刑務所の中

　小学３年の下の息子から、「お父さん、刑務所の中ってどうなっているの？入ったことある？」と大胆にも訊かれてしまった。息子から見る私には、そういう要素があるのだろうか？とりあえず、「ないよ！」とは答えたのだが、「じゃあ、中はどんな風になっているのかは知らないよね？」と言うので、「部屋の中には布団とトイレしかなくて…寒いよ」と大雑把な答え方をしたのだが、息子は、「ふ～ん、入りたくないね？」と言って行ってしまった。

　何事も経験と言う点では、「どんなところなのか、一晩くらいなら入ってみたいものだ」と思ったことがある。こんな話を先輩としていたら、何とその先輩が、「俺、入ったことあるよ。留置場（実際は保護室だったらしい）だけどね。でも刑務所みたいなもんだろ？」と笑いながら言っている。「どうして入ったんですか？」とすかさず訊いてみると、「若い頃に、ベロンベロンに酔っぱらって、それで誰かとケンカしたらしくて泊められた」と言っている。

　こんな身近にいるとは思わなかった。「…で、どんな感じでした？」と訊いたのだが、「酔っぱらっているんだから覚えてねえよ。起きたら直ぐにそこから出され、今度は取調室に連れて行かれたんだから」とこんな調子だ。別にお咎めはなかったらしい。だったら私も酔っぱらって一度やってみようかなとは思ったのだが、私は酒が飲めない。素面で酔った振りといっても限界がある。私ではこの手は使えない。

　外国では、刑務所を改造してホテルになったところもかなりの数あるようだが、いずれも綺麗にリフォームされ高級ホテルになっているという。これでは行ったところで、刑務所の面影は残ってはいないだろう。もとより、私が体験してみたいのは実際の刑務所なのだ。誰かに起訴されて、それを取り下げてもらえばいいのか？だが、そんな小面倒なことはやっていられない。「そのうち、お世話になる時がくるだろう」って？ないよ、ないない！