読売日本交響楽団 第497回 定期演奏会
10月16日(土)18:00~ サントリーホール A席 1階 21列 8番 6,000円
指 揮: スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ
管弦楽: 読売日本交響楽団
【曲目】シューベルト: 交響曲第7番 ロ短調 D.759「未完成」
ブルックナー: 交響曲第7番 ホ長調 WAB.107《ノヴァーク版》
読売日本交響楽団の第497回定期演奏会に足を運んだのは、スクロヴァチェフスキさんのブルックナーをぜひとも聴きたいと思っていたからだ。昨日10/15の東京芸術劇場での特別演奏会と、本日の定期演奏会とは同じプログラムで、サントリー名曲シリーズには組まれていなかったので、そちらから振り替えてもらったのである。
コンサートの前半はシューベルトの「未完成」交響曲。プログラムの表記では最近の研究成果に従って「第7番」としているが、名盤を多く残しているレコード=CDでは、未だにほとんどが「第8番」表記なので、何となく落ち着かない…。「未完成」といえば、実は昔、コントラバスを弾いていたことがあり、第1楽章の序奏の動機を聴くたびに、演奏で苦労したことを思い出す。今日の「未完成」では,弦楽を小編成にしたために、キリッと引き締まった演奏になった。トロンボーン3を加えた2管編成とのバランスの取り方が絶妙だったのである。読響の何よりも良い点は弦楽の巧さだ。音が澄んでいて美しいばかりでなく、パワフルな演奏をしても破綻しないことだ。
第1楽章は、動機に続き、第1主題の弦美しさと抑制された木管が、シューベルトの哀愁を巧く表現していた。3拍子の舞曲のようなリズム感が若々しく感じられて、スクロヴァチェフスキさんの“若さ”が感じられた。提示部をリピートすることで、主要動機と二つの主題を強調し、展開部の変奏をだらけさせずにメリハリを効かせて演奏し、再現部につなぐ。
第2楽章は三部形式のロマンティックな緩徐楽章。ここでもやはり弦楽アンサンブルが美しくないと、曲が台無しになってしまうが、スクロヴァチェフスキさんの細やかなコントロールが行き届いた読響は、とても素晴らしい演奏。フルートやホルンの弱音が丁寧にコントロールされていて、弦楽とのバランスを絶妙なものにしていた。今日は席の位置が余り良くなかったこともあるが(1階21列は頭上に2階がかぶっていて音が弱まってしまう)、曲全体がこぢんまりとして感じられた。迫力は感じられないが、室内楽的なアンサンブルの美しさは十分に堪能することができた、とてもBravo!な演奏だったと思う。
休憩後のメイン曲はブルックナーの交響曲第7番ホ長調。歴史的な実績から見ても、現在の人気から見ても、ブルックナーの最高傑作であることは間違いない。演奏される機会多く、今年は8/4にファビオ・ルイジさんの指揮、PMFオーケストラでこの曲を聴いている。PMFでは演奏技術的に課題を残したカタチになってしまったが、やはりこの曲の演奏難度は高いようだ。とくに金管セクションが難しい。今日の演奏はどうだったのだろう。
全体を通して聴き終えてからの結論から言うと、まず、スクロヴァチェフスキさんの指揮は素晴らしい。年齢から想像しうるに、もっと枯れた感じになると思っていたのだが、いやいやとんでもない。若さと熱情に満ちた快演であった。各楽章のテンポの取り方も、わずかに早めのスタンダートといった感じで、だらけたところかど微塵もなく、推進力があり生き生きとした楽曲解釈であったと思う。とくに個性的な解釈を試みるようなこともなく、極めてスタンダードで聴きやすい一方、力強さも十分に備わっていて、この荘厳な大曲を堂々たる演奏であったといえる。オーケストラのコントロールも見事で、分厚い弦楽器と、木管・金管の音量のバランスが良かった。後ろの方の席で聴いていたので、オーケストラ全体の音の固まりを捉えることができ、また視覚的にも各パートを見渡せたので、奏者の音を誰にも遮られることなく聴くことができたのだが、バランスという点では理想的な演奏だったと言える。
第1楽章は,まずまず順調。前述のように弦楽アンサンブルが美しい読響ならではの清涼感がある。トランペットがやや飛び出しがちだったが、まあ許容範囲だろう。
第2楽章のアダージョは、さらにブルックナーらしい荘厳な祈りにも感じられる曲想。主題を奏でる弦楽の繊細な透明感と、力感溢れる厚みのある音も良い。弦に絡む木管の自然さも爽やかだ。全合奏での盛り上がり、クライマックスのシンバル1発も決まった。ところがその後のワーグナーチューバ4本が音程が不安定で、不協和音を…。何とも居心地の悪い不快感を伴う演奏。ワーグナーチューバは演奏も難しく、演奏機会も少ないだけに余計に大変だとは思うが、やはりここは「荘厳に」決めて欲しかった。
第3楽章は、初めの主題でトランペットが音をはずしてしまったのが惜しい。以後、金管セクションが緊張気味(?) で精彩を欠いてしまう。とくにトランペットは浮いてしまって音が飛びだしてしまっていた。
第4楽章はやや早めのテンポで快適に飛ばして行く。ここでも弦と木管は良いのだが、金管が落ち着かず…。テンポを落としてからの終盤の盛り上がりでは弦楽器が頑張り、豪快にフィナーレとなった。
4つの楽章を通じてみると、弦楽はフルサイズのオーケストラの中で全く負けていないし、むしろ繊細とも言えるほど美しいアンサンブルをピタリと決めて、見事だった。木管群はオーケストラの中にうまく溶け込み、森を吹き抜ける風のような、自然を感じさせる、むしろ控えめな巧さが光っていた。問題は金管で、音を外したり飛び出したりと暴走しがちなトランペットと、音程が悪いワーグナーチューバが、他パートの足を引っ張ったカタチ。ホルンも時々危なっかしくなったりしたが、トロンボーンとチューバはしっかりと低音を支えていた。
今日のブルックナーの第7番は、とにかくスクロヴァチェフスキさんの指揮に尽きる。年齢を考えると驚異的なエネルギーを放出した渾身の名演だったといえる。細部に至るまでコントロールされているにもかかわらず、ダイナミックで堂々たる押し出し。しかも若々しく,情熱的な演奏だった。その素晴らしさは、金管セクションのミスを補って余りあるもので、聴衆の賛美も最大級。会場全体がBravo!の連発で大いに盛り上がったのである。拍手がいつまでも鳴り止まないので、スクロヴァチェフスキさん自らがコンマスさんを連れ帰ってしまう一幕も。それでも鳴り止まない拍手に、オーケストラのメンバーが退出した後のステージに戻ってきて、スクロヴァチェフスキさんは聴衆に応えていた。その表情がちょっぴり誇らしげで…Bravo!!
終演後、スクロヴァチェフスキさんが舞台裏でサイン会を行ってくれた。CD購入もせずに図々しくもあったのだが、プログラムにサインしていただいた。もうひとつの画像は友人からの提供で、本日の演目のシューベルトの「未完成」のスコアの表紙にサインをいただいたもの。これは記念になりますね。
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10月16日(土)18:00~ サントリーホール A席 1階 21列 8番 6,000円
指 揮: スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ
管弦楽: 読売日本交響楽団
【曲目】シューベルト: 交響曲第7番 ロ短調 D.759「未完成」
ブルックナー: 交響曲第7番 ホ長調 WAB.107《ノヴァーク版》
読売日本交響楽団の第497回定期演奏会に足を運んだのは、スクロヴァチェフスキさんのブルックナーをぜひとも聴きたいと思っていたからだ。昨日10/15の東京芸術劇場での特別演奏会と、本日の定期演奏会とは同じプログラムで、サントリー名曲シリーズには組まれていなかったので、そちらから振り替えてもらったのである。
コンサートの前半はシューベルトの「未完成」交響曲。プログラムの表記では最近の研究成果に従って「第7番」としているが、名盤を多く残しているレコード=CDでは、未だにほとんどが「第8番」表記なので、何となく落ち着かない…。「未完成」といえば、実は昔、コントラバスを弾いていたことがあり、第1楽章の序奏の動機を聴くたびに、演奏で苦労したことを思い出す。今日の「未完成」では,弦楽を小編成にしたために、キリッと引き締まった演奏になった。トロンボーン3を加えた2管編成とのバランスの取り方が絶妙だったのである。読響の何よりも良い点は弦楽の巧さだ。音が澄んでいて美しいばかりでなく、パワフルな演奏をしても破綻しないことだ。
第1楽章は、動機に続き、第1主題の弦美しさと抑制された木管が、シューベルトの哀愁を巧く表現していた。3拍子の舞曲のようなリズム感が若々しく感じられて、スクロヴァチェフスキさんの“若さ”が感じられた。提示部をリピートすることで、主要動機と二つの主題を強調し、展開部の変奏をだらけさせずにメリハリを効かせて演奏し、再現部につなぐ。
第2楽章は三部形式のロマンティックな緩徐楽章。ここでもやはり弦楽アンサンブルが美しくないと、曲が台無しになってしまうが、スクロヴァチェフスキさんの細やかなコントロールが行き届いた読響は、とても素晴らしい演奏。フルートやホルンの弱音が丁寧にコントロールされていて、弦楽とのバランスを絶妙なものにしていた。今日は席の位置が余り良くなかったこともあるが(1階21列は頭上に2階がかぶっていて音が弱まってしまう)、曲全体がこぢんまりとして感じられた。迫力は感じられないが、室内楽的なアンサンブルの美しさは十分に堪能することができた、とてもBravo!な演奏だったと思う。
休憩後のメイン曲はブルックナーの交響曲第7番ホ長調。歴史的な実績から見ても、現在の人気から見ても、ブルックナーの最高傑作であることは間違いない。演奏される機会多く、今年は8/4にファビオ・ルイジさんの指揮、PMFオーケストラでこの曲を聴いている。PMFでは演奏技術的に課題を残したカタチになってしまったが、やはりこの曲の演奏難度は高いようだ。とくに金管セクションが難しい。今日の演奏はどうだったのだろう。
全体を通して聴き終えてからの結論から言うと、まず、スクロヴァチェフスキさんの指揮は素晴らしい。年齢から想像しうるに、もっと枯れた感じになると思っていたのだが、いやいやとんでもない。若さと熱情に満ちた快演であった。各楽章のテンポの取り方も、わずかに早めのスタンダートといった感じで、だらけたところかど微塵もなく、推進力があり生き生きとした楽曲解釈であったと思う。とくに個性的な解釈を試みるようなこともなく、極めてスタンダードで聴きやすい一方、力強さも十分に備わっていて、この荘厳な大曲を堂々たる演奏であったといえる。オーケストラのコントロールも見事で、分厚い弦楽器と、木管・金管の音量のバランスが良かった。後ろの方の席で聴いていたので、オーケストラ全体の音の固まりを捉えることができ、また視覚的にも各パートを見渡せたので、奏者の音を誰にも遮られることなく聴くことができたのだが、バランスという点では理想的な演奏だったと言える。
第1楽章は,まずまず順調。前述のように弦楽アンサンブルが美しい読響ならではの清涼感がある。トランペットがやや飛び出しがちだったが、まあ許容範囲だろう。
第2楽章のアダージョは、さらにブルックナーらしい荘厳な祈りにも感じられる曲想。主題を奏でる弦楽の繊細な透明感と、力感溢れる厚みのある音も良い。弦に絡む木管の自然さも爽やかだ。全合奏での盛り上がり、クライマックスのシンバル1発も決まった。ところがその後のワーグナーチューバ4本が音程が不安定で、不協和音を…。何とも居心地の悪い不快感を伴う演奏。ワーグナーチューバは演奏も難しく、演奏機会も少ないだけに余計に大変だとは思うが、やはりここは「荘厳に」決めて欲しかった。
第3楽章は、初めの主題でトランペットが音をはずしてしまったのが惜しい。以後、金管セクションが緊張気味(?) で精彩を欠いてしまう。とくにトランペットは浮いてしまって音が飛びだしてしまっていた。
第4楽章はやや早めのテンポで快適に飛ばして行く。ここでも弦と木管は良いのだが、金管が落ち着かず…。テンポを落としてからの終盤の盛り上がりでは弦楽器が頑張り、豪快にフィナーレとなった。
4つの楽章を通じてみると、弦楽はフルサイズのオーケストラの中で全く負けていないし、むしろ繊細とも言えるほど美しいアンサンブルをピタリと決めて、見事だった。木管群はオーケストラの中にうまく溶け込み、森を吹き抜ける風のような、自然を感じさせる、むしろ控えめな巧さが光っていた。問題は金管で、音を外したり飛び出したりと暴走しがちなトランペットと、音程が悪いワーグナーチューバが、他パートの足を引っ張ったカタチ。ホルンも時々危なっかしくなったりしたが、トロンボーンとチューバはしっかりと低音を支えていた。
今日のブルックナーの第7番は、とにかくスクロヴァチェフスキさんの指揮に尽きる。年齢を考えると驚異的なエネルギーを放出した渾身の名演だったといえる。細部に至るまでコントロールされているにもかかわらず、ダイナミックで堂々たる押し出し。しかも若々しく,情熱的な演奏だった。その素晴らしさは、金管セクションのミスを補って余りあるもので、聴衆の賛美も最大級。会場全体がBravo!の連発で大いに盛り上がったのである。拍手がいつまでも鳴り止まないので、スクロヴァチェフスキさん自らがコンマスさんを連れ帰ってしまう一幕も。それでも鳴り止まない拍手に、オーケストラのメンバーが退出した後のステージに戻ってきて、スクロヴァチェフスキさんは聴衆に応えていた。その表情がちょっぴり誇らしげで…Bravo!!
終演後、スクロヴァチェフスキさんが舞台裏でサイン会を行ってくれた。CD購入もせずに図々しくもあったのだが、プログラムにサインしていただいた。もうひとつの画像は友人からの提供で、本日の演目のシューベルトの「未完成」のスコアの表紙にサインをいただいたもの。これは記念になりますね。
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