【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》

古都、薬を売る老翁(壷公)がいた。翁は日暮に壺の中に躍り入る。壺の中は天地、日月があり、宮殿・楼閣は荘厳であった・・・・

未知なる深海へ 高井 研 =080=

2018-08-25 06:12:43 | 浪漫紀行・漫遊之譜

〇◎ 私が知りたいのは、地球の生命の限界です” ◎〇

= 海洋研究開発機構(JAMSTEC)及びナショナルジオグラフィック記載文より転載・補講 =

 青春を深海に掛けて=高井研=  

 第5話  地球微生物学よこんにちは 

◇◆  海底下生命、そらウチでもやらなあかんやろ! =3/3=  ◆◇

1999年の春、ボクと妻は、西部劇映画でよく見るような、砂漠の風で道をコロコロ転がるトゲトゲ草が本当にコロコロしている町、「殺伐」としているのに「豊穣」と名付けられた皮肉ばっちりの町、リッチランドにやってきた。

一気に話をまとめてしまうと、ボクはその砂漠の研究所で、深海熱水で鍛えた分子生態学的研究手法や微生物ハンティング技を使って、ニューメキシコ州のジュラ紀から白亜紀にかけての堆積層中の地下水微生物群集や南アフリカの超深部金鉱環境の微生物群集の研究をドシドシ進めた。そしてアメリカ人がびっくりするくらいの早業で、1年の滞在期間中に3報の論文を書いた。

実は、このパシフィックノースウエスト国立研究所での1年間の滞在は、博士課程1年生の時留学したワシントン大学海洋学部でボクが感じたキラキラした青春の心象や想い出といった、ココロの内面に届く大きな影響のようなモノをほとんど感じることはなかった。

おそらくそれは、研究者の卵である学生として留学した前回とプロフェッショナルな研究者として滞在した今回では、ボクの立場が大きく違っていることが影響しているのだろう。また、文化レベルの高くない砂漠の田舎街が、雅のシチーボーイだったボクのココロのヒダヒダに訴えるものではなかったことも事実だった。

確かにこのパシフィックノースウエスト国立研究所での1年間の研究生活は、人間タカイケンには大きな影響を与えなかったかもしれない。

でもパシフィックノースウエスト国立研究所での研究生活は、それまで「深海熱水などの極限環境における微生物やその生態」の研究のみに囚われていたボクが、より大きな研究観や視野を開花させるキッカケとなった。つまり、現時点の局所的な環境―微生物の相互作用ではなく、地質学的時間スケールと地球規模での空間スケールの流れの中で環境―微生物の相互作用を見られるようになったんだ。

言ってみれば、それまでのボクはある意味、由緒正しい「伝統と格式の微生物学」の学徒に過ぎなかった。それが、このパシフィックノースウエスト国立研究所での研究生活を通じて、歓楽街によくある「花嫁大学」みたいな名前のお店のようにイカガワシさ満載だけど、「地球微生物学」というなんとなく魅力的なエネルギーに満ちあふれた新しい研究分野の虜になったような気がするんだ。

虜になった理由は、ここでの研究がすべて、多彩な研究分野が連携して取り組む学際研究プロジェクトだったこと、大きな時間・空間スケールを持った対象にアプローチしていたこと、鍵となる地下の水循環などのメカニズムが想像力を大いに必要としたこと、そしてそれぞれの分野の研究者が互いの専門領域に深く踏み込んで議論を行うことが当たり前だったこと、かもしれない。

激しい議論や長い試行錯誤や苦悶の闘いの末、ある時、あらゆる分野のデータが一つの大きなクリアな解釈や像にストンと落ちる瞬間がある。

その瞬間、まるでボクは「この世界を完全に支配した」というようなたまらない征服感と知的感動を味わうのだ。その感動は単独の研究分野だけでは絶対到達不可能な領域であり、その領域に迫るための研究の心構えや思考こそが「地球微生物学」の真髄と言ってもいい。

ボクは2回目のアメリカ武者修行を終えた後、自分を地球微生物学者と名乗るようになった。

=  「海は生命の母」、生命の謎を解く鍵とは何か 2/2  =

──  なぜ、熱水と生命の誕生が関係するのですか。

高井研: 有機物が生物となり、さらにそこにもたらされるエネルギーによって、生物の活動の持続性が成立するわけです。生命がそんな単純なルールで生まれるはずはない、生命のメカニズムはもっとはるかに複雑なはずだ、というわけです。ならば実際に世界中の深海を回って「こういう岩石がある場所に熱水があると、こういう成分が増える。するとこういう生物群が誕生する」ということを実証しようとしたのが私たちの研究です。

──  実証には成功したのですか。

高井研: 成功しました。複雑だと思われていた生物の成り立ちを決めるルールが、実は非常にシンプルな物理化学法則に従っているということが分かりました。頭で考えた証明ではなくて、数々の現場を回って、サンプルを徹底的に調査して明らかになった事実ですから、実証結果には自信を持っています。

ただし、実証できたのはあくまで大枠のルールです。生命を生み出す最も重要な法則が「石+水+熱」ではあっても、それ以外に生命の在り方を決定する様々な変数があります。その変数を明らかにし、それぞれの変数のプライオリティを明らかにしないと、生命の誕生を説明したことにはなりません。そこにまさに今、取り組んでいるところです。

──  「深海の微生物を調べることで、生命の起源に迫る」という研究を続けられていますが、具体的にどのような研究なのでしょうか。

高井研: 地球上ではあらゆるところに生物がはびこっているわけですが、生物が全くいない場所もあります。生物が生きている場所とそうでない場所の境目、それがすなわち生命圏の限界です。そこを調べれば、「生命って何?」という難問に対する一つの答えが出るはず──。そう考えて研究を続けています。その境界付近に位置している生命圏、それが地球最深部の深海ということです。

──  それで「しんかい6500」などの潜水調査船で世界中の深海を調査しているわけですね。その境界領域には、生命が誕生した頃の太古の地球の環境が残っているのでしょうか。

高井研: 地球に海ができたのはざっと44億年前ですが、その頃の環境がそのまま残っているわけではありません。しかし、海底から熱水が沸くという現象自体は、恐らく44億年間ずっと続いてきたと考えられます。その熱水噴出孔環境で生命は誕生した。そう私たちは考えています。

──  なぜ、熱水と生命の誕生が関係するのですか。

高井研: 石と水と熱。この3つの要素によって生命は生まれると考えられるからです。岩石から出てくる成分と水の成分と熱の作用が合わさることによって、有機物が生物となり、さらにそこにもたらされるエネルギーによって、生物の活動の持続性が成立するわけです。その3つがそろっているのが、深海の熱水噴出孔環境ということです。

もっともこの考え方は、物理学的、化学的には納得のいくものではあっても、生物学の側からは物言いがついていました。生命がそんな単純なルールで生まれるはずはない、生命のメカニズムはもっとはるかに複雑なはずだ、というわけです。ならば実際に世界中の深海を回って「こういう岩石がある場所に熱水があると、こういう成分が増える。するとこういう生物群が誕生する」ということを実証しようとしたのが私たちの研究です。

──  実証には成功したのですか。

高井研: 成功しました。複雑だと思われていた生物の成り立ちを決めるルールが、実は非常にシンプルな物理化学法則に従っているということが分かりました。頭で考えた証明ではなくて、数々の現場を回って、サンプルを徹底的に調査して明らかになった事実ですから、実証結果には自信を持っています。

ただし、実証できたのはあくまで大枠のルールです。生命を生み出す最も重要な法則が「石+水+熱」ではあっても、それ以外に生命の在り方を決定する様々な変数があります。その変数を明らかにし、それぞれの変数のプライオリティを明らかにしないと、生命の誕生を説明したことにはなりません。そこにまさに今、取り組んでいるところです。

・・・・・・・・つづく・・・・・・・

動画 : プレート境界断層への長期孔内温度計の設置に成功

 

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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