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と云う看板が下がって居った。其処〈そこ〉に行くと、約六七十名の内鮮人が既に先着して居って、軒下に、男は矢張り腕を繋がれ、女は其の侭で、首をうな垂れて元気がない。そこに我々十三人が新に加えられて、「貴様等は喋ってはいけない」と言われて監視兵を附けて置かれた。その建物の中には兵隊がうようよして居って、武装した者が、号令一下、盛んに出たり入ったりして居りました。砲声は其頃が一番猛烈であって、戦況は恐らく彼らに有利であったのだろうと思う。けれども我々には少しも様子が分からない。私は特に隊長みたような男に「一体我々を本当に救うのか」と言うと、「心配するな、方法がある」と正面切っては答えながら、彼等同志が喋るのを聞いていると、「まだ水を飲んでやがる」とか「まだ煙草を吸って居る」とか、どうも言う事がおかしいから、之は生かす積りはないなと私は思った。誰も自分の命がどうなるだろうか判らぬと云う恐怖の中に、遭難の事情を語る人もあり、「くやしいくやしい」と言いながら前日
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の様子を説明する女もあり、中には「私は今度の事件では千両ばかり取られて、えらい損をしました」とまるでもう事件が済んだものの様に楽観的なことを云う商人風の男もある。財政庁に来てから一時間ばかり経った。時間が経つに連れて「我々は或は助けられるのかも知れない」と、行きたいという欲目がそう考えさせる。
六. 『逃げましょう!!』
間もなく隊長が来て「之から北門内の打槍場〈ターチァンチァン、ふりがな〉に連れて行く」と言ったのですが、打槍場〈ターチァンチァン、ふりがな〉という言葉が私に解らないし、北門外と言ったように聞こえたので、北門外から出してくれるのかと思った。約七八十名が引立てられて外に出ると、朝鮮人がオイオイ泣いて居り、銃に嚇されながら歩く。其時私は、一群の先頭を歩いて居る。兎に角図々しく話したりして目立つので先頭に立たせられて居る。どう
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