Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

11/1(月)出光音楽賞受賞者ガラコンサート/「題名のない音楽会」/荒 絵理子・宮田 大・三浦文彰・河村尚子

2010年11月05日 01時19分51秒 | クラシックコンサート
第20回 出光音楽賞受賞者ガラコンサート/「題名のない音楽会」公開収録

11月1日(月)18:30~ 横浜みなとみらいホール・大ホール 全席指定 1階 C4列 35番(招待)
指 揮: 佐渡 裕
管弦楽: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
【第20回 出光音楽賞受賞者と演奏曲目】
荒 絵理子(オーボエ)
  フンメル: 序奏、主題と変奏曲 作品102
宮田 大(チェロ)
  カバレフスキー: チェロ協奏曲 第1番 ト短調 作品49
三浦文彰(ヴァイオリン)
  プロコフィエフ: ヴァイオリン協奏曲 第2番 ト短調 作品63
河村尚子(ピアノ)
  ラフマニノフ: パガニーニの主題による狂詩曲 作品43

 新進気鋭の音楽家に将来へのさらなる活躍を期待して贈られる「出光音楽賞」(出光興産株式会社主催/テレビ朝日後援)が第20回を迎え、今回は4名が受賞され、授賞式と記念のガラコンサートが開かれた。このコンサートはテレビ朝日系列の『題名のない音楽祭』で放送されるための収録があり、佐渡 裕さん(第2回出光音楽賞受賞)とテレビ朝日の本間智恵アナウンサーによる司会進行と、4名の受章者とのトークなどがあり、またテレビ収録のため、ステージのライトアップや出演者へのスポットライトがあるなど、普通のコンサートとは違っった雰囲気があった。そして、公開収録ということで、来場者はすべて公募・抽選による招待で、もちろん無料である。抽選に当たった人は大変ラッキーで、上記4名の演奏家たちによる、協奏曲系の4曲を無料で聴くことができたのである。

 ガラコンサートに先立って、「第20回 出光音楽賞」の授賞式があった。4名に賞状と賞金300万円が贈られた。若手の音楽家たちにとってはとてもありがたい賞金だろう。今後の研鑽に、役立てて欲しい。


第20回 出光音楽賞受賞者。左から、荒 絵理子さん、宮田 大さん、三浦文彰さん、河村尚子さん。

 さて、1曲目は、フンメルの「序奏、主題と変奏曲 作品102」という珍しい曲。オーボエと管弦楽のための協奏曲風の曲。15分弱の序奏付きの変奏曲で、1824年の作。ベートーヴェンと同時代であり、作風は古典派的である。オーボエのソロを際立たせるためにオーケストラの編成は最小限で、管楽器はフルート2、ファゴット2、ホルン2しかない。もちろん聴くのは初めてだ。
 オーボエの荒 絵理子さんは現在は東京交響楽団の主席オーボエ奏者を務める傍ら、ソロ活動も行っている。曲を聴いての最大の印象は、オーボエの音色がとても美しいこと。上品でまろやか、あまり煌びやかな印象ではないが、どこかおっとりしていて優しい音色である。フンメルの曲は、ご本人もかわいらしい主題と言っておられたが、古典派の曲想の中にバロック風の優雅さも備えており、確かにかわいらしい主題とそれに続くほのぼのとした変奏の数々に、荒さんのオーボエはよく似合う音色だった。

 2曲目はカバレフスキーの「チェロ協奏曲 第1番 ト短調 作品49」。これもまた珍しい曲。前の曲に続いて、佐渡さんも初めて指揮をするのだという。1949年の作品ということだが、ソ連時代のロシアの作曲家の作品にしては、快活で明確な曲であり、非常にロマン的で聴きやすい曲だ。やはり小編成のオーケストラとの組み合わせで、20分程度の小粒な協奏曲である。
 チェロの宮田 大さんは桐朋学園大学のソリスト・ディプロマコースを主席で卒業した俊英で、最近の活躍も著しい。先日もサイトウキネンに参加している様子がテレビで放送されていた。技巧的な早いパッセージやカンタービレのようなゆったりした響きがとてもステキな演奏だった。演奏が素晴らしいのはよく分かったのだが、ただ残念なことに、私の聴いていた4列目の右端では、チェロの音が飛んでこない。小編成のオーケストラにさえ埋没してしまい、非常に聞き取りにくかった。元来、チェロの音量があれほど小さいことは考えられないから、ましてやソリストの演奏なのだから、あくまでホールの聴く位置の問題なのだろう。音の来るセンターの位置でぜひとも聴いてみたかった。演奏自体は、Bravo! でまちがいなし。

 休憩をはさんでの3曲目はプロコフィエフの「ヴァイオリン協奏曲 第2番 ト短調 作品63」。やっと知っている曲が登場。とはいえ、この曲も比較的演奏機会は少ない。今年2010年では、6月に庄司紗矢香さんとマーク・ヴィッグルスワース指揮+東京交響楽団の競演で聴いている。現代的な曲だが、旋律はロマン的な要素が多く残されていて、聴きやすい曲である。
 ヴァイオリンの三浦文彰さんは、現在東京フィルハーモニー交響楽団のコンサートマスターを務めている三浦章宏さんのご子息で、まだ17歳とか。顔と名前は知っていたが、聴くのは初めてだ。それにしてもそれほど若いとは知らなかった。演奏は一言でいえば、端正といったところか。技術的な精度が極めて高いが、技巧を前面に押し出すようなところがなく、キレイな音色で、とても上品な演奏に感じた。曲全体の解釈を含め、演奏もバランス良くうまくまとめていたし、丁寧な演奏は好感が持てる。17歳でこの演奏とは、先が楽しみな逸材である。ただ、若いのだから、もっと冒険してしまっても良いのではないか…。もっとも出光音楽賞の記念ガラコンサートだから、ハメを外すわけにはいかないか。

 最後はラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲 作品43」。これはもう、完全に名曲の部類。1934年の作というから、ロシア革命を逃れてアメリカに亡命し、ピアニストとして成功を収めた後の作品。当時の音楽界の状況に背を向けるように、徹底したロマン主義を貫いた、ラフマニノフならではの叙情性と管弦楽技法、そしてピアニズムに溢れている名曲だ。第18変奏のロマンティックな旋律はとくに有名。
 ピアノの河村尚子さんは、本プログにもたびたび登場している、私の最も好きなピアニストのひとり。今年は、5月の「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2010」でリサイタルを、6月には、ファビオ・ルイジ指揮+ウィーン交響楽団との競演でベートーヴェンの『皇帝』を、飯森範親指揮+山形交響楽団との競演でショスタコーヴィチの協奏曲第1番を聴いた。いずれも名演揃いだった。
 河村さんのピアノは、実に音が良い。「音の粒が丸い」とよく表現されるように、均一な音がまさに転がるように躍動する。ひとつひとつの音はキラキラしているのに、曲の流れの中ではやや落ち着いた大人の風情を感じさせるのも特徴のひとつだ。子供の頃からドイツで暮らしてきたという環境が育てた音なのだと思う。確かな技巧を持ちながら、それをこれ見よがしに披露するようなことはせず、ヨーロッパの伝統的なサウンドを聴かせてくれるのだ。
 今日はラフマニノフ。たくさんの音が縦横無尽に跳ね回る時の躍動感、パァっと飛び散る輝くばかりの音の粒、そしてしっとりと聴かせる叙情的な旋律…。次々と現れる異なる曲想を色彩感豊かにみごとな演奏を聴かせてくれた。河村さんの場合は、もうすでに世界中で活躍する1級のピアニストなのだから、当たり前といえば当たり前かもしれないが、今日の「出光音楽賞」受章者の中では、群を抜いてあっと亜的な存在感を見せつけていたように思う。
 余談だが、今日の河村さんはちょっと面白いヘアスタイルで登場した。授賞式は平服で、演奏はステージドレスだったが、ヘアスタイルはずっと同じで、むしろ着物が似合うような感じ…。会場に来られなかった方は、『題名のない音楽会』のテレビ放送をお楽しみに(^◇^;)

 たっぷり4曲の協奏曲を聴いた気分で、何しろご招待なので、ものすごく得をした感じだ。しかも素晴らしい演奏の連続。知らない曲も、しっている曲も、大満足だった。やっぱり、ソリストは若い方がエネルギーがあってよろしい。生命力というか、希望・憧れというか、葛藤がないというか。音楽の中でもプラスの部分が大いに感じられて、聴くものを楽しい気分にしてくれる。
 なお、今日のコンサートの様子はテレビ朝日系列の『題名のない音楽会』で2回に分けて放送されることになっている。放送予定は以下の通り。
 2010年11月21日(日)9:00~9:30 テレビ朝日
 2010年11月28日(日)9:00~9:30 テレビ朝日
 2010年11月27日(土)18:30~19:00 BS朝日
 2010年11月28日(日)23:00~23:30 BS朝日
 2010年12月 4日(土)18:30~19:00 BS朝日
 2010年12月 5日(日)23:00~23:30 BS朝日

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