酒と地域と近代化遺産・庵田の日常雑記

『地域文博・高炉館』管理人庵田の、愚痴と嘆きとどうでもいい日常。

製鐵所と軍艦島は世界遺産となり得るか?

2006年08月25日 17時45分19秒 | 近代化遺産
前回の続きとして、産業遺産の世界遺産登録に関する動きをここで整理したいと思います。
、、、まあ、あんまり胡散臭いことはいいたくないので、これまでの動きとキーマンの発言などを整理して、今回の報道について考えてみます。

まず産業遺産が世界遺産となり得るか、という問題について。
結論から先に言えば、なりますし、諸外国では実際登録されている事例が数多くあります。ここあたりの事例、登録基準を長々話すとややこしくなるので、この話題は隅においときます。
要は、産業遺産の世界遺産登録は、そんなに珍しくない、と考えてくだされば結構。

次に日本(九州)でなぜ、このような話が出てきたか、について。
いろいろきっかけはありますが、直接は昨年夏に催された「産業観光国際フォーラム」にてTICCIH事務局長であるスチュアート・B・スミス氏の発言にあるのだと思います。
軍艦島をはじめとした鉱山施設群(北海道赤平や別子銅山など)を例に挙げ、これらは世界遺産になる価値がある、という趣旨の発言を、
「実際に産業遺産群を世界遺産へ登録審査する人間が話されたこと
」が、その機運を埋火のように徐々に浸透させたのでしょう。
これに加え、都市経済研究家の加藤康子氏が今年2月に産業観光フォーラムin長崎で語られた、九州におけるアジア初の産業革命に関わった施設群【軍艦島・集成館事業・八幡製鐵所・三井三池炭鉱】の世界遺産登録を推進しようという提案が、民間で、また私含めた地域で研究或いは遺産の保存活用を行う人間の情熱を加速させ、その結果経済産業省の審議会で話題が採りあげられたのではないかと推察いたします。

とまあ、ここまでは事実の確認(文末に推論がが多すぎるという点はご愛敬)。
さて、今回の報道をどう見るべきでしょうか。
文面通りに経済産業省が動いてくれるかといえば、それは何ともいいようがない部分があります。経済産業省のサイトに実際そう書かれれば、それは具体的な姿を持って動き出しますが、今のところは水面下でうごめいている状態です。
ただ、政府が推進する観光立国実現のための観光客誘致策のひとつにこの動きがあるのだとすれば、そう遠くない未来、世界遺産というものが現実の色を帯びてくるのだと思います。

世界遺産にやたら威厳を感じ、その件数が増えることに嫌悪感を示す方も多いとは思いますが、そのネーミングが与える箔付けにこだわることなく、地域が誇れる資源の紹介パターンのひとつだと考えたらよいのではないでしょうか。
その点では、国登録文化財とそれほど大差はないのでしょう。登録対象がいくら増えても、遺産そのものが持つ価値は減衰しませんし、ひとつひとつの施設にユネスコからの手厚い保護もありません。

ちょっと言いたいことがぼやけがちですが、今後近代化遺産・産業遺産の観光利活用が進んでいくことは間違いないでしょう。私自身、その認知・広報手段として世界遺産登録を目指すという動きは実に適切であると考えています。
ま、今後に期待、という締めで今回は終わりですね。