ゆっくりと世界が沈む水辺で

きしの字間漫遊記。読んでも読んでも、まだ読みたい。

山田登世子【贅沢の条件】

2010-12-07 | 岩波書店
 
今年?それとももう去年だろうか。
ココ・シャネルの生誕100年にあたっていて、映画が何本か公開されていたと思う。
著者はフランス文化の研究者で、「晶子とシャネル」、「ブランドの条件」といったようなタイトルの著書がある。
どちらも未読。
これも出先の書棚をながめて、半ば消去法的に手にした1冊だったが、なかなかどうしておもしろかった。
結局、好きそうな本しか選べないということか。

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 贅沢の条件

 著者:山田登世子
 発行:岩波書店
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あなたにとって贅沢とは?という問いから始まる。
普段、そんなことは考えていないけれど、あえていえば、私にとっては、したいことをしたいようにできること、だろうか。
それを幸せだと思うし、それができるなら贅沢な生活だと思う。
だが、著者はここで早々に、不可分であるように思えるこの2つ、精神面での幸福と贅沢とを分け、さらに、贅沢という言葉が持つ要素に、西洋圏のluxury、luxeといったニュアンスを加え、優雅さをを付け加える。
そして、経済の側面からみての贅沢に考えを絞っていく。
贅沢なお金の使い方とはどういうものか。
そういったことが、フランスはルイ14世の宮廷に集ったの王侯貴族や、フランス革命、産業革命などを通じて語られたあと、やがて、贅沢を知る人たち、贅沢なものの話に移っていく。
サラ・ベルナールや、森茉莉、与謝野晶子といった人たちの名があがり、中でもキーパーソンとして、白洲正子とココ・シャネル、彼女たちが示したことについてが語られ、ことに、ココ・シャネルは、本の中に登場してからはほとんどが彼女の成したことと、そのルーツについての文章になっている。
 
何を贅沢なもの、贅沢なこととして、価値を見い出すか。
時間と手間をかけてできあがる逸品や快適なものがより高価であることは当然。
ただ、自分がそれを欲しいか、どうしても、と、思うほどかどうか。
本に登場したココ・シャネルという人自体はとても興味深いが、だからといって、スーツやカメリアのブローチが欲しくなるわけではない。
あってもいい、は、なくてもいいと同じだ。

といっても、まあ、それも自分の懐具合とのバランスの話ということで、これ以上は、何を言っても負け惜しみに聞こえてしまいそうだからやめておくか…。



 

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11 コメント

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贅沢・・・かも (narkejp)
2010-12-08 19:30:36
そうですね~。作曲したらすぐにその場で自分専用のオーケストラで試演できるという作曲家は、贅沢でしょうね~。
私はといえば、裏の畑から果物や野菜を取ってきて、洗ってすぐに食べられるというのも、かなり贅沢・・・かも(^o^)/
まあ、白州正子さんやココ・シャネルさんには笑われそうですが(^o^)/
面白そうな本ですね。
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narkejpさま (きし)
2010-12-09 00:10:01
コメント、ありがとうございます。
うーん、それは贅沢。自分のために作曲してもらうというのもいいかも。
とれたて野菜ももちろん贅沢。夏のきゅうりなんか、最高です。これは白洲さんはお気に召しそう。というより実践されていたかもしれませんね、ブアイソウで。
シャネルが登場すると一気にファッション関連の話になって、こちらが著者の専門なのかなという感じでした。
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おもしろそう (むぎこ)
2010-12-24 07:33:00
おもしろそう!
よんでみます。

贅沢といえば・・・・
大阪から仕事できているおじさん二人
仕事の後に新鮮な魚をたべたいといってお店を私の友人にききまして

でも行ってみたけどきにいらなかったようです
なぜなら料理が手が込んでたから
かれらは刺身とか塩焼きとかがご所望だった・・・。

それをきいて地元の人間曰く。

「塩焼きなんて魚屋でいいのをかって自分で焼いて食べるのがいちばんうまいんだから外食でわざわざ食べないでしょう・・・。」

でもってまた違う大阪の人の話

「のどぐろのヒモノがほしいから送って・・・と大阪の友人にいわれた」

それをきいて地元の人間曰く
「のどぐろってヒモノなんかにしないで“煮魚”でしょうが」

価値観?じゃないかもしれませんが
こんなことをふと思い出しました。

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むぎこさま (きし)
2010-12-25 11:07:59
あー。でも、そのずれはなんだかわかる話ですねー。
私も山沿い暮らしなので、新鮮な魚=そのまま食べてもおいしいもの、と思うところありますから。
地元のものは地元の方のいうとおり食べるのが一番でしょうけれど。
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きしさま (むぎこ)
2010-12-26 18:45:14
>新鮮な魚=そのまま食べてもおいしいもの
いやじっさいそうです
イワシとかも刺身がいちばんおいしいですもん。
こっちだと
そのままは家でというのが多いので
たのめばお魚を魚屋でさばいてもらえますし
手を加えたものを外食でというかんじなんです



そういえば宍道湖のほとりの生まれなので

しじみというと「すまし汁」
しじみだけの出汁で食べられるほど蜆を入れ
味付けは塩と醤油少々
小口ネギをてんこ盛りでいただきます

大学にいって県外でくらし
はじめて蜆の味噌汁にであいました

山のものは加工でおいしくなるなあとおもいます
椎茸やタケノコって干すとおいしい・・・。
でも一度食べてみたいのが
とりたてのタケノコ
あくがなくてとてもおいしいとききます

なんか食べ物の話になってしまいました・・・。
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むぎこさま (きし)
2010-12-26 21:56:22
あー。お料理を私はほとんどしないので、感覚がこのお話のおじさま方と同じだったのかも…。
外での時も、新鮮なものはまず手を加えない形で少しいただいてから、それからいろいろ、というように進むことが多い気がします。これも山沿いだからでしょうか。

筍のお刺身ですね。
でも、これ、ほんとに掘りたて、鮮度が命らしいです。
私も食べたことないです。そういえば。
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筍のお刺身 (narkejp)
2010-12-28 06:48:59
朝掘りのとれたてを毎年いただいております。しかも、時期をずらして、親戚二ヶ所から(^o^)/
ワサビ醤油でもおいしいですが、微塵にした梅干しの肉にかつおぶしをからめたもので食べると、これまたおいしいのですね~。朝っぱらから熱燗というわけにはいかないのが残念です(^o^)/
こういうのは、一種の田舎の贅沢の部類でしょうね。
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narkejpさま (きし)
2010-12-30 15:48:07
それは贅沢!!私にはそういうありがたい親戚がいないのです。
うーん。梅かつぶしでとはおいしそうです。
食に関しては希少であることって贅沢ですよね~。
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narkejpさま (むぎこ)
2010-12-30 21:33:32
うっわ~~~~~贅沢
というかとにかくうらやましい!!!!
近所だったら朝、ぬぼ~~~っとおうちの前に立ってまちかまえてますよきっと。
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ね~。 (きし)
2010-12-30 23:28:18
すごい贅沢ですよね~。
おかしいな、私も田舎暮らしのはずなのに…?
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