
7月13日。二人がパリ、テュイルリー宮広場に出動した日。
あの日二人は玄関で家族や召使いたちの見送りを受けてから、お屋敷を離れたでしょうか?今回の出動の意味は、ジャルジェ将軍もわかっていたからちゃんと玄関先まで行き、二人の姿が見えなくなるまでそこに立っていたと思います。夫人も泣き顔を見せぬよう、必死に涙をこらえて見送った。オスカルが行ってしまうと、前日お披露目された肖像画の前に立ち、「行くがいい おまえの選んだ道を その情熱の命ずるままに」と呼びかけます。もはやその声はオスカルには届きませんが---。将軍は薄々、オスカルが市民の側につくことを予想していたかもしれない。けれどそれは娘が選んだ道。もはや自分の手の届かないところに行ってしまったように感じたでしょうか?
ばあやは体調が悪かったのか、ベッドで「うっ うっ」と涙ぐんでいます。二人がもしかしたら生きて戻っては来れないことを予期していたのかもしれません。
オスカルとアンドレは普段どおり見送りの人たちに声をかけ、いつもと変わらない様子で去って行った。まして前夜、夫婦になったことなど、誰にも気づかれないように。それとも見送りに出た人たちに、これまでの感謝の意味を込め何かメッセージを伝えたでしょうか? アンドレはばあやがいないことに気づき心配しただろうか?いえ、アンドレのことです。きっとばあやの部屋へ行き、それとなく別れを告げたと思います。ここは原作に描かれていないので、いろいろと想像が膨らむ場面です。
ジャルジェ将軍そして夫人は、娘を軍人として育ててしまったことに深い後悔の念を抱いたかもしれない。特に将軍。オスカルが生まれた時、まさか30年後、フランスにこのような緊急事態が起きるとは予想していなかったはず。ジャルジェ家は代々王家をお守りする家柄。それを継いでくれる者がいれば、男でも女でもよかった。しかし事態は将軍が思っていたほうに動かず、革命という将軍自身も経験したことのない方向に向かっていく。もうこの歯車を止めることはできない。あとは娘に任せるのみ。
兵営に着くと衛兵隊員たちが「着剣完了 整列終わりました。」と出動への準備が出来たことをオスカルに告げる。アンドレの左肩を軽く叩きながら、何事かを呟くアラン。「いいか、ちゃんと俺たちの指示を聞くんだぞ。隊長は俺たちが守ろう。」とでも言っているのでしょうか?この無言のコマ、とても巧いなと思います。
「何があっても 必ず私についてきてくれ いいか 何があってもだ」
何があってもを2回繰り返すオスカル。もうこの時点で不測の事態が起きることを十分想定していましたね。その時、隊員たちがパニックを起こしてはいけない。まず自分が冷静な判断を下さないと。オスカルの覚悟は既にできている。その時臆病者にならぬよう、アンドレもそばにいてくれる。
テュイルリー宮広場では、衛兵隊はドイツ人騎兵と戦ったのですね。今までずっと王家直属のフランスの軍隊を相手にしていたと思い込んでいましたが「めざすは テュイルリー宮広場 ドイツ人騎兵ぞ!」とはっきりオスカルが言っています。新作エピアラン編でも最初の方でアランが、アンドレがドイツ人騎兵の前に飛び出し---と言っていました。
テュイルリー宮広場へ向かいながら、オスカルは両親、アントワネットと子どもたち、そしてフェルゼンに別れを告げます。「さらば さらば フェルゼン伯!」フェルゼンの名前に伯を付けたのは、もう自分が貴族の身分を捨てたからでしょうか?初恋との決別。15年近く片想いし続けた相手。この時のオスカルの横顔はいつ見ても美しいです。もう自分の心はアンドレひとすじに間違いはない。青春の日々に別れを告げパリに向かう。
二度と戻ることのない私の部屋よ---オスカルもアンドレも「立つ鳥 跡を濁さず」で、部屋の中をきちんと整理し、出動していったでしょう。敢えて言うならオスカルのベッドのシーツに1~2本、黒髪が残っていたかもしれません。けれどそれは誰も気づかぬまま。いやそれとも召使いたちが気づき、二人が結ばれたことを悟ったでしょうか?これは読者それぞれの想像に委ねるところですね。
戦闘が始まった時、隊員達はオスカルには気づかれないよう、アンドレをカバーするような体勢を組んでいたのではないかと思います。あの時オスカルが咳き込まなければ、もしかしたらアンドレは命を落とさずに済んだかもしれない。いえ、それはわかりません。ここから先は考えるとつらくなります。
被弾し死がすぐそこまで迫っているアンドレは、オスカルに水を求めます。オスカルはとっさに「す すぐ持って来てやる 待ってろ」と言い水を求めに行きますが、水はオスカルを自分から遠ざけるための口実でした。アンドレ、本当は水なんてどうでもよかった。自分がこの世を去るところを、オスカルに見せたくなかった。彼女の悲しむ姿を見たくなかった。本当なら愛する人の胸の中で、息絶えたいだろうに----。ここでは隊長と従卒ではなく、妻と夫なんですね。アンドレ---執筆していくうちに池田先生の手を離れ、どんどん自由に動き始めたのでは?
拙文を読んでくださる方々に感謝します。
あの日二人は玄関で家族や召使いたちの見送りを受けてから、お屋敷を離れたでしょうか?今回の出動の意味は、ジャルジェ将軍もわかっていたからちゃんと玄関先まで行き、二人の姿が見えなくなるまでそこに立っていたと思います。夫人も泣き顔を見せぬよう、必死に涙をこらえて見送った。オスカルが行ってしまうと、前日お披露目された肖像画の前に立ち、「行くがいい おまえの選んだ道を その情熱の命ずるままに」と呼びかけます。もはやその声はオスカルには届きませんが---。将軍は薄々、オスカルが市民の側につくことを予想していたかもしれない。けれどそれは娘が選んだ道。もはや自分の手の届かないところに行ってしまったように感じたでしょうか?
ばあやは体調が悪かったのか、ベッドで「うっ うっ」と涙ぐんでいます。二人がもしかしたら生きて戻っては来れないことを予期していたのかもしれません。
オスカルとアンドレは普段どおり見送りの人たちに声をかけ、いつもと変わらない様子で去って行った。まして前夜、夫婦になったことなど、誰にも気づかれないように。それとも見送りに出た人たちに、これまでの感謝の意味を込め何かメッセージを伝えたでしょうか? アンドレはばあやがいないことに気づき心配しただろうか?いえ、アンドレのことです。きっとばあやの部屋へ行き、それとなく別れを告げたと思います。ここは原作に描かれていないので、いろいろと想像が膨らむ場面です。
ジャルジェ将軍そして夫人は、娘を軍人として育ててしまったことに深い後悔の念を抱いたかもしれない。特に将軍。オスカルが生まれた時、まさか30年後、フランスにこのような緊急事態が起きるとは予想していなかったはず。ジャルジェ家は代々王家をお守りする家柄。それを継いでくれる者がいれば、男でも女でもよかった。しかし事態は将軍が思っていたほうに動かず、革命という将軍自身も経験したことのない方向に向かっていく。もうこの歯車を止めることはできない。あとは娘に任せるのみ。
兵営に着くと衛兵隊員たちが「着剣完了 整列終わりました。」と出動への準備が出来たことをオスカルに告げる。アンドレの左肩を軽く叩きながら、何事かを呟くアラン。「いいか、ちゃんと俺たちの指示を聞くんだぞ。隊長は俺たちが守ろう。」とでも言っているのでしょうか?この無言のコマ、とても巧いなと思います。
「何があっても 必ず私についてきてくれ いいか 何があってもだ」
何があってもを2回繰り返すオスカル。もうこの時点で不測の事態が起きることを十分想定していましたね。その時、隊員たちがパニックを起こしてはいけない。まず自分が冷静な判断を下さないと。オスカルの覚悟は既にできている。その時臆病者にならぬよう、アンドレもそばにいてくれる。
テュイルリー宮広場では、衛兵隊はドイツ人騎兵と戦ったのですね。今までずっと王家直属のフランスの軍隊を相手にしていたと思い込んでいましたが「めざすは テュイルリー宮広場 ドイツ人騎兵ぞ!」とはっきりオスカルが言っています。新作エピアラン編でも最初の方でアランが、アンドレがドイツ人騎兵の前に飛び出し---と言っていました。
テュイルリー宮広場へ向かいながら、オスカルは両親、アントワネットと子どもたち、そしてフェルゼンに別れを告げます。「さらば さらば フェルゼン伯!」フェルゼンの名前に伯を付けたのは、もう自分が貴族の身分を捨てたからでしょうか?初恋との決別。15年近く片想いし続けた相手。この時のオスカルの横顔はいつ見ても美しいです。もう自分の心はアンドレひとすじに間違いはない。青春の日々に別れを告げパリに向かう。
二度と戻ることのない私の部屋よ---オスカルもアンドレも「立つ鳥 跡を濁さず」で、部屋の中をきちんと整理し、出動していったでしょう。敢えて言うならオスカルのベッドのシーツに1~2本、黒髪が残っていたかもしれません。けれどそれは誰も気づかぬまま。いやそれとも召使いたちが気づき、二人が結ばれたことを悟ったでしょうか?これは読者それぞれの想像に委ねるところですね。
戦闘が始まった時、隊員達はオスカルには気づかれないよう、アンドレをカバーするような体勢を組んでいたのではないかと思います。あの時オスカルが咳き込まなければ、もしかしたらアンドレは命を落とさずに済んだかもしれない。いえ、それはわかりません。ここから先は考えるとつらくなります。
被弾し死がすぐそこまで迫っているアンドレは、オスカルに水を求めます。オスカルはとっさに「す すぐ持って来てやる 待ってろ」と言い水を求めに行きますが、水はオスカルを自分から遠ざけるための口実でした。アンドレ、本当は水なんてどうでもよかった。自分がこの世を去るところを、オスカルに見せたくなかった。彼女の悲しむ姿を見たくなかった。本当なら愛する人の胸の中で、息絶えたいだろうに----。ここでは隊長と従卒ではなく、妻と夫なんですね。アンドレ---執筆していくうちに池田先生の手を離れ、どんどん自由に動き始めたのでは?
拙文を読んでくださる方々に感謝します。
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