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側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

大人の側わん症 装具治療後 23年間の結果 No.3

2008-06-16 00:50:14 | 大人の側弯症進行
大人の側わん症シリーズとして:

添付の表は、今回ご紹介している文献に掲載されていた図を写したものです。
専門誌 Spine. 2006 Feb
タイトル Nonoperative treatment for adolescent idiopathic scoliosis:
a 10- to 60-year follow-up with special reference to health-related
quality of life. (スイス)
思春期特発性側彎症に対する非手術的治療 : 10歳~60歳にいたる経過観察

この研究では、121人の患者さんを調査したものです。治療は装具(60人)、
理学療法(59人)、電気刺激(2人)。フォローアップ率は89.6%。フォローアップした
時点での平均年齢は 38歳 (幅は、20歳~73歳)。治療が終了した時点からフォロー
した時点までの長期経過後における、痛み/身体障害/生活の質などに関する満足度
調査を実施。経過は 10年~60年 (平均23年)を経たものである。
初診時のコブ角と治療終了時点でのコブ角において、13人が本質的変化(±10度)が
発生していた。11人が10度以上の進行があり、平均19度進行(幅、12~30度)、
2人がコブ角減少があった(マイナス10度とマイナス13度)。

骨成熟完了と判断された時点から、フォローアップ時点での計測で、7人が本質的
な進行がみられ、平均16.3度 (幅、10度~31度)。
胸椎側わんの患者8人のうちの5人では、80度以上の進行があり、呼吸器系障害を
有していた。 45度以上のカーブを有する患者は、それ以下の患者に比べると高い率
で腰痛を訴えていた。


骨成熟と判断された時点(装具療法終了)から長期経過観察時点までに10度以上の
進行があった7例とは、下記のとおりです。

患者番号 初診  骨成熟  直近  フォロー期間  フォロー時年齢
4    31    49   80     47年      58歳   0.65
6    12    12   29     26       39    0.65
25    50    63   80     16       29    1.0
31    29    38   50     27       39    0.44
32    29    53   58     16       30    0.31
33    59    52   64     53       64    0.23
38    20    50   60     25       35    0.4

このうちの4番と25番の患者さんは80度に達しているので、すみやかな手術適応です
ので、次のリスク計算から除外して、残りの患者さんのその後のリスクを考察して
みます。


患者番号 直近 フォロー期間 フォロー時年齢 10年後のコブ角予測 年齢
6     29    26      39  0.65   35.5      49   
31    50    27      39  0.44   54.4      49
32    58    16      30  0.31   61.1      40
33     64    53      64  0.23   66.3      74
38    60    25      35  0.40   64       45

ここでの計算は非常に単純化して表記しています。これがつねに当てはまるわけでは
ありません。しかし、“予測”という意味では、ひとつの目安になるものです。

これをご覧になっている方で、30代、40代の [ 元思春期特発性側彎症 ]の患者さん
がおられましたら、そして、どうも腰痛に悩まされているとか、身体が曲がって
きているのを自覚しはじめている方がおられましたら、まず第一にすべきことは
側彎症専門外来にいき、レントゲン写真をとり、現時点でのコブ角がいったい何度
であるかを測定してもらうことです。

その上で、目安として、一年に0.5度ずつ進行すると想定して、10年後のコブ角を
計算してみて下さい。何度であれば、手術が適応とは一概には言えません。
こどもの場合は、50度を超えるようであれば、それ以上に進行する確率がかなり高い
ために、早めに手術したほうが良いですよ、と指導を受けるでしょう。
しかし、大人の場合は、50度だから、即刻手術が必要とは言われないと思います。
年齢と、患者さんの主訴の程度と、将来予測と、そして何よりも患者さん自身が
望むかどうか、ということが重要視されると思います。

あなたは、手術は怖いからという理由で整体にいくこともできます。でも、整体では
何も解決しないことだけは、はっきりと認識しておくことが必要です。整体の施術
により、側彎カーブがストップすることは決してありません。10年の長期を想定
した場合、整体により改善する(カーブが減少する)ということもありえません。
冷たい言い方に聞こえるでしょうが、それが現実の姿です。

彼らは、目先のお金を稼ぐことが目的ゆえに、「側彎症は私の施術で治ります」と
宣伝しているのです。もしも、皆さんが、次の契約書(念書)を持参して、施術して
欲しいと申し出たら、彼らは尻込みするでしょう。


          念書

  甲(整体○○○)は、乙(あなたの名前)の申し出により、乙の側彎症を治療する
 ために施術を行う。乙は、側彎症が治ることを目的としており、その証としては
 コブ角が減少することを求めている。コブ角が施術により減少しなかった場合
 および、コブ角が施術後○○年間で増悪した場合は、甲は乙に損害賠償○○万円
 を支払うことを約する。
                平成20年6月15日

                甲 住所  氏名   印
                乙 住所  氏名   印

もっとも、○○年後にその整体がその地で営業しているとは思えませんが......

そして、もうひとつ重要なことは、皆さんは、整体の宣伝により、整体にいけば
側彎が改善するという幻想を抱かされてしまっていますが、現実には、その逆に
悪化させることがあることを知らされずにいます。

 外からいくら力を加えても側彎症のカーブは永続的矯正を得ることは絶対に
 ありません。手技を加えられることで、一日か二日ほど“見た目”が変わること
 はあるかもしれませんが、それはあくまでも一日か二日ほどのものであり、
 またもとに戻ってしまいます。ときには、強制的な力を加えられたことで、
 カーブが悪化することさえあります。(下記海外サイト情報)

 he authors has shown that over-manipulating or adjusting the spine seems
to create a certain amount of instability, possibly leading to further
buckling of the scoliotic curvature.
 カイロプラクティックによる過度のマニュピレーションやアジャストメントは
 脊柱の不安定を増大させ、さらなるカーブの増大を示していた。

手術が怖いものだ、手術ではつねに合併症がある(下半身不随になる) etc
こういう嘘と恐怖心をあおる言葉がネット上には氾濫しています。患者のふりを
した発言で、手術が怖い、手術をしたくない、手術以外の方法をおしえて欲しい
そういう発言が意図的に (営業目的で) 流され続けています。

かつて側彎症を治療していて、いま、20代をすぎた皆さんは、体調がおかしいと
感じたときは、ともかく一度あらためて専門医にて診察してもらうことです。
そのうえで、上記に記したように、自分の有するリスクを考えて下さい。
側彎症が整体によってその病気の本質が歪められてしまったために、この病気を
本気で考えるということがこの日本には根付いていません。
もし、皆さんが、胃カメラを呑んで胃がんが発見され、いまはまだ小さいから
手術の必要はないが、5年後にもう一度検査してみて考えましょうと医師から指示を
受けたら、素直にその指示に従い、そしてこれからのご自分の人生をどう設計して
いくかについて考えるはずです。

側彎症はただちに命に関わる病気ではありませんし、今回の文献でもわかるように
そして、多くの研究が示しているように、全ての患者さんが、大人になってカーブ
が進行する....手術が早期に必要になるほどに進行するものではありません。
でも、進行しているとわかった場合は、それがどれくらいの期間で進みそうなのか
自分が何歳くらいのときに、手術が必要になるかもしれないことを計算してみて
下さい。時間は十分にあります。もし数年以内かもしれないと予想されるときは
側彎症専門医師のうち、どの先生に手術してもらうかを調べ始めることです。

もし、それが10年後くらいであるならば、基本的に何も心配しなくても大丈夫です
なぜならば、医学は日進月歩です。10年後には、必ず現在以上に医学は進歩して
います。10年単位のことで気苦労する必要はまったくありません。


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ブログ内の関連記事
「大人の側わん症 装具治療後 23年間の結果 No.2」
 http://blog.goo.ne.jp/august03/e/871451f1aaca8aac574ba0f251c75505

「大人の側わん症 装具治療後 23年間の結果 」
 http://blog.goo.ne.jp/august03/e/ce032df5b9d344eb068e161d07681412



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