Vばら 

ある少女漫画を元に、エッセーと創作を書きました。原作者様および出版社とは一切関係はありません。

SS ばあやの手当て (オスカル14歳 アンドレ15歳)

2014-07-19 08:04:20 | その他
昨日庭でオスカルと剣の稽古中、俺はうっかり木の株につまずき左肘を地面にぶつけてしまった。 俺を助けようとしてオスカルは剣で手の甲に切り傷を作った。二人ともばあちゃんに手当てしてもらったが、ばあちゃんは俺には嫌味たっぷり。

「まったくお前は、いつもお嬢様にご迷惑ばかりおかけして…。ちっとも剣の腕は上達していないんじゃないのかい?お嬢様のきれいな手の甲に、切り傷まで作って…。これで従卒のお役目は務まるんだろうか?あたしは心配だ。」
言い返すと長くなるから俺は黙って聞いていたけれど、ばあちゃん、いつも以上に手当てが荒っぽい。あっ、いててて…。ばあちゃん、頼むから包帯を巻くとき、傷の真上から叩きつけるのはやめてくれ。痛いんだよ。どうしてこういう時はそんな馬鹿力を出せるんだい?
「いずれはお前が命を張って、お嬢様をお守りしなければならないのに、これではお前がお嬢様に 守ってもらうことになってしまうじゃないか!!この役立たず。」
はいはい、わかっているよ。でもな、ばあちゃんの知らないところで、俺はオスカルを守ったこともあるんだ。少年士官学校で、オスカルの足を引っかけようと、彼女の背後から近づいてきた3人のしょうもない貴族のばかったれを俺は殴ってやった。だって卑怯じゃないか?あいつらは俺に反撃してきたので、やり返したよ、もちろん。俺は唇が切れて血が出たし、頬に擦り傷ができた。けれどオスカルを守りきった。

「この事は母上とばあやには黙っていよう。でないと心配するから…。」とオスカルは言った。勿論そのつもりだった。女ということで、男の3倍以上苦労しているお前。抱えなくてもいい苦しみを抱え、愚痴を言うこともなく黙々と耐え、旦那さまや奥さまの前では絶対につらいと言わないお前。せめて俺の前ではその苦しみをぶつけてくれ。泣いたっていいんだ。そんな場所が1つくらいないと、お前もつらいだろう。いつでも俺には受けとめる用意はできている。一人で苦しみを抱えこまないでくれ、オスカル。

ばあやの手当てが終わった。さあまたこれからオスカルのそばに行き、彼女を守らなくては。ばあちゃん、頼むから手当てはもう少しお手柔らかに。


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