Vばら 

ある少女漫画を元に、エッセーと創作を書きました。原作者様および出版社とは一切関係はありません。

「英国貴族の暮らし」を読んで (1)

2017-07-29 22:27:34 | つぶやき

 図書館で「英国貴族の暮らし」(田中亮三著 河出書房社)を借りた。16世紀後半のエリザベス1世の時代から、19世紀半ばにかけ、貴族である大地主が広大な領地内に建てた何百もの豪邸。そこで彼らはどんな生活を送っていたか?なんとなくフランスと被る部分もあるのでは?と思いながら読んでみた。

 その1 「使用人たちの世界」 

 この項を読んでいると、「ジャルジェ家もこうであったのでは?」と思う部分が多々ある。使用人たちの世界にも、厳格な身分制度が存在していた。

上層部の使用人                                                              

ハウス・スチュアード…組織を統括                                                      

バトラー:ハウス・スチュアードの下で、現場の指揮を執る                                      

ヴァレット:主人の身の回りの世話をする  

 

ハウス・オブ・キーパー:女子の使用人を統括  

レイディーズメイド:ヴァレットに相当。女主人のお世話をする  

クック:技能を持った別格的存在で、給料も高い

 

下位の使用人

フットマン:家の中の仕事を何でもこなす男性                                                  

メイド:台所、洗い場、洗濯などを担当     

家の外回りの仕事担当

厩番、御者、造園係、密猟者の監視、狩猟用の雉子(きじ)の養殖をおこなう猟場番

 職分は厳格に守られていた。例えばメイドが重い石炭を運んで階段を上っているすぐ後ろに、手紙を持つフットマンがいたとしても、彼はメイドに手を貸すことはしない。(今でも欧米のカフェでは、ウェイターやウェイトレスたちの持ち場がはっきりと定められており、お客は自分のテーブルを担当する人でないとオーダーできないのと同じ発想?)

↓  18世紀、メイド

↓  リネンを手洗いするメイド 1765年~1782年頃

↓  1800年頃、アイロンをかけるメイド  アイロンを暖める専用道具がちゃんとあった。

 使用人たちは子どもの頃、村から奉公に上がり、その才覚と勤務ぶりによって次第に昇進していく。ハウスメイドの場合、主人夫妻に認めらてナニー(乳母)と呼ばれる子どもの養育係に任じられると、家族に準じる特別待遇が与えられる。ナニー(乳母)は、その家の子どもを我が子と同じく厳しく育て、実の両親である主人夫妻もめったに口出しすることはない。…まさにマロン・グラッセそのもの。彼女は自分の身分を十分わきまえていたものの、その献身的な働きぶりとオスカルへの愛情は、ジャルジェ家の誰にも負けなかった。ばあやもジャルジェ家に来た当初は他のメイドさんと同様、下積み生活を送り地道な仕事をこつこつとこなし、次第に若いメイドさん達を束ねるポジションを任されるようになったかな?

 老年を迎えた使用人には、年金と余生を送る家(コテージ)が与えられた。支配階級の貴族たちは民心をつかむため、年に一度、使用人たちや小作人たちに家を開放して晩さん会や舞踏会を開いたり、庭園で祭りを催した。これって今でいう福利厚生に当たるのだろうか?ジャルジェ家でもガーデンパーティや、使用人たちのためのイベントをおこなっていただろうか?余興でオスカルは何をしただろう?

 イギリスの場合、中世から封建領主が配下の者たちにお仕着せを与える習慣があった。家臣の数の多さが、自分達のステイタスを表すので、実際には主従関係のない者にも制服を与えていたケースもあったとか。使用人たちは制服を与えられることを、非常に名誉なことと受けとめていた。そしてお仕着せも、使用人の身分・職種・季節・時と場合によって細かく規定され、そのことは雇用契約書にも明記されていた。

 アンドレは、ジャルジェ家でも屈指のマルチ使用人。基本的にオスカルの従卒だけど、お屋敷に戻ればフットマンとして広範囲な仕事をこなしていた。屋敷内にとどまらず、厩舎の管理等もしていただろう。ハウスメイドさん達が重い荷物を持っていれば、彼のことだから迷わず手助けしてあげたはず。将軍夫妻からはオスカルの従卒として彼女を守ることを任され、お屋敷内ではメイドさん達からの信頼も厚く、ジャルジェ家にはなくてはならない存在だった。

 読んでくださり、本当にありがとうございます。                                                       

 

 



6 コメント

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おはようございます。 (おれんぢぺこ)
2017-07-30 07:43:33
この本
3年ほど前。本屋さんに、シリーズで(勝手にシリーズ物と思い込んでますが)並んでいるのを見ました
……で、私が買ったのは、この本の横にあった『英国執事』。
執事メインの内容ではあったのですが、使用人の格付の話とかは面白いし参考になりました
私も、ばあやはこのポジションとかアンドレは次期当主の従者だから……とか、面白がって調べました。
今でも、参考にしてます

で。このシリーズ、実は気になる本がもう1冊。
タイトル忘れましたが、令嬢にスポット当てた物
これは……。2冊とも即買いかなぁ(笑)

7月も終わりですね。
まだまだ暑い毎日。どうぞお体ご自愛くださいませ。。。
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りら様 (marine)
2017-07-30 21:15:38
こんばんは。
暑い日が続きますがお変わりないですか?

素敵な本のご紹介ありがとうございます。

先週、ずっと見続けて来た「ダウントンアビー」がついに最終回を迎えました。
何年もに渡って見てきたので、少し寂しく思っていました。
このドラマは、人間模様に階級制度を絡めて描いていたので(実際の貴族のお屋敷を撮影の舞台にしていたので、調度品やドレスや装飾品などもとても素敵でした)ドラマを観ながら色んな使用人の階級や仕事内容なども知りました。

古き良き時代を守ろうとする伯爵と執事、新しいものを取り入れそれによってお屋敷を守ろうとする新しい世代といえるその娘達や娘婿達。
その伯爵には娘しかおらず、爵位を継げないので、継ぐためにあったこともない遠縁の男性が現れたり。
登場人物が多く、色んな主役級の人が亡くなってしまったり、メロドラマかな?と思う時もありましたが、最後はみんな丸く収まり、ハッピーエンドでした。

話が少し逸れましたが、侍女は洗濯はしないとか、女中は上(党首など、仕える方々がいる場所)にいって姿を見られないようにし、給仕は下僕がするとか、党首と執事は時に対等に話をしますが、やはり一線はあり、分をとてもよくわきまえていたり、とても書ききれないほどありました。
とても細かく仕事が分かれていますよね。

もう1つ、「日の名残り」という映画はご存知でしょうか。アンソニーホプキンス演じるある執事が主人公でした。淡い恋心を抱く女中頭役がエマトンプソンでした。こちらもイギリス貴族のお屋敷の内情がよくわかる作品だったと思います。

なんだか逸れまくりで申し訳ありませんでしたが、私も今度図書館に行ったら探してみようかなと思いました。
また長々と失礼いたしました。
暑い日が続くので、どうぞご自愛くださいませ。
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おれんぢぺこさま (りら)
2017-07-30 21:54:01
 コメントをありがとうございます。

>で、私が買ったのは、この本の横にあった『英国執事』。

 ふくろうの本から、村上リコさんが3冊、お書きになっています。
https://www.amazon.co.jp/%E5%9B%B3%E8%AA%AC-%E8%8B%B1%E5%9B%BD%E8%B2%B4%E6%97%8F%E3%81%AE%E6%9A%AE%E3%82%89%E3%81%97-%E3%81%B5%E3%81%8F%E3%82%8D%E3%81%86%E3%81%AE%E6%9C%AC-%E7%94%B0%E4%B8%AD%E4%BA%AE%E4%B8%89/dp/430976228X

『英国貴族の令嬢』
『英国メイドの日常』
『英国執事』

 この3冊はどれも読んでみたいですね。写真が豊富なのも嬉しいです。同時代のフランスにも当てはまる内容が多い気がします。

>私も、ばあやはこのポジションとかアンドレは次期当主の従者だから……とか、面白がって調べました

 池田先生も連載開始前に、こうした事情を調べたでしょうか?そして登場人物たちのバックグラウンドを固めていったかもしれませんね。これも楽しい作業です。
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marineさま (りら)
2017-07-30 22:06:08
 コメントをありがとうございます。

>先週、ずっと見続けて来た「ダウントンアビー」がついに最終回を迎えました

 私も最初の頃は欠かさず見ていたのですが、途中からリタイアしてしまいました。ドロドロした内容で、どうなっていくのだろうと思っていましたが、最後はハッピーエンドで収まったのですね。足の不自由な執事の方は、どうなったのでしょうか?

>とても細かく仕事が分かれていますよね

 フランスも同じだったのでは?と思います。ジャルジェ家然り。使用人たちの中にもきちんとしたピラミッド社会があり、下位の者が勝手な振る舞いをすることは許されなかったはず。でもそれによって、お屋敷内の秩序が保たれていたようにも思います。

>もう1つ、「日の名残り」という映画はご存知でしょうか

 ずいぶん前にDVD(いや、ビデオを)レンタルして見ました。この作品とかジェーン・オースチンの「高慢と偏見」なども、イギリスの貴族社会の仕組みを知らないと、十分理解できないですね。シャーロック・ホームズもそうかなぁ。
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りら様 (marine)
2017-07-31 23:40:38
こんばんは。
またまた失礼します。

ダウントンアビーの足の悪い人は執事ではなく伯爵の従者でした。着替えなど身の回りのお世話をするので旅にもついていきます。

入った当初は嫌がらせをうけたり、前妻が中々離婚してくれなかったり、殺人の容疑までかけられたり、かなり波乱万丈でしたが、最後は全てうまくいき、幸せになりましたよ。

嫌がらせをしてた下僕も、色々痛い目にあい改心し、丸くなりました。
最後はみんな、あらま…という感じで少々カクッとくるほどま〜るくおさまりました^ ^。

途中で亡くなってしまったメアリーの(長女)旦那様役の俳優さんは、美女と野獣の野獣?役でしたね。ドラマの頃よりスマートになってて驚きました。
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marineさま (りら)
2017-08-01 22:25:25
 コメントをありがとうございます。

>入った当初は嫌がらせをうけたり、前妻が中々離婚してくれなかったり、殺人の容疑までかけられたり、かなり波乱万丈でしたが、最後は全てうまくいき、幸せになりましたよ。

 そうそう、この方には次々と災難が降りかかり、いったいどうなっていくのだろう?と思っていましたが、すべて丸く収まったのですね。けれどそこに至るまでの道のりは長かったですね。

>途中で亡くなってしまったメアリーの(長女)旦那様役の俳優さんは、美女と野獣の野獣?役でしたね。ドラマの頃よりスマートになってて驚きました

「美女と野獣」の野獣は、目の演技が見事でした。イギリスからハリウッドに進出し、今後も幅広く活躍するのでしょう。

 marineさま、「ダウントン アビー」のお話を教えてくださり、本当にありがとうございました。全部見終えるまで、足掛け何年かかったでしょう?NHKでまとめて再放送してくれないかな?
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