The Blueswalk の Blues&Jazz的日々

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ブルース・アンソロジー Vol.10

2010-05-09 11:24:00 | Blues

「Piano Blues 2」
~ピアノ・ブルース 2~                                              By The Blueswalk

 前回のピアノ・ブルース・オムニバス盤と同じデザイン(写真)であるが、内容がまったく異なるので、ついでに紹介したい。このピアノ弾きの写真はブルースの本などにもよく出てきて有名であるが、誰の手だろう? サニーランド・スリムと推測しているがどうだろう。
 チェス・レコードのピアニストといえば、サニーランド・スリムやメンフィス・スリムが真っ先に思い浮かぶわけだが、この二人以外にも多くの優秀な人材が居たのである。ただ、マディ・ウォーターズやハウリン・ウルフを筆頭にしたギタリストが主流であったことはチェス・レコードに限らず、ブルースの世界では致し方ない事実であった。そんなチェス・レコードのピアニスト4人の演奏を集めたこのオムニバス盤『チェス・ブルース・ピアノ・グレイツ』は貴重な演奏集である。2人のユニークなピアニスト《エディ・ボイド》、《ウィリー・メイボーン》を大きくフューチャーしているからである。
 《エディ・ボイド》といえば、何といっても“ファイヴ・ロング・イヤーズ”の大ヒットでその名が知られている。1952年にR&BチャートのNo.1ヒットとなったこの曲は、B.B.キングやマディ・ウォーターズ、ジョン・リー・フッカーや白人ブルース・ロッカーたちの多くにカバーされ、ブルースのスタンダードとなっている。そのエディ・ボイドが20曲と代表曲満載で、もちろんもうひとつの有名曲“サード・ディグリー”も入っており、そのユニークなボーカルとともにエディ・ボイドを知る上で大変有意義である。ただ、彼の場合はピアニストというよりボーカリストとしての評価が大きいと思われるので、そういった気分で楽しんだらいいと思う。
 《ウィリー・メイボーン》もこれまた、ブルース界ではワン・アンド・オンリーなピアニスト兼ボーカリストである。こちらも、1952年にR&Bチャートで8週間No.1ヒットとなった、“アイ・ドント・ノウ”を引っさげての登場である。ちょっと、ひょうきんというかコミカルなその歌い方は一度聴いたら忘れられないものを持っている。本格的なブルース・ボーカルを望む人には少し飽き足りないかもしれないが、はまったら抜け出せないエンターティナー的要素を待った、ブルースの枠を超えた人である。そのボーカルの特徴はストップ・タイムによる間の表現ということになろう。ただ、ワンパターンのストップ・タイム曲が多いのであるが、少ないながら本格的なブルース“ウォリー・ブルース”などを聴くと、単なるおちゃらけブルース・マンではなかったことに気づくはずだ。
 《オーティス・スパン》はブルース・ピアニストとしては最も人気と実力を兼ね備えたビッグ・アーティストである。ただ、チェス・レコードにあっては、マディ・ウォーターズ・バンドのピアニストとして専念したこともあって、リーダー曲が殆どないので、ここに収められた4曲は貴重である。オーティス・スパンの最大の強みは、他人のバックに回ったときのリズムキーピングとそこかしこに見せる鋭い閃きのパッシングであるといえるだろう。その辺の雄姿はアメリカン・フォーク・ブルース・フェスティヴァルのDVDで堪能することが出来る。
 このCDで最大のサプライズは《ラファイエット・リーク》の登場だろう。たった3曲であるが、これまた涙が出るぐらいすばらしい演奏である。そのピアノ・テクニック、フィーリングは他の誰も真似の出来ないものであろう。リークは基本的にはブギ・ウギ・ピアニストである。“スロー・リーク”は名刺代わりの一発というやつだ。スローで牧歌的でいうことなし。続く2曲はライヴ音源である。ウィリー・ディクソンのベースとリークのピアノの間合いとテンポのよさに加えて、躍動感のあるリークのブギ・ウギ・ピアノにはそこいらのワン・パターンのブギ・ウギ・ピアニストとは一線を画する芸術性が横溢しているのである。9分とか6分の長尺な演奏で、ベース・ソロなどもあるが、まったく飽きさせない、時間を忘れさせる快演である。



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