小説の「書き出し」

明治~昭和・平成の作家別書き出し
古典を追加致しました

赤とんぼのこと 三木露風

2013-10-04 18:58:06 | 作家マ、ミ
 とんぼが飛ぶ頃になると、時は暑くはなく寒くはなく、よい気候となるのである。頭が大きいのが、その特色である。群れているとか、たびたび見るとかで、わりあいによく印象を受ける虫である。他のもによってよりも、とんぼを思うて、その頃を、考えたりする。私が作った童謡に「赤とんぼ」と題する作がある。次に擧げる童謡である。 夕焼け、小焼の、 赤とんぼ、 負われて見たのは、 いつの日か。 山の畑の、 . . . 本文を読む

海潮音 上田敏

2013-10-04 11:29:26 | 作家ウ
遙に此書を滿州なる森鴎外氏に獻ず 大寺の香の煙はほそくとも、空にのぼりてあまぐもとなる、あまぐもとなる 獅子舞歌 海潮音序  卷中收むる所の詩五十七章、詩家二十九人、伊太利亞に三人、英吉利に四人、獨逸に七人、プロ※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)ンスに一人、而して佛蘭西には十四人の多きに達し、曩の高踏派と今の象徴派とに屬する者其大部を占む。  高踏派の莊麗體を譯すに當りて、多く所謂七五調を . . . 本文を読む

風の又三郎 宮沢賢治

2013-10-04 11:23:53 | 作家マ、ミ
どっどど どどうど どどうど どどう 青いくるみも吹きとばせ すっぱいかりんも吹きとばせ どっどど どどうど どどうど どどう  谷川の岸に小さな学校がありました。  教室はたった一つでしたが生徒は三年生がないだけで、あとは一年から六年までみんなありました。運動場もテニスコートのくらいでしたが、すぐうしろは栗くりの木のあるきれいな草の山でしたし、運動場のすみにはごぼごぼつめたい水を噴ふく岩穴 . . . 本文を読む