リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

サルが撮った写真の著作権,AIが作った曲の著作権

2017-09-21 | 一般
サルが自撮りした写真の著作権はサルにあるのか,セッティングをした写真家にあるのか.動物愛護団体がサルを代弁して写真家を提訴した裁判で米国の地方裁判所はサルに著作権はないとの判決を下していたが,控訴裁判所で訴訟が続いていた.それが先日和解したとの報道があった.(朝日新聞9月13日Wikipedia

それよりも大きな問題になりそうなのはAIが作った作品(音楽,絵画,小説等)の著作権の帰属だ.AIが作った作品の著作権はAIの開発者にという声もあるが,政府の知的財産戦略本部は今年5月,AIの作品は「著作物ではない」と結論づけたそうだ(朝日新聞9月19日).ただし,話はそれほど簡単ではない.
最近はAIの登場によってコンピューターが高品質の作品を作り出す可能性が高まっているが,コンピューターに作品を創造させる試みはずっと以前からあって,著作権審議会でも「コンピュータ創作物」として議論されてきた.AIだろうとなかろうと,コンピューターが全自動で作り出したものには著作権は存在しない.一方,人間がコンピューター(AIでも)を道具として使って創作したものであれば人間が著作権をもつ.人間がある程度の入力を与えてAIに作曲させる場合など,人間の寄与がどのくらいかによって判断が分かれることになる.「プログラムの作成者」(AIの開発者も同じか)に関しては,一般には道具を提供するだけなので著作者にはなりえないものの,プログラムの作成者がプログラムを使う人と共同して特定の創作物作成のためにプログラムを作成した場合などはプログラムの作成者も著作者となりうる場合もあるとされている.
参考リンク:
人工知能が作った創作物、現行の法律ではどうなる?
自動作曲AIソフトの著作権は誰のものに?

ところで,知的財産戦略本部では,AIで大量に作品を作ってそれと似た人間の作品を盗作と訴える濫用が懸念されたという.たとえば大量の音楽を作曲してYouTubeにアップロードして,それと似た曲をみつけたら著作権侵害で訴える――そんな濫用が通用するのだろうか.著作権侵害の判断のポイントは,類似性に加えて「依拠性」がある.(この点,著作権は商標とは異なる.商標では「先に出願して登録した人の勝ち」であり,大量出願が一部でビジネスにされている問題がある.)楽曲Aがたまたま楽曲Bに似ていたというだけでは著作権侵害は成立しないのだ.といっても,「楽曲Bなんて知りませんでした」というだけでは通用せず,「楽曲Bが有名だった」などの事情があれば無意識であっても「依拠性」が認定されることもあるが.いずれにせよ,単に「大量に作って公開した」というだけではたとえ知らずに似た曲を作ってしまったとしても著作権侵害が成立する可能性は低いと思うのだがどうなのだろう.
参考リンク:「音楽著作権侵害の判断手法について -『パクリ』と『侵害』の微妙な関係」

関連記事:中継は著作権? スポーツと将棋の場合(2017年6月25日)

AIコンテンツに関する関連リンク:
福井健策「ドラえもんに心はあるか? ~ AI創作と『最適化の罠』 ~」
福井健策「AI自動創作の現在を俯瞰する ~人工知能は実際どの程度電気羊の夢を見ているのか?~」
「(教えて!人工知能:6)音楽や小説を創作、人間のように著作権ある?」(朝日新聞2018年1月18日)

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