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9/21(日)読響みなとみらい名曲/オルガンづくし/中でもサン=サーンス交響曲第3番は爆音全開の快演

2014年09月24日 01時17分32秒 | クラシックコンサート
読売日本交響楽団/第74回みなとみらいホリデー名曲シリーズ

2014年9月21日(日)14:00~ 横浜みなとみらいホール S席 1階 C2列 14番 4,125円
指 揮: 下野竜也
オルガン: 小林英之*
ティンパニ: 岡田全弘(読響首席奏者)**  
管弦楽: 読売日本交響楽団
【曲目】
J.S.バッハ/ストコフスキー編: トッカータとフーガ BWV565
プーランク: オルガン、弦楽とティンパニのための協奏曲 ト短調 * **
サン=サーンス: 交響曲 第3番 ハ短調 作品78「オルガン付き」*
《アンコール》
 J.S.バッハ: 小フーガ ト短調 BWV578 *

 読売日本交響楽団の第74回みなとみらいホリデー名曲シリーズを聴く。前日にも東京芸術劇場マチネーシリーズで同プログラムのコンサートがおこなわれている。今回はオルガンづくし。とても面白いプログラムだ。J.S.バッハの『トッカータとフーガ」はオルガンの独奏曲としてはおそらくもっとも有名な曲だと思われるが、それを逆にオルガンのないストコフスキー編曲の管弦楽版で演奏し、その他の曲はオルガンを含む管弦楽曲という構成である。後半のメイン曲は、もちろんサン=サーンスの「オルガン付き」交響曲。大好きな曲なので、楽しみにしていたものである。

 まず前半。1曲目はバッハの「トッカータとフーガ」管弦楽版。編曲者のストコフスキーといえば、私が学生の頃はまで存命で、指揮者として活動していた。もちろん直接聴いたことはないが、多くのレコードを通して、その華やかな演奏は記憶に残っている。そんなストコフスキーはオルガンの造詣も深く、この曲を管弦楽版に編曲して、別の意味で名曲として残したのである。
 下野さんの指揮は、いつものように明快で、クッキリとした造形を持っている。そこに読響のパワフル名演奏が加わり、すこぶるダイナミックで派手な演奏となった。パイプオルガンの持つ広い音域に対して、管弦楽にはそこに多彩な楽器の音色が加わる。その辺りが十分に発揮されていたと思う。トッカータの部分はダイナミックで劇的な構成は、オルガンをはるかに凌駕する迫力で描き出し、フーガの部分は、フル編成のオーケストラが紡ぎ出す、幅広い色彩感と厚みのある音量、そして弦楽の分厚いアンサンブルはもはやバロック音楽をはるかに超越した近代の音楽のような華やかさであった。読響の持つスケール感が十分な発揮された演奏だったと思う。

 2曲目は、プーランクの「オルガン、弦楽とティンパニのための協奏曲」。その名の通り、パイプオルガンと独奏ティンパニ、弦楽5部による協奏曲であり、管楽器は加わらない。むしろ管楽器の代わりにオルガンが多彩な音色と広い音域をカバーしているともいえる。
 第1楽章は、オルガンの独奏によるアンダンテの序奏から始まり、ティン場にと弦楽を巻き込んでアレグロ・ジョコーソの主部に入っていく。軽快なティンパニと弦楽による疾走感に対して、オルガンがやや重い。まあ、楽器の特性として、速いテンポへの追従性はいささか・・・・という感じで、独奏曲とは違って弦楽との協奏だとどうしても音が出てくるのが遅れて聞こえてしまうのだ。
 第2楽章は緩徐楽章のため、アンサンブルの違和感は薄れて、抒情的な曲想に対してオルガンの持つ荘厳な雰囲気が素敵だ。私は2列目で聴いているので弦楽5部の演奏も繊細な弱音部分から強奏部分までクッキリと聞こえるが、ホール全体を鳴動させるパイプオルガンとのバランスはどうだったのだろうか。私の席からきけっこうバランス良く聞こえたが、2階や3階でどのように聞こえたのかは、興味深いところである。
 第3楽章はアレグロに始まりテンポも目まぐるしく変わる。中間部の静かな抒情性は、弦楽の美しいアンサンブルとオルガンの和音の美しさが、他の曲ではちょっと味わえない独自の雰囲気を創り出す。また近代フランスの音楽だけあって(1939年、パリで初演)、洒落っ気と小粋な旋律を軽快に流すような曲想も登場し、パイプオルガンの荘厳な音色の「軽い」使い方がいかにも洒脱で面白い。下野さんが全体的にキッチリと振っているので、弦楽のアンサンブルとティンパニのリズム感はまったく問題ないが、オルガンが加わると時々縦の線が乱れるようなところもあって(やはり追従性の問題だろうか)、いささかドタバタした感じがなかったわけではない。近代ものゆえに不協和音も随所に登場するので、こういう曲だと思って聴けば良いのかとも思う。いずれにしても珍しい曲をナマで聴かせていただき、また話のネタがひとつ増えたような、ちょっと得した気分であった。

 後半はサン=サーンスの「オルガン付き」。先ほどのプーランクの曲のおよそ半世紀前、ロマン派どっぷりの曲である(1886年、ロンドンで初演)。こちらはあくまで交響曲。オルガンと4手ピアノが加わるだけでなく、4楽章形式を変形させた2楽章4部構成を採用したり、循環主題なども盛り込まれていて、交響曲という楽曲のジャンルに盛り込めるだけの要素を盛り込んだ、豪華絢爛な曲である。私はこの曲が大好きで、音楽の持つプラス志向の要素だけを集めたような、理屈抜きで楽しめる派手さが良い。
 第1楽章の前半は管弦楽のみだが、今日の演奏は、下野さんの剛直な造形(もう少ししなやかさが欲しいところだが)と読響のダイナミックレンジの広さ、そしてエンジン全開の本気モードの演奏が、グイグイと押し出して来る迫力を生み出していた。全体的に音量を出してきているので、各パートの楽器の鳴りが良く、迫力と同時に色彩感も豊かであった(フランスのオーケストラとはちょっと雰囲気が違うが)。
 続けて演奏される第1楽章の後半の緩徐部分、オルガンの荘厳な伴奏に乗せられるこの上なく美しくロマン的な主題。やや一本調子に感じがしないわけではなかったが、演奏自体は質感の高いもので、聴いていて痺れるような快感に包まれていく。読響ならではの弦楽の厚みも素敵だし、ホルンをはじめとする金管も均質なアンサンブルを聴かせてオルガンに負けていない。もちろん最大の魅力はオルガンだ。単調な和音による伴奏だけなのだが、重低音が生み出す低周波の振動が床から伝わって来るイメージで、弱音なのに内臓にズズズ・・・・・・ンンンと響いてくる。本当に痺れるような快感である。最後にオルガンが鳴り止んだ時にホールに満ちていた低周波の振動がふっと消え、完全な静寂が訪れる瞬間も素晴らしい。
 第2楽章の前半はスケルツォ楽章に相当し、管弦楽のみに戻るが、ガガガッと強烈な弦楽が描き出す主題に合いの手を入れるティンパニのノリの良いリズム感が素敵だ。パワフルな読響の魅力爆発である。4手ピアノが華麗なカデンツァ風に登場するトリオ部分は、ピアノが遠くの方から聞こえてくるイメージで、サン=サーンスの楽器の使い方の巧さが際立つ。また、ダイナミックレンジのひろい読響の演奏は、この派手で躍動的なスケルツォを活き活きと描き出していた。
 オルガンの壮麗を極める和音で始まる第2楽章の後半。主部に入ると下野さんはここでテンポをやや遅めに採り、しっかりとリズムを刻むような剛直な構造で、読響を大いに鳴らせていく。弱音の経過部では極端に音量を落とし、クレシェンドの幅を大きく持たせてクライマックスへと導く手腕は、ダイナミックそのものだ。シンバルも加わってからテンポを急速に上げてコーダに突入していくあたりの煽り方も劇的な効果をあげ、ティンパニの連打を伴う全合奏のフィニッシュでは、最後に一瞬残ったオルガンの豪快な主和音が空間に消えていった。
 とにかく、この曲は理屈抜きで、五感に訴えかけるチカラに満ちている。パイプオルガンそのものに身体に直接響くエネルギーがあるが、サン=サーンスはこの曲でパイプオルガンを加えながら、全体には使わなかった。4楽章構成だとすれば2楽章と4楽章にしか敢えて使わず、しかもあくまでオーケストラの補助的な位置付けに留めていることで、かえって劇的な効果をあげでいるのだ。サン=サーンスのたくみに計算された構造があるわけだが・・・・・・。いや、やはりそういう理屈っぽいことは言わないことにした方が良い。この絢爛豪華で派手な曲を、コチラも身体をいっぱいに使って聴く。理屈抜きで楽しむ方が良い曲だ。今日の読響のパワフルな演奏こそ、そんな楽しみ方にピッタリの演奏だったと思う。

 若干時間画短かったせいか、珍しくアンコールが用意されていた。バッハの「小フーガ」。今日のオルガン演奏の小林英之さんがソロで演奏を始めた。やがて管弦楽も加わり、徐々に厚みを増していく。重低音による通奏低音が加わると、さすがに管弦楽にはない荘厳さになった。演奏自体はとても良かったが、このアンコールは必要だったかどうか。サン=サーンス好きとしては、あの興奮をそのまま持ち帰りたかった気もするのだが・・・・・。

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【お勧めCDのご紹介】
 読響とはまったく関係がありませんが、サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」の名盤をご紹介します。ちょっと古いものですが、ジャン・マルティノン指揮、フランス国立放送管弦楽団、1970年の録音。巨匠円熟期の傑作とされている録音がデジタル・リマスターによりSACD/CDハイブリッド盤で復活してものです。スッキリ明晰ながら色彩感な演奏は、さすがフランスのご本家という感じ。フランクの交響曲ニ短調がカップリングされています。

サン=サーンス:交響曲第3番≪オルガン付≫/フランク:交響曲(SACD/CDハイブリッド盤)
ワーナーミュージック・ジャパン
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