【1】保険の必要性
船荷証券統一条約(ヘーグルールおよび改正議定書):
・運送人は商業過失および堪航担保主義(航海中における通常の海上危険に堪えうる能力(堪航能力)を備えた船舶を提供すること)のみ責任を負う。
・航海過失(航行または船舶の取り扱いに対する船長、船員、水先人または運送人の使用人の行為、怠慢、または過失)を免責としている。
・故意、過失によらない船舶火災による損害:免責
・天災、戦争、内乱、ストライキ等の不可抗力も免責
・梱包の不備等による貨物損害についても免責。
↓
航海中の荒天遭遇があった場合、貨物に損傷が生じても、運送人(船会社)が「不可抗力あるいは航海過失による貨物損傷であるもの」との主張をすれば、受荷主としては商業過失(運送貨物の積み揚げ、取扱い、積み付け、運送、保管に関する過失)を立証しなければならない→着荷不足を除いて損害賠償請求を求めることは事実上不可能。
・仮に船会社の商業過失が認められ、運送人が有責となったとしても、その責任限度額は1包装または1単位あたりきわめて低い(666.67SDR約10万円、あるいはキロあたり2SDRのいずれか高いほう)ため、荷主の損害をカバーすることができない。
↓
そこで、海上保険を締結:船会社が免責されている航海過失も全額填補し、さらに運送人に対する求償権留保の手続きをとっておくならば、船会社に対する賠償請求部分を含めて保険会社に保険金請求ができる→運送クレームへの対策として貨物に適した保険条件で保険契約を行うことが必要。
【2】保険証券のフォーム
1906年英国海上保険法(Marine Insurance Act, 1906 MIA)
海上保険の判例を整理・訂正し、集大成したもの。海上保険証券の様式はロイズ・フォームによることを規定。
保険証券にはS.G.フォームとMARフォームの2種類があり、ともに英国海上保険法に準拠。
S.G.フォーム:現在でも17世紀の英語が海上保険証券約款に使用されている。文言が難解で現代商取引上適合しない条項が多いため、別途の規定や約款により内容を補足している。SGとはShip(船舶)and Goods(貨物)の略。
MARフォーム:1982年1月1日にロンドンで制定、S.G.フォームを大幅に簡素化して現代英語による新協会約款(新ICC~SGフォームを使用せず、MARフォームによる)を適用。
【3】ICC約款
海上保険には、ロンドンの保険業者協会が作成した「ICC約款」という保険条件が使用されている。ICC約款には、ICC旧約款とICC新約款があり、どちらも使用されている。
【4】インコタームズによる付保責任
(1)CIF,CIP →輸出者は必ず付保
①保険条件:ICCまたは同様の保険約款の最小限度の保険条件でよい。
「最小限度の保険条件」とは、ICCならFPA、新ICCならC。
現実にはAll risks War Clauses, S.R.C.C.Clause
②保険期間:運送約款に、「Warehouse to Warehouse条件」: 仕出地の倉庫から本船船積までの期間+本船陸揚後、指定倉庫までの期間。→ICC第1条輸送約款-倉庫間約款統合が規定、仕出地の倉庫を出たときから仕向地の倉庫に搬入されるまでの危険を担保。→CIFの場合FOBポイント以前も付保されている。
(2)FOB C&F →輸入者が必ず付保しなければならないものではない。
【5】 貨物保険でカバーされるリスク
①貨物の物的損害 救助料、共同海損費用などの各諸費用損害も。
②損害防止費用だけは、物的損害との合計額が保険金額を超過しても全額が填補される。
【6】 保険会社の免責
①航海遅延に起因する損害
②自然消耗
③梱包不備
【7】1963年(旧)ICC ロイズSG保険証券フォーム
①FPA [分損不担保] Free from Particular Average
FPA条件でカバーされる損害
1. 共同海損による損害 →ヨーク・アントワープルールにて、共同海損の精算を国際的に統一している。
2. 全損:SSBC(沈没Sink、座礁Strand、大火災Burning、衝突Collision)やPerils of the seas(沈没、衝突、座礁などの他、低気圧などによる暴風雨、高波など)による全損。
3. SSBC(沈没、座礁、大火災、衝突)による分損(特定分損)
(注:潮濡れによる分損はFPAではカバーされない)
4. 積込、積替、荷卸中の貨物墜落による梱包一個ごとの全損 (FPAではカバーされるが、新ICC(C) ではカバーされない。)
5. 避難港での荷卸の際に生じた損害
6. 救助料、損害防止費用、特別費用
↓
FPAでは、海上輸送の中心的な事故である潮濡れ(Sea Water Damage)のリスクがない原油、石炭、鉄鉱石、木材、大理石といった鉱業品を中心に利用。
*盗難、不着、破曲損、雨淡水濡れ、汚れ、その他:特約で付保。
②WA(With Particular Average 単独海損担保、分損担保)
WA[分損担保] With(Particular)Average
WA条件でカバーされる損害
1. 共同海損による損害
2. 全損:SSBC(沈没、座礁、大火災、衝突)やPerils of the seas(沈没、衝突、座礁などの他、低気圧などによる暴風雨、高波など)による全損。
3. SSBC(沈没、座礁、大火災、衝突)による分損。
4. 積込、積替、荷卸中の貨物墜落による梱包一個ごとの全損。
(*以上の段階では潮濡れによる分損はまだカバーされていない)
5. 担保危険による上記以外の分損→ここで、その実質的な内容である潮濡れリスクがカバーされる。潮濡れリスクの高いバルク積み小麦や大豆などの農産品を中心に利用されている。
6. 避難港での荷卸の際に生じた損害
7. 救助料、損害防止費用、特別費用
*保険条件を単にWAとして契約すると、保険証券本文に書いてある免責歩合条項(メモランダム条項)が適用されて「フランチャイズ方式」が適用される。(海難によるものか、貨物の性質によるものか、保険価格の3% 5%などの判断が困難なため)→そこで、通常は証券上にWA(I.O.P : Irrespective of Percentage)と表示してメモランダム条項を適用しないようにする。
*盗難、不着、破曲損、雨淡水濡れ、汚れ、その他:特約で付保。
③ALL RISKS(全危険担保) 1951年の約款。 免責歩合なく、損害全額てん補。
1. 共同海損による損害
2. 全損:SSBC(沈没、座礁、大火災、衝突)やPerils of the seas(沈没、衝突、座礁などの他、低気圧などによる暴風雨、高波など)による全損。
3. SSBC(沈没、座礁、大火災、衝突)による分損。
4. 積込、積替、荷卸中の貨物墜落による梱包一個ごとの全損。
(*以上の段階では潮濡れによる分損はまだカバーされていない)
5. 担保危険による上記以外の分損→ここで、その実質的な内容である潮濡れリスクがカバーされる。
6. 避難港での荷卸の際に生じた損害
7. 救助料、損害防止費用、特別費用
8. 盗難、不着、破曲損、雨淡水濡れ、汚れ、その他もカバーされる。
・保険証券の本文約款では戦争、ストライキ、暴動は担保されていた。それを後に追加されたイタリック約款で免責にしてある。
保険会社が絶対に免責となるもの:
・被保険者の故意→絶対に免責
・固有の瑕疵・性質に起因して生ずる滅失・通常の自然消耗
・不完全梱包→絶対に免責
・通常の損害(通常の損失、重量または容積の自然消耗)→絶対に免責
・放射能汚染損害→絶対に免責
・ISMコード不適合積載貨物に生じた損害→絶対に免責
・化学兵器、生物兵器、生化学兵器または電磁兵器による損害→絶対に免責
・ 航海の遅延→免責MIA55条2項b→絶対に免責
特約で付保するもの
・捕獲拿捕不担保約款(FC&S Clause) 海賊による拘束、抑止、抑留による航海の中絶に基づく損害→戦争危険は免責 War Clausesにて特約可 ICC(A)では標準で担保。
・FSR&CC Clause→港湾ストライキ危険を免責
→SRCC(Strikes, Riots and Civil Commotion)特約可
【8】売買契約書への記載例
・Insurance: All Risks, War Clauses, S.R.C.C. Clauses for 110% invoice value
・航空貨物は海上貨物とは異なり、海固有の危険がありえないのでA/Rで付保される。
【9】 損害の分類
・Total loss 全損 現実全損
・推定全損
・Particular loss 分損 単独海損
【10】 共同海損(ヨーク・アントワープ・ルール、1974)
船舶と貨物の両方に共同の危険による損害→損害発生→船会社・荷主共同して損害を負担する。
共同海損の成立要件
(イ)船舶、積荷に共同の危険を免れるためであること
(ロ)船長の故意、異状の処分である事
(ハ)損害および費用が生じた事
(ニ)船舶および積荷が保存されたこと
【10】FPA,WA条件でつける保険証券上の表現 (AIRでは一括担保されている)
(Extraneous Risks)
TPND: Theft, Pilferage &/or Non-Delivery
(盗難、抜荷、不着危険)
ND: Non-Delivery
S'tge: Shortage
RFWD: Rain &/0r Fresh Water Damage
L'kge: Leakage
B'kge: Breakage
H&C: Hook, Mud, Oil, Grease,Acid
Contact with other carge
RV:Rats & Vermin
SH: Sweat & Heat
HSC: Heating & Spontaneous Combustion
JWOB: Jettison投荷
&/or Washing Overboard波ざらい危険
わが国を含む諸国は依然として1963年旧ICCを使用
【11】 新ICC 1982年ICC Institute Cargo Clause
コンテナリゼーションの進展による国際複合輸送に対応。
①ICC(A)→列記された一般免責、不堪航、不適合、戦争、ストライキの各免責条項以外の一切の危険を担保。All Risksとほぼ同じだが、船会社の倒産、原子力関連は免責。海賊行為は担保。
②ICC(B)→しいて言えばWAに対応。 積込み、荷卸し中の水没、または落下による梱包1個ごとの全損を担保しない。
③ICC(C)→しいて言えばFPAに対応。最低限の保証。
④ディスクレ
・L/C要求→Institute Cargo Clause(A)なのに Policy→All Risk はディスクレ
・L/C要求→All RiskなのにPolicy→ICC(A)はL/C条件充足(ISBP186条)
【12】付 保
(1) 貨物海上保険申込書 Application for Marine Cargo Insurance
① Assured被保険者→ CIF売主は買主のために貨物保険を取得しなければならない→CIF売主が貨物海上保険契約を結ぶ。 別段の合意が無ければ、売主は最小担保の保険条件 FPA,ICC(C)を取得すればよい。保険料の支払いは売主)→CIFの場合、Assuredは売主。
② Invoice No.
③ Claim, if any, payable at/in (_) Japan (X)Destination
④ Conditions
(X)All Risks (_)WA (_)FPA (_)ICC(A) (_)ICC(B) (_)ICC(C)(INCL.WAR&SRCC RISKS)
・Sales Noteの記載
Insurance: All Risks, War Clauses, S.R.C.C.Clauses for 110% invoice value
↓
・L/C記載L/C Requires:
Marine Insurance Policy or Certificate endorsed in blank for full CIF value plus 10% covering Institute Cargo Clauses (All Risks), Institute War Clauses and Institute Riots and Civil Commotion Clauses
↓
保険証券の記載
CONDITIONS ALL RISKS
あと、印刷文言としてThis insurance is subject to the following clauses printed or attached on the front or the back of this Policy
Institute Cargo Clauses Institute War Clauses Institute Strikes Riots and Civil Commotion Clauses
⑤ Ship or Vessel 船名
⑥ From YOKOHAMA
↓
保険証券の記載は From (Interior port or place of loading)欄に
INT PLACE(S) IN JAPAN
at and from欄に YOKOHAMA
⑦ Sailing on or about May 21, 2005
⑧ TO Bangkok
⑨ Marking & Nos
⑩ Description of Goods→ L/C上の Covering 10units of Machine Tools model FB-59
→保険証券上には Goods and Merchandises欄に10units of Machine Tools model FB-59 (IN CONTAINER UNDER &/OR ON DECK)
⑪ Documents Required
保険会社からの受け取り枚数(X)Policy (_)Certificate
⑫ Amount Insured(%)
希望利益として保険金額をアップさせる率は10%以上でも良い。10%は慣習。
L/C 上 Full CIF value plus 10% CIFがUS$150,000.-とすると
↓
申込書 10% of CIF Value
↓
10%とかは出ない Amount Insured欄に10%UPの金額を表示
US$165,000.-
⑬ Dated
⑭ Signature of Applicant
(2)貨物海上保険証券
①Assured(s),etc欄→被保険者
②Amount Insured欄→InvがCIF US$200,000.00.-ならUS$220,000.00.-
③Claim if any欄→Immediate claim must be given to保険代理店
④From欄→INT.PLACE(S) IN JAPAN
⑤Goods and Merchandises欄→ (IN CONTAINER UNDER &/OR ON DECK)
(3) Rider 特約条項
①保険証券に記載された保険の内容をアメンドないし訂正するため、保険会社が発行する保険証券の追加書類。 Endorsementとも言う。
②保険金額の減額、担保条件の縮小訂正:原則として保険証券を回収して行う。
(4) DIC Difference in Condition
条件差保険。一次的に付保されたオリジナルの保険の保険条件が十分でなく、保証が不足する場合に手配される、オリジナルとは別の保険。
例:CIFで輸出者がWAしか手配せず、輸出者からの条件変更が期待できない→輸入者が不足する条項を自ら付保 A/R-WAといった形で表記。
(5) 保険証券上の適用順位
①書き込み部分(Writing Clause)
②紙片添付部分(Printed Slip)
③欄外約款(Margin Clause)
④本文(Body Clause)
【13】輸出FOB保険
・コンテナ船を利用しながらFOB,C&Fを利用すると、手すり通過前の地震損害は付保されない。売主倉庫から手すりまでの輸出FOB保険は地震免責。
・CIFのAll Risks, A,B条件なら、売主の倉庫から本船の手すりまで付保。
【14】輸出者が付保する「未必利益保険」Contingency Insurance
FOB,C&F FCA,CPTで輸出→信用状無しD/P D/A決済だった→売買契約が解除された→出港済み→貨物は無保険状態→「未必利益保険」を付保
船荷証券統一条約(ヘーグルールおよび改正議定書):
・運送人は商業過失および堪航担保主義(航海中における通常の海上危険に堪えうる能力(堪航能力)を備えた船舶を提供すること)のみ責任を負う。
・航海過失(航行または船舶の取り扱いに対する船長、船員、水先人または運送人の使用人の行為、怠慢、または過失)を免責としている。
・故意、過失によらない船舶火災による損害:免責
・天災、戦争、内乱、ストライキ等の不可抗力も免責
・梱包の不備等による貨物損害についても免責。
↓
航海中の荒天遭遇があった場合、貨物に損傷が生じても、運送人(船会社)が「不可抗力あるいは航海過失による貨物損傷であるもの」との主張をすれば、受荷主としては商業過失(運送貨物の積み揚げ、取扱い、積み付け、運送、保管に関する過失)を立証しなければならない→着荷不足を除いて損害賠償請求を求めることは事実上不可能。
・仮に船会社の商業過失が認められ、運送人が有責となったとしても、その責任限度額は1包装または1単位あたりきわめて低い(666.67SDR約10万円、あるいはキロあたり2SDRのいずれか高いほう)ため、荷主の損害をカバーすることができない。
↓
そこで、海上保険を締結:船会社が免責されている航海過失も全額填補し、さらに運送人に対する求償権留保の手続きをとっておくならば、船会社に対する賠償請求部分を含めて保険会社に保険金請求ができる→運送クレームへの対策として貨物に適した保険条件で保険契約を行うことが必要。
【2】保険証券のフォーム
1906年英国海上保険法(Marine Insurance Act, 1906 MIA)
海上保険の判例を整理・訂正し、集大成したもの。海上保険証券の様式はロイズ・フォームによることを規定。
保険証券にはS.G.フォームとMARフォームの2種類があり、ともに英国海上保険法に準拠。
S.G.フォーム:現在でも17世紀の英語が海上保険証券約款に使用されている。文言が難解で現代商取引上適合しない条項が多いため、別途の規定や約款により内容を補足している。SGとはShip(船舶)and Goods(貨物)の略。
MARフォーム:1982年1月1日にロンドンで制定、S.G.フォームを大幅に簡素化して現代英語による新協会約款(新ICC~SGフォームを使用せず、MARフォームによる)を適用。
【3】ICC約款
海上保険には、ロンドンの保険業者協会が作成した「ICC約款」という保険条件が使用されている。ICC約款には、ICC旧約款とICC新約款があり、どちらも使用されている。
【4】インコタームズによる付保責任
(1)CIF,CIP →輸出者は必ず付保
①保険条件:ICCまたは同様の保険約款の最小限度の保険条件でよい。
「最小限度の保険条件」とは、ICCならFPA、新ICCならC。
現実にはAll risks War Clauses, S.R.C.C.Clause
②保険期間:運送約款に、「Warehouse to Warehouse条件」: 仕出地の倉庫から本船船積までの期間+本船陸揚後、指定倉庫までの期間。→ICC第1条輸送約款-倉庫間約款統合が規定、仕出地の倉庫を出たときから仕向地の倉庫に搬入されるまでの危険を担保。→CIFの場合FOBポイント以前も付保されている。
(2)FOB C&F →輸入者が必ず付保しなければならないものではない。
【5】 貨物保険でカバーされるリスク
①貨物の物的損害 救助料、共同海損費用などの各諸費用損害も。
②損害防止費用だけは、物的損害との合計額が保険金額を超過しても全額が填補される。
【6】 保険会社の免責
①航海遅延に起因する損害
②自然消耗
③梱包不備
【7】1963年(旧)ICC ロイズSG保険証券フォーム
①FPA [分損不担保] Free from Particular Average
FPA条件でカバーされる損害
1. 共同海損による損害 →ヨーク・アントワープルールにて、共同海損の精算を国際的に統一している。
2. 全損:SSBC(沈没Sink、座礁Strand、大火災Burning、衝突Collision)やPerils of the seas(沈没、衝突、座礁などの他、低気圧などによる暴風雨、高波など)による全損。
3. SSBC(沈没、座礁、大火災、衝突)による分損(特定分損)
(注:潮濡れによる分損はFPAではカバーされない)
4. 積込、積替、荷卸中の貨物墜落による梱包一個ごとの全損 (FPAではカバーされるが、新ICC(C) ではカバーされない。)
5. 避難港での荷卸の際に生じた損害
6. 救助料、損害防止費用、特別費用
↓
FPAでは、海上輸送の中心的な事故である潮濡れ(Sea Water Damage)のリスクがない原油、石炭、鉄鉱石、木材、大理石といった鉱業品を中心に利用。
*盗難、不着、破曲損、雨淡水濡れ、汚れ、その他:特約で付保。
②WA(With Particular Average 単独海損担保、分損担保)
WA[分損担保] With(Particular)Average
WA条件でカバーされる損害
1. 共同海損による損害
2. 全損:SSBC(沈没、座礁、大火災、衝突)やPerils of the seas(沈没、衝突、座礁などの他、低気圧などによる暴風雨、高波など)による全損。
3. SSBC(沈没、座礁、大火災、衝突)による分損。
4. 積込、積替、荷卸中の貨物墜落による梱包一個ごとの全損。
(*以上の段階では潮濡れによる分損はまだカバーされていない)
5. 担保危険による上記以外の分損→ここで、その実質的な内容である潮濡れリスクがカバーされる。潮濡れリスクの高いバルク積み小麦や大豆などの農産品を中心に利用されている。
6. 避難港での荷卸の際に生じた損害
7. 救助料、損害防止費用、特別費用
*保険条件を単にWAとして契約すると、保険証券本文に書いてある免責歩合条項(メモランダム条項)が適用されて「フランチャイズ方式」が適用される。(海難によるものか、貨物の性質によるものか、保険価格の3% 5%などの判断が困難なため)→そこで、通常は証券上にWA(I.O.P : Irrespective of Percentage)と表示してメモランダム条項を適用しないようにする。
*盗難、不着、破曲損、雨淡水濡れ、汚れ、その他:特約で付保。
③ALL RISKS(全危険担保) 1951年の約款。 免責歩合なく、損害全額てん補。
1. 共同海損による損害
2. 全損:SSBC(沈没、座礁、大火災、衝突)やPerils of the seas(沈没、衝突、座礁などの他、低気圧などによる暴風雨、高波など)による全損。
3. SSBC(沈没、座礁、大火災、衝突)による分損。
4. 積込、積替、荷卸中の貨物墜落による梱包一個ごとの全損。
(*以上の段階では潮濡れによる分損はまだカバーされていない)
5. 担保危険による上記以外の分損→ここで、その実質的な内容である潮濡れリスクがカバーされる。
6. 避難港での荷卸の際に生じた損害
7. 救助料、損害防止費用、特別費用
8. 盗難、不着、破曲損、雨淡水濡れ、汚れ、その他もカバーされる。
・保険証券の本文約款では戦争、ストライキ、暴動は担保されていた。それを後に追加されたイタリック約款で免責にしてある。
保険会社が絶対に免責となるもの:
・被保険者の故意→絶対に免責
・固有の瑕疵・性質に起因して生ずる滅失・通常の自然消耗
・不完全梱包→絶対に免責
・通常の損害(通常の損失、重量または容積の自然消耗)→絶対に免責
・放射能汚染損害→絶対に免責
・ISMコード不適合積載貨物に生じた損害→絶対に免責
・化学兵器、生物兵器、生化学兵器または電磁兵器による損害→絶対に免責
・ 航海の遅延→免責MIA55条2項b→絶対に免責
特約で付保するもの
・捕獲拿捕不担保約款(FC&S Clause) 海賊による拘束、抑止、抑留による航海の中絶に基づく損害→戦争危険は免責 War Clausesにて特約可 ICC(A)では標準で担保。
・FSR&CC Clause→港湾ストライキ危険を免責
→SRCC(Strikes, Riots and Civil Commotion)特約可
【8】売買契約書への記載例
・Insurance: All Risks, War Clauses, S.R.C.C. Clauses for 110% invoice value
・航空貨物は海上貨物とは異なり、海固有の危険がありえないのでA/Rで付保される。
【9】 損害の分類
・Total loss 全損 現実全損
・推定全損
・Particular loss 分損 単独海損
【10】 共同海損(ヨーク・アントワープ・ルール、1974)
船舶と貨物の両方に共同の危険による損害→損害発生→船会社・荷主共同して損害を負担する。
共同海損の成立要件
(イ)船舶、積荷に共同の危険を免れるためであること
(ロ)船長の故意、異状の処分である事
(ハ)損害および費用が生じた事
(ニ)船舶および積荷が保存されたこと
【10】FPA,WA条件でつける保険証券上の表現 (AIRでは一括担保されている)
(Extraneous Risks)
TPND: Theft, Pilferage &/or Non-Delivery
(盗難、抜荷、不着危険)
ND: Non-Delivery
S'tge: Shortage
RFWD: Rain &/0r Fresh Water Damage
L'kge: Leakage
B'kge: Breakage
H&C: Hook, Mud, Oil, Grease,Acid
Contact with other carge
RV:Rats & Vermin
SH: Sweat & Heat
HSC: Heating & Spontaneous Combustion
JWOB: Jettison投荷
&/or Washing Overboard波ざらい危険
わが国を含む諸国は依然として1963年旧ICCを使用
【11】 新ICC 1982年ICC Institute Cargo Clause
コンテナリゼーションの進展による国際複合輸送に対応。
①ICC(A)→列記された一般免責、不堪航、不適合、戦争、ストライキの各免責条項以外の一切の危険を担保。All Risksとほぼ同じだが、船会社の倒産、原子力関連は免責。海賊行為は担保。
②ICC(B)→しいて言えばWAに対応。 積込み、荷卸し中の水没、または落下による梱包1個ごとの全損を担保しない。
③ICC(C)→しいて言えばFPAに対応。最低限の保証。
④ディスクレ
・L/C要求→Institute Cargo Clause(A)なのに Policy→All Risk はディスクレ
・L/C要求→All RiskなのにPolicy→ICC(A)はL/C条件充足(ISBP186条)
【12】付 保
(1) 貨物海上保険申込書 Application for Marine Cargo Insurance
① Assured被保険者→ CIF売主は買主のために貨物保険を取得しなければならない→CIF売主が貨物海上保険契約を結ぶ。 別段の合意が無ければ、売主は最小担保の保険条件 FPA,ICC(C)を取得すればよい。保険料の支払いは売主)→CIFの場合、Assuredは売主。
② Invoice No.
③ Claim, if any, payable at/in (_) Japan (X)Destination
④ Conditions
(X)All Risks (_)WA (_)FPA (_)ICC(A) (_)ICC(B) (_)ICC(C)(INCL.WAR&SRCC RISKS)
・Sales Noteの記載
Insurance: All Risks, War Clauses, S.R.C.C.Clauses for 110% invoice value
↓
・L/C記載L/C Requires:
Marine Insurance Policy or Certificate endorsed in blank for full CIF value plus 10% covering Institute Cargo Clauses (All Risks), Institute War Clauses and Institute Riots and Civil Commotion Clauses
↓
保険証券の記載
CONDITIONS ALL RISKS
あと、印刷文言としてThis insurance is subject to the following clauses printed or attached on the front or the back of this Policy
Institute Cargo Clauses Institute War Clauses Institute Strikes Riots and Civil Commotion Clauses
⑤ Ship or Vessel 船名
⑥ From YOKOHAMA
↓
保険証券の記載は From (Interior port or place of loading)欄に
INT PLACE(S) IN JAPAN
at and from欄に YOKOHAMA
⑦ Sailing on or about May 21, 2005
⑧ TO Bangkok
⑨ Marking & Nos
⑩ Description of Goods→ L/C上の Covering 10units of Machine Tools model FB-59
→保険証券上には Goods and Merchandises欄に10units of Machine Tools model FB-59 (IN CONTAINER UNDER &/OR ON DECK)
⑪ Documents Required
保険会社からの受け取り枚数(X)Policy (_)Certificate
⑫ Amount Insured(%)
希望利益として保険金額をアップさせる率は10%以上でも良い。10%は慣習。
L/C 上 Full CIF value plus 10% CIFがUS$150,000.-とすると
↓
申込書 10% of CIF Value
↓
10%とかは出ない Amount Insured欄に10%UPの金額を表示
US$165,000.-
⑬ Dated
⑭ Signature of Applicant
(2)貨物海上保険証券
①Assured(s),etc欄→被保険者
②Amount Insured欄→InvがCIF US$200,000.00.-ならUS$220,000.00.-
③Claim if any欄→Immediate claim must be given to保険代理店
④From欄→INT.PLACE(S) IN JAPAN
⑤Goods and Merchandises欄→ (IN CONTAINER UNDER &/OR ON DECK)
(3) Rider 特約条項
①保険証券に記載された保険の内容をアメンドないし訂正するため、保険会社が発行する保険証券の追加書類。 Endorsementとも言う。
②保険金額の減額、担保条件の縮小訂正:原則として保険証券を回収して行う。
(4) DIC Difference in Condition
条件差保険。一次的に付保されたオリジナルの保険の保険条件が十分でなく、保証が不足する場合に手配される、オリジナルとは別の保険。
例:CIFで輸出者がWAしか手配せず、輸出者からの条件変更が期待できない→輸入者が不足する条項を自ら付保 A/R-WAといった形で表記。
(5) 保険証券上の適用順位
①書き込み部分(Writing Clause)
②紙片添付部分(Printed Slip)
③欄外約款(Margin Clause)
④本文(Body Clause)
【13】輸出FOB保険
・コンテナ船を利用しながらFOB,C&Fを利用すると、手すり通過前の地震損害は付保されない。売主倉庫から手すりまでの輸出FOB保険は地震免責。
・CIFのAll Risks, A,B条件なら、売主の倉庫から本船の手すりまで付保。
【14】輸出者が付保する「未必利益保険」Contingency Insurance
FOB,C&F FCA,CPTで輸出→信用状無しD/P D/A決済だった→売買契約が解除された→出港済み→貨物は無保険状態→「未必利益保険」を付保