マヌケ便り

テレビ番組リサーチ会社の代表をしています。

飛び出し

2006-04-27 23:15:47 | Weblog
 オフィスのある六本木から自宅まで帰宅する途中のことだ。夜の11時頃のことである。私は246(青山通り)を車で走っていた。ちょうど渋谷の歩道橋のある交差点のところまで差し掛かった時に携帯電話が鳴った。メールの着信音だ。前方の信号は黄色に変わったところだ。普段、黄色なら私的にはGOだ。だが、メールの内容が気になってブレーキを踏んだ。…と、突然、人が飛び出して来た。

 その飛び出して来た人は、私の車の前方3メートルくらいのところで倒れ込んでいる。『私は轢いていない』、『私の車にはぶつかっていない』、『私はちゃんと停止した』などと自分に言い聞かせながら車から降り、その飛び出してきた人にそっと近づき様子を伺った。

 初老の男性だった。ピクリとも動いてはいないのだが、小さな呻き声を発し耳からは血が流れている。鼻を突くようなアルコールの臭いもした。「ヤバッ」とつい口から言葉が漏れた。

 周りを見渡した。既にかなりの人が集まっていた。その中の数人は既に携帯電話で救急車を呼んでいるようだった。「今、救急車を呼びましたから…」私に向かって声をかけた人がいた。「すみません」何故か私はこう言ってその人にペコリと頭を下げていた。

 私の車の後方からはクラクションが鳴っている。直ぐに車に戻りハザードランプをつけ、後続車には「事故なのですみません」と謝った。既に私は事故の当事者になってしまっているのだ。マヌケな話しである。

 倒れている人の周りには車道までおりて見ている野次馬でいっぱいになっていた。しばらくして救急車より先にパトカーが着いた。3人の警察官がパトカーから降り、その中の一人が、その状況を見て「誰が轢いたの?目撃した人は?」と少し声を荒げて叫んでいる。

 野次馬は、ほぼ一斉に私の方を見た。指まで指している人もいる。警察官がツカツカと私の方にやってきて「どうしました?」と言うので、私はその一部始終を伝え、「他の人にも聞いてみて下さい。同様の事を言うはずですから」と言うと、その警察官は他に目撃した人からも状況を聞いてまわった。

 ほどなくして救急車もやってきた。救急隊員はその倒れ込んでいる人に何やら言葉をかけているようだった。その間私はボーッとしてその様子を眺めていた。あとは迅速だった。その人をタンカに乗せ救急車の中に運び込むと、またサイレンを鳴らして走り出していった。

 そしてまた、警察官が私のところにやってきた。「イヤー驚いたでしょう?まさか空から人が降ってくるとは思わないものね?」私は「はあ」と言ったつもりだったが、声にならないくらいに脱力していたので頷くだけだった。

 初老の男性が酔っぱらって歩道橋から転落したと言うのが事の真相だ。正確には『飛び出し』とは言わないのだろうが『飛び降り』というのも、その人の意志ではないだけに何か変だ。やはり私的には『飛び出し』だ。それにしてもこういう『飛び出し』には気をつけようがあるのだろうか?

 ところで、この『飛び出し』の直前にかかって来た携帯へのメールの内容なのだが、登録した記憶などないような占いサイトからのメールだったのである。「あなたの今日の運勢は『大吉』です」確かにその通りだ。このメールが来なかった事を考えると…本当にゾッとする。

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