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Vばら 

ある少女漫画を元に、エッセーと創作を書きました。原作者様および出版社とは一切関係はありません。

ベルサイユのばら オールカラーイラスト全集 (2)

2015-05-17 23:09:28 | つぶやき

 このイラスト全集の表紙絵は、「オル窓 第1部」連載中に描かれたせいか、オスカルとユリウスが半分ずつブレンドされているように見えてしまう。

 「ベルサイユのばらとわたし」と題した先生のエッセーが、中ほどに載っている。これを書いたのは「ベルばら」の連載を終えた二年後。この文章を書くため、先生は1カ月以上、ご自身の内なる羞恥心と闘わねばならなかったと述べている。

 最初に「『ベルサイユのばら』が、いろんな意味で極めて未熟な作品である」と言い切っている。絵が下手、正攻法でしか描けないご自身の作風、ゆえに一部の熱狂的漫画ファンから芸術性に欠けると攻撃されていると。絵の技術を向上させるため、連載と並行して武蔵野美術大に通っていた近所の学生さんにお願いして、基礎デッサンと油絵の初歩を週1回、教えてもらうことにした。確かに「ベルばら」を読んでいると、前半と後半とでは明らかに画風が違うのがわかる。美しさと華やかさがぐんぐん増していったし、手や指先のしなやかな動きに、キャラ達の心情がたくさん込められるようになった。先生曰く、未熟な作品ではあるけれど連載中、生涯そうたびたび持つことのできない深い思い入れ、何者にも代えがたい昴(たか)まりの時間があったと。おそらくこの昴まりこそ先生を突き動かし、導かれるがままに描き、40年以上経った今もなお色褪せぬ傑作を生んだのだろう。この昴まりは、「ベルばら」連載時のみ感じたものだったのだろうか?「オル窓」では次第にこの高揚感が消えていったかのように思われる。

 自分自身のために創作をしている先生であるが、同時にその作品を商業誌に発表しているのだとの自覚を持つ。だから一人でも多くの読者に、作者の意図するところを可能な限り、わかってもらえるように書く。ただしわかりやすく書くということと、作品のレベルを下げることは別問題。---このあたりのお考えは、今も変わっていないだろうか?新作エピソードを読んでいると回を追うごとに、読者にわかってもらえるように描くことはさほど重視していない気がする。読者におもねることなく、ご自身の描きたいものを自由に描いているように思える。まあ人間、時間と共に考え方も変わっていくのは別に不思議ではないが---。

 ざっとこの文章を読む限り、今もそれほど先生のお考えは40年前と大きく変わっていないようだ。ご自身も最後の段落で「たとえ社会的にどう扱われようと、出来上がってしまった作品の本質は、永久に普遍なのだ。」と仰っている。その変わらぬ本質、普遍性が今も昔も多くのファンの支持を取り付けている理由なのだろう。

 綴じ込み予告が懐かしい。ユリウス---第1部の生き生きと活躍する姿がいい。第4部を読むのは、毎度のことながらつらい。

 読んでくださり、ありがとうございます。



10 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (サンボ)
2015-05-17 23:49:08
中身も読み応えたっぷりですね。
これから始まる「オル窓」の宣伝も期待感がして、ワクワクする感じ。
また、「オル窓」読み返そうかな?このところ毎日、老人ホームの話で兄弟と話すばかりで、すっかり、現実的で、たまにはファンタジーと云うか現実離れしてみようかな。
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サンボさま (りら)
2015-05-18 00:12:46
 コメントをありがとうございます。生きていればいろいろあります。ストレスをためないためにも、現実逃避をするのは大事なこと。でも「オル窓」は重くないですか?サンボさまが「読みたい!」と思うものを、読むのが一番ですね。今のマーガレットに、気になる作品はありますか?
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りらさま (minto)
2015-05-18 23:26:57
おっしゃるとおりユリウスがはいっているのかもしれませんね。当時、イベントのポスターとかも掲載されていましたが、「オスカルじゃない」と思ったものです。オル窓は素敵な作品ですが後半絵柄がどんどん変わっていったのが悲しかったです。
今、読み返したら、ずいぶん印象が違うかなとも思っています(音楽のことも少しは勉強したので)
映画ですが、主役候補に「ドミ二クサンダ」という方も昇っていたらしいです。昔の写真を見ると、この方のほうがよかったかな~~~と思ったりします。話の筋も記憶に残っていません。いったいあれはなんだったのでしょうね。
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mintoさま (りら)
2015-05-19 00:07:02
 コメントをありがとうございます。「ベルばら」連載終了後に、オスカルを描いたイラストは、どこかちょっと別人のような雰囲気がありますね。いったん、自分の手を離れたキャラを描くとなると、作者でさえも連載当時とまったく同じように描くのは難しいのかなと思いました。

 映画「ベルばら」のオスカルを演じる女優の候補として、ドミニク・サンダの名も挙がっていました。けれど監督が「ドミニク・サンダは重すぎる。ものすごい重い文芸物になってしまう。」との理由で却下しました。(大事典に書いてあります>)化粧品会社がスポンサーになっていたので、商品のイメージを損なわない人選をしたのでしょうか?
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りらさま (ロクサーヌ)
2015-12-22 21:58:01
最近「オル窓」を再読しました。
胸が締め付けられるような、せつない想いが残りました。
非常に厚みのある重い作品だと思います。
確かに第4部を読むのはつらいです。
「ベルばら」は小学生の頃リアルタイムで夢中になって読みました。このイラスト集も買いましたよ。
連載当時後半の池田先生の絵でエピソード編をみたいです。
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ロクサーヌさま (りら)
2015-12-23 08:05:11
 コメントをありがとうございます。

 「オル窓」は、心が元気な時でないと読むのがきついです。秋から冬に向かうシーズンは、この作品を読むのに最適ですね。ロクサーヌさまが仰るように、胸にずしっと来るものがあります。同じ「革命」を描いていても、「ベルばら」と「オル窓」はずいぶん違います。「ベルばら」が理想の社会の実現のため、命を落とすオスカル。とても輝かしい締め括りです。一方「オル窓」には不条理な死を遂げる人物が多数出てきて、池田先生の歴史観や価値観の変化が見られます。第4部は---なくても良かったかもしれないなと思う時があります。ユリウスの最期については、いろんな意見がありますし。

>このイラスト集も買いましたよ

 このイラスト集は、絵もさることながら、エッセーやコラムも楽しいですね。大事に手元に置いておこうとおもいます。ロクサーヌさまも、お持ちですか?

>連載当時後半の池田先生の絵でエピソード編をみたいです。
 
 多くのファンがロクサーヌさまと同じことを望んでいると思います。池田先生は昨年発売された雑誌のインタビューで「昔はスッと描けた1本の線が、今は描けない。」と正直におっしゃっています。手に力が入らなくなってきた--と以前、何かで読んでこともあります。加齢と共に、体に変化が生じる。それでもなお新作エピソードを描いてくださることが、ありがたいなと思います。
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りらさま (ロクサーヌ)
2015-12-23 18:34:56
ご返信ありがとうございます。

 不条理・・・です。
「オル窓」には、これほど聡明で美しい人が、どうしてこんな無残な死を迎えるのか、思わず”なぜっ?!”って叫びたくなるようなシーンが多々ありますね。
アルラウネの最後もそうだと思います。

 イラスト集は、お小遣いを工面して買いましたが、
ある時をきっかけに他のものと一緒に思い切って処分してしまいました。
 その後年月を経て、やはり手元に置きたいという気持ちが日々積もり、最近新しく購入しました。今度こそ絶対に手放しません。
何十年経っても「ベルばら」は生きていますね。
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ロクサーヌさま (りら)
2015-12-23 19:43:51
 コメントをありがとうございます。

>「オル窓」には、これほど聡明で美しい人が、どうしてこんな無残な死を迎えるのか、思わず”なぜっ?!”って叫びたくなるようなシーンが多々ありますね。アルラウネの最後もそうだと思います

 アルラウネの死はショックでした。ずっと大切に見守ってきたアレクセイが仕掛けた爆弾で--。ヴェーラはその後どうなったでしょう?

>やはり手元に置きたいという気持ちが日々積もり、最近新しく購入しました。今度こそ絶対に手放しません。何十年経っても「ベルばら」は生きていますね。

 そうでしたか。機関紙「ばら ベルサイユ」の復刻版ページは、今読んでもとても内容が充実していて面白いですね。私も大切に保管するつもりです。

 40年前にはわからなかった(気づかなかった)けれど、今ならわかる「ベルばら」の世界ってありますよね。まったく色褪せない作品です。きっとこれからもこの魅力は変わらないと思います。
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りらさま (ロクサーヌ)
2015-12-24 15:14:10
 ヴェーラはどうなったのでしょう。
生きのびて、変わりゆくロシアと欧州の変遷を見届けを見届けることができたのでしょうか。厳しいかもしれません。
パリあたりで、アデールと再会してレオニード・ユスーポフ候を二人で偲んでほしいです。(妄想)。
 シベリア送りになったアナスタシアは、その後どうなったのでしょう。カタリーナはナイチンゲールみたいになったのかしら。
 あ、ここは「ベルばら」のブログでしたね。つい熱く脱線してしまって、失礼しました。

 10代、20代では軽く通り過ぎてしまった場面が、も少し深く読み込めるようになりました。自分自身の変化、経験によって、今ならわかる「べるばら」の世界はありますね。
 思えば、結婚の話をことわってからのオスカルは、よるといわず昼といわず、強いお酒を召し上がっていらっしゃったのですね。やりきれない苦しい思いで心がいっぱい。後にオスカルは「酒に逃げようとした。」と告白しています。
この辺も昔はさらりと流してしまったようです。
ひとりの人間としてのオスカル。生身の人としての血を感じます。どこまでも美しく、かっこよいだけではなく、ちょっとあぶない弱い部分も暴露されてしまう。池田先生の作品の魅力はこんなところにもあふれているのだなと思います。本当に奥深い作品です。

長くなりましたが、りらさま、これからも「Vばら」続けて下さいね。応援しております。
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ロクサーヌさま (りら)
2015-12-24 21:03:24
 コメントをありがとうございます。

>あ、ここは「ベルばら」のブログでしたね。つい熱く脱線してしまって、失礼しました。

 どうかお気遣いなく。たくさん「オル窓」についても語ってくださいね。「オル窓」「おにいさまへ---」も大好きな作品です。ただ「ベルばら」ほど読み返していないので、頓珍漢な返答をすることをお許しください。

 ヴェーラは、ユリウスをレーゲンスブルクへ送り届けた後、無事ロシアに戻れたでしょうか?アナスタシアは、極寒のシベリアで健康を損ねてしまったかもしれませんね。カタリーナは職業婦人として、医療分野で立派に自立した女性になったのではないでしょうか?アマーリエはパリで新たに生きる道を見出し---。ユリウスを庇って亡くなったユダヤ系のガリーナも好きです。どちらかというと第1部のユリウスは好きですが、ロシア編以降はやや魅力が(わたし的には)薄れていきました。男性に依存しているようで。

>ひとりの人間としてのオスカル。生身の人としての血を感じます。どこまでも美しく、かっこよいだけではなく、ちょっとあぶない弱い部分も暴露されてしまう
 
 オスカルはよく美しい女神として崇拝されます。でも自分の感情に正直なあまり、近くの椅子を蹴飛ばしたり、唾を吐いたりと結構ストレートで激しい面も見せます。でもその偽りのなさが、彼女の魅力でもあります。あまりにも欠点がなく完璧すぎたら、これほど長い間、多くのファンに支持されなかったのではないでしょうか?

 暖かい締めくくりのお言葉、ありがとうございます。嬉しくなりました。自分の近くに「ベルばら」語りをできる人がいない、だったら自分から発信すればいいと思って始めたブログ。誰も訪れる人がいない日々もありました。こうしてコメントを頂けるのは、本当にありがたいことと思っております。ロクサーヌさま、どうかこれからもよろしくお願いいたします。「ベルばら」に限らず、他の作品についてもお話しできると嬉しいです。ありがとうございます。
 
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