俺には、金がない。
私だって、お金がない。
両方ともお金がないのは、ダメだ。
夜、犬を散歩させながら、私達は、笑った。
笑いながら、私は、別のことを考えていた。
この会話は、まるでプロポーズにでもなりそうな話だなぁって。
実際、彼にはそんなつもりは毛頭ないにしても、
そんな勘違いをしてみたかった。
勘違いだって、わかってるから、安心して。
でも大丈夫。
俺は、天国にたくさん貯金がある。
それは、徳を積むってことよね!
それなら私にも、貯金がある。
だから、大丈夫。
お金がないもの同士が結婚したら、余計に悲惨だけど、
ちがう意味で、貯金があるから、きっと大丈夫。
つまり、そんな話。
ほら、プロポーズみたい聞こえるのは、私だけ?
夢の話ね。
もしもそうなったら、の話。
ここは、バーチャルな世界だから…
でも、そんな話をしたこと自体、
それだけで幸せ。
彼とは、もう電話を切ったのに、
その余韻が私にはずっと残っていた。