貿易実務用語の知識体系

制度変更に記事のアメンドが追いついていない箇所もありますのでご留意ください。             

貿易法務

2007年01月15日 | 貿易実務
【1】Offer
(1) 有効期限の定めがある確定申し込み
① 大陸法→有効期間中は撤回不可
② 英米法→撤回通知を、承諾通知の発信前に到達させる事で申込撤回可
(2) 有効期限の定めがない申込
日本法、ドイツ法、英米法とも、合理的な期間内に承諾すれば契約成立可。
(3) Firm Offer
①Firm Offerに対して提示された条件の一部を変更して欲しい旨申し入れた→反対申込。その時点でファームオファは失効。
②Firm Offerに対して依頼つきの承諾回答を出した→契約は成立。その依頼を相手方が受諾するかは自由。

【2】書式の争い
契約書には売主が作成する「注文請書型」契約書と、買主が作成する「注文書」型契約書がある。
双方が自社の契約書を送付して相手の署名を求め合う事を「書式の争い」という。

【3】ウィーン売買条約 UN Convention on Contracts for the International Sale of Goods
(1) UNCITRAL(■■■■)により起草、1980年ウイーンで開催された外交会議で採択。
答:国際連合国際商取引委員会
(2)契約自由の原則を定め、当事者が条約の規定の全部または一部の適用を排除し、もしくはその効果を変更できる任意規定。
(3)1988年1月の条約発効以来加盟国増。米国、中国、ドイツ、イタリア、フランス、スイス、デンマーク、オーストラリア等すでに50数カ国が加盟。また、同条約に基づいた判決・仲裁判断も増加の一途をたどっており、世界法としての機能が増している。日本、イギリスは未加盟。

【4】取引条件
(1)品質条件
①見本売買 Sale by Sample→軽工業品
②標準品売買 Sale by Standard Quality
・FAQ (Fair Average Quality Terms):農水産物を収穫前に売買する場合
・GMQ (Good Merchantable Quality Terms):漁労品・木材等 売買するに足る適切な品質か
③銘柄売買 Sale by Trademark or Brand
④仕様書売買 Sale by Specification→工業品
⑤規格売買  Sale by Grade or Type 

(2)品質決定・数量決定の時点
・品質条件
①船積品質条件(積み地ファィナル) FOB、CIFではShipped Quality Terms
→船積時の品質:検査証明書 Inspection Certificate 国際検査機関等による。インコタームズの規定により、その費用は輸出者の負担。
契約書上に「**検査機関の検査証明書を以って最終とする」との文言が無い限り契約通りの商品であることを証明した事にはならない。
②陸揚品質条件(揚げ地ファィナル)Ex Ship, Ex Quay : Landed Quality Terms
・数量条件
①重量の単位 メートルトン1000kg 英トン1016kg 米トン907Kg
②数量決定時期 船積み数量条件 陸揚数量条件
③バルクカーゴ→数量過不足容認条件を入れる。
例えば農産物Produce
**% more or less at Sellers option
④最小取引数量--->経費をカバーできる最小オーダー数量を決めておく
⑤最大取引数量--->生産能力等供給限界を見込んで最大オーダー数量を決めておく

(3)付帯条項
① Force Majeure Clause(不可抗力条項)
契約で定められている契約当事者による義務の履行が、天災、戦争、ストライキなど当事者の責めに帰することのできない事由で契約履行ができない場合に、債務不履行責任を免れることを定めている条項。 ストライキも不可抗力。

② parol evidence rule:
契約書において、書面化された合意内容ないし意思内容と異なることを、他の口頭証拠または文書証拠を用いて証明するのを許さないという準則(parolというと口頭の意味だが、文書証拠も含まれる)。

③ 完全合意(entire agreement)条項:parol evidence ruleには例外があり、その適用の限界が不明確なため、parol evidence ruleの趣旨を徹底させて例外を排除させるために設ける。 この条項があっても、調印後に両者が合意する事項には適用されない。 
ENTIRE AGREEMENT
 This agreement, and any terms and conditions agreed to pursuant to this
agreement, is intended by parties to be the final expression of their agreement
and constitutes and embodies the entire agreement and understanding between
the parties hereto and constitutes a complete and exclusive statement of the
terms and conditions thereof, and shall supersede any and all prior correspondence,
conversations, negotiations, agreements or understanding relating to the same
subject matter.
④ No Waiver
契約における権利不放棄:権利侵害などがあった場合に、損害賠償などを請求しなかったとしても、その権利を放棄したことにはならないとする取り決め。
⑤調整禁止(Non-adjustment)
契約で取り決めた価格は最終の基のするとの輸入契約書の条項。これに対して輸出契約書では契約成立後の運賃、保険料、諸税などの増加諸費用を買主負担とする「増加費用」(Increased Cost)条項で対処する。

(4) 契約書 効力発生
① 日本法:遠隔地間→発信主義
② ドイツ法、ウイーン売買条約→到達主義

【5】貿易クレームの解決策
(1)仲裁 (arbitration)
・respondent:訴えられた方。
①仲裁条項:
・売買契約に予め盛込む 
・仲裁付託契約:紛争が発生してから結ぶ。
・制度的仲裁:Institutional Arbitration 常設の仲裁機関に仲裁を依頼すること。常設の仲裁機関の規則、サービス、設備、ノウハウなどを利用できることから、国際商事仲裁で広く採用されている。社)日本商事仲裁協会 (社)日本海事集会所
②仲裁に関する国際条約
・ジュネーブ議定書:外国で行われた仲裁の裁定の効力と強制執行の規定無し。
・ジュネーブ条約:ジュネーブ議定書締約国における外国仲裁判断の承認と執行について規定するが、条約の適用範囲、執行に関する制約多く、実務上の要請に十分応えるものでは無い。
・ニューヨーク条約:ニューヨーク条約締結国間では、ジュネーブ議定書、ジュネーブ条約は失効、ニューヨーク条約が適用される。当該国外で行われた仲裁裁定を自国の裁判所が承認し、これに執行力を与える国際条約。日本は1961年に加盟。
③仲裁合意書の独立性
主たる売買契約が解除されても、その契約書中の仲裁合意は独立して存続する。
(2) 調停、斡旋 →強制力なし。 売買契約当事者双方の合意ない限り貿易クレームは解決しない。
(3) 訴訟
管轄裁判所の取り決め→法の執行上は被告の住所を管轄する裁判所とするのが望ましい。日本の裁判所で買ってもそれで他国での失効は困難。

【6】取引先の信用調査
①Character 誠実性
②Capital財務状態
③Capacity 営業能力
④Conditions その他の条件

【7】ロビンソン・パットマン法(アメリカ連邦法)
(1) 独立小売店を量販店から保護する
(2) 同品質商品のナショナルブランドとプライベートブランド商品は品質が同一である限り同一価格であるべきで、販売政策上の価格差を設けると違法。
(3) 仕入数量で価格を差別することも違法。 日本的な特約店制度等による価格差別は違法。系列化を促進し、市場の占有を形成する可能性がある。純然たるコストに再が立証できる場合以外の値引き、さらには小売業者間のコスト競争に対するメーカーの善意による場合以外の値引き、理由が明確な場合以外の値引きはアンフェアとされる。
(4) 年間購入量や割引制度は米国では違法

【8】米国内の決済
2/10 net 30とは 10日以内の支払いは2%引き、10~30日まではInvoice Price通り。

【9】委託加工貿易
形式面→加工輸出 実質面→加工サービス輸出。
加工される貨物(原材料など)や加工製品の所有権は委託者。
受託者は委託者から加工賃を得て加工しているに過ぎない→受託者が十分な管理を行っている場合には、加工工程中の危険負担も一切委託者にある。

【10】マドリッドプロトコル
世界共通の出願登録制度。WTO加盟でマドリッドプロトコル未加盟は、台湾、香港、インド、ブラジル。