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Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

1/3(土)NHKニューイヤーオペラコンサート2015年/今年の幕開けはオペラ・アリアの名曲から

2015年01月03日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
第58回 NHKニューイヤーオペラコンサート 2015
~恋する喜び 恋する哀しみ~


2015年1月3日(土)19:00~ NHKホール B席 3階 L1列 16番 5,000円
指  揮: 広上淳一
管 弦 楽: 東京フィルハーモニー交響楽団
合  唱: 新国立劇場合唱団、二期会合唱団、藤原歌劇団合唱部
ソプラノ: 臼木あい、小川里美、幸田浩子、砂川涼子、田村麻子、中嶋彰子、森麻季
メゾ・ソプラノ: 鳥木弥生、林美智子、藤村実穂子、山下牧子
カウンター・テナー: 藤木大地
テノール: 錦織 健、西村 悟、福井 敬、村上敏明、望月哲也、山本耕平、与儀 巧
バリトン: 上江隼人、堀内康雄
バ  ス: 妻屋秀和
《特別ゲスト》
指  揮: 鈴木雅明
管 弦 楽: バッハ・コレギウム・ジャパン
フラメンコ: アルテ イ ソレラ舞踊団
《司会》
石丸幹二、靍橋美鈴アナウンサー
【曲目】
ムソルグスキー: 歌劇『ボリス・ゴドノフ』から「ボリス皇帝に栄光あれ」(合唱)
プッチーニ: 歌劇『トゥーランドット』から「誰も寝てはならぬ」(西村 悟/合唱)
レハール: 喜歌劇『ジュディッタ』から「熱き口づけ」(中嶋彰子/アルテ イ ソレラ舞踊団)
プッチーニ: 歌劇『ボエーム』から「冷たい手を」(望月哲也)
プッチーニ: 歌劇『ボエーム』から「私の名はミミ」(砂川涼子)
グノー: 歌劇『ファウスト』から「金の子牛の歌」(妻屋秀和/合唱)
グノー: 歌劇『ファウスト』から三重唱「逃げろ、逃げろ」(妻屋秀和/小川里美/山本耕平/合唱)
ヘンデル: 歌劇『リナルド』から「前奏曲」(バッハ・コレギウム・ジャパン)
ヘンデル: 歌劇『リナルド』から「風よ、旋風よ」(藤木大地/バッハ・コレギウム・ジャパン)
ヘンデル: 歌劇『リナルド』から「涙の流れるままに」(臼木あい/バッハ・コレギウム・ジャパン)
ヘンデル: 歌劇『リナルド』から「私は戦いを挑み」(山下牧子バッハ・コレギウム・ジャパン)
レオンカヴァッロ: 歌劇『道化師』から「鐘の合唱」(合唱)
レオンカヴァッロ: 歌劇『道化師』から「衣装をつけろ」(村上敏明)
マスカーニ: 歌劇『カヴァレリア・ルスティカーナ』から乾杯の歌「酒をたたえて」(与儀 巧/鳥木弥生/合唱)
バーバー: 歌劇『ヴァネッサ』から「冬はすぐそこまで」(林 美智子)
ストラヴィンスキー: 歌劇『道楽者のなりゆき』から「夜よ、静かに」(田村麻子)
ヴェルディ: 歌劇『リゴレット』から「慕わしい人の名は」(幸田浩子)
ヴェルディ: 歌劇『リゴレット』から女心の歌「風の中の羽のように」(福井 敬)
ヴェルディ: 歌劇『リゴレット』から四重唱「美しい乙女よ」(幸田浩子/福井 敬/上江隼人/鳥木弥生)
ベッリーニ: 歌劇『清教徒』から「命をかけて」(堀内康雄)
マイヤベーア: 歌劇『ディノラ』から「影の歌」(森 麻季)
ドニゼッティ: 歌劇『愛の妙薬』から「人知れぬ涙」(錦織 健)
チャイコフスキー: 歌劇『ジャンヌ・ダルク』から「森よ、さようなら」(藤村実穂子)
ヴェルディ: 歌劇『椿姫』から乾杯の歌「友よ、さあ飲みあかそう」(全員/合唱)

 毎年恒例、1月3日の夜は「NHKニューイヤーオペラコンサート」である。別名「オペラ界の紅白歌合戦」。毎年、これを聴くところから1年間のコンサート・スケジュールが始まるのだ。今日は天気は良かったが、いささか寒い。わざわざ出かけて行かなくてもNHK-Eテレで生中継放送があるのに・・・・とも思うのだが、まあ、ホールでなけれは味わえない雰囲気もあるし、良い点も悪い点もある。テレビの方は録画しておけばいつでも鑑賞できるので、本ステージならではの楽しみもあるのだ。
 とはいうものの、全国で●万人の人がテレビですでに観ているものを改めてレビューしても取り立てて得るところも多くはなさそうである。しかも上記の通り、出演者も多いし(歌手だけで22名)、曲も多い(24曲)。そこで演奏順に、ごく簡単に、気がついたことを述べることに留めたい。


上段左から、臼木あいさん、小川里美さん、幸田浩子さん、砂川涼子さん、田村麻子さん
2段目左から、中嶋彰子さん、森 麻季さん、鳥木弥生さん、林美智子さん、藤村実穂子さん
3段目左から、山下牧子さん、藤木大地さん、錦織 健さん、西村 悟さん、福井 敬さん
4段目左から、村上敏明さん、望月哲也さん、山本耕平さん、与儀 巧さん、上江隼人さん
5段目左から、堀内康雄さん、妻屋秀和さん、広上淳一さん、石丸幹二さん、鈴木雅明さん


 コンサートの幕開けは、ムソルグスキーの歌劇『ボリス・ゴドノフ』から「ボリス皇帝に栄光あれ」。ナマ放送なので、19時ジャストに演奏が始まった。日本を代表するオペラ上演団体である新国立劇場/二期会/藤原歌劇団からの選りすぐられた合唱団は、演技もできるし、オペラ向きのパンチのある合唱がうまい。

 続いて、プッチーニの歌劇『トゥーランドット』から「誰も寝てはならぬ」を新鋭、西村 悟さんが歌う。声が若い感じがする。ニューイヤーの定番は、福井 敬さんではなかった・・・。

 レハールの喜歌劇『ジュディッタ』から「熱き口づけ」は、オペレッタのベテラン、中嶋彰子。フラメンコの舞踊団を従えての貫禄の歌唱。やはり存在感が抜群で、華がある。

 プッチーニの歌劇『ボエーム』からは、「冷たい手を」を望月哲也が、「私の名はミミ」を砂川涼子さんが歌う。望月さんはノーブルな歌唱が魅力だが、ちょっと無理に声を出しているというか、歌い急いでいる印象だった。彼の実力はこんなものではないと思うが・・・・。砂川さんのミミは十八番。可憐で儚げな様子はあまりにもはまり役で、この役を歌うソプラノさんで彼女を超える人は今のところ思いつかない。

 グノーの歌劇『ファウスト』からは、「金の子牛の歌」を妻屋秀和さんが歌い、三重唱「逃げろ、逃げろ」では小川里美さんと山本耕平さんが加わった。妻屋さんの圧倒的な存在感と、下からせり上がってくるような力強いバスは世界クラスの一級品である。小川さんは今や完全に主役級のソプラノさんになった。しなやかで澄んだ美声とスラリとした立ち姿、爽やかな大人の色気があり、独特の存在感がある。これからも機会があれば積極的に聴きたいと思える歌手である。山本さんは今売り出し中のテノールだが、あっという間に主役級の役柄をいくつもこなして、今や二期会を牽引する若手の代表格になった。今日のメンバーの中に入っても憶することなく堂々たる歌いっぷりである。

 ここからは第2部となる。バロック・オペラの時代に遡り、ヘンデルの歌劇『リナルド』から4曲が採り上げられた。ピットに入っていた東京フィルは一旦撤収、ステージ上には鈴木雅明さんの指揮するバッハ・コレギウム・ジャパンが登場。古楽の演奏による演奏会形式のステージとなった。ヘンデルのオペラは、日本ではあまり観る機会が持てないので、たった4曲とはいえ、面白い体験となった。「前奏曲」は管弦楽のみ、ウィンドマシーンが嵐の雰囲気を盛り上げている。「風よ、旋風よ」はカウンターテナーとして今や独自の存在感を主張する藤木大地さんが歌う。古典派以降ではあまり出番のないカウンターテナーもバロックオペラには欠かせない存在。となれは、藤木さんの果たす役割はますます大きくなっていくことだろう。
 ソプラノの名曲としてお馴染みの「涙の流れるままに」は臼木あいさんが歌う。ゆったりしたテンポで管弦楽を伴奏に歌われると、リサイタルなどで聴くのとは違ったオペラの雰囲気が出て素敵である。古色たるサウンドに乗る臼木さんの透明感とともに突き抜けるような張りのある歌唱も、切々とした感情表現が見事だ。「私は戦いを挑み」は山下牧子さんが、安定した技巧と貫禄のある歌唱を聴かせてくれた。メゾ・ソプラノという位置づけから色々な役柄をこなす山下さんだが、実力は一級品である。

 再びピットには東京フィルが戻って来て第3部。ステージはヴェリズモ・オペラの世界へと変わる。
 まずはレオンカヴァッロの歌劇『道化師』から「鐘の合唱」。イタリア・オペラにお馴染みの群衆シーンだが、贅沢にも衣装を揃えて本物のオペラそのものの演出で、合唱団はかなり上手い。つづけて「衣装をつけろ」を藤原歌劇団のエース村上敏明さんが歌う。村上さんの声は硬質なイメージだが、苦悩と怒りを表すこの曲などは、力感溢れ、絞り出すような歌唱がピッタリである。
 続いてもうひとつのヴェリズモ・オペラの傑作、マスカーニの歌劇『カヴァレリア・ルスティカーナ』から乾杯の歌「酒をたたえてをテノールの与儀 巧さんの熱唱にメゾ・ソプラノの鳥木弥生さんと合唱が加わる。鳥木さんはほとんど歌がないのだが・・・。

 続いて、20世紀半ばの英語のオペラから。バーバーの歌劇『ヴァネッサ』から「冬はすぐそこまで」を林 美智子さんが歌う。林さんはニューイヤーオペラコンサートに11回連続出演だという。このオペラ自体をまったく知らなかったので、珍しい曲は嬉しい(さすがに毎年出演していると歌う曲がなくなってしまう?)。「英語」はオペラ(というよりはクラシック音楽全般において)の世界に漠然とした違和感をもたらす。非常に美しい旋律のアリアであったが、英語だとPOPSのように聞こえでしまいがち。まあ、聴く側の問題であるのだが。
 ストラヴィンスキーの歌劇『道楽者のなりゆき』から「夜よ、静かに」をニューヨーク在住の田村麻子さんが歌った。このオペラ自体は『放蕩児のなりゆき』などと呼ばれることもあり、そもそも邦題が定まっていないあたりからして知名度の低さを表している。以前、NHK-BSで放送されたのを観たことがあるくらいだ。1951年の初演、英語の歌唱である。田村さんを聴くのも初めて(だと思う)で、コメントは難しいが、クセのない声質で、技巧も声量も十分、素敵な歌手である。オペラの舞台で観てみたい、聴いてみたいと思った。

 続いてはヴェルディの名作、『リゴレット』から「慕わしい人の名は」、ジルダのアリアを幸田浩子さんが、相変わらず可憐な少女役が似合うキレイな声で、技巧的な部分もタップリと聴かせてくれた。高音も十分に出ていて、コロラトゥーラ・ソプラノの第一人者であることも間違いない。「風の中の羽のように」は福井 敬さんが。歌唱の方は抜群に上手いので、まったく素晴らしいのだが、福井さんのキャラクタを知っていると女たらしのチョイ悪男のイメージが出にくい・・・。有名な四重唱「美しい乙女よ」では、バリトンの上江隼人さんとメゾ・ソプラノの鳥木弥生さんが加わった。上江さんはここでは脇役になってしまいあまり目立てない。鳥木さんは今回はメゾの役柄を使い回しされてしまっているようで、ちょっともったいない。脇役を演ずることが多く、何でもこなしてしまう人だが、とても華があり、歌唱も演技も上手い。是非、主役でステージに立って欲しい人である。

 ここからは、同じ恋でも「失恋」を歌った曲を。まず、ベッリーニの歌劇『清教徒』から「命をかけて」を堀内康雄さんが。朗々と歌うバリトンのベルカントも良いものだ。とにかくイタリア・オペラのバリトンでは日本一、といって差し支えない人である。続いて、マイヤベーアの歌劇『ディノラ』から「影の歌」をブロンド美女に変身した(?)森 麻季さんが軽快に歌う。こちらもコロラトゥーラ・ソプラノの第一人者として、超絶技巧の名曲も軽々とこなす。やはり麻季さん周囲にはスターのオーラがいっぱいだ。次は、ドニゼッティの歌劇『愛の妙薬』からメイアリア「人知れぬ涙」を錦織 健さんが。ちょっと年齢不詳のところがあるが、声は相変わらず若く伸びのあるテノールは素晴らしい。女性ファンからBravo!が飛ぶ。

 さて、最後の曲目は、チャイコフスキーの歌劇『ジャンヌ・ダルク』から「森よ、さようなら」という、かなり珍しい曲を藤村実穂子さんが歌う。ジャンヌ・ダルクの役柄だからだろうか、今日はいつもの藤色のドレスではなく、赤系統であった。さすがに世界クラスの歌唱は、表現力が非常に豊かである。豊かといっても、繊細な感情表現から魂の叫びのような強い表現まで幅広いという意味で、歌唱そのものは冷静沈着、正確な技巧に裏付けられた、正統派のオペラ歌唱である。

 本編が修了して、いわばアンコール扱いの最後のシメの曲は、出演者全員で、ヴェルディの歌劇『椿姫』から乾杯の歌「友よ、さあ飲みあかそう」。ひとり一節ずつ交代で歌うわけだが、歌う順番とか、その辺に業界の力関係がチラチラ垣間見えたりして・・・・。まあ、うがった見方をしなくても、ひとり一節ずつ歌うというスタイルは、意外に実力が(あるいはその違いが)判りやすく見えてしまったりもする。油断できない場面なのだ。今日は、誰がどうだったとかは敢えて言わないが、最後の全員参加の曲は、毎年なかなか面白いのである。

 さて今年の幕開けとなる「NHKニューイヤーオペラコンサート」であるが、総括してみると、意外に面白くなかったような気がする。別に誰が下手だったとかそういう意味ではない。いわゆる、マンネリというやつだろう。テーマを決めて曲を選ぶ。出演者はお馴染みの人たちに若干の新登場組がいる。舞台装置を駆使して本番のオペラさながらに構成する曲もあれば、コンサート形式のようにステージ衣装で登場してスポットライトを浴びて歌う人もいる。第2部(中間部)ではちょっと趣向を変えてみる。最後は「乾杯の歌」・・・・。まったく、「オペラ界の紅白歌合戦」なのである。
 もちろん、こういうスタイルの方が良いという人も多いと思うので、あくまで個人的な感想の範囲内。別にNHKを批判するつもりもないが・・・・。しかしながら、豪華な出演者陣と舞台装置や衣装まで揃えたりもするのなら、別の方法論もあるのではないか、などと考えてしまう。たとえば、前半と後半で1時間弱に短縮したオペラ作品を2本立てで上演してしまうとか。今回の『道化師』と『カヴァレリア・ルスティカーナ』などは実際にできそうである。何しろお正月に全国にナマ放送しているのだから、もとオペラを観る機会の少ない人たちに、もっと本物っぽいオペラを見てもらうというのはどうだろうか。そうでもしないと、「オペラっていうのも紅白歌合戦とあまり変わらないんだねェ」などと田舎のおばあちゃんに思われてしまうのではないかと、そんな心配をしてしまったのである。

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