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「踏み間違い事故を防げ」

2013年03月24日 | Weblog
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「踏み間違い事故を防げ」
http://www.chiikinokizuna.jp/blog/article/985
交通安全
熊本県
2013年3月20日(水)
 数年前、コンビニエンスストアに突っ込む、屋上駐車場のフェンスを突き破って落下するなど、アクセルとブレーキの踏み間違いによる悲惨な事故が立て続けに起こりました。なぜ踏み間違いが起こるのか、メーカーや事故検査機関などで研究が進められています。そんな中、約20年前から開発を続ける機材会社の社長が発明した“ワンペダル”が注目を集めています。

「希都菜の感想」
 ナルセ機材の敷地内に、ワンペダルの操作を練習できるコースがあります。1周1分ほどのコースを2、3周すれば、ワンペダルの操作に慣れます。横に足を開けばアクセル、踏めばブレーキなので、慣れないうちは、混乱してペダルを踏んでしまうことがあるのですが、踏めばブレーキなので、「あれ?進まない。」という感覚です。ヒヤリとすることは全くありませんでした。
「希都菜のギモン」~ワンペダルの仕組み~
 ナルセ機材の鳴瀬益幸さんは、自身の踏み間違いによる暴走がきっかけで、ワンペダルの開発を始められました。道路沿いにある駐車場からバックで車道に出ようとした時、縁石の段差に驚いて思わずペダルを思い切り踏んだら、それがアクセルだったそうです。
 幸い事故にはなりませんでしたが、バックをしながら歩道の人とその向こうにある車道の車に気をつけて、アクセルを少し踏んでブレーキを踏み、またアクセルを踏んでハンドルを切って...という動作の多さを減らそうと考えたのです。そして、アクセルとブレーキのペダルを行ったり来たりする慌ただしさを無くしたのが、ワンペダルです。


「横に押すとアクセル」
「踏むとブレーキ」
 踏むとブレーキ、ペダルの横にあるレバーを横に押すとアクセルです。人の足は、もともと少し外側を向いているので、座った状態でひざを開くような感覚で横に押すと負担なくアクセルレバーを動かすことができます。足首から下を動かすイメージだったのですが、実際は足を開くという感覚で負担はほとんど感じません。また、アクセルを横に押し続けるのではなく、横にずらした位置で自然に足をペダルに乗せれば、一定の速度で走れるので、高速道路にも適していると思いました。常に足はブレーキをかまえている状態なのが安心です。
 鳴瀬さんの周りの人たちの中にも、踏み間違いによる暴走を経験した人がいて、その多くが駐車場での踏み間違いだったそうです。私も運転をしてみて、バックで駐車をする際、駐車場からバックで出る際の余裕がずいぶんあると感じました。
「希都菜の発見」~空走距離~
 “空走距離”という言葉を聞いたことはあるでしょうか。危い!と思って、アクセルから足を離し、ブレーキをかけるまでの間に車が走る距離のことです。ワンペダルは、踏み間違いをしないと同時に、空走距離を短くすることを提案しています。
 鳴瀬さんは、ABS(アンチロック・ブレーキシステム)や障害物の直前で自動停止するシステムなどが制動距離を短くすることに合わせて、ワンペダルを使用すれば、車と人の事故を減らすことができると考えておられます。ブレーキを踏んでから止まるまでの制動距離を短くするシステムは日々進化しているので、その前段階の空走距離を減らそうというのです。
 空走距離がどれくらい短くできるか、鳴瀬さんが作った実験装置で試しました。“走行”というランプがついたらアクセルをふみ、“停止”ランプを見たらブレーキを踏みます。①がブレーキとアクセルが別々のペダルの場合。0.60秒かかっています。②がワンペダルで、0.41秒でブレーキを踏むことができています。時速60キロメートルの場合、0.1秒ブレーキが遅れると車は1.1メートル進んでしまうと仮定すると、ワンペダルで私がブレーキを踏んだ場合は、2メートルあまり早く停止できる計算になります。

「①アクセル、ブレーキが別の場合」
「止まれ!と意識してからブレーキを踏むまで0.60秒」

「②ワンペダルの場合」
「止まれ!と意識してからブレーキを踏むまで0.41秒」

 この0.2秒の差を短縮することで、わずかの差で人をひいてしまったという事故や自転車との衝突事故を防げるのではないかと鳴瀬さんは考えておられます。
「きょうのキズナ」~高齢者が安心して出かけられる車社会~
 交通事故分析センターのデータ(図3)によると、アクセルとブレーキのペダルの踏み間違いは、75歳以上に極めて多いそうです。
 鳴瀬さんの古くからの知人の木村茂光さんは、3年前にワンペダルを取り付けました。鳴瀬さんと同じ78歳。熊本市は、自動車がないと出かけるのに不便で、足が弱くなってくる高齢者にとっては自動車が欠かせません。木村さんは、自動車に乗るのが不安だったけれど、ワンペダルにしてからは、絶対に間違えることはないという安心感が得られたと話しておられました。もし免許を返納すれば、外出の機会が激減し、引きこもりがちになってしまって精神的にも良くないと考えておられます。ワンペダルは、ヒヤリとする体験に不安を感じ、出かけなくなってしまう高齢者の助けになることができるのです。
 私が取材におじゃました時、1週間前にワンペダルを付けたという男性がペダルの微調整をしてもらいに来られていました。なぜワンペダルを付けようと思われたのか聞いてみると、「もっと走りたいから。」という答えでした。走るのが好きな方で、高齢になってきたので、安全に走り続けたいと考えて、周囲で話題のワンペダルを付けられました。自分の健康のためにも、家族に心配をかけずに毎日を過ごすためにも、車で出かけられることが重要なのですね。
 鳴瀬さんは、ワンペダルは高齢者だけでなく、病気の後遺症などで足にまひがある方にも使ってもらえるとおっしゃいます。アクセルとブレーキのペダルを行き来する必要が無いので、踏み込む力があれば、運転できるのです。ワンペダルは、さまざまな人の立場で利用価値がまだまだふくらみそうです。
今回の取材協力先
ナルセ機材有限会社 
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