劇団新感線のロックオペラ『TOMMY』東京公演は、すでに千穐楽を迎えていますが、大阪公演は来週20日から始まりますね。『TOMMY』の会場では、開演を待つロックコンサートの会場さながらに、往年のロックの名曲が流れ、パンフレットの素敵な写真とともに、開演前の気分をいい具合なテンションに高めてくれます。Creamの”White Room”、Rolling Stonesの”Satisfaction”、T.Rexの”20th Century Boy”など、懐かしの(?)あの曲この曲に、客席のあちらこちらにリズムを刻む方もかなり見られ、そんな会場にいるだけで嬉しくなってしまいます♪以前に『朧の森に棲む鬼』を観劇した際にも感じたことなのですが、これが劇団新感線ならではの会場の雰囲気というものなのでしょう。そしていよいよ開演時間も間近に迫り、客席の期待と緊張感が高まってきたところで、耳に飛び込んでくるのが、この曲”I Can’t Explain”です。
印象的なイントロ部分のギターのリフ、繰り返される”can’t explain”の歌詞、キャッチーなメロディーライン・・・。東京公演初日にこの曲を聞いて、どこかで聞いたことのある曲と思っていたら、The Whoの曲だったのですね。(The Whoのファンの方々には怒られてしまいそうですが・・・)ただ、今回の公演のためにひたすら”Tommy”のCDばかりを聞いてきた私には、この曲が、The Whoの曲として非常に新鮮に聞こえ、また同時に彼ら独特の歌詞の世界というものを再認識させてくれるもののような気がしました。そして何よりも、この曲で気分が最高に盛り上がったところで、バンドの生演奏が始まり、『TOMMY』の”Overture”が始まるというあの瞬間が、毎回、感動のフィナーレと同じぐらいに、鳥肌ものの感動が湧き起こり、感情の振れ幅も最も大きくなる瞬間だったように思います。日生劇場の客席で味わうあの瞬間が私は毎回とても楽しみでした。劇場に来たな~といううれしい実感と同時に、いよいよ始まる!というなんともいえない高揚感を与えてくれる瞬間、それは間違いなく開演直前にかかるこの曲が、バンドの奏でるライブな”Overture”のサウンドにバトンタッチをするあの瞬間であったように思えるのです。
この曲は、1965年1月15日に、彼らが、それまでの”The High Numbers”というバンド名を改め、”The Who”として初リリースしたシングルのA面に収録された彼らにとっての初ヒット曲だったそうです。ある意味、”The Who”のルーツともいえる曲なのかもしれません。ピート・タウンゼントによって書かれ、アメリカ人プロデューサーShel Talmyの手によって生み出されたこの曲は、今日でも彼らのライブで演奏される名物曲だそうです。Shel Talmyは、60年代当時、The Whoの他にKinksのプロデュースもしており、この曲がKinksの”You Really Got Me”にどことなく似ていて、キャッチーな印象を与えるのも、やはりそのせいなのでしょうか。実際、ピート・タウンゼントは、そのことに言及しているそうです。(”Meaty Beaty Big and Bouncy”という1971のコンピレーション・アルバムのライナーノーツにおいて。)また”I Can’t Explain”は、David Bowieなどによってもカヴァーされており、イントロ部分のギターのリフやその他の細部に至っては、The Clashなどあらゆるバンドによって度々カヴァーされているのだそう。つまり、多くのアーティストを刺激し続ける名曲ということなのでしょう。当時の他のグループに比べて、The Whoというバンドが、日本においてそれほど浸透していなかったのにもかかわらず、この曲になんとなく親しみやすさを感じてしまうのも、多くのアーティストによってカヴァーされているという事情によるのかもしれません。
この曲は、ピート・タウンゼントが18歳の頃に作曲したものだそうですが、歌詞をじっくりと聞いてみると、やっぱりこれがThe Whoの世界ということ?という気がしてきます。”I think it’s love”という歌詞もあるので、勿論「愛(あるいは恋)」についての歌の一種と解釈するべきなのでしょうが、その一方で、歌詞を聞いていると、なんだかそんなふうに(「愛」についての歌ということだけに限定して)解釈しなくてもいいんじゃない?という気にもなってきます。結局この曲が言いたいことは、”I think it’s love”ということよりも、”Can’t explain”ということなのでしょうか。まあ、逆にそのことが、この曲を「愛」についての歌だと解釈したときには、他の曲が持ちえない何かしらの説得力を持ってくるような気は確かにしますが。ただこの曲を聞いていると、こころの中にある何かについて、「何」と(例えば「愛」である!とかと)はっきりラベルを貼ること自体がナンセンスに感じられてくるような気にもなってくるわけです。回りくどいような、矛盾するような事実を並べたうえで、「どういうことかわかっているのだけれど、説明できないんだよ~(I know what it means,but /Can’t explain)」ということになる。ひたすら自分の内側(inside/down in my soul)をあれでもない、これでもないと手探りで探っていくというのでしょうか、ものすごく内省的という気がします。でも、メロディーやリズムは、多くのアーティストによってカヴァーされ、初めて聞いた人でも親しみを感じるというだけあって、とてもキャッチーで、やはり若々しい。”Tommy”の曲(歌詞)の世界に浸っていると、”I Can’t Explain”にも、なんとなく”Tommy”的世界の萌芽のようなものを感じてしまうのは、私だけでしょうか?
それでこの曲は、”can’t explain”と繰り返し歌った上で、結局また最後のワンフレーズは、”I said I can’t explain”という言葉でしめくくられます。それで、その”I said I can’t explain”という言葉の残響が消えるか消えないかのうちに、あの”Overture”のライブなサウンドが耳に飛び込んでくるんです。『TOMMY』の会場で客席に座って、開演直前にこの曲”I Can’t Explain”を聞いているときの「あの感じ」とは、どんな感じでしょうか・・・。その「サウンド(音)」によって開演に向けてどんどんハイテンションな状態に持っていかれる一方で、”Can’t explain”というフレーズが繰り返されるその「歌詞」によって、言葉では「説明不可能」な『TOMMY』の世界に入り込めるような一種の催眠状態に、精神を持っていかれるような感じなのかもしれません。
リピーターにとっては、この曲が始まると既に半分開演しているような気分になります。実際にイメージ・メッシュのバックに控えているバンドの方々も、この曲でテンションを上げているのがわかりますし、どんどん上がるボリュームに、リピーターのみならず暗くなっていく会場全体の雰囲気も盛り上がってゆきます。私は残念ながら大阪まで遠征できませんが、大阪公演に行かれる方は、もしかしたらこの”I Can’t Explain”を予習していくと、さらに盛り上がって「開演のそのとき」を迎えられるかもしれません。ちなみに私は、The Whoの”My Generation The Very Best of the Who”というアルバムに収録されている”I Can’t Explain(Artificial Stereo Version)”というものを激リピして、日生劇場で味わった開演前の『TOMMY』の雰囲気を再現し、余韻に浸っております。このヴァージョンは劇場で流れていたものに近い音質とアレンジのような気がしますので、東京公演に行かれた方で、あの開演前の雰囲気をお家で再現したい!という方にはオススメです。勿論、これから大阪公演に参戦予定という方々も是非!20日から始まる『TOMMY』大阪公演も素晴らしいものとなりますように、心よりお祈りしております。開演前にスピーカーから聞こえてくるライブな音でない”I Can’t Explain”の音が消えた後、バンドの奏でる躍動感溢れるライブなサウンドの”Overture”が始まれば、傾斜した舞台の向こう側から、輪郭鮮やかな青山さんが飛び出してくるのもまもなくなんです!!(←スミマセン、「詳細レポ」モードに入っています。ここから先はいずれまたということで。
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印象的なイントロ部分のギターのリフ、繰り返される”can’t explain”の歌詞、キャッチーなメロディーライン・・・。東京公演初日にこの曲を聞いて、どこかで聞いたことのある曲と思っていたら、The Whoの曲だったのですね。(The Whoのファンの方々には怒られてしまいそうですが・・・)ただ、今回の公演のためにひたすら”Tommy”のCDばかりを聞いてきた私には、この曲が、The Whoの曲として非常に新鮮に聞こえ、また同時に彼ら独特の歌詞の世界というものを再認識させてくれるもののような気がしました。そして何よりも、この曲で気分が最高に盛り上がったところで、バンドの生演奏が始まり、『TOMMY』の”Overture”が始まるというあの瞬間が、毎回、感動のフィナーレと同じぐらいに、鳥肌ものの感動が湧き起こり、感情の振れ幅も最も大きくなる瞬間だったように思います。日生劇場の客席で味わうあの瞬間が私は毎回とても楽しみでした。劇場に来たな~といううれしい実感と同時に、いよいよ始まる!というなんともいえない高揚感を与えてくれる瞬間、それは間違いなく開演直前にかかるこの曲が、バンドの奏でるライブな”Overture”のサウンドにバトンタッチをするあの瞬間であったように思えるのです。
この曲は、1965年1月15日に、彼らが、それまでの”The High Numbers”というバンド名を改め、”The Who”として初リリースしたシングルのA面に収録された彼らにとっての初ヒット曲だったそうです。ある意味、”The Who”のルーツともいえる曲なのかもしれません。ピート・タウンゼントによって書かれ、アメリカ人プロデューサーShel Talmyの手によって生み出されたこの曲は、今日でも彼らのライブで演奏される名物曲だそうです。Shel Talmyは、60年代当時、The Whoの他にKinksのプロデュースもしており、この曲がKinksの”You Really Got Me”にどことなく似ていて、キャッチーな印象を与えるのも、やはりそのせいなのでしょうか。実際、ピート・タウンゼントは、そのことに言及しているそうです。(”Meaty Beaty Big and Bouncy”という1971のコンピレーション・アルバムのライナーノーツにおいて。)また”I Can’t Explain”は、David Bowieなどによってもカヴァーされており、イントロ部分のギターのリフやその他の細部に至っては、The Clashなどあらゆるバンドによって度々カヴァーされているのだそう。つまり、多くのアーティストを刺激し続ける名曲ということなのでしょう。当時の他のグループに比べて、The Whoというバンドが、日本においてそれほど浸透していなかったのにもかかわらず、この曲になんとなく親しみやすさを感じてしまうのも、多くのアーティストによってカヴァーされているという事情によるのかもしれません。
この曲は、ピート・タウンゼントが18歳の頃に作曲したものだそうですが、歌詞をじっくりと聞いてみると、やっぱりこれがThe Whoの世界ということ?という気がしてきます。”I think it’s love”という歌詞もあるので、勿論「愛(あるいは恋)」についての歌の一種と解釈するべきなのでしょうが、その一方で、歌詞を聞いていると、なんだかそんなふうに(「愛」についての歌ということだけに限定して)解釈しなくてもいいんじゃない?という気にもなってきます。結局この曲が言いたいことは、”I think it’s love”ということよりも、”Can’t explain”ということなのでしょうか。まあ、逆にそのことが、この曲を「愛」についての歌だと解釈したときには、他の曲が持ちえない何かしらの説得力を持ってくるような気は確かにしますが。ただこの曲を聞いていると、こころの中にある何かについて、「何」と(例えば「愛」である!とかと)はっきりラベルを貼ること自体がナンセンスに感じられてくるような気にもなってくるわけです。回りくどいような、矛盾するような事実を並べたうえで、「どういうことかわかっているのだけれど、説明できないんだよ~(I know what it means,but /Can’t explain)」ということになる。ひたすら自分の内側(inside/down in my soul)をあれでもない、これでもないと手探りで探っていくというのでしょうか、ものすごく内省的という気がします。でも、メロディーやリズムは、多くのアーティストによってカヴァーされ、初めて聞いた人でも親しみを感じるというだけあって、とてもキャッチーで、やはり若々しい。”Tommy”の曲(歌詞)の世界に浸っていると、”I Can’t Explain”にも、なんとなく”Tommy”的世界の萌芽のようなものを感じてしまうのは、私だけでしょうか?
それでこの曲は、”can’t explain”と繰り返し歌った上で、結局また最後のワンフレーズは、”I said I can’t explain”という言葉でしめくくられます。それで、その”I said I can’t explain”という言葉の残響が消えるか消えないかのうちに、あの”Overture”のライブなサウンドが耳に飛び込んでくるんです。『TOMMY』の会場で客席に座って、開演直前にこの曲”I Can’t Explain”を聞いているときの「あの感じ」とは、どんな感じでしょうか・・・。その「サウンド(音)」によって開演に向けてどんどんハイテンションな状態に持っていかれる一方で、”Can’t explain”というフレーズが繰り返されるその「歌詞」によって、言葉では「説明不可能」な『TOMMY』の世界に入り込めるような一種の催眠状態に、精神を持っていかれるような感じなのかもしれません。
リピーターにとっては、この曲が始まると既に半分開演しているような気分になります。実際にイメージ・メッシュのバックに控えているバンドの方々も、この曲でテンションを上げているのがわかりますし、どんどん上がるボリュームに、リピーターのみならず暗くなっていく会場全体の雰囲気も盛り上がってゆきます。私は残念ながら大阪まで遠征できませんが、大阪公演に行かれる方は、もしかしたらこの”I Can’t Explain”を予習していくと、さらに盛り上がって「開演のそのとき」を迎えられるかもしれません。ちなみに私は、The Whoの”My Generation The Very Best of the Who”というアルバムに収録されている”I Can’t Explain(Artificial Stereo Version)”というものを激リピして、日生劇場で味わった開演前の『TOMMY』の雰囲気を再現し、余韻に浸っております。このヴァージョンは劇場で流れていたものに近い音質とアレンジのような気がしますので、東京公演に行かれた方で、あの開演前の雰囲気をお家で再現したい!という方にはオススメです。勿論、これから大阪公演に参戦予定という方々も是非!20日から始まる『TOMMY』大阪公演も素晴らしいものとなりますように、心よりお祈りしております。開演前にスピーカーから聞こえてくるライブな音でない”I Can’t Explain”の音が消えた後、バンドの奏でる躍動感溢れるライブなサウンドの”Overture”が始まれば、傾斜した舞台の向こう側から、輪郭鮮やかな青山さんが飛び出してくるのもまもなくなんです!!(←スミマセン、「詳細レポ」モードに入っています。ここから先はいずれまたということで。
