オスカルがポリニャック伯爵夫人の放った刺客に襲われたあとの話です。
しまった!オスカルが賊に後ろから左肩を刺されてしまった。とにかく応急処置をしないと。フェルゼンさまの馬を借りて、取りあえずお屋敷に戻ろう。一刻も早く手当てを!賊の剣が心臓に達していたら---。俺は死ぬぞ。
あのあと何をどうしたのか、はっきり覚えていない。とにかくオスカルをお屋敷に連れて行き、かかりつけの医師をすぐ呼んだ。幸い傷は心臓には達しておらず、全治約1カ月と診断された。治るまでの間、オスカルは自宅で療養することになった。ばあやは俺に「いったいお前がついていながら、どうしてこんなことに!」と激怒した。
そうだ、おばあちゃんの言うとおりだ。俺がそばにいながら、オスカルにこんな重傷を負わせてしまった。本来なら従卒である俺が受けるべき傷を、オスカルが----。すまない、オスカル。本当にすまない。おまえが大怪我をしたのはこれが2回目だ。1回目はアントワットさまが「乗馬をしたい。」と仰った時。俺がうっかり石につまずき、馬の脇腹を叩いてしまったため、妃殿下の乗った馬が暴走してしまった。慌ててオスカルがその馬を追いかけ、妃殿下をお救いしようとして、妃殿下を抱いて落馬したのだった。あの時、本当なら王族に危険な思いをさせた俺は、処刑されてもおかしくなかったのだが、オスカルが直接国王さまに掛け合って、俺に罪のないことを認めさせた。あの時俺は誓ったのだ。「いつか おまえのために アンドレは この命をかけるぞ。」と。なのに--なのに--今回俺は賊の刃からお前を守ることができなかった。もう二度とお前に怪我はさせまい。本来女であるお前が、こんな傷を体に受けてはいけないのだ。お前のためなら、俺の腕や足がなくなろうとも惜しくない。とにかく治るまで、俺は自分にできることを何でもするぞ。
怪我から3日目。ようやくオスカルの容体が安定してきた。俺はお屋敷での仕事の合間を縫って、あいつの部屋に様子を見に行った。
「あ~ぁ、1カ月も休みをもらってしまった。近衛隊はジェローデルが仕切ってくれるだろう。さて、何をしようかな?読みかけの本を、片っぱしから読むとするか。」オスカルはいつものように、いやいつも以上に明るく話しかけてきた。
「それもいいな。オスカル、何かしてほしいことがあったら言ってくれ。」
「ありがとう、アンドレ。私のことなら大丈夫だ。ヴェルサイユいやフランス中どこを探しても、体中こんなに傷痕のある女はいないだろうなあ。よく命が続いている。」
オスカル、すまない。俺がそばにいながら-----こんなことになってしまって。俺は口に出して言おうとしたが、どうしても言えなかった。
「こんな傷だらけの体では、誰も嫁にはしてくれないだろうな。その時はアンドレ、どうだ、私をお前の妻にしてくれるか?ははは---。」オスカルは俺を傷つけまいと、努めて明るく振る舞っているのが分かった。オスカル、俺はお前の体がどれほど傷だらけだろうと、そんなことは構わない。お前を妻にしたい。だが身分が---。ああ、今はこの話はよそう。オスカルの怪我が治ることが先決だ。
「こんな俺でよければ、いつだってお前を妻にしてやるぞ。でもお前、結婚する気はあるのか?」おどけた調子で、けれど恐る恐るでもサラリと尋ねてみた。
「そんなこと、考えたこともなかった。ちょっと言ってみただけだ。----アンドレ、図書室に行って、本を何冊か取ってきてくれないか?取りあえず何でもいい。お前が面白そうだと思うものでいいぞ。」
「わかった。ちょっと待ってろ。」
結婚---オスカルが、そして俺が結婚する日が来るのだろうか?いったいオスカルは誰と?いつかはあいつが他の男のものになるのを、見なければならないのか?お前が俺の想いに気づく日は来るのだろうか?オスカル、俺は何があろうとも、お前をこれから先もずっと想い続けていく。ずっと---。
読んでくださり、どうもありがとうございます。
しまった!オスカルが賊に後ろから左肩を刺されてしまった。とにかく応急処置をしないと。フェルゼンさまの馬を借りて、取りあえずお屋敷に戻ろう。一刻も早く手当てを!賊の剣が心臓に達していたら---。俺は死ぬぞ。
あのあと何をどうしたのか、はっきり覚えていない。とにかくオスカルをお屋敷に連れて行き、かかりつけの医師をすぐ呼んだ。幸い傷は心臓には達しておらず、全治約1カ月と診断された。治るまでの間、オスカルは自宅で療養することになった。ばあやは俺に「いったいお前がついていながら、どうしてこんなことに!」と激怒した。
そうだ、おばあちゃんの言うとおりだ。俺がそばにいながら、オスカルにこんな重傷を負わせてしまった。本来なら従卒である俺が受けるべき傷を、オスカルが----。すまない、オスカル。本当にすまない。おまえが大怪我をしたのはこれが2回目だ。1回目はアントワットさまが「乗馬をしたい。」と仰った時。俺がうっかり石につまずき、馬の脇腹を叩いてしまったため、妃殿下の乗った馬が暴走してしまった。慌ててオスカルがその馬を追いかけ、妃殿下をお救いしようとして、妃殿下を抱いて落馬したのだった。あの時、本当なら王族に危険な思いをさせた俺は、処刑されてもおかしくなかったのだが、オスカルが直接国王さまに掛け合って、俺に罪のないことを認めさせた。あの時俺は誓ったのだ。「いつか おまえのために アンドレは この命をかけるぞ。」と。なのに--なのに--今回俺は賊の刃からお前を守ることができなかった。もう二度とお前に怪我はさせまい。本来女であるお前が、こんな傷を体に受けてはいけないのだ。お前のためなら、俺の腕や足がなくなろうとも惜しくない。とにかく治るまで、俺は自分にできることを何でもするぞ。
怪我から3日目。ようやくオスカルの容体が安定してきた。俺はお屋敷での仕事の合間を縫って、あいつの部屋に様子を見に行った。
「あ~ぁ、1カ月も休みをもらってしまった。近衛隊はジェローデルが仕切ってくれるだろう。さて、何をしようかな?読みかけの本を、片っぱしから読むとするか。」オスカルはいつものように、いやいつも以上に明るく話しかけてきた。
「それもいいな。オスカル、何かしてほしいことがあったら言ってくれ。」
「ありがとう、アンドレ。私のことなら大丈夫だ。ヴェルサイユいやフランス中どこを探しても、体中こんなに傷痕のある女はいないだろうなあ。よく命が続いている。」
オスカル、すまない。俺がそばにいながら-----こんなことになってしまって。俺は口に出して言おうとしたが、どうしても言えなかった。
「こんな傷だらけの体では、誰も嫁にはしてくれないだろうな。その時はアンドレ、どうだ、私をお前の妻にしてくれるか?ははは---。」オスカルは俺を傷つけまいと、努めて明るく振る舞っているのが分かった。オスカル、俺はお前の体がどれほど傷だらけだろうと、そんなことは構わない。お前を妻にしたい。だが身分が---。ああ、今はこの話はよそう。オスカルの怪我が治ることが先決だ。
「こんな俺でよければ、いつだってお前を妻にしてやるぞ。でもお前、結婚する気はあるのか?」おどけた調子で、けれど恐る恐るでもサラリと尋ねてみた。
「そんなこと、考えたこともなかった。ちょっと言ってみただけだ。----アンドレ、図書室に行って、本を何冊か取ってきてくれないか?取りあえず何でもいい。お前が面白そうだと思うものでいいぞ。」
「わかった。ちょっと待ってろ。」
結婚---オスカルが、そして俺が結婚する日が来るのだろうか?いったいオスカルは誰と?いつかはあいつが他の男のものになるのを、見なければならないのか?お前が俺の想いに気づく日は来るのだろうか?オスカル、俺は何があろうとも、お前をこれから先もずっと想い続けていく。ずっと---。
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