トトラの馬

元々はエコロジーやスローライフについて書いていましたが、とりとめなくなってきた。

ロシアの接客サービスと商売感覚

2007-05-12 17:53:21 | できごと
父からは常々、「ロシアの接客はまったく笑わず、対応もぶっきらぼう」と聞いていましたが、第一印象はまさにその通りでした。

旅行して最初に接する働くロシア人は空港の税関職員ですが、前の人が通過するとキッと睨み付けるようにこちらを見て顎をしゃくります。怖いです(笑)。
目が合ったとき、ニコッとしたり多少表情を緩めることに慣れていると、結構ショックです。
夫は「笑うと表面積が増え口も露出して体温が奪われるから、ロシア人は笑わない」などともっともらしくテキトーなことを言っていましたが。

さて、仏頂面のままの女性係員にパスポートを手渡すと、親の敵のようにパスポートの写真をじいーっと眺めます。その慎重さ、仕事としては丁寧なのかも?
写真を充分睨み終わると、今度はわたしの顔を睨み付けます。鋭い目が、パスポートとわたしの間を行き来しています。9年前に作ったパスポートを持つわたしなんぞは「その時の顔とは大分違っていてごめんなさい、でも経年変化なんです・・・」と、むやみに弁解したい気持ちにすらなってしまいます。
さらにわたしの場合は、結婚後に変更したため、新しい苗字が別のページに書いてありますから、そのページも丁寧に確認しているようでした。
慎重な確認の末、納得していただけたらしく、無言ですっとパスポートが突き出されました。
ここまでのやり取りで終わっていたら、「父の言うことはもっともだった」と納得するところだったんですが。
パスポートを受け取ったとき、「スパシーバ(ありがとう)」と言ってみると、ニコッとしたんです。
あれっ?そんなに無愛想じゃないんじゃ・・・?

その後、ホテルやお店などでよくよく観察してみると、はじめに目が合ったときに笑ったり表情を和ませる人は確かに少ないことがわかりました。必要な業務を行っている間も、ひたすら無愛想にしています。
でも、こちらの用事が一段落した後にお礼を言ったり、何かしらコミュニケーションを図ってみると、さっきまでの仏頂面はどこへやら、途端ににっこりすることが多いのです。また、少し高級なレストランなどでは最初からにこやかなウェイトレスさんもいました。
旧ソ連時代、仕事中に笑うのは良くないこととされていたそうです。その頃の感覚から、今は少しずつ変り始めているのかもしれないと思いました。


ただ、「接客サービス」が商売に結びつく感覚は、まだあまり浸透していないという気がします。お店でも、店員さんは客が勝手に品物を選んで買う体勢になるまでまったく近寄ってきませんし、サイズのことなど質問してもあまり熱心には答えてくれません。店員さんにあれこれつきまとわれるのがキライな私としては楽でいいですが、他人事ながら「売ろう」としなくて大丈夫なのか?と思ってしまいます。
とある店で買い物しようとしたら、一つ買うものを決めたら店員さんがやってきてその商品を持ってレジに向かい、さっさと会計を始めてしまっていました。
他の商品もあわせて買おうとか、もう少し欲しい物がないか見渡そうという余裕を与えない感じです。
父の生徒さん(韓国語専攻)が、「夏に韓国に行くのでショッピングがしたい」と言っていましたが、積極的に売り込むという洋品店の店員さんにさぞかし驚くんじゃないかとちょっと楽しみです。

また、トイレがないことも驚きました。
街に有料トイレはありますが、飲食店や百貨店などのお店の中にはトイレがないことが多いようです。現地の人たちは、あんまりトイレの必要性を感じてないんでしょうか?
ただし、多くの店でトイレがなかったり汚いのに対して、内装にも凝った素敵なトイレを備えているカフェなどもありました。
これは、日本の観光業界の方たちが観光都市としての発展のために色々と助言をしたそうで、ウラジオストクでは少しずつトイレを設置する店が増えてきているのだそうです。

最後に「あー、まだ競争原理があまり働いてないのかな」と思った例をひとつ。
ウラジオストクのスポーツ湾沿いに、色つきタイルの敷き詰められた素敵な通りがありました。この通りには、3メートル間隔で小さなキオスクのようなお店が10店舗ほど並んでいるのですが、これらのお店、すべて売っている物が同じなんです。
タバコや飲み物、ちょっとしたスナック類に雑誌など。
それぞれの店をそれぞれが運営しているのか、どこかが一括管理しているのかは分りませんでしたが、日本だったら、これだけの店を用意したら隣の店とは少しずつ売るものを変えるのが普通ではないでしょうか。だって、その方が「売れる」でしょう?

町並みはきれいですしシベリア鉄道の起点駅や美しい湾など観光名所となりそうな財産は持っているのに、観光客を相手に利益を上げるような工夫や商売はあまり見受けられませんでした。
ウラジオストクは、軍港のある町として外国人ばかりかロシア人も立ち入れない閉鎖都市としての歴史が長く、開放されて15年。
日本や韓国からの観光客をもっと意識的に誘致するようになれば、どんどん街は変ってくるんだろうと思います。
いわゆる商売の感覚は、これから育っていくのかもしれないなーと考えると、今が一番面白い時期なのかもしれないと、今回訪れて思いました。

人生初のロシアにハマり気味

2007-05-12 01:09:05 | できごと
1週間のロシア旅行から、昨日帰ってきました。
いや~、楽しかったなあ!

今回行ったのは、ウラジオストクと父の住むウスリースクという街。

ウラジオストクは欧風の古く美しい建物が建ち並び、海に面した風情ある街です。道はガタガタで歩道も車道も穴だらけ、車は右側通行で、そういった意味では外国に来たことは間違いなく実感できるんですが、極東地域だけあってなにせ走っている車の9割方が日本の中古車。
「ヤマザキパン」や「○○市清掃局」なんて車体にドデーンと書かれていたり、若葉マークが付いていたりするので、道を歩いているとつい外国にいることを忘れそう。街中を走っているトロリーバスも昔っぽい雰囲気を助長させて、外国旅行というよりも大正時代あたりの日本のどこかの都市にタイムスリップしたような感じでした。

街の雰囲気はそんな感じでどこか馴染み深いのですが、やはりロシアという国は独特ですね。共産圏から市場経済への移行期という雰囲気がありありとしていて、とっても興味深かったです。
今回の旅行ではさほど観光的な目玉はなかったのですが、かえってそれが良かったかも。予備知識もイメージもなーんにも持たずに行ったので、見るものすべてが目新しい!


予備知識といえば、CD付きのロシア語教本を買って「完璧に勉強していくぞ~!」なんて張り切っていたけど、実はなーんにも勉強していきませんでした(汗)
だって、いきなり出てきた「はじめまして」が、「オーチン プリヤートナ ス ヴァミ パズナコーミッツァ」って・・・。
勉強するなと言っているとしか思えません!
その次の「こんにちは」を覚える気力もなくして放り出してしまったので、かわりにJTBパブリッシングから出ている「イラスト会話ブック ロシア」という本を持って行きましたが、これが大活躍でした。

やっぱりホテルのフロントなどを除いて、ロシア語以外まったく通じません。看板や注意書きなどもすべてロシア語で、ちんぷんかんぷん。
そんな時、ロシア語の読み方のページを開いて照らし合わせてみると、「あ、ホットドッグを売ってるんだ!」とか「タクシーって書いてある!」といきなり世界が開けるし、すこしずつ読めるようになってくると暗号解読みたいでとっても楽しいんです!
わたしはどこへ行くにも必ずこの本を持って歩きましたが、料理の名前や材料なども書かれているのでレストランでも便利だし、ロシア正教の教会を見に行ったときは、イコンの配置や意味なども書かれていて役に立ちました。
それにやっぱり挨拶や単語など簡単なことだけでもいいからロシア語で言ってみると、相手が明らかににこやかな表情にかわるんです。
シーンに合わせてイラストとロシア語、日本語、カタカナ発音が書かれているので、自分で読むだけでなく、相手に見せるという使い方もできるのです。

この本が本当に威力を発揮したのは、5月9日の戦勝記念日の前日に、父の住む町で噴水を見に行ったときです。
目的の噴水にたどり着いてみると、水が出てない・・・。
父が、近くにいた子どもにロシア語で「水はないの?」と聞いてみると、子どもは猛烈な勢いでなにやら話し始め、「俺について来~い!」とばかりに自転車でわたし達を別の噴水に先導し始めました。
そして、道すがらこの本に載っている様々なページから言いたい単語を次々と指差しては、さっきの噴水は明日水が出るということ、これからいく噴水はさっきのより小さい噴水だということ、明日は戦勝記念日のパレードがあること、そしてそのパレードがいかに立派かということ、自分の趣味は絵を書くこととスポーツをすること、家族は会社員のお母さんがいるけどお父さんはいないこと、誕生日は9月であること、今は13歳であることなどを教えてくれたのです。
旅行中、この本を一番有効に活用したのは多分あの少年です(笑)


それにしても、ロシア人はおしゃべりです!
ロシア語で話しかけられて、わたし達は明らかに理解していない顔をしているのに、怯むことなく次々とロシア語で会話し続けます!
博物館に行ったときなどは、おばさんが付いてまわって、すべての展示物をロシア語で解説してくれました(笑)
分らない人間を相手に、喋る、喋る!
それでも、なんとなく聞いているうちに英語に似ている単語が出てきたり、指差しやジェスチャーで少し通じることが出てきたりするので面白いものです。
わたしは、この博物館のおばちゃんから人生に大切な教訓を学びました。
「話し続ければ、そのうち何かは通じる」

わたしはこのおばちゃん師匠の教えに忠実に、その後の用事は会話ブックと日本語+身振り手振りで押し通しましたが、結構なんとかなるもんだなーと実感しました。
それにしてもまったく言葉の通じない国というのも久しぶりの体験で、サバイバルな感じで楽しかったです。ちょっとハマってしまったので、都合さえつけば夏に2ヶ月くらいロシア語留学したいなあと真剣に検討中です。

あ、共産主義から市場経済への移行ってのを感じた話を書こうとしたのに、忘れてしまった。たぶん、また明日。