ゆっくりと世界が沈む水辺で

きしの字間漫遊記。読んでも読んでも、まだ読みたい。

山口昌伴【水の道具誌】

2010-12-05 | 岩波書店
 
まるで「私、まじめですから」とでも言いそうな雰囲気で並んでいるのに、新書というのは、どうしてこう不思議なものが出ているのでしょうか。
タイトルでいえば『日本神話とアンパンマン』とか。
気になって、つい、読んでしまうじゃありませんか。

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 水の道具誌

 著者:山口 昌伴
 発行:岩波書店
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この本、タイトルこそシンプルで、なにやら深そうな雰囲気が漂っていましたが、趣味の本でした。
道具好きの著者が、特に水にまつわる道具を集めて語ったという内容。

最初に取り上げられているのは如雨露、です。
じょうろ。
めったに漢字で書くことなどありません。書くことがないどころか、持ってないし。
でも、如雨露の、あの水の出口を「蓮口」ということを知って「ほう、いかにも」と思ったり、如雨露作りの名人がすでに他界されていることなどを知って残念に思ったりすることができるこの本は、予想どおり楽しい新書でした。

思う以上に多岐に亘る水にまつわる道具。
きれいなところでは水琴窟。
変わったところでは下駄の爪皮。そういえば、水にまつわるものです。
洗濯板に衛星型洗濯機。
洗面器から、清潔であることと清浄であることの違い、汚れと穢れの違いが語られたり。

水の道具の今昔を通して、水との関わりの変遷を思う。さらに、この先、未来を考える。
そういう意味合いのある内容の本でもありますが、ここはやはり、著者の道具への愛情、思い入れの深さを楽しみたい気がします。
道具を訪ね歩く著者の足取りの軽やかさに合わせて。

加えて。
花綵(かさい)列島。
花を編んでつないだ、花綵(はなづな)のような形の日本の国。
この言葉を知っただけでも、この本を読んだ甲斐がありました。



  

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