The Whoのライブをボストンで観てきました。The Whoは2004年の初来日公演を見逃した時に最初で最後のチャンスを逃してしまったと思っていたので、まさか今になってアメリカで観られるとは思いもしませんでした。そして今回はアメリカのロックコンサートを経験するという点でも私にとって貴重な機会になりました。会場は年齢層こそ幅広かったものの(親子連れも目立って微笑ましかったです)、人種に関しては見渡す限り白人しかおらず、異様なほどでした。アフリカ系の人はもちろん、アジア人にも全然出会わなかったのです。振り返ってみると多くの人にとっては私が異様だったのかもしれない・・・と思います。
そういう意味では現在アメリカのメインストリームを支配するのは最早ロックではなく、ヒップホップであるというのは正しいのかもしれません。ヒップホップは誰もが聴くけれど(大学内で行われたLupe Fiascoのショーには白人も黒人もアジア人、ラティーノもいました)、ロックは(特にアメリカでは)白人にアピールする事だけに甘んじている傾向にあると思います。確かに私は白人ではないのだから、必ずしもロックが人種的に限定的だという訳ではないのでしょうが、会場を見た時の印象は少し考えさせられるものでした。
以下ではショーの内容についてふれていますので来月の来日公演まで詳細を知りたくない方はお読みにならない方がいいかもしれません。

“I Can’t Explain”で幕を開けたステージでまず驚かされたのは、ロジャー(・ダルトリー/ Roger Daltrey)の声が思っていた以上に若々しく衰えを感じさせない事でした。声だけ聴いていると歳をとっていないかのようで、時々ライトを反射して光るメガネや昔よりは太った身体が信じられないくらいです。そして、嬉しくて笑わずにはいられなかったのは今でも彼がマイクを危険なほど振り回し、身体にぐるぐる巻きつける事でした。ウッドストックで彼を観た人の中で一体誰が40年後に60歳を越えたロジャーが同じように”Pinball Wizard”を歌いながらマイクを振り回しているなどと想像したでしょうか。今回のThe Whoのライブで感動的だったのはそうした思いと共に生じる、50年代半ばから続くロックンロールの素敵な歴史の一部に私も身を置いているのだという意識でした。
だからエルヴィス・プレスリーに捧げられた、ロックンロールがいかに若い世代を魅了し続けてきたかを教えてくれる”Real Good Looking Boy”が殊更涙を誘ったのかもしれません。エルヴィスがピートに与えたロックンロールの魔法を、今度はピートが私に受け渡してくれているのだと思う事ができたからです。また、私にとってフーが現れた60年代は遠い想像の世界でしかなく、決して体験できないものだと思っていました。もちろん2008年のフーは60年代や70年代と同じではありません。キース・ムーンもジョン・エントウィッスルも亡くなり、リンゴ・スターとピート(・タウンゼント/ Pete Townshend)の息子がバンドを支えています。ロジャーのフリンジ付きの衣装も長くてカールした金髪もなしです。それでもそのような時代を過ごした人々と同じように、或いはそのような時代とそう変わらないように、”Baba O’Riley”のイントロを耳にした途端目を輝かせ、歓声をあげ、心を揺さぶられる。私自身も10代を生き抜くのを助けてくれたこの曲に対する強い思い入れを持っていたし、同様の思いをこの40年の間に会場中の人々が抱いてきて今ここに集まり、’it’s only teenage wasteland’と声を張り上げているのだと思うと本当に胸がいっぱいになりました。アウトロのロジャーのハープソロも圧巻でした。もちろんピートの風車ギターも健在です。特にショーの前半では、サービス精神旺盛でファンが喜ぶのをきちんと分かった上でピートが腕をぐるんと振り回す度に、オーディエンスが「わあ!!」と声を上げるのがおかしなくらいでした。
”Baba O’Riley”が比較的早い段階で演奏されてしまったのは少し寂しかったですが、その後もベスト盤的な選曲で楽しませてくれました。意外だったのは”My Generation”が他の曲に比べて特別盛り上がる前にあっという間に終わってしまった事です。私にはロジャーの口があまり回っていないように感じました。でも、やっぱりここまで多様な世代が来ている会場でこの曲を歌うと本来の意味は失われてしまうのかもしれません。通路を挟んで私の隣にいたお父さんと来ていた男の子はティーンにさえなっていないように見えました。
本編は”Won’t Get Fooled Again”で幕を閉じ、アンコールは『Tommy』からの曲で占められていました。”Pinball Wizard”の盛り上がり様は”Baba O’Riley”には敵わないものの、相当なもので多くの人が、’sure plays mean pinball’と叫んでいました。私は『Tommy』がフーの入門盤だったのでこのアンコールはとても嬉しかったです。
60年代の鋭さは最早ないけれど、日本でもきっと素晴らしいステージを来月見せてくれると思います。観られるものなら今度は日本で観てみたいです。
2008/10/24 @ TD Banknorth Garden (Boston, Mass, U.S.A.)
Setlist:
I Can't Explain
The Seeker
Anyway, Anyhow, Anywhere
Who Are You
Behind the Blue Eyes
Real Good Looking Boy
Baba O'Riley
Getting in Tune
Eminence Front
Sister Disco
Sea & Sand
5.15
Love Reign O'er Me
My Generation
Won't Get Fooled Again
Pinball Wizard
Amazing Journey
Sparks
See Me, Feel Me
Tea & Theatre
そういう意味では現在アメリカのメインストリームを支配するのは最早ロックではなく、ヒップホップであるというのは正しいのかもしれません。ヒップホップは誰もが聴くけれど(大学内で行われたLupe Fiascoのショーには白人も黒人もアジア人、ラティーノもいました)、ロックは(特にアメリカでは)白人にアピールする事だけに甘んじている傾向にあると思います。確かに私は白人ではないのだから、必ずしもロックが人種的に限定的だという訳ではないのでしょうが、会場を見た時の印象は少し考えさせられるものでした。
以下ではショーの内容についてふれていますので来月の来日公演まで詳細を知りたくない方はお読みにならない方がいいかもしれません。

“I Can’t Explain”で幕を開けたステージでまず驚かされたのは、ロジャー(・ダルトリー/ Roger Daltrey)の声が思っていた以上に若々しく衰えを感じさせない事でした。声だけ聴いていると歳をとっていないかのようで、時々ライトを反射して光るメガネや昔よりは太った身体が信じられないくらいです。そして、嬉しくて笑わずにはいられなかったのは今でも彼がマイクを危険なほど振り回し、身体にぐるぐる巻きつける事でした。ウッドストックで彼を観た人の中で一体誰が40年後に60歳を越えたロジャーが同じように”Pinball Wizard”を歌いながらマイクを振り回しているなどと想像したでしょうか。今回のThe Whoのライブで感動的だったのはそうした思いと共に生じる、50年代半ばから続くロックンロールの素敵な歴史の一部に私も身を置いているのだという意識でした。
だからエルヴィス・プレスリーに捧げられた、ロックンロールがいかに若い世代を魅了し続けてきたかを教えてくれる”Real Good Looking Boy”が殊更涙を誘ったのかもしれません。エルヴィスがピートに与えたロックンロールの魔法を、今度はピートが私に受け渡してくれているのだと思う事ができたからです。また、私にとってフーが現れた60年代は遠い想像の世界でしかなく、決して体験できないものだと思っていました。もちろん2008年のフーは60年代や70年代と同じではありません。キース・ムーンもジョン・エントウィッスルも亡くなり、リンゴ・スターとピート(・タウンゼント/ Pete Townshend)の息子がバンドを支えています。ロジャーのフリンジ付きの衣装も長くてカールした金髪もなしです。それでもそのような時代を過ごした人々と同じように、或いはそのような時代とそう変わらないように、”Baba O’Riley”のイントロを耳にした途端目を輝かせ、歓声をあげ、心を揺さぶられる。私自身も10代を生き抜くのを助けてくれたこの曲に対する強い思い入れを持っていたし、同様の思いをこの40年の間に会場中の人々が抱いてきて今ここに集まり、’it’s only teenage wasteland’と声を張り上げているのだと思うと本当に胸がいっぱいになりました。アウトロのロジャーのハープソロも圧巻でした。もちろんピートの風車ギターも健在です。特にショーの前半では、サービス精神旺盛でファンが喜ぶのをきちんと分かった上でピートが腕をぐるんと振り回す度に、オーディエンスが「わあ!!」と声を上げるのがおかしなくらいでした。
”Baba O’Riley”が比較的早い段階で演奏されてしまったのは少し寂しかったですが、その後もベスト盤的な選曲で楽しませてくれました。意外だったのは”My Generation”が他の曲に比べて特別盛り上がる前にあっという間に終わってしまった事です。私にはロジャーの口があまり回っていないように感じました。でも、やっぱりここまで多様な世代が来ている会場でこの曲を歌うと本来の意味は失われてしまうのかもしれません。通路を挟んで私の隣にいたお父さんと来ていた男の子はティーンにさえなっていないように見えました。
本編は”Won’t Get Fooled Again”で幕を閉じ、アンコールは『Tommy』からの曲で占められていました。”Pinball Wizard”の盛り上がり様は”Baba O’Riley”には敵わないものの、相当なもので多くの人が、’sure plays mean pinball’と叫んでいました。私は『Tommy』がフーの入門盤だったのでこのアンコールはとても嬉しかったです。
60年代の鋭さは最早ないけれど、日本でもきっと素晴らしいステージを来月見せてくれると思います。観られるものなら今度は日本で観てみたいです。
2008/10/24 @ TD Banknorth Garden (Boston, Mass, U.S.A.)
Setlist:
I Can't Explain
The Seeker
Anyway, Anyhow, Anywhere
Who Are You
Behind the Blue Eyes
Real Good Looking Boy
Baba O'Riley
Getting in Tune
Eminence Front
Sister Disco
Sea & Sand
5.15
Love Reign O'er Me
My Generation
Won't Get Fooled Again
Pinball Wizard
Amazing Journey
Sparks
See Me, Feel Me
Tea & Theatre