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この世界のどこかに居る似た者達へ。

クロードと一緒に 2019年版。

2019-04-16 23:38:16 | お芝居・テレビ
アタシが初演から観劇させて頂いているお芝居”クロードと一緒に”が四度目の公演を迎えました。

初日に先がけてプレヴュー公演を観て来ました。

今回はBlanc、Cyanと言う演者の異なる二つのチームでのWキャスト公演です。

アタシが観たのは松田凌さんが”彼”を三度演ずるBlancのプレビューでした。


劇場は横浜赤レンガ倉庫。ここは、駅から歩くと少し時間がかかります。
横浜ベイエリアあるあるで「見えているのになかなか着かない」と言う、なめてかかると確実に遅刻する劇場です。
でも、この「クロードと一緒に」と言うお芝居を演じるためにあるような、このお芝居にぴったりの本当に素敵な場所です。

それは降り立った駅からもう既に物語が始まった様に感じる程です。




みなとみらい線馬車道駅。電車を降りるとこの景色です。ここは日本?と思う位素敵です。

モントリオールの駅?ジャリ駅かな?ボナヴァンチュール駅?

とにかく一気に「クロードと一緒に」の世界へと誘われます。ワクワクします。




そして改札を出ると大きな鍵のついた重そうな扉や金属製の窓枠などがはめ込まれたレンガの壁。これは駅構内です。

とても迫力のある壁で圧倒されます。思わず「おおっ!」と声を上げてしまいました。これは横浜銀行旧本店で実際に使われていた窓や扉だそうです。この馬車道駅は横浜銀行旧本店がかつて建っていた真下に位置するんだそうです。また、駅構内のレンガは大正以前の古いレンガだとか。

赤レンガ倉庫方面には6番出口から出ます。階段を上がった所にも重厚な建物があります。横浜第二合同庁舎と言う建物だそうです。
その建物を左手に見て赤レンガ倉庫までは真っすぐに歩きます。



これまた外国の街角に居る様な気分になる素敵なインテリアショップ。

もう心はカナダのフランス語圏の町の中です。


一方向から見ると横浜の景色が絵画に見える様に額縁の形をしているホテル「ナビオス横浜」、ワールドポーターズくらいまで来ると右手に赤レンガ倉庫が見えて来ます。

そこからはひたすら右方向へ歩くだけです。歩くだけですが思うよりも時間がかかります。ご注意を。

横浜市営地下鉄・桜木町駅からでも歩けるみたいですが、アタシは断然この馬車道駅から歩く事をお勧めします。こちらの方が最寄りの駅ですし、公式で徒歩6分とありますが10分位でしょうか。結構な早歩きで(笑)。
とにかく馬車道の駅が素敵すぎます。もう、そこから「クロードと一緒に」が始まります。

プレヴュー公演は19時30分スタートだったので街はもう真っ暗です。赤レンガ倉庫は何かイベントをやっていて、その灯りが煌々としていました。人々の喧騒も「クロードと一緒に」の物語の夜の建国記念日と、モントリオール万博の夜の大騒ぎのような賑わいみたいです。

横浜と言う土地柄的に外国人の方達もいらっしゃるので、やはり日本じゃないどこかに居る気分です。


「これは凄いことになるぞ。」


と思いました。舞台を観る前からこんなにもその世界に入り込んでしまうなんて、街全体がこの物語を抱え込んで観客を待っているようで少し怖くなる程です。

そしてその予感は見事に的中しました。


もう既に知られているのでネタバレにもならないかもしれませんが、一つだけ。

今までのストーリーでは”彼”の独白は舞台上の刑事や速記係に向けて展開されましたが、Blancでは舞台から”彼”以外の出演者は全て居なくなってしまいます。”彼”はたった一人であの数十分間の独白をします。

たった一人で、と言うのは違うかもしれません。

それは全て観客に向かっての独白だったからです。


皆が居なくなってしまった舞台に”彼”は小さくうずくまっていました。

長い沈黙がありました。観客がじっと”彼”を見ていました。もの凄い沈黙でした。今思い出しても心が震えます。

あの時からアタシ達と”彼”は4度目の公演で初めて「繋がり」を持ったんです。

そして凄まじい時間が訪れます。


覚悟しなければなりません。

何故なら松田凌演ずる”彼”が全力でこちらに飛び込んで来るからです。

そして、目を逸らしたくなるような現実にも、愛する人との愛おしい時間にも、全部すべてこちらの手を強く掴んで連れて行くからです。


何故、”彼”は恋人クロードを殺したのか。

「言葉に出来ない、言い表せない」

そう繰り返す”彼”の言いたい事が一瞬、掴めた気がしたんです。


そう思ったと同時に舞台が暗くなりました。







今まで彼らが物語を紡いでいたのと同じ空間に居る様な劇場。

やはり女の子達は泣いてしまっていました。まだあちらの世界から戻って来られません。アタシもです。







ああ、これは。

これはヤバいぞ。

今までのクロードとは全然違う。

でも何故か”彼”を近くに感じる。

最後の最後に近くに居てあげられた気がする。

これは初めてのこと。


静かにゆっくりと柔らかなラブソングが頭の中に流れて来る。

このお芝居の自分だけのエンディングには、優しくて哀しくてあたたかい曲が流れて来る。

どうあってもこの物語は殺人の話ではなくて愛の物語なのです。





いつか振り出した小雨に濡れながら、暗がりに浮かぶハートを見ました。

劇場に入る前はカップルが列をなして写真を撮っていました。もう誰もいません。

こんな風景もなんだか妙に、ストーリーの中に入り込んでいる気がしてなりません。

無論、この日も色々引きずり眠れぬ夜となりました。


今回も眠れない夜を数える事になると思うけれど、あの舞台がどう進化してゆくのか観ておかない手はありません。

Cyanもまた、全然違うと聞きます。迷っていましたがチケットを取りました。

きっと観ておかないと後々後悔すると思ったからです。

”彼”=イーヴと共に暗闇の中の光を探しにまた出かけようと思います。

公演は4月28日まで。

「クロードと一緒に」