青木尚佳ヴァイオリン・リサイタル
第110回 ディスカヴァリー・コンサート(通算464回)
2013年8月25日(日)16:00~ アトリエ・ムジカ 自由席 3,000円
主催: 音楽ネットワーク「えん」
ヴァイオリン: 青木尚佳
ピアノ: 中島由紀
【曲目】
ベートーヴェン: ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 第8番ト長調 作品30-3
J.S.バッハ: 無伴奏パルティータ 第2番ニ短調 BWV1004 より シャコンヌ
シマノフスキ: 神話・・・3つの詩 作品30 より 第1曲 アレトゥーザの泉
シューマン: ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 第2番ニ短調 作品121
《アンコール》
メンデルスゾーン: 歌の翼に
クライスラー: 中国の太鼓
音楽ネットワーク「えん」の主催による「小規模」「非営利」「手作り」のコンサート・シリーズに、ヴァイオリンの青木尚佳さんが登場、1年ぶりのリサイタルを開いた。彼女はロンドンの王立音楽大学に留学中で、夏休みの一時帰国中というわけである。このコンサートについては、開催が決定した時点で、主催者からも尚佳さんからも情報をいただいていたので、聴きに行くことは初めから決まっていたようなもので、あとは友人たちを誘って、ご本人からチケットを送っていただいたといった経緯であった。毎年8月とい音楽日照りの時期に、オアシスのごときコンサートとなるはずで、楽しみにしていた。尚佳さんは、ちょうど1年前の2012年8月24日・25日にも夏休み帰国中にリサイタルを開いている。だからまる1年ぶりの演奏会であった。ピアノ伴奏は、昨年と同じ中島由紀さんである。
というわけで、彼女の1年間の飛躍ぶりを聴かせていただくのを非常に楽しみにしていたコンサートであり、前日まで友人たちに確認のメールを送ったりと、準備万端でいたのだが・・・・。
当日の朝になってハプニングが。高齢の母が体調不良を訴えたため、ドタキャンせざるをえなくなってしまった。日曜診療の病院を探して連れて行ったりと、コンサートに行けるような状態ではなくなってしまったのである。主催者には電話連絡して友人たちが入場できるように手配したり(私がチケットを預かっていたから)、友人たちと連絡を取り合ったり、尚佳さんにも行けなくなった旨を連絡したり、もう大騒ぎである。
結局、母の病は軽い熱中症だったらしく、すぐに快復したので一安心ではあった。落ち着いてみると、今度は聴けなかったコンサートが残念でならなくなってくる。そして終演後、友人たちから続々とメールが届き、会場の様子が伝わって来た。クリスタルジュエリーのような輝きを放つ物をちりばめた黒のドレスで登場し、一年見ない間に随分大人になったと感じられたという。
演奏の方は素晴らしいものであったと、皆が褒めている。とくにシューマンのソナタが素晴らしかったようだ。実際にはまったく聴いていないのだから本来は何も発言する資格はないと思うが、ずっと聴いて来た尚佳さんの演奏の発展系から想像するに、正確無比の音程と技巧、キリっと明瞭な音色に、おそらく潤いのある艶やかさが加わってきているのではないだろうか。旋律の歌わせ方や抒情性の表現なども一段と磨きがかかっているに違いない。
もう一つの話題は、バッハの「シャコンヌ」を演奏した時の楽器が、お師匠さんのNHK交響楽団の堀正文さんのストラディヴァリウスだったということ。ご存じのようにN響は現在ヨーロッパ・ツアー中で、ザルツブルク音楽祭にも参加している。尚佳さんは堀さんからストラドを預かり、留守中の管理をまかされているのだとか(毎日鳴らさないとならないから)。演奏会でも使って良いと言われていて、この日、「シャコンヌ」で使ってみたということである。ただし、楽器本来の音を出すのは、慣れないと難しいらしい。とはいえ、これは是非、聴いてみたかった。良くも悪くも、聴く方も何事も体験なので。
アンコールはメンデルスゾーンの「歌の翼に」とクライスラーの「中国の太鼓」だった由。体力も十分に身についたようだ。
尚佳さんはこの1年間ロンドンでも随分活躍されたようである。王立音楽大学内(RCM)でのコンチェルト・コンペティション(すべての楽器が対象)で優勝し、記念のコンサートではRCM Philharmonicとの共演でチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を演奏。室内楽の方でもカルテットを結成し、RCMのカルテット・コンペティションでも優勝(これは本人も意外だったとか)。その後いろいろと演奏する機会も増えているようである。このままいけば、首席で卒業しそうである。
ヨーロッパに留学すると、世界中から集まってきた演奏家たちとの交流ができる。言葉や文化・宗教、音楽に対する環境も考え方も異なる音楽家たちとの交流から得られる経験には無限の価値がある。ヨーロッパの伝統的な音楽に直接触れることも大切だろうし、また世界中に目と耳が開くことができるのも重要に要素だ。尚佳さんは、今後どのような音楽家に育っていくのだろうか。私たちは遠くから見守ることしかできないが、来年の夏こそは、もっともっと充実した音楽を聴かせていただけるのではないかと確信している。
これはせっかくのコンサートをききに行けなかった者からのエール(というか愚痴?)である。
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第110回 ディスカヴァリー・コンサート(通算464回)
2013年8月25日(日)16:00~ アトリエ・ムジカ 自由席 3,000円
主催: 音楽ネットワーク「えん」
ヴァイオリン: 青木尚佳
ピアノ: 中島由紀
【曲目】
ベートーヴェン: ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 第8番ト長調 作品30-3
J.S.バッハ: 無伴奏パルティータ 第2番ニ短調 BWV1004 より シャコンヌ
シマノフスキ: 神話・・・3つの詩 作品30 より 第1曲 アレトゥーザの泉
シューマン: ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 第2番ニ短調 作品121
《アンコール》
メンデルスゾーン: 歌の翼に
クライスラー: 中国の太鼓
音楽ネットワーク「えん」の主催による「小規模」「非営利」「手作り」のコンサート・シリーズに、ヴァイオリンの青木尚佳さんが登場、1年ぶりのリサイタルを開いた。彼女はロンドンの王立音楽大学に留学中で、夏休みの一時帰国中というわけである。このコンサートについては、開催が決定した時点で、主催者からも尚佳さんからも情報をいただいていたので、聴きに行くことは初めから決まっていたようなもので、あとは友人たちを誘って、ご本人からチケットを送っていただいたといった経緯であった。毎年8月とい音楽日照りの時期に、オアシスのごときコンサートとなるはずで、楽しみにしていた。尚佳さんは、ちょうど1年前の2012年8月24日・25日にも夏休み帰国中にリサイタルを開いている。だからまる1年ぶりの演奏会であった。ピアノ伴奏は、昨年と同じ中島由紀さんである。
というわけで、彼女の1年間の飛躍ぶりを聴かせていただくのを非常に楽しみにしていたコンサートであり、前日まで友人たちに確認のメールを送ったりと、準備万端でいたのだが・・・・。
当日の朝になってハプニングが。高齢の母が体調不良を訴えたため、ドタキャンせざるをえなくなってしまった。日曜診療の病院を探して連れて行ったりと、コンサートに行けるような状態ではなくなってしまったのである。主催者には電話連絡して友人たちが入場できるように手配したり(私がチケットを預かっていたから)、友人たちと連絡を取り合ったり、尚佳さんにも行けなくなった旨を連絡したり、もう大騒ぎである。
結局、母の病は軽い熱中症だったらしく、すぐに快復したので一安心ではあった。落ち着いてみると、今度は聴けなかったコンサートが残念でならなくなってくる。そして終演後、友人たちから続々とメールが届き、会場の様子が伝わって来た。クリスタルジュエリーのような輝きを放つ物をちりばめた黒のドレスで登場し、一年見ない間に随分大人になったと感じられたという。
演奏の方は素晴らしいものであったと、皆が褒めている。とくにシューマンのソナタが素晴らしかったようだ。実際にはまったく聴いていないのだから本来は何も発言する資格はないと思うが、ずっと聴いて来た尚佳さんの演奏の発展系から想像するに、正確無比の音程と技巧、キリっと明瞭な音色に、おそらく潤いのある艶やかさが加わってきているのではないだろうか。旋律の歌わせ方や抒情性の表現なども一段と磨きがかかっているに違いない。
もう一つの話題は、バッハの「シャコンヌ」を演奏した時の楽器が、お師匠さんのNHK交響楽団の堀正文さんのストラディヴァリウスだったということ。ご存じのようにN響は現在ヨーロッパ・ツアー中で、ザルツブルク音楽祭にも参加している。尚佳さんは堀さんからストラドを預かり、留守中の管理をまかされているのだとか(毎日鳴らさないとならないから)。演奏会でも使って良いと言われていて、この日、「シャコンヌ」で使ってみたということである。ただし、楽器本来の音を出すのは、慣れないと難しいらしい。とはいえ、これは是非、聴いてみたかった。良くも悪くも、聴く方も何事も体験なので。
アンコールはメンデルスゾーンの「歌の翼に」とクライスラーの「中国の太鼓」だった由。体力も十分に身についたようだ。
尚佳さんはこの1年間ロンドンでも随分活躍されたようである。王立音楽大学内(RCM)でのコンチェルト・コンペティション(すべての楽器が対象)で優勝し、記念のコンサートではRCM Philharmonicとの共演でチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を演奏。室内楽の方でもカルテットを結成し、RCMのカルテット・コンペティションでも優勝(これは本人も意外だったとか)。その後いろいろと演奏する機会も増えているようである。このままいけば、首席で卒業しそうである。
ヨーロッパに留学すると、世界中から集まってきた演奏家たちとの交流ができる。言葉や文化・宗教、音楽に対する環境も考え方も異なる音楽家たちとの交流から得られる経験には無限の価値がある。ヨーロッパの伝統的な音楽に直接触れることも大切だろうし、また世界中に目と耳が開くことができるのも重要に要素だ。尚佳さんは、今後どのような音楽家に育っていくのだろうか。私たちは遠くから見守ることしかできないが、来年の夏こそは、もっともっと充実した音楽を聴かせていただけるのではないかと確信している。
これはせっかくのコンサートをききに行けなかった者からのエール(というか愚痴?)である。
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