leka

この世界のどこかに居る似た者達へ。

ひとりぼっちのイーヴ。

2019-04-24 12:51:45 | お芝居・テレビ
ああ。

あぁ、昨夜は深く落ちて行ってしまった。



昨夜「クロードと一緒に」Blancの5公演目を観ました。

今回のBlancでは、後半のイーヴの独白は松田凌さん一人で行います。

このお芝居を観るといつも観客としては壊れゆく青年の姿をただ見ている事しか出来なくて、彼を助けたくとも助けられなかった様な気持ちにさせられるんです。

でも、今回の新たな演出でアタシは彼の最後には、近くに居てあげられた気持ちになったのです。


しかし。


昨夜は違ったんです。

イーヴはやはり深い暗がりの中へ落ちて行ってしまいました。


何でだろう。

落ちてゆく彼を掴もうとしても掴めなかった。

スピードは無いんだけれど、ゆっくり落ちて行ってしまってつかめない。


昨日は舞台の左側に座っていたのですが、刑事たちの演技がよく見えました。

彼らを観ていて思ったんです。「クロードと一緒に」が、いつしかハードボイルドの様になったなぁと。

イーヴは殺人を犯した容疑者ですが、刑事たちが見ているのは彼ではなく、もっと違う物なのです。

今までのクロードでは少なからず刑事達はイーヴの告白に耳を傾け、心を乱されていました。

でも、今回はイーヴを見てさえしない。

彼らが対峙しているのは、イーヴを含めた大きな壁の様な物。

刑事達はそれをどうにかよじ登って越えようとしているのです。

イーヴはその一部にしかすぎない。


判事は男娼イーヴを買った事があるのです。それは間違いない。

でも、もっともっと大きな問題が彼らを押さえつけようとしている。

それはひとつ間違えれば大変な騒動になってしまう。

どうにかしろ、と彼らはその大きな物に追い詰められているのです。

そんなややこしい事を持ち込んだイーヴを彼らは完全に敵視し、蔑んでいます。


イーヴはたった一人。

今までの「クロードと一緒に」の中で一番孤独です。


36時間何の進展もないまま過ぎ、少しづつ情報が入って来ます。

新たな情報がもたされる度に、刑事達は耳打ちし合い、目くばせし、俊敏に動き始めます。


書く事をやめ、机も椅子も片づけてしまう速記係、ギィ。

最初からずっとガムを噛み続け、”うんざりだ、早く帰らせろ、とっとと話せ”と言う顔をしている警備官、ラトレイユ。

現場のリーダー的存在であるロバート刑事は、若い男娼の言う事が理解出来ない上に、長年の経験と勘によってこれ以上イーヴに話を聞いても、こちら側が理解し筋道立ててこの件を片付ける事が出来ないと判断します。

すなわち、もう、イーヴの証言など聞かないと言う事です。


大人たちは個々に戦っている事があり、イーヴの事など文字通り置き去りにします。

舞台上の椅子をすべて降ろし、彼らはもう二度と舞台には戻って来ません。

判事の机と椅子だけが残り、イーヴはぽつんと一人でうずくまっているのです。


ひとりぼっちのイーヴ。


彼には言いたい事が本当は沢山ある。

堰を切った様に話し出す。

正気を失い、でも、狂っていないと理解して欲しくて言葉を紡ごうとする。


クロードとの最後の夜の事を話すイーヴ、二人が絶頂に達っする時の、何かに掴まってひとつひとつを息を切らしながら登ってゆく様な表現の松田さんが凄かった。

「それから、それから・・・」と激しく呼吸を繰り返しながら、倒れ込みながら話す。


アタシが座っていた席からは松田さんを後ろから見る事が多かったのですが、独白をしている時の松田さんは本当に凄かったんです。

後ろから見ると、顔の表情ではごまかせない体全体での演技が見えるのです。

何か凄く強い物、パワー、オーラ、スピリット・・・。とにかく、普段では見えない物が松田さんの体から凄まじい勢いで放出されるのが見えるんです。

本当に「イーヴ」が”入っている”んです。

アタシは松田さんが壊れてしまうんじゃないかと思いました。


この日の公演を初演でイーヴを演じた相馬圭祐さんとギイを演じた井上裕朗さんが観劇されていたようですが、初演で相馬さんのお芝居を観た時にも同じ様に、相馬さんが壊れてしまうんじゃないかと思ったんです。

その時と同じ感覚。

「イーヴ」が伝えたくて、体の中を暴れ回ってる。


同時に、どんな男でも相手にして自分の体を売って来た男娼イーヴの生活、人生を目の当たりにし、絶句する。


生きているのが不思議なくらい。



それは汗と涙にまみれながら美しいままのたうち回り、傷だらけになりながら無垢な愛を表現する役者に対しての思いなのか、男娼”イーヴ”に対しての思いなのか、もう境界線があやふやになって観客のアタシには分からなくなっていました。




イーヴは判事の机に座って、最後は穏やかに話していました。

横たわるクロードに沢山キスした事。横たわるクロードが美しかった事。自分の両親が死んだ時には、出来なかった事がクロードにしてあげられた事。


「彼を愛してる」



そして、部屋を出て歩いてお姉さんの事を考えた後に、クロードの事を考えた事。

それまで穏やかだったイーヴの表情が悲しみに歪みました。

「押し寄せる感情」と言うのがあるけれど、まさにそんな感じでした。


「ちょっと想像したんだ・・・腐っちゃうって・・・」


もう何度も泣いたのに、まだ涙は溢れます。

「もう、やめるよ。」



絶望の果てに居るイーヴ。

そこに居るのに深く深く、落ちて行ってしまう。

暗がりを力なく去ってゆくイーヴの足音。



客電がつき、やるせない気持ちで客席の人々は押し黙っています。

ああ、お芝居はおわったんだなと気付くまで時間がかかります。

拍手が小さく起き、それから大きくなりました。


カーテンコールはありません。





アタシの「クロードと一緒に」が終わってしまいました。

最後はやはり、やられてしまいました。

ああ、もっと観たかった。




帰り道はやるせない気持ちでいっぱいでしたが、何故かこのお話は温かい体温みたいな物を感じるお芝居だと思うんです。

だから、たっぷりその感情に浸りながら帰りました。

このお芝居は凄い。

ホントに凄いです。

ありがとう。素晴らしかった。







公演はまだ続きます。

でも、あと数える程しか観られません。

是非是非、是非是非、体験されて下さい。






























































































ふたり。

2019-04-23 18:15:57 | お芝居・テレビ
本日は「クロードと一緒に」Blancの公演日。

19時30分開演です。

お仕事帰りにダッシュされている方々もいらっしゃると思います。

どうかくれぐれも、転んだりケガしたりなさいませんよう。



夕暮れ時の横浜も、とても素敵ですね。

今日がアタシ的千秋楽でございます。

ホントの千秋楽を観たかったなぁ。



とても寂しいです。

時間が止まればいいのになぁ。



赤レンガ倉庫前は新たなイベントの設営中。



フードコートの窓際席から暮れゆく港を見ています。



寂しい気持ちにどっぷり浸かっていると、先程この窓の前を一組のカップルが通りました。

背の小さな人と背の高い人。

どちらも髪は短くて若いカップルです。二人共マスクをしていました。

どう見ても、どちらも男の子です。手をつないで通り過ぎました。

すれ違う女の子達が立ち止まって振り返ります。

そうですね。男の子同士のカップルですね。

そう言う事が堂々と出来る事はとても素敵な事です。

何だか感慨深いです。

イーヴとクロードも、そんな風に街を歩いたり出来たのでしょうか。

いや、彼らの生きていた時代では、今の何百倍も差別を受けたでしょう。

イーヴがきちんと眠れる夜があったとしたのなら、彼の夢の中で、あんな二人の姿を見せてあげたいですね。

本日もしかと、見届けたいと思います。















観劇マナーについて。

2019-04-22 18:27:52 | お芝居・テレビ
舞台「クロードと一緒に」昨日で公演を折り返したもよう。

もう半分来てしまったんですねぇ。

終わって欲しくないと思っているのは、アタシだけじゃないはずですよねぇ。


横浜での今公演は本当に特別な物になっていると思います。

終わって欲しくないなぁ。





昨夜のBlanc公演を観ました。

舞台を囲むように客席が配置されています。昨日は正面から観ました。松田さんが長椅子に体を横にして寝て、足の指をすり合わせたりするのを見ました(笑)。

初演から「クロードと一緒に」公演恒例の「終演後立ち上がれないお客さん」も相変わらず居て、「そうだよねー。」と思いながらアタシも席を立ちました。



お芝居は日々進化し、どんどん深みを増していましたが、観客サイドにおいて昨日はちょっと気になる事がありました。

アタシの隣の席は若い女性のお客さんでした。

彼女はイヤフォンで音楽を聴いていたのですが、かなり音漏れをしていたんです。

でも、開演前ですし何ら問題はありません。

隣のアタシが何となくストレスに感じるくらいですので、他の方の迷惑にはなっていません。

彼女はスマホを見ながら、開演直前まで音楽を聴いていました。


開演1,2分前になって公演においてのアナウンスがあり、アタシはスマホの電源を切りました。

隣の彼女もやっと音楽を聴くのをやめました。

そしてガサゴソと音をたてながら、バッグにスマホを入れていました。

画面が明るいままでした。

電源を落とさないままです。




イヤな予感しかしませんでした。




案の定と言いますか、そう言う事を平気でやる人はデリカシーが無い人が多いんです。

本番が始まって少し経つと、ガサゴソガサゴソ隣の席から音がします。

気になって仕方がないので見ると、彼女がティッシュを探していてポケットから出している音でした。

ホントにうるさいのです。

本番中に必要になりそうならば、手に持っていて欲しいのです。

でも、もしかしたら急な事だったのかもしれない。

アタシは自分にも起こり得る事かもしれないと、気持ちを切り替えました。


すると今度は咳。咳が続く。ゴホゴホ、ゴホッ、ゴホゴホ・・・。


風邪気味なのかなーーー。

お薬のんで来なかったのかなーーー。

開演前全然咳なんかしてなかったのになーーーーー。



でもやはり仕方のない事です。

アタシはそう言う人の隣に座った事をついてなかった事にして、お芝居はちゃんと観ようと座り直しました。



でもやっぱり。


やっぱりやらかすんですよ、そう言う人は。



お芝居も佳境に入って来る頃、ついにとうとう、その瞬間はやって来たんです。



「ブーン・・・」



彼女の足元の方から聞こえて来ました。

明らかにスマホのバイブ音が彼女の足元に置いたバッグから聞こえました。


周囲の観客にも聞こえたと思います。

終演後twitterで、本番中にバイブ音がした事について怒りのツイートをしている方がいて、「どこそこの席周辺」と音のした席の列が書かれていました。

ええ、そうです。

アタシはそこの列に座っておりました。

あなた様にも聞こえたんですね。



イヤな予感的中。


終演後、また咳き込みだす彼女。

顔も見ずに立って出口へ向かいました。


でも、お芝居はちゃんと観ましたよ。

そんな事ごときに気を取られるのは、役者さん達に失礼だからです。


役者さん達は舞台の上で、その物語の人間の人生を生きているからです。

一分一秒を生きているからです。

すぎた一秒はもう二度と取り返せないからです。

松田さんのイーヴの様に、命を削るように生きてる人を邪魔する事は、誰よりも他の観客達が許さないんです。


アタシの隣に座った彼女は観客失格です。






一公演、一公演が過ぎてゆきます。

大事に丁寧に大切に観劇したいですね。






































wherever you are

2019-04-21 23:38:54 | お芝居・テレビ
イーヴはとても大切な物を失ったんですね。

そして今夜イーヴがどんなにか大切な物を守ったのが見えた気がしました。

あくまでアタシなりに。


クロードはイーヴを愛した事で、クロード自身がイーヴを愛せる事を初めて自覚したのではと思いました。

クロードはイーヴと出会う前からガールフレンドとは付き合っていて、日記が暗号の様な物で書かれていたのは万が一彼女が読んでも何が書かれているのか分からない様にしたのではと。


クロードは以前から自分のセクシャリティについて気付いてはいたものの、行動にうつしたのはイーヴが初めて。

最初はイーヴを金で買ったけれど、そのうち本気で愛してしまったのでは。

イーヴもまた他の誰とも違うクロードと過ごすうちに、今まで気付かなかった自分の中の感情に戸惑いながらも身を任せたのかもしれません。



でも、クロードの家族、ガールフレンド、友達、そして世の中は二人の関係を決して許さないでしょう。

知られたらイーヴが危ない目にあうかもしれない。

だからクロードは目に涙を沢山ためて「君とは兄弟の様になりたいんだ」とイーヴに言ったのかもしれない。


イーヴはイーヴなりにそれを理解し「彼が僕で僕が彼」「二人の間に何もないみたいに」と、健気にクロードとの愛を育もうとしていました。


クロードはお金のトラブルを抱えていたようでした。

でも、それをイーヴは知らなかったし、クロードも言う気はなかったでしょう。


事件が起きた夜、二人の間には今までと違う空気が流れていたはずです。

松田さんのイーヴが話す言葉を聞くうちに、クロードはいつかは周囲に隠す事が出来なくなるであろう日に日に強くなるイーヴへの気持ちと、抱え始めていたトラブルに追い詰められ、自分で命を絶とうとしていたのかもしれないと思いました。

あの夜、愛し合ううちに無意識にイーヴはクロードの「君の手で」と言う願いを受け取ってしまったのかもしれません。


イーヴはこの後、クロードの家族やガールフレンドに散々言われるでしょう。「お前がそそのかしたんだ!愛し合ってたなんて嘘だ!」と。

でも彼はクロードの一番の想いを守ったと思うんです。

たとえ誰も信じないとしても

二人は愛し合っているんだと言う事実を。





お芝居はどんどん進化しています。

今夜は独白の最後、松田さんは哀しく笑っていました。

プレヴューでは判事の机の上で打ちのめされながらお芝居の最後を迎えましたが、今夜は床の上で哀しく微笑んで

「もう、やめるよ。」

と小さく言い、暗がりに消えてゆきました。





イーヴは取り返しのつかない事をしてしまったと分かっているのでしょう。

もう二度とクロードを抱きしめられない事も。

だけど愛し、愛されていた事は確かなのです。

だから、取り乱し、泣き叫び、分からないのです。


松田さんは何物も怖がらず、観客の胸に飛び込んで来ます。

そして、伝えたい沢山の事を必死に伝えようと、もがきます。

松田さんの顔が流す涙でキラキラ光っていました。

大きな身振り手振り、舞台を降りたり、舞台で寝転がったり、とにかく放出し続けます。


独白を一人で観客に向かってすると言う事は観客を巻き込みます。

アタシには今夜、イーヴが最後、観客達の腕に抱かれて眠るように見えました。

泣き疲れて眠るみたいに物語が終わったように見えました。





”心から愛せる人

 心から愛しい人

 この僕の愛の真ん中にはいつも君がいるから”




聴きながら駅まで歩きました。

イーヴは精一杯クロードを愛したんですね。

そして、お互いがお互いしか居なかったんですね。

 


ONE OK ROCK Wherever you are

難しく考えずに。

2019-04-19 23:21:17 | お芝居・テレビ
本日は「クロードと一緒に」松田イーヴの2日目です。

このお話は元々帰り道にグルグル考えてしまうお芝居なのですが、新たな展開を見せる今回の松田イーヴバージョンにかなり衝撃を受ける方々が居るみたいですね。

確かに客席を巻き込んでの独白場面はジェットコースターに乗せられる様な気分なので、何も心の準備が出来ていないと凄く驚くかもしれません。

でも、お芝居でも音楽でも何でもそうですが、一番最初の衝撃は二度と体験する事は出来ないのです。
ツイッターやブログで、どうやら凄いらしいと話題になっていたら、それを観客として素直に受け取りに行けばいいと思います。

色々難しく考えてしまうと、お芝居を楽しめなくなってしまう気が。
まして今回のクロードは、降りたった駅から既に始まり、終演後、駅まで歩く間もストーリーを紡いでくれます。

素晴らしい体験が出来ます。

cyanバージョンを観に行った時、みなとみらい線の日本大通り駅で降りてみました。
馬車道駅も素敵でしたが、日本大通り駅は出口を出るとジャックが出迎えてくれるのです。



有名な観光スポット、横浜三塔の1つ開港記念会館。通称ジャック。
凄くカッコイイ!



そして、神奈川県庁。通称キング。



迫力ある姿がキングたる風格を表していますが、肝心の塔を写せませんでした。ごめんなさい。




そして最後が横浜税関。通称クイーン。



気品のある美しい姿。横浜三塔の女王です。


日本大通り駅で降りると、この三塔全てを見る事が出来ます。
赤レンガ倉庫へ行く道すがら、海へ向かって歩き出すと次々と見えて来ます。
やっぱり、日本ではない国へ居る様な気分になります。
イーヴは”凄くかっこいいアメリカ人”に街の観光スポットを訪ねられたと劇中で話していましたが、ここを教えたかもしれませんね。「三つの塔が凄く綺麗だよ。」と。


どこを切り取っても異国情緒あふれる場所なので、この日も雑誌か何かの撮影をしている人達がいました。




強い日差しの中に映えるワインバーは準備中。午後6時からのオープン。
暗くなって店がオープンしたら、この赤い扉の前でクロードがこの店に入ろうとイーヴを誘い、イーヴが自分には少し気取りすぎた店じゃないかと話していそうです。
結局、クロードに”大丈夫だから”と言われ彼に背中を優しく押されながら店に入るイーヴ。みたいな(笑)。

想像力を搔き立てられますね。最高です。


日本大通り駅から行くと海をとても感じるので、海辺の街の雰囲気の中赤レンガ倉庫が見えて来ます。

「クロードと一緒に」のサウンドトラックを手に入れてしまったので、それを聴きながら歩いたらホントに凄いことになりそうです。自分が(笑)。


次回、こう言う体験が出来るとは限らないので存分に楽しんで行きたいですね。