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路上の宝石

日々の道すがら拾い集めた「宝石たち」の採集記録。
青山さんのダンスを原動力に歩き続けています。

◆『TOMMY』4回目観劇レポ!!

2007-03-25 15:04:00 | TOMMY
さて、早いもので『TOMMY』東京公演の日程も、折り返し地点を過ぎました。私の観劇はこれで4回目。前回の観劇からは、6日ぶりの観劇でしたが、ステージの熱気、客席のノリ、かなりスゴイことになっていました。拳を振り上げて、スタンディングで踊っている方もおられましたし、客席でリズム取りながら手拍子している風景は当たり前のものとなってきている感じです。やはり第1幕終盤の”Sensation”あたりから、青山さんの”Eyesight to the Blind”、続くソムン・タクさんの”Acid Queen”、そして”Pinball Wizard”までの展開では、会場も最高に盛り上がります。それらのシーンの重要なパートで、青山さんが大活躍されているのも、ファンとしてとてもうれしいことです。また第2幕では、”Sensation reprise”あたりから”I’m Free/Pinball Wizard”、そして”I’m Free reprise”、”How Can We Follow?”にかけてのシーン。青山さんが黒いノースリーブに赤いバンダナを首に巻いたあのお姿で、思いっきりROCK☆されているのが、最高なシーンとなっています。

それで今日の青山さん!!ものすごいことになっていました!!初日、2回目、3回目と毎回観劇するごとに、心の底から感動して帰ってきているのですが、今日の青山さんは、とにかくROCK☆していて最高でした!!なんと言うのか、もうエネルギーがいくらでも湧き出てきて、あふれ出ているという感じ・・・。精悍で、艶があって、本当に舞台での存在感というのが抜群です。でも、決してひとりで目立っているわけではないんです。今回の『TOMMY』では、ソロのダンスシーンというのはないような気がしますが、ダンスシーンが始まると、端で踊っていようが、中央で踊っていようが、やはり青山さんがそのシーンの空気を創出し、牽引していくようなところがあるなあ、としみじみ感じてしまいました。このことは『TOMMY』に始まったことではないのですが、全員が同じ振りをするダンスシーンが多かったり、アンサンブルの方たちが一箇所にまとまって踊るダンスシーン、あるいはステージ全体にアンサンブルの方が散らばって踊るシーンが多いこの作品であるからこそ、そのことが非常に強く感じられる気がします。また、ファンの贔屓目を差し引いたとしても、いわゆる「ダンスシーン」でないシーンにおける青山さんの存在感にひたすらひきつけられます。今回の『TOMMY』の観客層は、これまでのご出演作のミュージカルと多少異なっているという気がしますが、舞台で活躍される青山さんのお姿に、多くの方々の眼が釘付けになっているに違いない、と観劇するたびに思っています。

それで、衣装のせいもあるのか、特にあの黒いノースリーブ姿の青山さんなどを拝見していると、上半身、特に肩から腕にかけてのラインの逞しさが際立つ感じで、腕の動きで魅せる振りなど、特に重厚感が漂って、私はかなり好きです。「おどろんぱ!」の「三忍者」などでも、ノースリーブの衣装を着て踊っておられる青山さんがとても印象的で、肩から上腕部、そして肘から指先にかけての動きが魅せてくれる様々な表情の豊かさに驚かされますが、2幕のライブシーンなどでは、特にこの卓越した腕の動きの様々なバリエーションをROCK☆なナンバーとともに堪能することができ、毎回青山さんが一瞬一瞬生み出す完璧なフォルムというものに釘付けになってしまいます。

さて、今日は前回の観劇レポに引き続き、第2幕の展開を少し整理してみましたので、簡単に御紹介しておきます。

Act Ⅱ

① Underture 有名になったトミーがピンボールを打ち、その周りに群がる人々。(青山さんもそのうちのひとりとして黒いノースリーブに赤いバンダナを首に巻いた姿でご登場です)

② Afterture 作品冒頭のIt’s A Boyを歌いながら、ウォーカー夫人が鏡の前でトミーにコートをかけている。どんな手を尽くしても、治る見込みのない息子に対する母の苦悩と愛情という表裏一体の感情が感じられるシーン。

③ お医者さんをみつけたよ ウォーカー氏がトミーの病を治してくれるお医者さんを見つけたことを喜んで歌うシーン。

④ Go to the Mirror, Boy お医者さんに連れて行かれたトミー。お医者さん(HISATOさん)が歌います。「眼も見え、耳も聞こえているが、何故かこころにまで届かない」と歌われます。ここで二度ほど挿入される”See Me,Feel Me”(子供時代のトミーが歌います)が、非常に印象的です。

⑤ 聞こえる、トミー どんな手立てをもってしても治らないトミー。そんなトミーに対して「少し笑えよ。聞こえるトミー?」と、語りかけるように歌うシーン。鏡の中をのぞくトミーとともに、鏡の中から登場したおもちゃたちがトミーの周囲で踊ります。

⑥ 信じてみよう どんな治療を施しても一向によくならないトミーを前にして、これまでの苦しみを振り返り、これからの未来に向けて希望を持って進んでいこうと、ウォーカー夫妻が歌う場面。

⑦ 鏡をわるわよ ウォーカー夫人が、鏡を見つめているばかりで一向によくならないトミーへの苛立ちを表現。最後にはトミーを鏡に向かって突き飛ばします。

⑧ Aftersmash 

⑨ Aftersmash Ⅱ

⑩ I’m Free 鏡を突き破り、鏡の世界で自由になるトミー。

⑪ 号外どうだい トミーが三重苦を乗り越え、復活したことをマスコミが報じるシーン。

⑫ Sensation トミーのライブシーンが始まります。ここからHow Can We Follow?までのシーンは、ROCK☆なダンスシーンで、青山さんも弾けておられますので、詳しくはネタバレしません。黒いタンクトップに首には赤いバンダナを巻き、黒いパンツ姿。ROCK☆している青山さんが最高です!

⑬ I’m Free/ピンボールの魔術師

⑭ I’m Free リプライズ

⑮ How Can We Follow?

⑯ トミーのホリデイキャンプ 導入部分でアーニーおじさんのコミカルな壊れっぷりがここでも最高です。さきほどまでの黒タンクトップの上に、水色のTシャツ(ピンクのトミーのマーク入り)を着て、上手よりご登場です。音楽の雰囲気に合わせて、操り人形のようなコミカルな動きをする青山さんが魅力的です。

⑰ サリー・シンプソン トミーのコンサートで、熱狂の会場。押しかけるファンのなか、サリー・シンプソンがトミーのバックステージドアに近づこうとして、警備員に見つかり、咎められ、大怪我をしてしまいます。

⑱ おいでよ トミーが中心になり、父母、アーニーおじさん、いとこのケヴィンとともに、僕の家でひとつになろうと歌います。

⑲ サリーの質問 コンサート中に怪我を負ったサリーが松葉杖をつきながら現れ、トミーに対して「どうしたらあなたの一部になれるの?」と歌います。

⑳ We’re Not Gonna Take It 信者たちが三重苦の状態を人工的に作り出して、トミーのように勘でピンボールをプレイしようとするが、そんなことができるはずもなく、信者たちは、「何やってんだ!」と言いながら、その道具を投げ捨て、その場を立ち去ってゆきます。信者たちに暴行されるトミー・・・。このさきは千穐楽を迎えた後に、「詳細レポ」でお伝えします。

☆ Finale/Listening to You 何度観ても感動のシーンです。青山さんの熱唱が、眼に、耳に、そして心に響く、感涙のラストです。

◆『TOMMY』3回目観劇レポ!!

2007-03-19 15:15:39 | TOMMY
昨日は日曜日ということもあり、会場の客席は満席。男性もかなり多く見られたような気がします。リピーターさん も多くなってきたからなのか、会場の雰囲気もかなり盛り上がり、「ピンボールの魔術師」などのシーンでは、客席からかなり手拍子も出て、ノリもよかったような気がします。フィナーレでは、かなりの方がスタンディング、4回ほどカーテンコールが繰り返されたでしょうか。中川晃教さんは最後に、「明日(今日)は休演日なので、間違って劇場に来ないでください~」と客席に向かって、ジョークを飛ばされていました。青山さんをはじめ、キャストの皆さんの表情には、初日から休みなく1週間続いたステージを無事に務められたという充実感が溢れていたような気がします。

さて、いのうえひでのりさんの日本版『TOMMY』、本当に「ビデオクリップをつなげたようなつくり」となっています。いつものミュージカルですと、シーンとシーンの区切りめのようなものがかなり意識されて、ステージの展開が記憶に残りやすいのですが、今回は映像も音楽もステージの展開も本当に流れるようにどんどん進んでいきます。ひとつの曲から次の曲へと連なり、舞台が暗転するということもほとんどなかったような気がします。おそらく初めてご覧になる方の場合、休憩含めて約2時間のステージの展開がつかめない場合もあるかもしれません。そこで、ステージの流れのようなものを簡単に整理してみましたので、もしよろしかったら参考になさってみてください。まず第1弾としてAct 1の分を投稿します。(以下、多少「ネタバレ」も含みますので、その点御了承いただける方のみお読みください。)なお、まだ記憶があやふやで、不備な点もあるかと思います。観劇して付け足していくつもりですので、よろしくお願いします。

Act Ⅰ

① Overture 1940年。ウォーカー夫妻の結婚式(青山さんはペアダンスで中央上手よりの位置)。ウォーカー大尉の召集(青山さんは将校役です)。戦争のシーンでウォーカー大尉の飛行機墜落(青山さんは飛行機が飛び立つのを見送る将校役です)。軍需工場で働く女性たち。ウォーカー夫人も大きなお腹を抱え、登場。そこへウォーカー氏の戦死を伝えにくる二人の将校たち(青山さんと佐々木さんが”Captain Walker”を歌います)。

② It’s A Boy ウォーカー夫人が男の子を無事出産(トミー誕生)。

③ It’s A Boy Part 2 このあたりで終戦1945年を迎え、父親のウォーカー大尉が帰還(・・・だったと思います。青山さんも将校として帰還を祝います)。

④ 21 ウォーカー夫人と愛人が彼女の21歳の誕生日を祝いながら、これからの生活を夢見て歌います(愛人役は佐々木誠さんです)。トミーは上手よりのベッドで眠る。そこへウォーカー大尉が帰宅。妻と愛人の関係を知り、激高。愛人ともみあいになり、はずみで愛人は死亡。トミーは鏡越しにその出来事を目撃してしまう。警官たちが部屋に入ってきて、ウォーカー夫人をトミーの元から連れて行ってしまう(青山さんは警官のひとりです)。

⑤ Amazing Journey ひとり残されたトミーの前に、もうひとりのトミーが現れ、歌う。

⑥ Amazing Journey インストゥルメンタル ウォーカー夫妻の裁判(青山さんは法廷の警察官)。

⑦ Sparks 三重苦となったトミーが様々な治療を受ける。(新興宗教。医師の診察。怪しい拳法を使う謎の集団。検査のために箱のようなものに閉じ込めれる。)

⑧ Amazing Journey リプライズ

⑨ Christmas トミーの家で賑やかなクリスマスパーティー。しかしトミーには何の日なのかがわからない(青山さんは、グリーン系の衣裳に、帽子を被って下手よりから登場踊ります。途中からはローラーブレードで盛り上げます)。

⑩ 大丈夫かしら 二人で外出するウォーカー夫妻。留守中トミーをアーニーおじさんに預けようとするが、本当に大丈夫か心配する夫妻。

⑪ いじくりまわそ 夫妻の留守中にアーニーおじさんがトミーを虐待。

⑫ See Me,Feel Me 虐待の後、三重苦を誰にも理解されずに歌い続けるトミー。

⑬ いとこのケビン トミーとふたりきりになったいとこのケビンが、トミーを再び虐待。

⑭ Sensation ピンボール台が登場。青山さんは一番下手よりの台の近くで踊ります。リーゼントにサングラスはこのシーンです。ペパーミントグリーン色のパンツをはいておられます。ダンス注目です!

⑮ Sparks リプライズ

⑯ 押し付けがましい男 Acid Queenを客にすすめるthe hawker役の青山航士さんのソロ。山崎ちかさんが演ずるジプシーNO.2と途中からデュエット。トミーはこのジプシーとともに消えてゆく。

⑰ The Acid Queen ソムン・タクさん演ずるAcid Queenが歌います。ジプシーたちとの迫力あるステージングが見もの。

⑱ ピンボールの魔術師 Act 1での最後のシーン。客席を巻き込んで最高に盛り上がります。青山さんもご登場です。オレンジ色の上着に、ジーンズの片脚裾を膝までまくりあげているのが青山さんです。

この続きは、また明日以降に投稿させていただきます。もう少々お待ちください。

◆『TOMMY』2回目観劇レポ!!

2007-03-18 01:32:11 | TOMMY
カンパニーもますます進化し、こちらもいのうえ版『TOMMY』に慣れてきたせいもあるのか、ストーリーの流れに身をまかせながら、あの世界に浸ることがとても心地よくなってきました。初日のときには、確かに「聞き取りづらい歌詞」のことは、私自身も気になりましたが、こちらは音響面で何か工夫がされたからなのでしょうか?今日の観劇では、「歌詞」が耳に入ってきやすい状態であったと思います。いのうえさんが特番などでおっしゃっていたとおり、確かにこの作品は、「ビデオクリップをつないだような作品」であり、「台詞」というものもほとんどありません。ストーリーあるいは、登場人物の心情、さらにはこの作品ならではの世界観を伝えるのに、「歌詞」は重要な要素だと思います。できることなら、日本語訳された歌詞を、実際に読んでじっくり楽しみたいところですが、やはりそれは無理なのでしょうか・・・。初日と今日の2回しか観劇していませんが、やはりこの作品の歌詞には、キーフレーズのようなものがたくさんあり、心にしっかりと焼きつけておきたいものがたくさんあるなあ、と感じました。あと数回観劇しますが、歌詞の世界をじっくりとキャストの皆さんの素晴らしい歌唱とともに、堪能してきたいなと思いました。

それで、今日の青山さん!!初日のときに比べて、さらに弾けておられました!!”Eyesight to the Blind”は、スゴイ迫力です。毎回、青山さんって、こんな歌い方をされる方だったのねぇ~、とただひたすら感動・・・。それから短いですが、青山さんの「ソロ」を聞けるのは、このシーンだけではありません。冒頭部分、将校役でも(”Captain Walker”の曲です)歌っておられますが、またこの部分が素敵です~♪そして、「ソロ」ではありませんが、やはり何度聞いても(観ても)感涙ものなのが、最後のフィナーレ、”Listening to You”.。本当にこの『TOMMY』という作品は、青山さんの「歌」を思う存分堪能できる作品だと思います。そして、青山さんの「ダンス」だけではなく「歌」を堪能できることが、ファンとして本当にうれしいことです。

そしてダンス!!ああやって、眼の前の舞台で、エネルギーを発散させながら、躍動感たっぷりに踊っておられる青山さんを観ていると、本当にシアワセな気持ちになりますね。耳には大音量のROCKが入ってきているのですが、やっぱり、青山さんのダンスって、本当に素晴らしいなあ~、と心の底からしみじみ感じてしまうわけなんです。1幕と2幕それぞれの、「Sensation」と「ピンボールの魔術師」が特にスゴイことになっています!!ネタバレできないのが本当にツライのですが、「ピンボールの魔術師」では、本当に青山さんの動きを見ているだけで、ピンボール台で弾き飛ばされる銀色のピンボールのイメージが・・・。とにかく青山さんは今回の作品でもセンターで踊っておられることが多く、迫力あるアンサンブルの群舞に火花を散らすような熱いダンスで客席を魅了してくれます。

他にもたくさん書きたいことがありますが、また明日観劇予定なので、そろそろ寝ます~、スミマセン。

◆『TOMMY』初日観劇レポ!!

2007-03-13 02:29:28 | TOMMY
いよいよ開幕した劇団新感線のロックオペラThe WHO’s『TOMMY』!!感動しました~!!これは、青山航士さんの「ダンス」と同じぐらい、青山さんの「歌」もこころゆくまで堪能できる作品です!!カッコよかったですよ~~~、青山さんが歌われる”Eyesight to the Blind”(邦題「押し付けがましい男」)!!私個人といたしましては、青山さんの歌声をたっぷり堪能できたこと、ヴィジュアル的にあのような青山さんは観たことがなかったということ(”the hawker”っていう感じです!)、そしてキワモノ的な演出などの点において、あの場面の青山さんは、特に「今までにない」青山さんだと感じました。ネタバレしたいのは山々なのですが、やはりできません・・・。どうか劇場に行かれる皆さんは御自分の眼で御確認ください。この場面では、あの印象的なイントロの後、本当に劇場いっぱいに青山さんの歌声が響き渡るんです!ライブで青山さんのソロの歌声を聞くのは、私にとってこれが二度目です。しかし、今回はバラードを歌う青山さんの声ではありません。昨年12月から発声練習が始まっていたというだけに、パワフルですよ!しかも出だしの部分はかなり高音!スゴイです、青山さん!それで、衣裳やダンスや演出・・・、ああ~~、おしゃべりしたい~~~のに、言えませんよね、やっぱり。まだ初日ですから。とにかくこのシーンは青山さんが引っ張っていくシーンですから、感動です!それで、その次のシーン、ソムン・タクさんの”The Acid Queen”がまたまたスゴイ迫力!周りを固める女性陣もすごかったですよ!衣裳もスゴイです。

それでダンス!!やはり劇団新感線の作品なので、いつも青山さんがご出演されているミュージカル作品とは多少雰囲気が異なるダンスという気がしましたが、バンドによるライブなサウンドのROCKで踊る青山さん、ものすごくいきいきとしていてカッコよかったです!いつものミュージカルだと振付がかなりカチッとしている気がするのですが、やはりロックで踊るので、パワフルななかに心地のよいルーズさもあり、それがなんとも魅力的!ブログで公開してくださったリーゼントのシーンなんて、もう青山さん全身であのリーゼントな感じを表現されている感じで、ものすごく雰囲気が出ているんです!1幕、2幕ともに「ピンボールの魔術師」のシーンがあるんですが、はっきり言って、ロックコンサートなノリですから、スタンディングして踊りたくなってしまいます。やはり全体的に動きの流れの中にダンスが散りばめられているという感じでしょうか。(←なんだかよくわからない表現でスミマセン。)ダンスシーンは勿論、エネルギー溢れる感じで踊っておられるのですが、ダンスに限らず、アンサンブルの方々がよく動いておられるというのが印象です。ちなみに冒頭のシーンでは、青山さんが「将校」役でご登場。これがまた姿勢がよくてカッコイイ~~~です。少しですが、冒頭から歌も歌われます。佐々木誠さんとお二人で登場されることが多いです。佐々木誠さんの素敵な歌声もたっぷりと堪能できます!!そしてピンボール台が出てくるシーンでは、舞台下手よりの台で踊られることが多いです。あとは、この『TOMMY』という作品、あっ、あそこに青山さんが!とステージを見渡して見つけるのが結構楽しいことだったりすると思いますので、ネタバレは控えておきます。

それで、舞台セット!!傾斜したフロアの背景にイメージメッシュがあり、ここに映し出される映像がスゴイ!ほとんどこの映像が背景とセットの役割を担っているところがあります。『朧の森に棲む鬼』でも、映像が舞台空間で効果的に使われていましたが、この『TOMMY』はそれ以上、どころか、とにかくかなりつくり込まれた映像が、大迫力で展開してゆきます。台詞がとても少ない作品なので、登場人物の心象風景みたいなものも、この映像で提示されることが多いです。それからなんと言っても、ライブなサウンドが最高です!!イメージメッシュのバックにバンドが控えていますが、オープニングとともに大迫力のサウンドが耳に入ると、もうそこはロックコンサートの会場!!オープニングの前にも、勿論ストーンズの”Satisfaction”に、T.Rexの”20th Century Boy”にと、ロックミュージックが会場にかかっていて、気分は盛り上がる一方なのですが、やはりバンドの方たちの生み出す音はスゴイです。

そして、パンフレット。2500円で、かなり大判。28・5×35のサイズですので、抱えて持ち帰りたくない方は、何か手提げのようなものを持参されることをおすすめいたします。内容盛りだくさんですが、青山さんのセルフポートレイト写真がとても素敵です♪ポーズがまたなんとも!!それで、そのお写真のそばに掲載されているのが、「音楽で衝撃を感じたこと」というテーマのもとに書かれた文章!これは私が青山さんのファンを5年半していて、一番お聞きしてみたかったことでした。多分、青山さんのファンの方なら、皆さん、ふ~んと唸って微笑んでしまうエピソードだと思いますよ。これから御観劇予定の方、どうぞパンフレットをお楽しみに♪

まだまだたくさん書きたいことはありますが、中川晃教さんのトミーの歌声は圧巻、そして感動!!特に"I'm Free"は素晴らしかったです。そして「アーニーおじさん」役の右近健一さんがとても素敵でした。劇団新感線ならではのノリというのでしょうか?映画版のキース・ムーンを圧倒するかのようなキャラクターで、日本版ならではの「アーニーおじさん」、かなりインパクトが強かったです。それからROLLYさんの「いとこのケヴィン」も、あのスラリとした長い脚に象徴されるようなスタイルのよさと、迫力ある強い歌声とのギャップが、なんだかイケナイ感じを絶妙に醸し出しているようで、素敵でした。衣裳はやはりコスプレ的なものがかなり多かったのですが、個人的にオススメなのが、「ピンボールの魔術師」のシーンで、ピンボールクィーンの山崎ちかさんが着ていらしたもの。細かいことを言い出すとキリがないので、このぐらいにしておきますが、これから公演回数を重ねてゆくにつれて、カンパニーがどのように変化してゆくのか、とても楽しみです。
(←『TOMMY』では飛行機が登場するので)

◆『朧の森に棲む鬼』観劇記

2007-03-07 23:26:28 | TOMMY
1月中旬のことですが、劇団新感線の舞台『朧の森に棲む鬼』を観に行ってきました。青山航士さんが出演されるロックオペラ『TOMMY』は、いのうえひでのりさんによる演出ですが、いのうえさんが創られる舞台というものを、『TOMMY』をこの眼で観る前に、是非体感してみたかったのです。劇団新感線の舞台と言えば、「奇抜なアイデア」、「ハードロック魂」、「活劇」という言葉で説明されていますが、この『朧~』を見て、その一端がなんとなくつかめた気がしました。この『朧~』は、「いのうえ歌舞伎」とよばれるシリーズの第5弾で、市川染五郎さんが主演の作品。これまでの「いのうえ歌舞伎」に比べて、ドラマ性を重視し、立ち回りなどの要素をいつもより抑えめにしたということです。それでも眼の前で繰り広げられるエネルギー溢れるステージングには、圧倒されました。


◇劇場の雰囲気

会場は新橋演舞場だったのですが、昨年青山さんが出演された『テネシー・ワルツ 江利チエミ物語』が上演された明治座の雰囲気に似ていました。客席に奥行きはなく、花道が下手よりにあり、サイドには提灯がかかっている、というあの雰囲気です。それで開演前や休憩中には、客席でお弁当を食べている方々もかなり多く見られました。そんな芝居小屋を思わせるリラックスした客席に、開演前からなんとROCK☆が流れているのです。ロックバンドのライブやコンサート会場に行くと、開演前にロックミュージックがかかっていますが、まさにあの雰囲気です。新橋演舞場の雰囲気とこの開演前のロックミュージックの組み合わせが、なんとも絶妙なミスマッチ!でも不思議と気分が盛り上がります。さらには劇中、登場人物のひとりが、客席のあいだをロックを歌いながら登場するというシーンもあり、かなり盛り上がっていましたが、あのような演出を見てしまうと、『TOMMY』の「ピンボールの魔術師」のシーンなど、もしかしてかなり客席を盛り上げてくれるのではないかと期待が高まってしまいました。

◇Image Mesh(イメージ・メッシュ)?

それで開演時間。すると舞台前方には薄い半透明の幕のようなものが・・・。あれはもしかして『TOMMY』公式ブログでも紹介されていたImage Meshというものなのでしょうか(もしかして違うかも)?映像が映し出されていない間は、奥の舞台スペースが透けて見えているのですが、ひとたびこの幕に映像が映し出されると、それが映画館のスクリーンのような状態になるのです。舞台一面が巨大なスクリーンになるわけですから、かなり迫力がありました。しかしその映像は、映画館のスクリーンのものほど、硬質で鮮明なものではないのですが、何故か妙に臨場感があり、オープニングとしての心地よい緊張感と高揚感を漂わせます。映像も非常に凝った造りのもので、物語の設定を説明するために字幕のようなものも入ります(「字幕」と言っても筆書きのような字体でした)。「舞台」というと、映像を駆使する演出に今まであまり遭遇したことはありませんでしたが、「映像」と「舞台」の組み合わせが非常に新鮮に思えました。舞台の空間を映画館で甦らせる「劇シネ」という試みもあるぐらいですし、劇団新感線は、舞台作品の映像化にも積極的に取り組んでいるようですので、『TOMMY』のステージでも映像がどんなふうに効果的に使われるのか、非常に楽しみです。

◇舞台装置と舞台美術

様々な趣向が凝らされた舞台装置や舞台美術には、かなり圧倒されました。市川染五郎さん演ずる主人公ライは、作品冒頭、「朧の森」に棲む魔物から一本の剣を、その命と引き換えに手渡されるわけなのですが、その魔物たちが現れるのが、なんと夥しい数のしゃれこうべが積み重なった滝!終盤、ライが絶命し、髑髏と変わり果ててゆくのも、この滝なのですが(←壮絶な最期で、スゴイです!)、とにかくこの滝にはものすごい量の水が流れているわけなのです。また、舞台前方で雨が降るような演出もあり、終盤では傾斜のついたフロア一面に大量の水が流れるという演出もありました(←傾斜したフロアは『TOMMY』公式ブログでも紹介されていましたので、水は流れないでしょうがどんなふうに使われるのか興味があります)。歌舞伎で「水」を使った演出というと、コクーン歌舞伎の「夏祭浪花鑑」などが思い出されますが、『朧~』での派手な水の使い方にはかなり圧倒されました。

それから舞台美術として面白いと思ったのが、都の暗黒街のシーン。確かこのシーンでは、この暗黒街の遊女たちが、花道を踊りながら登場してくるのですが、この酒池肉林な感じのシーンを盛り立てているのが、中央にで~んと飾ってある、ヒエロニムス・ボッスの「快楽の園」の図。衣裳は基本的にアジアンな感じなのですが、何故か中央にルネサンス期の画家の絵が飾ってあるわけなんです。観劇後にたまたま新聞で読んだ『朧~』の劇評に、「ごった煮」という言葉を見つけましたが、確かにその「ごった煮」感が、あちらこちらで心地よく感じられた気がします。『TOMMY』の舞台美術のイメージには、「おもちゃばこをひっくり返した感じ」というのがあるそうですが、どんなイメージになるのでしょう?「おもちゃばこをひっくり返した」ようなイメージのなかで踊られる青山さんがかなり楽しみであったりもします。

◇ダンスシーン・アンサンブルの動き

正直なところ、観劇前にさほど「ダンスシーン」は期待していませんでした。確かに作品全体に占めるダンスシーンの割合としたら多くはなかったものの、ダンスが取り入れられたシーンでは、かなり「動き」のある振りで、迫力のあるシーンが展開されていた気がします。さきほど触れた都の暗黒街のシーンでは、女性ダンサーたちの群舞が印象に残りました。「歌舞伎」ということなので、日舞的な振りもあったりするのですが、振りとしてはかなり現代的なもの。『朧~』も川崎悦子さんの振付ということでしたが、『TOMMY』のダンスにも期待が高まりますね!

それでダンス以上に印象に残ったのが、アンサンブルの動きでした。染五郎さん演じるライはオボロの魔物から手渡された剣を操っていくのですが、染五郎さんをアンサンブルが囲むようにして繰り広げられる動きのある殺陣のシーンは、圧巻でした。殺陣のシーンに限らず、アンサンブルの身体の動きに、エネルギーのうねりのようなものが感じられた『朧~』を観ていたら、『TOMMY』がひたすら楽しみになってしまいました。

『TOMMY』開幕がいよいよ迫ってまいりました。明日から日生劇場入りということですが、青山さんたちが、『TOMMY』の場を、劇場でどのように創り出してくれるのかが、本当に楽しみです!!


◆『グランドホテル』詳細レポ ⅩⅠ(最終章)

2007-03-02 00:23:19 | グランドホテル
Roses at the Station Bolero How Can I Tell Her? Final Scene Part 1,2The Grand Parade
「ステーションの薔薇」「ボレロ」「なんて言ったら」「最後の場面パート1、2」「グランドパレード」

「ラッキーショット」、心臓を真っ直ぐに貫くショットはそのように呼ばれるが、その銃弾に倒れた男爵にとっては、それは「ラッキーショット」とは言えなかった、という内容の、ドクターによるモノローグが入ります。何が起きたのかということを、観客に向けて、静かに、それでいて重みをたたえて伝えてくれるドクター役の藤木さんの言葉が非常に印象的です。すると、舞台中央奥からひとり男爵が登場してきます。このときの男爵は黒いタキシード姿、胸には赤い薔薇を一輪さしています。男爵は、これまでもダンスシーンではタキシードの胸ポケットに薔薇の花を挿していました。グルーシンスカヤとの「愛」の象徴である赤い薔薇が、ドクターの台詞にあった「ラッキーショット/心臓を貫いた銃弾」という言葉と重なり、男爵の「死」をイメージさせます。そして男爵は、「ステーションの薔薇」をグルーシンスカヤに対する万感の思いを込め、歌い上げてゆきます。男爵が盗みを目的に侵入したはずだった彼女の部屋。しかし、そこで男爵はグルーシンスカヤと落ちるはずのない恋に落ちてしまったのでした。ウィーンへと旅立つ今日、駅で薔薇を抱いて待っている、と男爵がグルーシンスカヤと取り交わしたはずだった約束・・・。「エリザベータ 僕はここだよ 薔薇を抱いて待っている・・・」しかし、もう男爵のそんな声も彼女に届くはずがありません。幼い頃から馬に乗り、兵士として活躍した戦場でも、銃弾に貫かれたことなどなかった男爵。自分のこれまでの人生は、この薔薇を抱いて駅でグルーシンスカヤを待っている、ただこのときのためにあったのだと悟った男爵が、その一歩手前でプライジングの銃弾に倒れてしまったという無念さを切々と歌ってゆきます。曲の盛り上がりとともに、男爵の元に無数の赤い薔薇の花びらが降り注ぎ、そしてドラマティックなこの曲の最後の部分とともに照明が消え、舞台は暗闇に包まれます。

男爵が「ステーションの薔薇」を歌っていた台のようなセットのそばで、再びドクターが語ります。敵同士であったはずの「愛と死」が再び顔を合わせ、手を結び、契りを結ぶ・・・、と。すると、作品冒頭で、上手下手のそれぞれの袖へと、何かに引き離されるかのように、別れていったジゴロと伯爵夫人が、この台を挟んだ向こう側とこちら側に登場してきます。敵同士であるはずの「愛と死」が再び手を結ぶことを象徴するかのように、ジゴロと伯爵夫人のふたりが、「ボレロ」を踊るために再び手を固く結びあいます。西島鉱治・向高明日美ペアが、回転扉の前でダイナミックに、かつ荘厳に、「ボレロ」を踊ります。このダンスは、グルーシンスカヤと男爵に訪れた悲しい運命を表しているようでもあります。しかし、力強く打楽器がたたきだすリズムの背景で流れる、この「ボレロ」の音楽のメロディーは、グルーシンスカヤの付き人であるラファエラが歌っていた「What You Need/あなたに必要なもの」です。そのせいか、ある意味「悲劇」ともいえる男爵とグルーシンスカヤの関係のみを示唆しているわけではない、ということも感じ取れます。つまり、未来につながる何かも感じ取ることができる場面でもあるような気がしました。男爵の命というものが、様々な意味で引き継がれていくことになる、この後の展開というものがイメージされるような気がしたのです。この曲は「ボレロ」なので、一定のリズムを刻みながらも、徐々に盛り上がり、大変ドラマティックな展開の仕方をする曲なのですが、メロディーが「あなたに必要なもの」をアレンジしたものであるからでしょうか、作品終盤に向けて、希望的な展開を観客が予感できるような気がしたのです。グルーシンスカヤをはじめとする登場人物たちの、男爵亡き後の「この後」を予想すると、いたたまれない気持ちにもなるのですが、「ボレロ」のダンスを観て、音楽を聞いていると、そんな登場人物ひとりひとりにとっての「あなたに必要なもの」が意識されてくる気がしたわけなのです。この曲の終盤、青山さんたちベルボーイをはじめとしてホテルの従業員たちも、冒頭のシーンのようにコーラスしながら回転扉の前に登場してきます。荘厳でドラマティックな音楽に合わせるようにして、ゆったりと確実に、おごそかな雰囲気で、一歩一歩を踏みしめるようにして登場してきて、センターで「ボレロ」を踊る二人を囲むような形でコーラスします。青山さん演ずるベルボーイも回転扉の付近で、コーラスされています。

「グランドホテルの日常」という現実からはかけ離れているような、幻想的で荘厳な「ボレロ」のダンスが終わると、再びシーンは、現実的色彩を取り戻したいつものホテルの日常へと戻ります。悲しみと動揺を秘めながらも、新しい何かが始まることを予感させるような活気に溢れた「How Can I Tell Her?/なんて言ったら」の曲。そのイントロ部分が聞こえてくると、ベルボーイたちが忙しく歩き回る、いつものホテルの風景が眼の前で繰り広げられるのです。そこでは、男爵がプライジングの銃弾によって、この世を去ったという事実を知る人びとの様子が描かれます。グルーシンスカヤの付き人であるラファエラは、上手よりの階段に腰掛け、男爵の死という事実を、グルーシンスカヤに一体どうやって伝えたらよいのか、という気持ちをこの曲で歌い上げます。この曲の中で、男爵の死という事実をその場に居合わせた人びとが知る場面があるのですが、そのシーンでは、青山さんたちベルボーイなどの従業員たちが、それまでしていた行動を急に停止し、シーン自体をフリーズさせるという部分があるのです。青山さん演ずるベルボーイも、上手よりの階段付近で歩いていた動作をピタッと静止させます。場面全体がフリーズするというこの演出によって、男爵の死というものがいかに衝撃的であったのかがとてもよく伝わってくるような気がしました。

そしてその男爵を銃で撃ち、死に至らしめてしまったプライジングは、手錠をかけられ、連行されようとしています。決して故意に男爵を撃ったわけではないプライジングは、自分がしてしまったことに対して、罪の意識にさいなまれています。「手を洗いたいんだ・・・」と自分を連行しようとしている警官に向かって言いますが、聞き入れてもらえません。そのまま警官たちに付き添われながら、階段をうつむき加減に下りていき、グランドホテルを後にします。「持つ者」としてここグランドホテルにやってきたはずのプライジングですが、「持たざる者」としてここを出てゆくことになるのです。プライジングは、「高慢な実業家」である反面、「道を踏み外したことのない実直な面」、「家族思い」な面も持っている。そんな彼であるからこそ、「はずみ」で男爵を死に至らしめてしまった彼の哀しさが伝わってきます。

一方、フレムシェンは、オットーとともに、今は亡き男爵を偲び、思い出に浸っています。「ハンサムで若くて優しかった・・・」と、男爵のことを語るオットー。オットーにとって男爵は、本来宿泊できる立場ではない自分を、このグランドホテルに宿泊できるよう取り計らってくれたその人であり、株への投資を薦め、オットーに一夜にして大金を持たせるように導いてくれたその人でもあります。またフレムシェンにとっての男爵は、あと一歩で引き返すことのできない道に進むはずだった自分のために、自ら命を落として救い出してくれたその人でもありました。そんな二人が男爵の面影を求める姿には、胸が熱くなります。そしてオットーは、フレムシェンに対して、何故プライジングとそんなことにならなければならなかったのかを問います。それに対して、フレムシェンは、新しい生活を始めるためにはお金が必要だったと告げるのです。フレムシェンは、回転扉の前でいま一度、何かを思い出したかのように立ち止まり、グランドホテルの風景を見渡します。そして、さまざまな想いを胸に、グランドホテルを後にするのですが、重い回転扉のドアをか細い身体で精一杯に押しながら、グランドホテルを出てゆく紫吹さん演ずるフレムシェンの後姿がとても印象に残りました。

続いて「Final Scene Part 1」では、朝を迎えたグランドホテルの風景が繰り広げられます。作品冒頭と同じように、電話交換手たちが電話を片手に通話したりするなかで、フロント係のエリックの元に、産気づいていた妻が無事に男の子を出産したという知らせが届きます。待ち望んだ新たな命の誕生に、込み上げるよろこびを隠せないエリック。息子の誕生を知らせる電話の受話器を片手に、「人生は大きくもなる 人生は小さくもなる あなた次第で」と、伸びやかな声で、パク・トンハさん演ずるエリックは、見事に歌い上げます。

男爵の死をいまだ知らされておらず、駅で自分を待っていると信じているグルーシンスカヤ。彼女も付き人ラファエラたちとともに、ウィーンへと旅立つために、回転扉を通り、グランドホテルを後にしてゆきます。

またオットーも出発のために下手側の階段を下りてきます。ドクターはオットーを見つけ、彼に対し、人生を見つけたこのグランドホテルから出発するのですね、という内容の言葉をかけます。「死ぬのが待ちきれない」はずなのに「生」に執着せずにはいられないドクターと、明日訪れるかもしれない「死」と隣り合わせであるのに今眼の前にある「生」を精一杯に生きようとするオットー。そんな二人が何かを分かち合うように、出発の間際に心を通い合わせるこの場面が、とても印象に残ります。

そこへタイプライターをホテルに置き忘れたフレムシェンが、再び戻ってきます。オットーと再会するフレムシェン。オットーはパリに行くことにしたことをフレムシェンに告げます。それはいいわね、とつぶやくフレムシェンに対して、オットーは「ご一緒にといいたいところだが、あいにく僕は死にかけている」と告げます。そんなオットーに対して、彼女は当然のことのように「みんなそうよ(死にかけている)」と答えます。その言葉を聞いて、何かに気づいたオットーは、フレムシェンに一緒にパリに行くことを提案します。しかしフレムシェンは本当のことを言わなければ、と自分のお腹の中に新しい命が息づいていることを、オットーに告げます。それを聞いたオットーは、僕はまだ生まれたばかりの赤ちゃんというのを見たことがない、と言って、再びフレムシェンにパリに一緒に行ってくれるように頼むのでした。オットーのやさしさにふれて、共にパリへと旅立つ決心をするフレムシェン。

そんな彼らの元に、息子が生まれたことを知らせようとエリックがやってきます。オットーたちは、「ほら、ここにも人生があるじゃないか!」と言って、エリックとともに、新しい命の誕生のよろこびを分かち合います。そして男爵から譲り受けたシガレット・ケースを、オットーはエリックに渡します。男爵の命が、エリックに誕生した新しい命へと引き継がれるイメージです。男爵によって新たな幸福の道へと一歩踏み出すきっかけをつかんだフレムシェンのなかで生きる新たな命、そしてエリックの元に誕生した新しい命・・・。

いよいよグランドホテルからパリへと旅立つオットーとフレムシェン。作品冒頭では、貧しい身なりのオットーを「ふさわしくないお客」として、一刻も早くホテルから追い払おうとしていたベルボーイたち。しかし、この祝福すべき旅立ちの場面では、彼らの態度も対照的です。冒頭では、オットーのカバンを、本人の意志に反して、回転扉の外へと無理やり運び出そうとしていました。しかしこの場面では、手を携え共に旅立とうとするオットーとフレムシェンの背景で、まるで彼らの新たな旅立ちを祝福するかのように、青山さんたちベルボーイは、誇らしげな態度と表情で、彼のカバンを胸の前で丁寧に抱えます。この場面、オットーとフレムシェンの向かって左側で、ベルボーイとしての祝福の気持ちを、きめ細かい表情で表現されている青山さんがとても印象的でした。グランドホテルに「クリンゲライン様にタクシーを!」の高らかな声が次々と響きます。回転扉をくぐり、グランドホテルを旅立つオットーとフレムシェン。

人生をつかんでグランドホテルを後にする者がいる一方で、このグランドホテルでいくら働けども何も変わらない人生を送る者たちもいる。それがベルボーイたちと洗い場の労働者たちです。再び「持つ者と持たざる者」の曲とともに、彼らが勢いよく飛び出してきます。作品冒頭部分でも歌われていたこの曲ですが、このシーンでは途中から日本語ではなく、ドイツ語の歌詞で歌われます。それは、当時のワイマール時代のドイツに、すぐそこまで忍び寄っていたナチス時代の到来を予感させるものです。いくら働いたとしても「持たざる者」から抜け出すことのできない彼らの鬱屈した感情が、労働者たちを演ずるアンサンブルの力強いコーラスと地面に楔を打ち込むような重みのある行進風のステップから、恐ろしいぐらいに伝わってきます。このシーンの青山さんは、ベルボーイのあの制服を着て、労働者たちの中心で、歌いながら行進風のステップを踏みますが、青山さんの全身から発散される冷徹で凄味のある表情を観ていると、ドイツに迫り来る恐ろしい時代の空気というものが鳥肌が立ってしまうほどに伝わってくるようです。そして不思議なことに、青山さんの着ているあのベルボーイの制服が、「冷たい軍服」に見えてくるのです。この曲の最後のフレーズをアンサンブルが歌い終えると同時に、舞台中央で一団となって歌い踊っていた彼らも、何事もなかったかのように、それぞれに散っていきます。

アンサンブルのコーラスの声に導かれるようにして、再び「グランド・パレード」の曲・・・。いつもと何も変わらないグランドホテル。人は来て、人は去る・・・。回転扉は回り、人生は続く・・・。ドクターが語るなか、壁から登場し、回り続ける回転扉へと次々と吸い込まれるようにして、グランドホテルを出てゆくゲストたち。ゲストを送り出す回転扉の速度が、音楽とともにますます速くなってゆく様子を見ていると、まるでこの「グランドパレード」の曲のテンポを決めているのが、この回転扉であるような気がしてきます。最後のゲストが回転扉を通り抜ける頃、ドクターの「もう一晩泊まることにしよう」という言葉が耳に入ってきます。それぞれの持ち場でゲストたちを見送ったベルボーイや電話交換手などのホテルの従業員たちも、それぞれの持ち場を離れ、どこかへと消えてゆきます。回転扉のみが回り、誰もいなくなったグランドホテル・・・。今まで眼の前で繰り広げられていたものが、まるで「幻」のように消えてなくなってしまったような錯覚にとらわれます。

そしてフィナーレは、登場人物たちが全員登場してきて、「グランド・ワルツ」の曲に合わせて、華やかにワルツを踊ります。ただベルボーイたちだけは、それぞれのポジションに立ち、ゲストたちの宴を、見守り続けます。青山さんも曲が始まると、上手よりの立ち位置からゲストたちに丁寧に一礼をしながら、下手よりの階段へと移動してきます。「人生はめぐり、めぐる・・・」この人生の賛歌を笑顔で誇らしげに、そして高らかに歌い上げます。ゲストたちがそれぞれのパートナーとワルツを踊る様子を、暖かいまなざしで見守りながら、歌っておられる青山さんの表情がとても素敵でした。

限られた時間と場所で、何かを抱えた人びとの様々な人生が交錯し、織り成されるドラマ。そのような「限られた時間と場所」の象徴であるグランドホテルで、回転扉が回るなか、さまざまな人びとが出会い、別れ、そして旅立ってゆくのを観ていると、「人生は続いてゆく」ということが、生きるということへの希望とともに湧き起こってくる気がしました。青山航士さんの生のエネルギーを凝縮したような素晴らしいダンス。そして、卓越したマイムによって創出されるイリュージョンのような光景。そのコントラストが非常に鮮やかで、人生における「踊ること」の意味というものについて、さまざまに思いをめぐらすことができる作品でした。青山さんの数々の表現の、密度の濃さと幅の広さに改めて感じ入ると同時に、表現者としてのたくましさに心の底から圧倒された舞台だったと思います。この作品は2006年1月に東京国際フォーラムホールCで上演された作品で、既に1年2ヶ月ほど経過しています。私がこの作品の「詳細レポ」に着手したのは、昨年の2月でした。「詳細レポ」完結までにたどり着くまでに、大変時間がかかってしまいましたことをお詫びしたいと思います。しかもどのレポも「激長」です。これまで、投稿ペースが非常に遅く、しかも長文・拙文の私のこのレポにおつきあいいただき、また暖かく見守ってくださった皆様には、心からの感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。ありがとうございました。