私と彼の秘密 今思うこと

彼とのLINEは、いつか消した方がいい。
それは、残された人のために…



最後の身支度

2022-09-05 23:30:00 | 日記

長女の結婚式で思った。

娘が、父親と式場に入ってくる。

大勢の温かい祝福の拍手が起こった。

私は、そこで娘を挟んで、一緒に立って、

3人揃って深々とお辞儀する。

ああ、隣にいる子は、私の娘なんだ。

そんな気持ちだった。

早くに家を出て、そのまま帰らずに、この日を迎えたけど、

彼女は紛れもなく、今でも私の娘。

そしてゆっくりと体を起こすと、

今度は、娘と私が、向かい合う。

彼女の表情は、今まで見た中で、1番幸せそうだった。

私は、思わず、娘の頭を撫でた。

あなたは、いい子でしたって。ありがとうって。

子供の頃みたいに…。

そして、花嫁の最後の身支度を、してあげた。

娘のくちびるに、仕上げの紅を指す。

私が、自分の娘にしてあげる最後の役目。

色んな思いが込み上げてくる。

優しく、そっと、くちびるに筆を添わしながら、

母は、ここでは、泣けないと、自分に言い聞かせていた。

さあ、出来たよ。行っておいで。

私は、昔と同じように、「行ってらっしゃい」と、笑って彼女の背中を押した。

幸せになってね。




娘は、父親のエスコートで、

お婿さんの待つ場所まで歩いたら、

やがて、父親からも離れて行った。




ここにいるすべての人が、立会人となり、

2人の婚姻は、完全に成立した。















私は今、犬の散歩をしながら、彼と共に夜道を歩いている。

私は、少し疲れていた。

彼も、疲れていた。

それでも、2人が見上げた空には月があって、

偶然、おなじ方向へ、歩いていることを知ったら、

そういうのって、いいね。と、笑い合った。

手を繋ごう。

それなら、いっそのこと、求め合いたい。





今夜の月は、眩しいほどに光っていたのに、

半分だけ。

私みたい。


私は、そんな風に思いながら、見えない方の月を見ていた。


そして、


今日の結婚式が、

今の私のように、彼女を苦しませるものになりませんように。

最後まで、二人が愛し会えますようにと、願った。