俺LOG

今年も偉そうに物を書いていきます。

ヨーグル

2004年08月31日 | Weblog
「ヨーグル」をご存知だろうか。
小さい壺みたいな、容器に入った駄菓子だ。
上には汚らしい牛乳瓶の蓋を薄くしたような紙で蓋をしてあり、
無造作に輪ゴムで縛られた小さな木のヘラで食べる、
ムース状の駄菓子だ。
甘味と、酸味があり、見た目はヨーグルトっぽいが、
全然ヨーグルトではなく、
あくまで「ヨーグル」というお菓子なのだ。

俺は駄菓子の中でもこれが好きなわけだが、
最近は汚らしい紙の蓋ではなく、
しっかりとビニールで包装されていた。
ちょっと味気ない感じもするが、
時代の流れでしかたないのだろう。
腹を壊したなんて言われたら、工場が閉鎖になってしまう。
昔はこんなもの食って腹を壊したら
自分の責任なんてところがあったのだが、
いまは違う。悪いことをして教師に殴られても、
「体罰だ!」
なんて言われる過保護な時代。
「お子様」のお腹は大事なのだ。

近所のお好み焼き屋さんに行くと、
店先で駄菓子が売ってるんだね。
訳のわからない占いのついたチョコ。
コーラの味がするラムネ。
水で溶かして飲むのであろう、粉のジュース。
でかい容器に決して清潔には見えないイカの駄菓子なんてのは
夢のような光景だった。
そして俺が食いたかったのはヨーグル。
うちの母親と言うのは、ベビースターすら体に悪いから食うなと、
そういう母親だったので、ヨーグルなんて得体の知れないものを
買って帰ったら何を言われるか知れない。
母親に怒られるのを恐れてこっそり買い、そのまま外で食った。
そのヨーグルの美味しかったこと。
俺にとってヨーグルは、禁断の果実ならぬ、
「禁断の駄菓子」だったのだ。

さてさて、そんなヨーグルだが。
今改めて食べて見ると、「?」マークが何個も付くような、
なんとも言いがたいマズさ。
あの時食べたあのヨーグルなのだが、これは不味い。
ザラザラとした食感。歯の裏にこびりつくクリーム。

しかし俺は思う。
「マズいけど、美味しい」
と…。
こんな口の中に広がる矛盾。
駄菓子屋の帰りに捕まえたトノサマバッタや、草の匂い。
森の中にある、みんなが知っていた「秘密基地」の匂い。
草で切った太ももの痒さ、転んですりむいた膝小僧の痛さ。
それはあの日こっそり食べた思い出が、
フラッシュバックしてくる味なのだ。
ヨーグルはまさに
「タイムカプセルに詰まった禁断の駄菓子」だった。