AR(エーアール)どうぶつ病院ブログ

川崎市登戸にあるARどうぶつ病院

院長やスタッフの日々のブログです

病院が伝えたいことを日々綴っていきます

● ARどうぶつ病院です。混合ワクチンについて(後半)

2017-08-28 19:25:54 | 病気について
ARどうぶつ病院の盛田です。



本日は混合ワクチンについて(後半)を書きたいと思います。
前半、後半に分けた理由は
前半は基本、後半はデーヴィス大学とWSAVAのワクチネーションガイドラインについて。ワクチンについてある程度知ってる人が間違えないようにするためです。
今どきの若い獣医師の先生方も中々わかってらっしゃらない方がいるため、見ていただいた方が良いかと思います。
先ずは
下のページをご確認ください



UC DAVIS ガイドラインについて
http://www.vetmed.ucdavis.edu/vmth/small_animal/internal_medicine/newsletters/vaccination_protocols.cfm



WASAVAのワクチネーションガイドライン
https://www.wsava.org/sites/default/files/WSAVA%20Vaccination%20Guidelines%202015%20Full%20Version.pdf

これらをしっかり読み解くと、最近間違って認識されていることもわかると思います。

先ずは話を始める前に言葉を整理しましょう。
・抗体:病気と闘うための体の免疫の一つ。
・抗原:病原体の指紋のようなもので、抗体はこの指紋をみて敵味方を判別する。
・生ワクチンと不活化ワクチン
ワクチンの製造過程でウイルスが病原性を弱められてはいるが生きている(生ワクチン)と死んでいるウイルスを細切れにして免疫力を上げるたんぱく質を残したもの(不活化ワクチン)
・コアワクチン
予防したい主要なワクチンのこと。
ワンちゃんなら、狂犬病ウイルス、ジステンパーウイルス、パルボウイルス、アデノウイルス
ネコちゃんなら、狂犬病ウイルス(日本ではノンコア)、ヘルペスウイルス、カリシウイルス、パルボウイルス、白血病ウイルス
・母子免疫
産まれたときに母親から受け継ぐ抗体のこと。産まれてから初乳を通して受け継がれるが、成長につれ徐々に少なくなり、感染防御できなくなっていく。その代わりに自分の抗体が増えていき感染防御機能が備わっていく。
母子免疫があるうちにワクチンを打つと、自分の免疫力が上がらないことがある。




それではお話しを始めましょう

上のUC DAVIS、WSAVAとも言っていることは
・可能な限りコアワクチンを優先的に接種しましょう。
 コアワクチン以外のワクチンはコアワクチンを越えて打たないようにしましょう。
・生ワクチンは免疫力を上げる力が強く、ものによっては7年間免疫力が継続することがある。
 一方不活化ワクチンは免疫力を上げる力が弱く、病気の発症率を下げる免疫力をつけるためには
 年に1回の接種が必要であることが多い。
・母親からの免疫力が強く、16週齢まで自分の免疫力が上がらない仔犬、仔猫がいる反面、
 母親からの免疫力が少なく6週齢で免疫力がなくなってしまう仔犬、仔猫もいる。
・そのため6~7週齢から3~4週間ごとにコアワクチンを接種して免疫力を上げるようにしましょう。
・ワクチンは3年に1回でよいとメーカーが認めるものに関しては3年に1回接種しましょう。
・国や地域により、コアワクチンやワクチン製剤が違うため、その国に合わせてワクチンは使いましょう。
 コアワクチンの種類も国によって異なります。
・コアワクチンの中で、ネコのヘルペスワクチンは不活化ワクチンなので、免疫力が上がりにくい。
 そのため、感染のリスクが少ない場所にいる猫は3年に1回のワクチンでよいが、感染リスクが高い場合は
 年1回のワクチンにしましょう。
・非コアワクチンのレプトスピラは年1回の予防接種をしないと予防効果は上がらない傾向がある。
・仔猫のワクチンは16週齢まで2~3回接種しても免疫力が十分でない個体いるため、
 その場合は6ヶ月齢まで5回ワクチン接種し、12ヶ月齢に打つことで免疫力が上がることがある。
・猫ちゃんのワクチンは毎年別の場所に打ちましょう。注射部位の記録を取りましょう。
・最近は猫ちゃんのワクチンを尻尾に打つ研究も行っている。

と、このような感じです。

つまり、どこぞの先生方の言っているように猫ちゃんは3年ごとのワクチンで病気を予防できるなんて書いてません。
因みに、日本の製薬メーカーの作っているワクチンは接種して1年間は免疫力が持続するところまでしか調べていないため、日本のワクチンを使用している限り、ワクチンは年1回の接種が必要なのです。
これを3年に1回にしたいなら、製薬会社に3年間免疫力が持続するワクチンを作ってもらうしかないのです。

狂犬病ワクチンも同様で、海外の製薬メーカーが作っている3年に1回接種すればいいワクチンは日本にありません!
当然です。
日本は狂犬病清浄国なのですから。
わざわざ海外から生ワクチン持ってきて、ワンちゃん達に打ちたくないですよね。
もし、生ワクチンの株が体の中で強毒になれば、汚染国に早変わりです



ネコちゃんのワクチンも3年に1回打てばよいというワクチンは存在しません。
これらをしっかり考えて、獣医師はご家族に正しくワクチンを提示しましょう。
また、WSABAのワクチンガイドラインを導入したいなら、ガイドラインに則り6-7週齢から4週間おきに5回のワクチンを勧めてください。
これは母子免疫が長く働いており、自分の免疫力がなかなか上がりにくい仔が居るようことをガイドラインでは懸念しているので



私は、3年に1回ワクチンを打ちたいならば、それはワクチンの使用方法としては間違っているので、お勧めしません。
どうしても3年に1回で予防接種を行いたいなら、そのワンちゃんは定期的に検査にて抗体が十分にあるか測り、抗体が少なくなったことがわかったところでワクチンを打つことを提示しますが、検査していない間に抗体が少なくなってしまった際には病気になってしまうリスクもあることをお伝えします。



自ら文章を繙かず、人伝の話を鵜呑みにするならその獣医師は怠慢であると言わざるを得ません。勉強会も考えてなければ出ていないのと一緒です。
英語が苦手なら今どき英文なんて簡単に翻訳できます。

日本の獣医師は

ご年配の方から『先生』と呼ばれること、

お金を払っていただき笑顔で『ありがとうございました』といわれること

の意味を今一度深く考えましょう

Noblesse oblige
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