Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

11/14(金)日本フィル東京定期/インキネン/シベリウス交響詩「大洋の女神」とマーラーの交響曲「夜の歌」

2014年11月17日 01時37分41秒 | クラシックコンサート
日本フィルハーモニー交響楽団 第665回 東京定期演奏会
【マーラー撰集 Vol.5】


2014年11月14日(金)19:00~ サントリホール・大ホール A席 1階 2列 18番 3,500円(年間会員割引)
指 揮: ピエタリ・インキネン
管弦楽: 日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター: 西本幸弘(ゲスト)
【曲目】
シベリウス: 交響詩「大洋の女神」作品73
マーラー: 交響曲 第7番 ホ短調「夜の歌」

 日本フィルハーモニー交響楽団の東京定期演奏会を聴く。先月は他のコンサートと重なってしまったために聴くことができなかった。首席指揮者のアレクサンドル・ラザレフさんの登場だったのでとても残念であった。今日は「首席客演指揮者」のピエタリ・インキネンさんの登場で、現在進行形の企画「マーラー撰集」の第5回に当たる。この企画は、マーラーの交響曲を1つずつ採り上げていくもので、シベリウスの交響詩とのカップリングで進められている。前回は今年2014年の6月の東京定期演奏会で、シベリウスの交響詩『夜の騎行と日の出』とマーラーの交響曲 第6番「悲劇的」という組み合わせであった
 第5回となる今回(今日と明日の2回公演)は、シベリウスの交響詩「大洋の女神」とマーラーの交響曲 第7番「夜の歌」という組み合わせになっている。フィンランド出身のインキネンさんにとっては、シベリウスは身近でなによりも愛着のある存在。しかしシベリウスには、まだまだ世界的には知られていない曲がたくさんある。それらの演奏機会を設け、世界に知らせていくのも、インキネンさんに取っては大きな使命となっているようである。今日演奏される交響詩「大洋の女神」も非常に珍しいといって良いだろう。このような曲を聴く機会を作っていただいたインキネンさんに感謝したい。
 肝心の「マーラー撰集」の方は、今回は「夜の歌」。80分にも及ぶ大曲である。世にマーラー・ファンはたくさんいらっしゃる。しかも男性が多い。マーラーとブルックナーの交響曲が演奏されるコンサートは、休憩時間の男性トイレが長蛇の列になるという都市伝説(?)があるくらいだ。そんな状況の中で、マーラーを苦手としていて積極的に聴く機会を敢えて多くしていない私ごときが、あぁだ、こぉだ、と無責任な発言をすると、猛烈な批判を浴びそうなので、サラリと感想を述べるに留めたい。

 まず前半に演奏されたシベリウスの交響詩「大洋の女神」は、11分に満たない作品だ。弦楽が描くたおやかな大洋のイメージから浮かび上がるフルートやオーボエの主題が印象的。題材はギリシャ神話から採られているらしいが、その辺の知識もなく感覚的にも日本人には解りにくいところがあると思うが、曲を聴く限りのイメージは、大海の波の間から表れる美しい女神・・・・というイメージは伝わって来る。しかも中間部ではドラマティックな盛り上がりを見せるので、何か劇的な物語性を感じる音楽となっている。透明感のある空気感の漂う「自然」描写の部分と静かに燃えたぎる「熱情」の部分が交差して、いかにもシベリウスといった感じだ。インキネンさんの振る時の日本フィルは不思議なくらいに透き通った濁りのない音色に変わる。日本フィルの伝統のチカラなのであろうか。初めて聴く曲であっても、見事なくらいに美しい情景を感じ取ることができた。

 後半は、というよりはこのコンサートの大部分を占めるのはマーラーの交響曲第7番「夜の歌」。演奏は80分に及ぶ。全体は5つの楽章からできていて、急-緩-舞-緩-急という構成。つまり普通の4楽章構成の終楽章の前に緩徐楽章を追加して、全体がシンメトリーな構造になるように考えられている。その2つの緩徐楽章には「Nachtmusik」と名付けられているところから、交響曲全体「夜の歌(Lied der Nacht)」と呼ばれるようになったとか。マーラーの命名ではなく、実際には「歌」も出て来ない、管弦楽だけの交響曲である。
 第1楽章の冒頭にテノール・ホルンによる主題が登場するが、今日は吹奏楽ではお馴染みのユーフォニウムで代用されるとのことだ。そのユーフォニウムのプァンという音は右側の奥の方から聞こえて来たようだが、私の席からは見えなかった。第1主題は左側奥のホルンがヴァイオリンによる第2主題も美し澄んだ音色とアンサンブルを聴かせていた。この後の演奏は、各パートに引き継がれる主題や経過的なフレーズが、ややまとまりを欠いて、パラパラしている印象だった。まあ、曲もそういう曲なので・・・・などと言うとマーラー・ファンから怒られそうだが。第1楽章だけで20分以上もあるので、聴いている方も脈絡に乏しい音楽が混沌と続くのを聴くのはツライ。
 第2楽章は「Nachtmusik」の1つ目で緩徐楽章。行進曲風ながら、半音階的な主題が不安定で落ち着かない気分を誘う。曲想も次々と変わり、転調も多い。「Nachtmusik」と言われても・・・・よく解らない。演奏の方は、インキネンさんらしいスッキリしたサウンドで、明晰な印象だ。
 第3楽章はスケルツォ。「影のように。流れるように、しかし早すぎずに」と書かれているように、弦楽の流れはスムーズでワルツ風に踊るようになる。各パートに表れる様々な主題は、濃厚な音色で質感の高い演奏。これらによって、音楽全体が混沌としてきて、私のような者には、つかみどころがなく感じられてしまうのだ。
 第4楽章はもう1つの「Nachtmusik」。ヴァイオリンのソロで始まり、様々な楽器が美しく儚げな主題を奏でていくが、変わったところでは、マンドリンとギターが登場する。オーケストラの中から聞こえるマンドリンは珍しく、新鮮なイメージを創り出すが、音量が小さいので、かすかにしか聞こえてこなかったのが惜しい気がした。マンドリンはヴァイオリンと同じ調弦だが、同じ音程の弦が2本ずつあり、ピックを使って弾く。トレモロ奏法が特徴の楽器だが、ギターと同様に音量が小さく、オーケストラと共に演奏するのは困難な要素が多い。
 第5楽章はロンド。ティンパニの連打に続いて金管がロンド主題となる派手なファンファーレを放つ。フィナーレ楽章のロンドといっても、17~18分もあり、ロンド主題が繰り返し何度も何度も出て来て・・・・。日本フィルの演奏の方は、最後まで集中を途切れさせることなく、素晴らしかったと思う。インキネンさんの音楽作りは(おそらく)ストレートなもので、明快な論理性を持っているように思えた。感情に流されることなく、明晰で理知的な解釈といったところだと思う。日本フィルの演奏は、インキネンさんの求める音楽をかなりうまく表現していたのではないだろうか。

 終演後にはインキネンさんによるアフタートークがあった。多分初めてだと思う。音楽ライターのオヤマダアツシさんの司会で行われた。私たちは、演奏が終わった後もそのまま席に残ってトークを聞くことになった。インキネンさんは、シベリウスが特別な存在であることや、今日のマーラーの7番のこと、マーラー・ツィクルスのこと、ワーグナーのこと、そして来年4月に予定されているブルックナーのことなどを丁寧に語ってくれた。日本フィルとの関係については、ともに成長をしていきたい、目指すべきゴールはまだまだ沢山ある、1回1回のコンサートで変わっていく私たちを感じ取って欲しい、というようなことを語ってくれた。とても真面目な、そして謙虚だが、熱い情熱を秘めた素敵な指揮者だと思う。これからも注目していきたい。

 ← 読み終わりましたら、クリックお願いします。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 11/12(水)都民劇場/サンタ・... | トップ | 11/15(土)女神との出逢い/森 ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

クラシックコンサート」カテゴリの最新記事