防衛政策指針」は、「我々の総合的目的は、〔中東〕地域における主要外部勢力としての立場を維持することであり、同地域の石油に対するアメリカと西側の権利を維持することである」としている。

 アメリカの報道で、問題の報道は愚かこの記者会見に出たのはインター・プレス・サービスのイマッド・マッケイぐらいであったが、マフディ財務相が新法案を発表したとき、横にいたのは米国務省次官のアラン・ラーソンであった。これは、何かのメッセージが意図されていたからか。だとしたら誰に。

 その後、マフディ氏は、1月30日の選挙で、主要シーア派政党であるイラク革命最高評議会(SCIR)の候補者リストに名を連ねていることが分かっている。

 イラク全歳入の95%を占める資源を売り渡すと発表しても、国民の票は得られないかもしれないが、アメリカの政府と企業からは強大な支持を取り付けられることは請け合いである。

 マフディ氏が所属する革命最高評議会は、来る選挙でダントツでトップにでると見られているが、その理由はまさに、スンニ派が暮らす地域が破壊的な混乱に飲み込まれていることからスンニ派の投票がますます不可能になっているからだ。ブッシュがイヤド・アラウィ暫定首相に、選挙の中止を提案するようなことになれば、マハディ氏と革命最高評議会が最終的に勝利する可能性は低くなろう。』

 ひとつ付け加えるなら、マフディの革命最高評議会が所属するイラク統一連合(UIA)には、イラク国民会議も入っているが、これは、イラクへの違法な侵略に必要だった虚偽の情報を提供したブッシュ政権の旧友アメド・チャラビ率いる政党である。

 また、アラウィ暫定首相も侵略正当化に使われた虚偽情報をブッシュ政権に流した人物であることも留意すべきだろうが、アラウィは、イラク統一連合とほぼ同数の支持を得られると見られている別のシーア派候補者リスト〔イラク人リスト〕を率いている。

 しかも、イラク統一連合は、イランで生まれたシーア派宗教者アリ・シスタニ師の息がかかった団体である。シスタニ師は、膨大な信者に対し、投票に行かなければ地獄へ落ちる、との宗教令を出している。

 『よって、ブッシュ政権が革命最高評議会と取引をしたのでは、と見れるかもしれない。政権を保証する代りにイラクの石油を頂戴、と。アメリカがこんな取引を提案できるのは、イラクで糸を引くのはまだブッシュだからである。

 選挙の結果にかかわらず、新国会が憲法を起草し、国民が新政府を選出する少なくともこの1年間は、イラクが使える資金の最大部分(イラク復興には、アメリカの税金から240万ドルが配当されている)、最大の軍隊、イラク経済を左右する法律を支配するのはブッシュ政権であろう。この金と法律は、次には、アメリカが任命した監査官たちが監視することになる。すべての省庁で5年任期をもつ役職につき、取引の契約と規制に決定的な権限をもっている人物たちである。いまやブッシュ政権は、イラクの石油も手中に収めたのである。』

 主流マスコミが報道していないことはこれだけではない。占領を終わらせられると信じて投票したイラク人にも知らされていないことはまだたくさんある。」

あい