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Vばら 

ある少女漫画を元に、エッセーと創作を書きました。原作者様および出版社とは一切関係はありません。

6月20日 (2)

2016-06-20 22:36:59 | つぶやき

  もう1つの6月20日、それは1791年、国王一家がヴァレンヌ逃亡を試みた日。

 明日6月21日は夏至。今年6月20日のヴェルサイユの日の出と日の入り時刻を調べてみると、

 日の出:5:48  日の入り:21:43  

 夜は10時近くまでうっすらと明るい。となると陽が完全に落ちる夜10時以降から、あたりが明るくなり始める午前5時までの約7時間以内に、闇を利用して逃亡を成功させないと大変なことになる。よりによって夏至の頃に、逃亡計画を実行せざるをえないほど切羽詰まっていたのか?ヴァレンヌ逃亡計画に当初国王は乗り気でなく、そのため実行日が何度か延期になった。もしもっと早い時期に実行していれば、あるいは違った結果になったかもしれない。馬車で何度も逃亡ルートを走ったことのある地理に明るい御者ならともかく、パリ市内すらよくわからないフェルゼンが、愛する人のために自ら御者を買って出て、この計画を何とか成功させようとする。しかしフェルゼンは外国人。パリ市を出るため道に迷い2時間以上ロスをする。最初の宿駅ボンディでフェルゼンと別れてからルイ16世は気が緩んだか、道中馬車から降りて散策するなど、逃亡中とは思えない行動をとる。逃亡だというのに豪華なベルリン馬車を用意し、喉が乾きやすいルイ16世のためにたくさんのワイン、またいずれ凱旋して戻る時のために国王夫妻は豪華な衣装を積み込む。当然積み荷は重くなり、速度は遅くなる。そんなことが重なるうちに、各地に配属していた軍隊との待ち合わせ時刻がどんどん遅れ、サン・ムヌー宿駅長のドルーエに正体を見破られてしまう。

↓ ヴァレンヌ逃亡事件については、作家の中野京子さんが史実にご自身の解釈を加え、サスペンスタッチで面白い読み物を書いている。

 亡命先のベルギーでヴァレンヌ逃亡事件の失敗を聞かされたフェルゼンは、生涯にわたり自分がボンディで国王一家と別れたことを悔やむ。アントワネットが処刑され、もはや生きる望みを失ったフェルゼンは、祖国スウェーデンに戻り外交顧問、そして元帥にまで昇進。しかし1810年、王太子が事故死すると、フェルゼンが王太子暗殺を企てたのではないかとの噂が飛び交った。フェルゼンは事故死した王太子の葬儀執行を取り仕切るよう、時の国王カール13世から命じられた。その任務を果たすため、ストックホルム市内の葬儀会場に馬車に乗って現れた彼に、群衆は暴動を起こし彼を惨殺。全裸となった遺体を側溝に投げ捨てるという何とも無残な最期を遂げた。フェルゼンが殺害された日は、あのヴァレンヌ逃亡事件らちょうど19年経った1810年6月20日。亨年54歳。これでやっと愛する人のもとに行けると思ったかもしれない。

↓ 数カ月後、フェルゼンは王太子の事故死に何ら関係のないことが証明され、改めて手厚く葬られることになった。これはフェルゼンを偲んで建てたメモリアル。

 池田先生は「フェルゼンは実在したアンドレ」と言った。なるほど。そんなフェルゼンだから、オスカルは彼を愛した。アントワネット以外にも何人か愛人はいたようだけれど、生涯愛し抜いたのはアントワネットただ一人。国王一家が囚われの身となってからは、憲兵の目をかいくぐり命がけでアントワネットに会いに来た。その一途な愛に池田先生は共鳴し、アンドレのキャラ形成に少なからず影響を及ぼしている気がする。フェルゼンもアンドレも、1人の女性を愛し抜く点では根幹は同じかもしれない。

 読んでくださり、ありがとうございます。



2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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フェルゼンは実在したアンドレ…… (夕子)
2016-06-21 12:07:54
りら様の、理代子先生のお言葉に「そうか、そういう見方もあったのか」と目からうろこでした。
愛人はいても、生涯をかけて心から愛した女性はただ一人。
正直言いますと、実はフェルゼン、愛人がたくさんいたと知ってあんまり好きではなかったのです。ヴァレンヌ逃亡の時の、旅券を取るために使った名前『コルフ夫人』も、彼の愛人のひとりでしたし、同時期に何人もの愛人を持つなんて、と思っていました。
ですが、当時の慣習や慣例では、愛と結婚、愛と本能は別物ですよね。
納得しました。ファルゼンを違った見方ができるような気がします。
ところで、以前の記事にもありましたが、フランスの『マリーアントワネットゆかりの地巡りツアー』、私も参加することができるようになりました。
7月10日から18日まで、ベルばら3が日はパリです。そしてアンドレの命日の13日と、オスカルさまの命日の14日はフリータイムです。
お気に入りのミュゼを見学して、ブテックの開く時間になったら花屋さんに行って、小さな花束を買いバスティーユ広場に捧げに行きたいと思っています。
こちらの読者さまの中にも、このツアーに参加されるかたがいらっしゃるご様子。
私は一人参加ですけど、偶然のご縁で繋がれることをワクワクした気持ちで願っています。
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夕子さま (りら)
2016-06-21 23:41:55
 コメントをありがとうございます。

>りら様の、理代子先生のお言葉に「そうか、そういう見方もあったのか」と目からうろこでした

 私もこの表現を、池田先生の口から直接伺った時、ハッとしました。先生はアンドレを描くとき、実在のフェルゼンの姿を投影したのではないかと思います。

>フェルゼンを違った見方ができるような気がします。

 フェルゼンさえその気になれば、いくらでも裕福な貴族の娘を口説き、結婚することができたはず。でもそうしなかった。私も以前、フェルゼンに愛人がいるなんていやだな…と思っていました。けれど自分も年を重ね、人間だもの、報われぬ恋のつらさを別の女性で一時的に埋め合わせしたいこともあるだろう。そんなフェルゼンを非難することはできないと感じるようになりました。

>フランスの『マリーアントワネットゆかりの地巡りツアー』、私も参加することができるようになりました

 夕子さま、よかったですね。ツアーの内容もさることながら、べルばら3が日を現地で過ごせることは、一生の思い出になるでしょうね。ツアーの参加者はおそらく全員「ベルばら」ファンでしょう。皆さんと和気藹藹とした雰囲気で、ご旅行を楽しんできてくださいね。お時間がある時に、どんな様子だったかお聞かせ願えると大変うれしいです。どうか御無事で、楽しい思い出をたくさん作ってきてください。

 お気に入りのミュゼ…フランスには実にたくさんのミュゼがあります。夕子さまはどちらに行かれますか?7月14日をヴェルサイユであるいはパリで過ごす。その時夕子さまの胸に、どんな想いが去来するでしょう?出発まであと2週間と少し。夕子さまをはじめとするツアー参加者の皆さまが、御無事で行ってこられますように!
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