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(追記あり) 側わん症手術後の矯正率損失 correction loss について No.2

2008-07-19 23:35:56 | 側弯症手術について
(オリジナルは7月10日記載。7月19日一部修正追記してあります)

海外文献より
「Minimum 10 years follow-up surgical results of adolescent idiopathic
scoliosis patients treated with TSRH instrumentation」
(TSRH脊椎デバイスを用いて治療した思春期側わん症患者の最小10年の経過観察結果)

  http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?artid=2200705

添付レントゲン写真から一言だけ申し上げさせていただきますと、

    術前コブ角 57度 → 135ヶ月後(約11年) 20度

かなり良好な成績が得られています。
この理由が、実はタイトルにもある TSRHという脊椎デバイスにあります。
かつては 脊柱固定手術というと「ハリントンロッド」という名前が代名詞として
使われてきましたが、実は、このハリントン手術法というのは1970年代に登場した
脊柱固定術の創成期に使われていたデバイスなのです。それから、時代はうつり
いま現在使用されているデバイスには、ハリントンは皆無です。それに代わる
新しいデバイスが使用されています。

そして、デバイスが新しい世代を迎えるごとに治療成績も向上してきています。
そのひとつの例が、ここに掲載したレントゲン写真ということになります。

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医療機関 UFUK University (トルコ)

1991年9月~1994年11月までに、109名の思春期特発性側彎症患者にTSRH法で脊柱固
定手術を行った。45名(41.3%)が男子、64名(58.7%)が女子。
平均年齢 14.4±1.9歳、経過観察期間136.9±12.7ヶ月(120~159ヶ月)、術前コブ角
度60.8°±17.5°、術後コブ角度の矯正率64.0±15.8%。
術前に70度を超える患者や側屈をしたときに50%以下の矯正の堅いカーブの場合には
前方椎体切除も併用した。肋骨変形が4cm以上のときには、thoracoplastyも併用した。
手術開始の最初の38名ではフックによる固定だけを行い、引き続く71名では
胸郭部ではフック固定を、胸腰椎部と腰椎部ではtranspedicular スクリューによる
固定をおこなった。全ての患者で、後方骨癒合を得るために、局所骨と腸骨からの
骨移植を混合して用いた。
10年後の診察時での矯正角の損失は10.3°±10.8°本来の胸椎形態を獲得できた患者の
率は83.5%、本来の腰椎形態を獲得できた患者の率は67.9%。手術後には、すべての
患者でバランスのとれたカーブを獲得できており95.4%の患者では完全に良好なバラ
ンスであった。この良好なバランスは10年経過後も維持されていた。

全体の患者のうち、4名(3.7%) でインプラントの不具合があった。3名(2.8%) では
早期での術後感染があった。
レントゲン観察の結果、術後矯正角の損失はインプラント不具合に関係するもので
あることがわかった。また、臨床的痛みの解消は、骨癒合と相関していることが
わかった。
およそ10名 (9.2%) が偽関節であった。そのうちの4名はインプラント不具合が原因
であり、6名は15度以上の矯正角損失であった。これらの患者では再手術を行った。
矯正角損失が10度~14度の患者が10名いたが、再手術は行わず経過観察することと
した。
このTSRH手術法を開始した初期20名のうち、4名(3.7%)で神経障害があった。これは
手術中に術中モニタリング機器ではなく、wake-upテストのみで手術していたことに
原因があった。その後の89名の手術では術中モニタリングテスト( SSEP and TkMMEP
法)の為の機器が使用可能となり、これをすることで、全例で神経障害はなかった。

患者は、手術後一日目で、ベッド寝返りをうつことを、二日目で、ベッドに座ることを、
三日目で、歩行することを奨励した。手術後にはキャストもブレースも用いなかった。

全ての患者が手術後、学校に復帰した。64名(58.4%)が地方に住み、仕事に従事して
いる。40名が地方で農業に従事している。5名が未就業であった。64名(31.9%)が
結婚し、12名の女子が通常分娩で出産しており、3名の女子が帝王切開であった。

矯正角損失について:
今回の研究で、最終的な平均コブ角度はこの10年間のフォローでも、従来の手術法
の結果よりも改善していた。最終的な矯正角は術前と比較して56.7±17.7%であり、
矯正角損失も、9.1°±11.9°ほどであった。もっとも矯正角損失の大きかった患者は
術後感染あるいは神経障害により2年後にインプラントを抜去した。

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(august03より)
上記URLの英文を抜粋ですが、和訳してみました。
トルコで、1991年に実施された手術の研究論文ということで、ちょっと時代的には
古いのですが、ハリントン手術以降の第三世代といわれる側彎症用デバイスを使用
した手術成績という面で情報を得ておいていただければと思います。
(デバイスはこれ以降も改良が加えられ、現在はもっと優れた成績の得られるデバイス
と手術方法となっています)
合併症も発生していますが、術中の脊髄神経モニタリングを行える医療機器が導入
された後には、神経障害がゼロとなっていることは医療機器による患者の安全性の
向上のひとつのエピソードだと思います。

この研究論文から読み取れることは、術後感染とインプラント不具合の発生をいか
に少なくするか、防ぐかが、術後の成績と相関している。ということでしょうか。
....感染はインプラントとは直接関係はしません。術後感染の原因には、虫歯や
皮膚の菌なども関係してくることがありますので、手術が想定される場合は、普段
から虫歯治療や皮膚の具合などにも注意しケアをしておくことが大切と思います。

デバイスと手術手技の向上により、術後の矯正角損失の幅は大きく改善されてきて
いることがわかります。また矯正角の向上には、脊柱の柔らかさが影響しています
ので、普段からの柔軟体操も大切だと思います。

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(ブログ内の関連記事)
 「(追記) 側わん症手術後の矯正率損失 correction loss について」
 http://blog.goo.ne.jp/august03/e/9b5be7cbcdf1a72985331f1b07080ee3

























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