遅くなりましたが、5月23日~27日まで、東京・銀座のル・テアトル銀座で上演された『SHOW店街組曲 The Musical Show "Shopping Street Suite" 』の観劇レポです。
『SHOW店街組曲』は、40曲以上にも及ぶ筒美京平さんのヒットソングにのせて、歌と踊りでつづられるミュージカルコメディーショーといった感じの作品。同じ商店街に生まれ育った、ヒデ(中山秀征さん)とマコト(真琴つばささん)の出会い、結婚、そして結婚から10年経ってちょっと倦怠期な最近・・・、という流れに、商店街で行うショー(「劇中劇」ならぬ「SHOW中SHOW」)を取り入れて進行するという形式です。笑いあり、ちょっぴりほろりとさせられるところもありで、最初から最後までとても楽しい時間を過ごすことができました。60年代から90年代にかけての、思わず口ずさみたくなってしまうあの曲この曲が、面白い演出で次から次へとテンポよく飛び出してきます。そして、少人数編成のバンドの方々が奏でる、洗練されて洒落た音楽!そんな音楽を歌って踊る青山さんが、いきいきとされていて、輝いていて、とても素敵なんです。人情味あふれ、どこか懐かしい時間が流れている「中町西通り商店街」が、青山さんたちの見事な歌と踊りのハーモニーによって、突如として「ここどこ?SHOW店街!?」な空間に一変するさまは、まさに「キソーテンガイ SHOW店街」!!何が起こるかわからないという、商店街の奇想天外さを、いろいろな意味で味わうことができるのが、この作品の醍醐味という気がします。
そのことをまず感じたのが、オープニングでした。開幕と同時に第1幕冒頭から、「八百青のこうじさん」、「魚屋のまみさん」、「クリーニング屋のあすかさん」のお三方が、タイトルソングで歌って踊る華麗なステージングで、観客のハートを鷲づかみ、「ミュージカル~♪」な空間へと誘ってくれます。お三方の衣裳は勿論、「中町西通り商店街」の若者たちの「普段着」といった感じ。青山さんも、確かブログの記事で、「まっ、商店街なので・・・」というようなことを書かれていたように思います。しかし、この「まっ、商店街」な感じの「普段着」を着ている人たちの歌と踊りが、突き抜けてプロフェッショナルなので(←そりゃ当然ですよね)、観客にしてみるとそのギャップがとても心地よくて、楽しかったです。青山さんたち3人が歌って踊って舞台に登場してくると、冒頭から雰囲気はもう「商店街」じゃなくて「SHOW店街」なわけです。青山さんたちのあのダンスと歌で、オープニングからいきなりお客さんたちは、ステージにググッとひきつけられちゃいます!!新装開店したお店に、ついつい「何々!?」という感じで入っていっちゃうときってありますよね、ちょうどあんな感じです。歌と踊りで、「商店街→SHOW店街」へとトリップできちゃうという感じでしょうか。
とにかく、このミュージカルの楽しさは、歌とダンスが始まると、都会のどこにでもある商店街の空間が、あるいは結婚10年経ってちょっと倦怠期なヒデさんやマコトさんのいる生活感のある空間が、突如として「SHOW」の空間へ・・・、というところなんです。青山さんも「八百青のこうじ」として台詞を話されて演技をされているときは、本当に「茄子を一個おまけしてくれるような、八百屋さんのやさしいおにいちゃん」な感じなのですが、いざダンスと歌が始まると、どうしても八百屋さんに見えないわけです。八百屋さんのおにいちゃんのはずなのに、なんでこんなにカッコよくダンスしちゃうわけ!?というのがとにかく最高でした。ミュージカルは、突然歌いだしたり、踊りだしたりするもの、ということがよく言われますよね。そこに違和感を感じる方というのもいらっしゃるのかもしれません。おそらくこの『SHOW店街組曲』は、それをものすごく極端な形でやっている作品なのだと思いますが、それが極端すぎて、逆に嫌味じゃないんです。あまり難しいことは考えずに自然と笑っちゃって、軽い気持ちになれる。そして、唐突に始まるSHOWタイムに、ある意味強引に巻き込まれていってしまう感じが、とても楽しいし、逆に心地よかったです。重厚なストーリーが展開するのではない、「こんな展開ありえないよ~」というのを突き詰めたような作品もすごく楽しいなと思いました。それで、そういうときに(ある意味強引に巻き込まれてゆくときに)青山さんならではの、コメディーセンスと最高のダンスの組み合わせが、キラリと光って、とても魅力的なんです。こういう作品でないと見られない、青山さんの魅力もあると思うのですが、私はそれをこの作品で観ることができて、とてもうれしかったです。
そして青山さんファンとして特筆すべきが、第2幕冒頭のイントロダクションのシーン。休憩後、客電が消えて、いよいよ第2幕が始まる!と期待が高まるわけなのですが、ピアニストの佐山雅弘さんが奏でるjazzyな感じの前奏が聞こえたかと思うと、薄暗がりに包まれた夜の街の片隅に、黒い帽子を目深に被ったひとりの男性の影が・・・。黒の上下に、インナーのシャツも黒、全身黒一色に身を包んだこの人は一体・・・?夜の商店街に突如として現れた、物言わぬ正体不明のひとりの男性ダンサー。その存在を観客は不思議に思いますが、青山さんが踊りだすや否や・・・。私などがわざわざ説明しなくてもおわかりいただけると思いますが、青山さんの見事なダンスに客席はあっという間にひきつけられ、魅了されていました。休憩時間のざわめきが、あっという間に遠のき、青山さんのスリリングなダンスに、皆さん息を呑んでいるという感じでしょうか。客席全体が舞台に引きつけられているのが、ものすごくわかるんです。誰よりも私自身、もうステージの青山さんのダンスに釘付けなのですけれど、周囲の座席から伝わってくる空気感が、やっぱりあのシーンにおいては別物だった気がします。とにかく、佐山さんのピアノの演奏を背景に、黒いソフト帽と黒いジャケットを巧みに扱いながら、「大人の男」の魅力もたっぷりに、粋で洗練されてしなやかなダンスで魅せてくれる、あのシーンの青山さんは、ものすごく素敵でした。「青山さんのこんなダンス観てみたかった~(いくらでも観ていたい~)」というソロのダンスで、ファン冥利に尽きる、素晴らしいシーンだったと思います。多分、ステージの上であんなにターンしている青山さんを観るのは、私は初めてだったような気がします。ターンして踊って、というその流れが、とてもしなやかで、艶を感じさせてくれて、粋なんです。あっという間に洗練されたSHOWな空間を創り出してしまう青山さんのダンスを観ていると、次回作『ROCKIN' Broadway』もものすごく楽しみになります。WSSや、「おどろんぱ!」の「ピュアピュアダンス」でも思いましたが、街の片隅で踊る青山さんは、やはり素敵ですね。今回のは、しかもソロで、また雰囲気もガラリと変わっていて、本当にカッコよかったです。この後に続く中山さんご登場のシーンが、とてもドラマティックに見えました。そして、お客さんのなかにはきっと、この後の福引の係りをしている青山さんが、さっき踊っていた人よね!?と思った方がいらしたはずです。そしてやはりこのシーンも、奇想天外でした。「中町西通り商店街」にどうしてこんなスゴイダンスを踊る人がっ!?夜だから青天の霹靂とは言わないのでしょうが、商店街にあんなダンサーが突如として現れたら、そりゃびっくりするでしょうね~♪マコトさんの「魅せられて」のシーンと同じぐらいに驚きました・・・。
それから、名曲の数々を、コーラスとして盛り上げ、時にソロで歌い上げる青山さんについても書いておかなければなりません!!まず全体を通して、青山さん、中山さん、高橋さんのお三方のハーモニーがとても迫力があって、また心地よくて素敵でした。衣裳を次々と替えながら、歌って踊ってSHOWを盛り上げるお三方のご活躍は素晴らしかったです。実際のストーリー展開上も、この3人がヒデさんとマコトさんのことを想って、一生懸命に奔走するというようなところがありますよね。それで、青山さんの歌なのですが、今回コーラスしているとき、かなり低音で歌われているときがあって、そんなことも嬉しい驚きだったりしました。勿論、テレビでは聞いたことがありましたが、劇場でライブな感じで聞くと、やはりファンとしては感動します。『TOMMY』の「押し付けがましい男/Eyesight to the Blind」の歌い始め、あの迫力ある高音にもかなり驚かされましたが、この『SHOW店街組曲』では、いろいろな歌を歌われる青山さんを、たくさん堪能できたこともファンとしては嬉しかったです。「おどろんぱ!」でも、青山さんはキャラクターに合わせてかなり声を変えておられる印象がありますが、今回の舞台では、曲によってガラリと変わる青山さんの歌をたくさん聞くことができました。なかでも、第1幕の「中町音頭」、そして第2幕の「木綿のハンカチーフ」は、ソロの部分があって、青山さんファンは必聴です。「木綿のハンカチーフ」の青山さんは、やさしい感じでとてもステキでした。
ところで、青山さんが歌った「木綿のハンカチーフ」は、筒美京平さん作曲、松本隆さん作詞の曲です。この曲も含め、今回、青山さんがこの作品にご出演されることを知り、多くの筒美さんの楽曲にふれる機会に恵まれました。毎回、青山さんのご出演作を通して、素晴らしい音楽の数々に出会うことは、私にとって観劇の大きな楽しみのひとつなのですが、筒美さんの曲に乗せられた歌詞というのが、どの曲もとても素敵な世界を展開しているなあ、と感じました。橋本淳さんや松本隆さんによるものが多いのですが、どの曲もまるで写真のように、人生の、と言いますか、男女の間に流れる機微のようなものを写し取ったものばかりです。2007年の今、60年代から90年代前半のこれらの曲を改めて聞いてみると、1曲1曲があまりにも見事に出来すぎていて完結しているので、リアルな同時代的な感覚というのを持つことは難しいように感じられる気もします。でもこの「出来すぎちゃってる感」が、あの時代の音楽の特徴なのかもしれないし、「1曲ごとにそのなかに込められたストーリーが見事に完結する感じ」というのが、誰もが懐かしさ(過ぎ去ったあの時代へのノスタルジーのようなもの)と憧れ(永遠の理想のようなもの)を抱きながら口ずさむことのできてしまう理由なのかもしれません。“SHOW”という言葉がタイトルに組み込まれているこの作品で、そんな筒美さんたちによる音楽が、どこにでもあるような商店街での、ありふれたヒデとマコトの日常の1コマを、クローズアップして浮き上がらせ、そこにひとつの特別なストーリーを吹き込んでいるような気がしました。そして、そのひとつひとつのストーリーを(一歩間違うと、中には辛気臭くなるものもあったり、ドタバタ劇に終わったりするものもあったのかもしれませんが)、青山さんたちの徹底的にステキな歌とダンスが“SHOW”に仕上げてくれていましたよね。全編を通して台詞を含めた楽しいやりとりや演出に、本当に心から笑わせていただきましたが、ただ笑っちゃうだけではなく、「安心して楽しめた」というのは、やはり歌とダンスがステキだったということがあったからだと思います。
『SHOW店街組曲』のパンフレットの表紙写真は、商店街のアーケードを写したセピア色の写真となっています。今でも日本中あちらこちらの街に行けば、どの街にもその街なりの商店街があるのは事実であるのに、どうして「商店街」にはセピアな気分が漂うのか、不思議ですね。ヒデさんとマコトさんのふたりがラブラブになるように、商店街がもっと賑わいを増すように、閉店しちゃう羊羹やさんのおばあちゃんのために、と中町西通り商店街の人たちが、一丸となって頑張っていましたが、「中町西通り商店街」に流れていたあの時間は、やはり今の時代を生きている私たちに欠けている何かを補ってくれる温もりがあるような気がしました。パンフレットに掲載された、演出の菅野こうめいさんのお言葉に、「彼(筒美京平さん)の曲の世界に合う舞台は?と考えて僕が思いついたのは何故か商店街だった。」というものがありました。一人の観客である私には、菅野さんのなかで、筒美さんの曲の世界と商店街がどのようにつながったのかを想像することはできませんが、筒美さんの曲の世界にも、もしかしたら、忘れてしまった何かを埋め合わせてくれるものがあるのかもしれませんね。
とにかく「楽しい細部」がたくさん詰まった作品で、私自身もDVD発売後に、劇場で味わったあの楽しさを、もう一度映像を通して追体験するのが、今からとても待ち遠しいです。その一方で、劇場では気づかなかったこともあって、新たな発見があるかもしれません。青山さんの舞台が映像化されるって、今回が初めてですよね、8月31日の発売日がとても楽しみです。たくさんの「共感」と「感動」を、ありがとうございました。それから、最後に一言、大事なこと忘れていました。青山さんの「何故かロンゲでオタク風な白バイ刑事」が、とても素敵でした。やっぱり青山さんは、おまわりさんのコスプレが似合いますね~☆「そこの車、止まりなさい」の声にシビレマシタ~♪


『SHOW店街組曲』は、40曲以上にも及ぶ筒美京平さんのヒットソングにのせて、歌と踊りでつづられるミュージカルコメディーショーといった感じの作品。同じ商店街に生まれ育った、ヒデ(中山秀征さん)とマコト(真琴つばささん)の出会い、結婚、そして結婚から10年経ってちょっと倦怠期な最近・・・、という流れに、商店街で行うショー(「劇中劇」ならぬ「SHOW中SHOW」)を取り入れて進行するという形式です。笑いあり、ちょっぴりほろりとさせられるところもありで、最初から最後までとても楽しい時間を過ごすことができました。60年代から90年代にかけての、思わず口ずさみたくなってしまうあの曲この曲が、面白い演出で次から次へとテンポよく飛び出してきます。そして、少人数編成のバンドの方々が奏でる、洗練されて洒落た音楽!そんな音楽を歌って踊る青山さんが、いきいきとされていて、輝いていて、とても素敵なんです。人情味あふれ、どこか懐かしい時間が流れている「中町西通り商店街」が、青山さんたちの見事な歌と踊りのハーモニーによって、突如として「ここどこ?SHOW店街!?」な空間に一変するさまは、まさに「キソーテンガイ SHOW店街」!!何が起こるかわからないという、商店街の奇想天外さを、いろいろな意味で味わうことができるのが、この作品の醍醐味という気がします。
そのことをまず感じたのが、オープニングでした。開幕と同時に第1幕冒頭から、「八百青のこうじさん」、「魚屋のまみさん」、「クリーニング屋のあすかさん」のお三方が、タイトルソングで歌って踊る華麗なステージングで、観客のハートを鷲づかみ、「ミュージカル~♪」な空間へと誘ってくれます。お三方の衣裳は勿論、「中町西通り商店街」の若者たちの「普段着」といった感じ。青山さんも、確かブログの記事で、「まっ、商店街なので・・・」というようなことを書かれていたように思います。しかし、この「まっ、商店街」な感じの「普段着」を着ている人たちの歌と踊りが、突き抜けてプロフェッショナルなので(←そりゃ当然ですよね)、観客にしてみるとそのギャップがとても心地よくて、楽しかったです。青山さんたち3人が歌って踊って舞台に登場してくると、冒頭から雰囲気はもう「商店街」じゃなくて「SHOW店街」なわけです。青山さんたちのあのダンスと歌で、オープニングからいきなりお客さんたちは、ステージにググッとひきつけられちゃいます!!新装開店したお店に、ついつい「何々!?」という感じで入っていっちゃうときってありますよね、ちょうどあんな感じです。歌と踊りで、「商店街→SHOW店街」へとトリップできちゃうという感じでしょうか。
とにかく、このミュージカルの楽しさは、歌とダンスが始まると、都会のどこにでもある商店街の空間が、あるいは結婚10年経ってちょっと倦怠期なヒデさんやマコトさんのいる生活感のある空間が、突如として「SHOW」の空間へ・・・、というところなんです。青山さんも「八百青のこうじ」として台詞を話されて演技をされているときは、本当に「茄子を一個おまけしてくれるような、八百屋さんのやさしいおにいちゃん」な感じなのですが、いざダンスと歌が始まると、どうしても八百屋さんに見えないわけです。八百屋さんのおにいちゃんのはずなのに、なんでこんなにカッコよくダンスしちゃうわけ!?というのがとにかく最高でした。ミュージカルは、突然歌いだしたり、踊りだしたりするもの、ということがよく言われますよね。そこに違和感を感じる方というのもいらっしゃるのかもしれません。おそらくこの『SHOW店街組曲』は、それをものすごく極端な形でやっている作品なのだと思いますが、それが極端すぎて、逆に嫌味じゃないんです。あまり難しいことは考えずに自然と笑っちゃって、軽い気持ちになれる。そして、唐突に始まるSHOWタイムに、ある意味強引に巻き込まれていってしまう感じが、とても楽しいし、逆に心地よかったです。重厚なストーリーが展開するのではない、「こんな展開ありえないよ~」というのを突き詰めたような作品もすごく楽しいなと思いました。それで、そういうときに(ある意味強引に巻き込まれてゆくときに)青山さんならではの、コメディーセンスと最高のダンスの組み合わせが、キラリと光って、とても魅力的なんです。こういう作品でないと見られない、青山さんの魅力もあると思うのですが、私はそれをこの作品で観ることができて、とてもうれしかったです。
そして青山さんファンとして特筆すべきが、第2幕冒頭のイントロダクションのシーン。休憩後、客電が消えて、いよいよ第2幕が始まる!と期待が高まるわけなのですが、ピアニストの佐山雅弘さんが奏でるjazzyな感じの前奏が聞こえたかと思うと、薄暗がりに包まれた夜の街の片隅に、黒い帽子を目深に被ったひとりの男性の影が・・・。黒の上下に、インナーのシャツも黒、全身黒一色に身を包んだこの人は一体・・・?夜の商店街に突如として現れた、物言わぬ正体不明のひとりの男性ダンサー。その存在を観客は不思議に思いますが、青山さんが踊りだすや否や・・・。私などがわざわざ説明しなくてもおわかりいただけると思いますが、青山さんの見事なダンスに客席はあっという間にひきつけられ、魅了されていました。休憩時間のざわめきが、あっという間に遠のき、青山さんのスリリングなダンスに、皆さん息を呑んでいるという感じでしょうか。客席全体が舞台に引きつけられているのが、ものすごくわかるんです。誰よりも私自身、もうステージの青山さんのダンスに釘付けなのですけれど、周囲の座席から伝わってくる空気感が、やっぱりあのシーンにおいては別物だった気がします。とにかく、佐山さんのピアノの演奏を背景に、黒いソフト帽と黒いジャケットを巧みに扱いながら、「大人の男」の魅力もたっぷりに、粋で洗練されてしなやかなダンスで魅せてくれる、あのシーンの青山さんは、ものすごく素敵でした。「青山さんのこんなダンス観てみたかった~(いくらでも観ていたい~)」というソロのダンスで、ファン冥利に尽きる、素晴らしいシーンだったと思います。多分、ステージの上であんなにターンしている青山さんを観るのは、私は初めてだったような気がします。ターンして踊って、というその流れが、とてもしなやかで、艶を感じさせてくれて、粋なんです。あっという間に洗練されたSHOWな空間を創り出してしまう青山さんのダンスを観ていると、次回作『ROCKIN' Broadway』もものすごく楽しみになります。WSSや、「おどろんぱ!」の「ピュアピュアダンス」でも思いましたが、街の片隅で踊る青山さんは、やはり素敵ですね。今回のは、しかもソロで、また雰囲気もガラリと変わっていて、本当にカッコよかったです。この後に続く中山さんご登場のシーンが、とてもドラマティックに見えました。そして、お客さんのなかにはきっと、この後の福引の係りをしている青山さんが、さっき踊っていた人よね!?と思った方がいらしたはずです。そしてやはりこのシーンも、奇想天外でした。「中町西通り商店街」にどうしてこんなスゴイダンスを踊る人がっ!?夜だから青天の霹靂とは言わないのでしょうが、商店街にあんなダンサーが突如として現れたら、そりゃびっくりするでしょうね~♪マコトさんの「魅せられて」のシーンと同じぐらいに驚きました・・・。
それから、名曲の数々を、コーラスとして盛り上げ、時にソロで歌い上げる青山さんについても書いておかなければなりません!!まず全体を通して、青山さん、中山さん、高橋さんのお三方のハーモニーがとても迫力があって、また心地よくて素敵でした。衣裳を次々と替えながら、歌って踊ってSHOWを盛り上げるお三方のご活躍は素晴らしかったです。実際のストーリー展開上も、この3人がヒデさんとマコトさんのことを想って、一生懸命に奔走するというようなところがありますよね。それで、青山さんの歌なのですが、今回コーラスしているとき、かなり低音で歌われているときがあって、そんなことも嬉しい驚きだったりしました。勿論、テレビでは聞いたことがありましたが、劇場でライブな感じで聞くと、やはりファンとしては感動します。『TOMMY』の「押し付けがましい男/Eyesight to the Blind」の歌い始め、あの迫力ある高音にもかなり驚かされましたが、この『SHOW店街組曲』では、いろいろな歌を歌われる青山さんを、たくさん堪能できたこともファンとしては嬉しかったです。「おどろんぱ!」でも、青山さんはキャラクターに合わせてかなり声を変えておられる印象がありますが、今回の舞台では、曲によってガラリと変わる青山さんの歌をたくさん聞くことができました。なかでも、第1幕の「中町音頭」、そして第2幕の「木綿のハンカチーフ」は、ソロの部分があって、青山さんファンは必聴です。「木綿のハンカチーフ」の青山さんは、やさしい感じでとてもステキでした。
ところで、青山さんが歌った「木綿のハンカチーフ」は、筒美京平さん作曲、松本隆さん作詞の曲です。この曲も含め、今回、青山さんがこの作品にご出演されることを知り、多くの筒美さんの楽曲にふれる機会に恵まれました。毎回、青山さんのご出演作を通して、素晴らしい音楽の数々に出会うことは、私にとって観劇の大きな楽しみのひとつなのですが、筒美さんの曲に乗せられた歌詞というのが、どの曲もとても素敵な世界を展開しているなあ、と感じました。橋本淳さんや松本隆さんによるものが多いのですが、どの曲もまるで写真のように、人生の、と言いますか、男女の間に流れる機微のようなものを写し取ったものばかりです。2007年の今、60年代から90年代前半のこれらの曲を改めて聞いてみると、1曲1曲があまりにも見事に出来すぎていて完結しているので、リアルな同時代的な感覚というのを持つことは難しいように感じられる気もします。でもこの「出来すぎちゃってる感」が、あの時代の音楽の特徴なのかもしれないし、「1曲ごとにそのなかに込められたストーリーが見事に完結する感じ」というのが、誰もが懐かしさ(過ぎ去ったあの時代へのノスタルジーのようなもの)と憧れ(永遠の理想のようなもの)を抱きながら口ずさむことのできてしまう理由なのかもしれません。“SHOW”という言葉がタイトルに組み込まれているこの作品で、そんな筒美さんたちによる音楽が、どこにでもあるような商店街での、ありふれたヒデとマコトの日常の1コマを、クローズアップして浮き上がらせ、そこにひとつの特別なストーリーを吹き込んでいるような気がしました。そして、そのひとつひとつのストーリーを(一歩間違うと、中には辛気臭くなるものもあったり、ドタバタ劇に終わったりするものもあったのかもしれませんが)、青山さんたちの徹底的にステキな歌とダンスが“SHOW”に仕上げてくれていましたよね。全編を通して台詞を含めた楽しいやりとりや演出に、本当に心から笑わせていただきましたが、ただ笑っちゃうだけではなく、「安心して楽しめた」というのは、やはり歌とダンスがステキだったということがあったからだと思います。
『SHOW店街組曲』のパンフレットの表紙写真は、商店街のアーケードを写したセピア色の写真となっています。今でも日本中あちらこちらの街に行けば、どの街にもその街なりの商店街があるのは事実であるのに、どうして「商店街」にはセピアな気分が漂うのか、不思議ですね。ヒデさんとマコトさんのふたりがラブラブになるように、商店街がもっと賑わいを増すように、閉店しちゃう羊羹やさんのおばあちゃんのために、と中町西通り商店街の人たちが、一丸となって頑張っていましたが、「中町西通り商店街」に流れていたあの時間は、やはり今の時代を生きている私たちに欠けている何かを補ってくれる温もりがあるような気がしました。パンフレットに掲載された、演出の菅野こうめいさんのお言葉に、「彼(筒美京平さん)の曲の世界に合う舞台は?と考えて僕が思いついたのは何故か商店街だった。」というものがありました。一人の観客である私には、菅野さんのなかで、筒美さんの曲の世界と商店街がどのようにつながったのかを想像することはできませんが、筒美さんの曲の世界にも、もしかしたら、忘れてしまった何かを埋め合わせてくれるものがあるのかもしれませんね。
とにかく「楽しい細部」がたくさん詰まった作品で、私自身もDVD発売後に、劇場で味わったあの楽しさを、もう一度映像を通して追体験するのが、今からとても待ち遠しいです。その一方で、劇場では気づかなかったこともあって、新たな発見があるかもしれません。青山さんの舞台が映像化されるって、今回が初めてですよね、8月31日の発売日がとても楽しみです。たくさんの「共感」と「感動」を、ありがとうございました。それから、最後に一言、大事なこと忘れていました。青山さんの「何故かロンゲでオタク風な白バイ刑事」が、とても素敵でした。やっぱり青山さんは、おまわりさんのコスプレが似合いますね~☆「そこの車、止まりなさい」の声にシビレマシタ~♪


