(H19年12月8日追記)
下記のホームページから関連する記事を見つけましたので、追記します。
Scoliosis Association
http://www.scoliosis-assoc.org/default.tpl?PageID=1&cart=11971051662763183&PageName=HOME&sec_id=1&sec_status=main
側弯症は男子に比べて8倍も女子に多く発症する病気であることから、側弯症と
妊娠との関係に関する質問は、患者本人と家族にとって大きな心配となります。
文献における発表はこの点について少数の患者を対象としたものであり、ある調査
では妊娠によりカーブが進行したと述べ、ある調査では変化はなかった、という
具合で結論の見られないものでした。
そこで私たちは、妊娠によりカーブが進行するのかどうか、手術により脊柱固定を
した患者において妊娠がなにか問題となるのかを明確にするための研究を実施しま
した。
方法
デラウェア州、ミリントンにあるデュポン病院にて、特発性側弯症と診断された
1600人の女子から、355人が研究に選択されました。レントゲン撮影や、定期検診
を含め、精密な患者履歴をとり、妊娠した回数、妊娠時の年齢、妊娠期間、妊娠中
および出産時の腰痛を含むなんらかの問題点、そして新生児の健康等を調べました
結果 :
この研究の355人のうち175人(グループA)が妊娠しており、180人(グループB)が
妊娠していなかった。グループAのうち75人(平均23.8歳)は観察のみであった。
グループAの37人とグループBの55人は装具療法であった。63人のグループAと42人の
グループBは手術を行った。
グループA 175人 ........妊娠 ..66%進行なし 10%(10度進行) 7%(5度減少)
75人(観察のみ)
37人(装具)
63人(手術)
グループB 180人 ..........未妊娠 ....68%進行なし 6%(10度進行) 5%(5度減少)
55人(装具)
42人(手術)
→( コメント by august03)
引用した資料には調査した患者さんの詳細な背景(年齢、コブ角等)
は記載がないので、資料の精度としては低いのですが、上記のAとBの
比較からだけでも、幾つかの示唆を得ることができます。
ご覧のように、妊娠した患者グループも、妊娠しなかった患者グルー
プも両方とも、進行なし/進行あり/減少の比率がほぼ同一である
という事実に注目できます。
つまり、進行ありは「妊娠」とは無関係ということになるでしょう。
進行の有無(減少も含めて)は、妊娠による影響ではなく、
この資料には記載がないために不明ですが、患者さんの治療終了時の
コブ角の大きさや、骨成熟度、側弯カーブのタイプというような因子
が影響していると考えることができます。
つまり、この研究は妊娠と側弯の関係を調査するのが目的で実施され
ているのですが、結果から導きだされるのは、それだけではなく、
特発性側弯症という病気の長期アウトカムとして、約70%は治療終了後
(骨成熟後)は安定している、10%前後でカーブ進行が続く、5%前後で
改善(減少)する。という傾向を示していることを知ることができます
(ブログ内の関連記事 20年後のアウトカム/16年後のアウトカムを
参照下さい)
妊娠によるカーブ進行への影響 :
手術をしなかった250人の妊娠による影響を調査した。多くの患者(グループAの66%
、グループBの68%)ではカーブに変化はなかった。グループAの10%とグループBの
6%で、10度以上の進行があった。 グループAの7%、グループBの5%で5度以上の改善
(カーブ減少)があった。
無治療の患者グループAと装具療法の患者グループBとを比較したところ、その差は
見られなかった。興味深いのは、装具治療の患者では無治療の患者よりも、統計的
にカーブ進行リスクが低かった。
重度カーブでは、重度であればあるほど進行のリスクは高くなる。年齢にかかわら
ず最初の妊娠ではカーブ進行リスクは低いが、最初の妊娠が24歳以上の場合はリス
クは高くなる。初めての妊娠が18歳以下のときはカーブ進行リスクはほとんど見ら
れなかった。ひとりだけ妊娠するのに比較すると三人の妊娠の場合は、10度以上
カーブが進行するリスクがわずかに高かったが、その差は統計的に有意ではなかっ
た。グループAの63人、グループBの42人が手術を行った。多くはインスツルメン
テーションを用いない手術であったが、これらの患者での妊娠によるカーブ進行は
見られなかった。
妊娠と出産 :
グループAの175人は合計で238人のこどもを産んでいた。妊娠中に側弯症に関連
する一切の問題はなかった。77%で妊娠中に腰痛があったが、そのうちのわずかに
12%だけがひどい痛みであることを訴えた。
この研究のために、妊娠出産後の経過も調査したが、側弯症患者の腰痛の具合は、
側弯症ではない人たちと比較してなんら差はなかった。
帝王切開は238出産のうち14例(5.9%)で行われていたが、それらは側弯症とは無関係
であった。米国における帝王切開率は16%である。
先天性股関節脱臼や内反足を含む先天的疾患を有したこどもは5%であった。米国に
おける同疾患の発生率は7%である。先天性疾患と母親の側弯症とはなんの因果関係
もみられなかった。
結論
この研究より
(1) カーブが重度でない患者では、妊娠はカーブ進行のリスクを増大させない
(2) 最初の妊娠の年齢、妊娠の回数、カーブが安定しているかどうか、というよう
なことは妊娠によるカーブ進行のリスクには影響しない
(3) 脊柱固定術をした患者では、妊娠による脊柱への影響は見られなかった。
(4) 帝王切開の率や先天性疾患を有する率は、米国の一般的なそれと差はなかった
(5) 脊柱固定術をしなかった患者のほうが、妊娠中の腰痛を訴える率が高かった
(6) 脊柱固定術をした患者では、腰痛および妊娠や出産時になんらかの問題が起こ
るリスクが低かった
////////////////////////////////////////////////////////////////////
(H19年7月4日追記 : この項は、august03の意見が多く含まれています。
私は医師ではありませんので、医学的に誤解や誤りが含まれている可能性は
ありますので、どうかそのことを考慮されてお読みいただきたいと思います)
...............................................................
特発性側弯症患者さんが手術する年齢は、おそらく13歳~20歳の範囲がピークに
なっていると予想します。その方がたが、大人になり結婚し、妊娠という年齢は
24,5歳~32,3歳ほどでしょうか。
そのときになり、心配になるのが、自然分娩できるのか? 最初から帝王切開を
選択したほうが良いのか? という心配だと思います。
心配の中身をさらに検討しますと
自然分娩で普通にこどもは生まれる?
(手術で骨が固定されていることの影響で骨盤/産道は普通に機能するの?)
→ 生まれてくるこどもに対するリスク
→ 出産する母親の健康へのリスク (出産時の問題と出産後の問題)
このような心配があるために、もしリスクが高いならば、帝王切開を選択したほう
が良いのではないか ? と思われるわけですね。
ここで、もうひとつ現代日本の医療事情が患者さんを悩ませることになります。
つまり、医師(整形外科医と産婦人科医)が回答をださない / だせない という
事情です。
日本の医療は、「科」別の縦割りです。横断的な繋がりは、同じ病院の中であって
も、ほとんどないに等しいと思います。上記のような例にしても、相互に連絡を
とり、相談し、結論を導く、というシステムはとられていない病院が大半だと思い
ます。
また、整形外科医は、出産については素人と同じ医療知識でしょう。同様に
産婦人科の先生も、側弯症については素人同じです。
さらに、現代日本をむしばんでいるのが、医療事故/医療訴訟の問題です。
もっともその問題に直面しているのが産婦人科の先生です。産婦人科の医師が減少
している、という話しは新聞、テレビ等でもしばしば取り上げられる話題です。
これらに加えて、日本の医療システムは、これまで疫学調査がなおざりにされて
きました。患者さんがどういう状況にあり、手術後にどういう状況になり、そして
10年後、20年後にどういう状況になるのか? という調査を行う医療政策はとられて
きていませんでした。いまも、ほとんどそれは動いていないというのが実情です。
.....この問題もいつか機会がありましたら、「医療へのひとりごと」に書いて
みたいと思います。
いま、この日本で、患者さんが手に入るのは、経験者のかたが書かれたブログか
掲示板情報のみです。医学データや医療情報として適正な指針は行政からも医師側
からも提供されていないのが実態でしょう。
現状においてできることは、自分のことは、自分で考えて判断するしかない、
ということになるのかもしれません。
..........................................................
私は、医師ではありませんし、私がここでご提供する情報と意見に、私自身も
「あなた」に責任を持つことはできません。あくまでも、「あなた」の自己責任に
おいて、以下をお読みいただきたいと思います。
日本国内の医学データ、情報はありませんが、術後20年間のデータに基づく文献が
スウェーデンから出されています。スウェーデンという国は、国/政府が30年以上も
前から国民医療について、国をあげてこのような疫学調査を実施している国です。
長期にわたるデータとしては、側弯症患者さんは、このデータを参考にして検討
することができると思います。
/////////////////////////////////////////////////////////////
*腰痛は、3グループには「差」はなく、手術患者の35%、装具患者の43%、
比較対照の28%で腰痛があった。
*最初の妊娠時における帝王切開についても3グループ間には「差」はなかった。
(手術患者で19%、装具患者で14%、比較対照群で18%)
*吸引分娩は、手術患者が、比較対照や装具患者にくらべると率が高かった。
(手術患者で16%、装具患者で8%、比較対照で5%)
*腰痛による性生活のなんらかの不便を、手術患者の33%で、装具患者の28%で、
比較対照群で15%が感じていた。
/////////////////////////////////////////////////////////////
このデータをもとに考えますと、
- 特発性側弯症で手術した患者さんも自然分娩は可能である
- 自然分娩と帝王切開では、自然分娩のほうが率は高い
- 分娩の内容は、手術患者も装具患者も対象者も、内容的にはかわりない
- 吸引分娩の率だけが手術患者では高かった
- 出産後の不便としては、腰痛がありえる
以下は、august03の意見です。
私は、整形外科については、かなり勉強してきていますが、産婦人科のことは
素人です。ですから、出産の持つリスクについては産婦人科の先生とご相談され
るのがベストです。ただ、その場合、上記に書きましたように、産婦人科の先生
は問題が発生することを避けたいはずですから、リスクのできるだけ少ない
出産方法を推薦するのではないかと予想します。
それを予想した上で、次の点は患者さんご自身もご自分の意見を持つことができ
ると思います。
* 側弯症手術をしていても、生まれてくるこどもに対するリスクはほぼ考え
られない
* 手術に伴うリスクは、自分(母親)の身体健康、とくに腰痛に関するもので
あること
私は、男なので、なおさら様子が分からないのですが、
出産...自然分娩でも軽い人と、たいへんな人がいると聞きます。
たいへんな場合は、途中で帝王切開に切り替えることも可能なのではないで
しょうか ?
以下は、かつて、掲示板に同様の質問があっときに、記載した私のコメントです
出産について 投稿者:august03 投稿日:2007年 5月30日(水)23時58分44秒
腰の下のほうの手術というのは、腸骨からの骨採取のための小手術を示していると
思います。これは、側弯症手術だけではなく、整形外科の手術.....例えば骨折など
でも.....で、移植する骨が不足したりしたときに、自家骨移植ということで、ご自
分の腸骨から骨を削りだして必要部位に移植することを言います。ときどき、その
切除による「痛み」が残ることがありますが、お若いときの手術ですからその切除
した部位は新しい骨が再生して何の問題もないはずです。
側弯の手術は、カーブを矯正するだけで、いわば内臓器等にダメージを与えている
わけではありません。手術してから、すでに10年以上経過して、そのあいだに、
どの程度の体力があり、どういう健康状態であるかは把握されていると思います。
いわゆる、普通の人達と変わりのない生活をされてきているのであれば、妊娠、出
産にあたっても、普通のひとたちと同じようにできる、と考えられていいはずです
よ。
帝王切開する、しないは、側弯症とは関係なく、その必要のある場合、....逆子と
か...に必要に応じて医師が判断することで良いと思います。 少なくとも、側弯症
だったからとか、手術しているから、ということの理由で帝王切開することは、
現在はしていない。と考えていいと思います。
....昔の先生は、経験も少なく、何か問題が発生したときのことが心配で、安全策
として帝王切開を。という言い方をしていたのだと思いますよ。
...................................................................
ブログ内の関連項目
特発性側弯症 20年後のアウトカム No.4
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/4ddf60ab567dd7231bc02f555d416ac9
側弯症と妊娠について
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/dd74499102b74008f7c2f4a7d22412b7
下記のホームページから関連する記事を見つけましたので、追記します。
Scoliosis Association
http://www.scoliosis-assoc.org/default.tpl?PageID=1&cart=11971051662763183&PageName=HOME&sec_id=1&sec_status=main
側弯症は男子に比べて8倍も女子に多く発症する病気であることから、側弯症と
妊娠との関係に関する質問は、患者本人と家族にとって大きな心配となります。
文献における発表はこの点について少数の患者を対象としたものであり、ある調査
では妊娠によりカーブが進行したと述べ、ある調査では変化はなかった、という
具合で結論の見られないものでした。
そこで私たちは、妊娠によりカーブが進行するのかどうか、手術により脊柱固定を
した患者において妊娠がなにか問題となるのかを明確にするための研究を実施しま
した。
方法
デラウェア州、ミリントンにあるデュポン病院にて、特発性側弯症と診断された
1600人の女子から、355人が研究に選択されました。レントゲン撮影や、定期検診
を含め、精密な患者履歴をとり、妊娠した回数、妊娠時の年齢、妊娠期間、妊娠中
および出産時の腰痛を含むなんらかの問題点、そして新生児の健康等を調べました
結果 :
この研究の355人のうち175人(グループA)が妊娠しており、180人(グループB)が
妊娠していなかった。グループAのうち75人(平均23.8歳)は観察のみであった。
グループAの37人とグループBの55人は装具療法であった。63人のグループAと42人の
グループBは手術を行った。
グループA 175人 ........妊娠 ..66%進行なし 10%(10度進行) 7%(5度減少)
75人(観察のみ)
37人(装具)
63人(手術)
グループB 180人 ..........未妊娠 ....68%進行なし 6%(10度進行) 5%(5度減少)
55人(装具)
42人(手術)
→( コメント by august03)
引用した資料には調査した患者さんの詳細な背景(年齢、コブ角等)
は記載がないので、資料の精度としては低いのですが、上記のAとBの
比較からだけでも、幾つかの示唆を得ることができます。
ご覧のように、妊娠した患者グループも、妊娠しなかった患者グルー
プも両方とも、進行なし/進行あり/減少の比率がほぼ同一である
という事実に注目できます。
つまり、進行ありは「妊娠」とは無関係ということになるでしょう。
進行の有無(減少も含めて)は、妊娠による影響ではなく、
この資料には記載がないために不明ですが、患者さんの治療終了時の
コブ角の大きさや、骨成熟度、側弯カーブのタイプというような因子
が影響していると考えることができます。
つまり、この研究は妊娠と側弯の関係を調査するのが目的で実施され
ているのですが、結果から導きだされるのは、それだけではなく、
特発性側弯症という病気の長期アウトカムとして、約70%は治療終了後
(骨成熟後)は安定している、10%前後でカーブ進行が続く、5%前後で
改善(減少)する。という傾向を示していることを知ることができます
(ブログ内の関連記事 20年後のアウトカム/16年後のアウトカムを
参照下さい)
妊娠によるカーブ進行への影響 :
手術をしなかった250人の妊娠による影響を調査した。多くの患者(グループAの66%
、グループBの68%)ではカーブに変化はなかった。グループAの10%とグループBの
6%で、10度以上の進行があった。 グループAの7%、グループBの5%で5度以上の改善
(カーブ減少)があった。
無治療の患者グループAと装具療法の患者グループBとを比較したところ、その差は
見られなかった。興味深いのは、装具治療の患者では無治療の患者よりも、統計的
にカーブ進行リスクが低かった。
重度カーブでは、重度であればあるほど進行のリスクは高くなる。年齢にかかわら
ず最初の妊娠ではカーブ進行リスクは低いが、最初の妊娠が24歳以上の場合はリス
クは高くなる。初めての妊娠が18歳以下のときはカーブ進行リスクはほとんど見ら
れなかった。ひとりだけ妊娠するのに比較すると三人の妊娠の場合は、10度以上
カーブが進行するリスクがわずかに高かったが、その差は統計的に有意ではなかっ
た。グループAの63人、グループBの42人が手術を行った。多くはインスツルメン
テーションを用いない手術であったが、これらの患者での妊娠によるカーブ進行は
見られなかった。
妊娠と出産 :
グループAの175人は合計で238人のこどもを産んでいた。妊娠中に側弯症に関連
する一切の問題はなかった。77%で妊娠中に腰痛があったが、そのうちのわずかに
12%だけがひどい痛みであることを訴えた。
この研究のために、妊娠出産後の経過も調査したが、側弯症患者の腰痛の具合は、
側弯症ではない人たちと比較してなんら差はなかった。
帝王切開は238出産のうち14例(5.9%)で行われていたが、それらは側弯症とは無関係
であった。米国における帝王切開率は16%である。
先天性股関節脱臼や内反足を含む先天的疾患を有したこどもは5%であった。米国に
おける同疾患の発生率は7%である。先天性疾患と母親の側弯症とはなんの因果関係
もみられなかった。
結論
この研究より
(1) カーブが重度でない患者では、妊娠はカーブ進行のリスクを増大させない
(2) 最初の妊娠の年齢、妊娠の回数、カーブが安定しているかどうか、というよう
なことは妊娠によるカーブ進行のリスクには影響しない
(3) 脊柱固定術をした患者では、妊娠による脊柱への影響は見られなかった。
(4) 帝王切開の率や先天性疾患を有する率は、米国の一般的なそれと差はなかった
(5) 脊柱固定術をしなかった患者のほうが、妊娠中の腰痛を訴える率が高かった
(6) 脊柱固定術をした患者では、腰痛および妊娠や出産時になんらかの問題が起こ
るリスクが低かった
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(H19年7月4日追記 : この項は、august03の意見が多く含まれています。
私は医師ではありませんので、医学的に誤解や誤りが含まれている可能性は
ありますので、どうかそのことを考慮されてお読みいただきたいと思います)
...............................................................
特発性側弯症患者さんが手術する年齢は、おそらく13歳~20歳の範囲がピークに
なっていると予想します。その方がたが、大人になり結婚し、妊娠という年齢は
24,5歳~32,3歳ほどでしょうか。
そのときになり、心配になるのが、自然分娩できるのか? 最初から帝王切開を
選択したほうが良いのか? という心配だと思います。
心配の中身をさらに検討しますと
自然分娩で普通にこどもは生まれる?
(手術で骨が固定されていることの影響で骨盤/産道は普通に機能するの?)
→ 生まれてくるこどもに対するリスク
→ 出産する母親の健康へのリスク (出産時の問題と出産後の問題)
このような心配があるために、もしリスクが高いならば、帝王切開を選択したほう
が良いのではないか ? と思われるわけですね。
ここで、もうひとつ現代日本の医療事情が患者さんを悩ませることになります。
つまり、医師(整形外科医と産婦人科医)が回答をださない / だせない という
事情です。
日本の医療は、「科」別の縦割りです。横断的な繋がりは、同じ病院の中であって
も、ほとんどないに等しいと思います。上記のような例にしても、相互に連絡を
とり、相談し、結論を導く、というシステムはとられていない病院が大半だと思い
ます。
また、整形外科医は、出産については素人と同じ医療知識でしょう。同様に
産婦人科の先生も、側弯症については素人同じです。
さらに、現代日本をむしばんでいるのが、医療事故/医療訴訟の問題です。
もっともその問題に直面しているのが産婦人科の先生です。産婦人科の医師が減少
している、という話しは新聞、テレビ等でもしばしば取り上げられる話題です。
これらに加えて、日本の医療システムは、これまで疫学調査がなおざりにされて
きました。患者さんがどういう状況にあり、手術後にどういう状況になり、そして
10年後、20年後にどういう状況になるのか? という調査を行う医療政策はとられて
きていませんでした。いまも、ほとんどそれは動いていないというのが実情です。
.....この問題もいつか機会がありましたら、「医療へのひとりごと」に書いて
みたいと思います。
いま、この日本で、患者さんが手に入るのは、経験者のかたが書かれたブログか
掲示板情報のみです。医学データや医療情報として適正な指針は行政からも医師側
からも提供されていないのが実態でしょう。
現状においてできることは、自分のことは、自分で考えて判断するしかない、
ということになるのかもしれません。
..........................................................
私は、医師ではありませんし、私がここでご提供する情報と意見に、私自身も
「あなた」に責任を持つことはできません。あくまでも、「あなた」の自己責任に
おいて、以下をお読みいただきたいと思います。
日本国内の医学データ、情報はありませんが、術後20年間のデータに基づく文献が
スウェーデンから出されています。スウェーデンという国は、国/政府が30年以上も
前から国民医療について、国をあげてこのような疫学調査を実施している国です。
長期にわたるデータとしては、側弯症患者さんは、このデータを参考にして検討
することができると思います。
/////////////////////////////////////////////////////////////
*腰痛は、3グループには「差」はなく、手術患者の35%、装具患者の43%、
比較対照の28%で腰痛があった。
*最初の妊娠時における帝王切開についても3グループ間には「差」はなかった。
(手術患者で19%、装具患者で14%、比較対照群で18%)
*吸引分娩は、手術患者が、比較対照や装具患者にくらべると率が高かった。
(手術患者で16%、装具患者で8%、比較対照で5%)
*腰痛による性生活のなんらかの不便を、手術患者の33%で、装具患者の28%で、
比較対照群で15%が感じていた。
/////////////////////////////////////////////////////////////
このデータをもとに考えますと、
- 特発性側弯症で手術した患者さんも自然分娩は可能である
- 自然分娩と帝王切開では、自然分娩のほうが率は高い
- 分娩の内容は、手術患者も装具患者も対象者も、内容的にはかわりない
- 吸引分娩の率だけが手術患者では高かった
- 出産後の不便としては、腰痛がありえる
以下は、august03の意見です。
私は、整形外科については、かなり勉強してきていますが、産婦人科のことは
素人です。ですから、出産の持つリスクについては産婦人科の先生とご相談され
るのがベストです。ただ、その場合、上記に書きましたように、産婦人科の先生
は問題が発生することを避けたいはずですから、リスクのできるだけ少ない
出産方法を推薦するのではないかと予想します。
それを予想した上で、次の点は患者さんご自身もご自分の意見を持つことができ
ると思います。
* 側弯症手術をしていても、生まれてくるこどもに対するリスクはほぼ考え
られない
* 手術に伴うリスクは、自分(母親)の身体健康、とくに腰痛に関するもので
あること
私は、男なので、なおさら様子が分からないのですが、
出産...自然分娩でも軽い人と、たいへんな人がいると聞きます。
たいへんな場合は、途中で帝王切開に切り替えることも可能なのではないで
しょうか ?
以下は、かつて、掲示板に同様の質問があっときに、記載した私のコメントです
出産について 投稿者:august03 投稿日:2007年 5月30日(水)23時58分44秒
腰の下のほうの手術というのは、腸骨からの骨採取のための小手術を示していると
思います。これは、側弯症手術だけではなく、整形外科の手術.....例えば骨折など
でも.....で、移植する骨が不足したりしたときに、自家骨移植ということで、ご自
分の腸骨から骨を削りだして必要部位に移植することを言います。ときどき、その
切除による「痛み」が残ることがありますが、お若いときの手術ですからその切除
した部位は新しい骨が再生して何の問題もないはずです。
側弯の手術は、カーブを矯正するだけで、いわば内臓器等にダメージを与えている
わけではありません。手術してから、すでに10年以上経過して、そのあいだに、
どの程度の体力があり、どういう健康状態であるかは把握されていると思います。
いわゆる、普通の人達と変わりのない生活をされてきているのであれば、妊娠、出
産にあたっても、普通のひとたちと同じようにできる、と考えられていいはずです
よ。
帝王切開する、しないは、側弯症とは関係なく、その必要のある場合、....逆子と
か...に必要に応じて医師が判断することで良いと思います。 少なくとも、側弯症
だったからとか、手術しているから、ということの理由で帝王切開することは、
現在はしていない。と考えていいと思います。
....昔の先生は、経験も少なく、何か問題が発生したときのことが心配で、安全策
として帝王切開を。という言い方をしていたのだと思いますよ。
...................................................................
ブログ内の関連項目
特発性側弯症 20年後のアウトカム No.4
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/4ddf60ab567dd7231bc02f555d416ac9
側弯症と妊娠について
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/dd74499102b74008f7c2f4a7d22412b7