一人人海戦術

世界の3%くらいの人に納得してもらえばいいかなと考える、オメガ・ブロガーを目指してみようか。

虐殺の巷通州を脱出して(同盟通信社特派員、安藤利男) page 36, 37

2014-11-19 20:02:11 | 歴史資料現代語化

36

れども、段々五人が十人になり、十人が十五人となって来ると、どうも空気が悪くなる。誰か一人「之は日本軍の探兵に行ったのだ」などと言う者が出て来ると、「そうじゃない」と言う者がない。抗日意識の宣伝は農村にまで此の深度で喰い込んで居る。その村では、しまいには「貴様どっちの方に行っても保安隊が居るぞ」と嚇かし文句に迄なった。仕方がないから孫珠の所に戻ろうと引き返してみたが、どうしても道が判らない。余儀なく次の行程に入った。

 頼みにした北平の西山も、雨が降って居るので全然見えない。ただ恐らく此の方角が西だろうという見当だけで、盲滅法に歩いて居ると、その日は誠にヘマをやって、同じ道を歩いて居る。歩き出してから二時間ぐらいすると、「貴様は北平に行くと行って此方に行ったんじゃないか。また戻ってきたが、其方は反対だよ」「此方が西だろう?」「いや東だよ」と云うような訳で、まるで西と東を取違えて歩いて居る。また大急ぎで元の道を戻ると云うようなことを

37

やって居った。

       一一.不覚、二度目の捕われ

 そうすると午後の四時頃でしょうか、まだ明かるかった。前に広い道のようなものがある。あれは通州街道ではなかろうか、百姓に聞いてみようと、気持に少し油断があった。どんどん行くと人声が聞えるので、百姓だろうと考えたのが間違いで、便衣の保安隊です。傘を差して銃を肩に掛けて居る。その連中が立って居る所に出てしまった。「しまった!」と体が硬直したけれども、もう逃げる訳に行かない。三間〈5.5メートル〉ぐらい前に居る。ツカツカッとやって来て「貴様は日本人だろう」と言われる侭に、「そうだ」と答えると、いきなり一つ殴られて、すぐ後手に縛られ、それから村に連れて行かれた。其処は通州街道北方の東覇という村で、保安隊がウヨウヨして居る。

 

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