けいはんな文化学術協会ブログ

私達は2001年6月に認証されたNPO法人でけいはんな文化学術協会と称します。

第10回「けいはんな子ども科学キャンプ」開催

2013年01月26日 | 活動報告

第10回けいはんな子ども科学キャンプを12月27日~29日の3日間、けいはんなプラザ・ラボ棟の子ども科学実験室で開催しました。このキャンプは身近にある材料や現象を通して科学的思考習慣を育むことを目的としています。留学生を中心とするキャンプ・カウンセラーの協力のもとに、2泊3日の会期中、朝8時から夜9時まで、小学4~6年生の男女計25名のキャンパーが誰一人として落後するものもなく予定の実験プログラムをやり遂げました。



全体で1時間30分を単位とする10コマの実験時間を設け、1.船が浮く原理(浮力と圧力の関係)、2.葉っぱの組織と細胞の観察、3.磁石の科学とリニアモーターカーの実験(以上、第1日目)



4.天文科学(星座の早見表の作成)、5.カイロの製作と発熱反応の化学、6.飛行機が飛ぶ原理(揚力の科学と模型飛行機の製作・滑空飛翔実験)、(以上、第2日目)



と楽しい実験が続き、2日目の午後3時からは特定のテーマを3人~5人の少人数で実施するラウンド・ロビンに移りました。これは主として留学生の指導のもとに実施しますが、


今回は7.各種食品の糖分・塩分濃度とpHの測定、8.植物細胞と微生物細胞の顕微鏡観察、9.金属と半導体における電気抵抗の温度依存性、10.市販食塩の放射能強度測定、11.赤インク、葉緑素、お茶カテキン、ぶどうジュースの可視ならびに紫外吸収スペクトルの測定、という種目を全員が楽しみました。>



この間、食事後の休憩時間には各国からの留学生による母国の地理・歴史・文化などの映像を使った紹介があり、キャンパーたちは目を輝かせて聴き入っていました。



最後に保護者の同席のもと、修了式を行い、キャンパーひとりひとりに感想を述べてもらった後修了証をお渡しして予定を終えました。




第163回けいはんなサロン「微生物~小さな命と大きな働き」

2013年01月26日 | 活動報告
第163回けいはんなサロン開催
  平成25年1月18日(金)14時~16時30分
   場所:けいはんなプラザ交流棟2F「天の川」
   テーマ:微生物 ~ 小さな命と大きな働き ~
   話題提供者 小川隆平氏 崇城大学(旧名 九州工業大学)名誉教授・同大学理事

はじめに、「微生物には人間の為になる善玉菌と、病気の原因になったり、ものを腐らせる悪玉菌がある。本日は、善玉菌に絞って日本人の研究成果を中心にお話します」と判り易いまえおきから始まり、参加者は頷きながら耳を傾けた。
初めてサロンにご参加いただいた方に
 
微生物の定義は人間の肉眼では見えず、顕微鏡によって観察できる程度の大きさの生物をさす。細菌、放線菌、酵母、カビ、微細藻類などで、ウイルスは含めない。大腸菌は約30分で2倍になり、脚光を浴びているiPS細胞の72倍も早い増殖速度を持つと説明があった。実感は沸かないが凄い速度のようだ。(1個の細胞が24時間後には100兆個になる計算)

暮らしと微生物の話題では酒造りを例にとり、火落菌という菌が日本酒の醸造において邪魔をすることが発見されたのを機に、その原因物質である火落酸(メバロン酸)が心筋梗塞の主要な原因となるコレステロールが作られる時の中間体であることがつきとめられ、それがさらにコレステロール合成抑制剤(三共製薬のメバロチン)の発見に繋がったという話が紹介された。これらはいずれも最先端を行く日本の微生物学研究者の成果であり、ペニシリンとともに奇跡の薬と称され、人類の健康に大きく貢献しているとのことであった。

また世界に認められた日本のだし(コンブ、しいたけ、かつお節由来のうまみ成分)は、現在では全て微生物によって生産されていることからも、微生物の働きは素晴らしいことがわかる。小川氏によると、これは Microbes can do anything !(微生物に頼めば何でもやってくれる!)というらしい。さらに環境分野への貢献や光合成微細藻類光合成類にも触れられ多岐にわたる解説があった。氏が30年程前に取組んだ微生物から工業原料としてのエチレンを作る研究の苦労話は、現在の潮流である石油という化石資源に依存しない再生可能エネルギー資源の開発につながるものであり、大いに参加者の興味を惹いた。

最後は「これやこの ちさき生きもの ありてこそ この世はつねに 栄えきにけり」と先輩の歌を披露されて品格のある話題提供で締めくくられた。この間活発な質問や意見が交わされ熱い雰囲気で活気に満ちた楽しいサロンであった。40名超の参加者の多くは「小さな命の大きな働き」に改めて感銘を受けた様子であった。


次回のご案内
・日時:平成25年2月15日(金) 午後2時~4時30分
・場所:けいはんなプラザ交流棟2F「天の川」
・テーマ:お湯と水で作動するポータブル小型発電システム
・話題提供者:五戸成史 氏
  アルパック理工株式会社代表取締役



1月18日の第163回サロン「微生物 - 小さな命と大きな働き - 」で、参加者のお一人から「自然農法の田んぼでとれたお米と化学肥料を施した田んぼでとれたお米とどちらがうまいか?」という主旨の質問がありました。話題提供者の小川氏の回答を補足するかたちで、もう一度そのご質問に対する回答を書きおきます。


「自然農法で栽培したお米はおいしいか?」
標記の質問に対して小川隆平氏は、まず「その質問には科学者はお答えできないだろう」と言われました。それは質問の中にある「うまいか?」という言葉は、講演の中で述べられた「グルタミン酸ソーダ」(昆布の成分)、「グアニル酸」(シイタケ)、「イノシン酸」(かつお節)に由来する「うまみ」のみを指すのでなく、それ(a.うまみ成分の量)に加えて、未知物質による味の作用(相乗、相加および減殺効果)や歯ごたえなどの感覚(b.官能試験)的なものを含むおいしさを指しており、実はそこまでの学術的な研究はなされておらず、まず科学者は答えられないと言う意味です。さらに上記できちんと答えを出そうとすれば、最低2年の実験期間が必要で、1年目は自然農法栽培を「田んぼA」で、化学肥料施肥栽培を「田んぼB」で行い、2年目には逆に自然農法栽培を「田んぼB」で行い、化学肥料施肥栽培を「田んぼA」で行い、両方法で収穫したお米の味を調べて始めて比較ができるとも答えられました。つまりこれが科学的立場に立った最低限の方法です。
したがって、「科学者には答えられない」というのは、田んぼAとBを入れ替えた栽培も含め、上記(aとb)の方法できちんと味を調べた科学者はいないということで、これに関して現在の科学はそこまでは進んでいないということです。したがって、私が申し上げたように、消費者(市民)が自分の判断でうまいかまずいかを決めるしかないわけです。

なお、a.のうまみ成分の含量を調べることは容易なことです。化学分析法は精度が高くごく微量でも検出できますから、きちんと分析すればその違いを数値で正確に表示できます。
問題はb.にあります。b.の官能試験というのは「感じ」という主観的な要素を含むものであり、それは科学の方法論にはなじまないものです。もうけ主義の補助食品業者が販売するあるサプリメントについて、ある人は「効いた」といい、別の人は「効かなかった」というのと同じです。自分で判断しないとすれば判断を他人に委ねることになりますが、それが風評や過信を生むもとになっていることに気づいてほしいわけです。自分で判断できる市民が育つように支援するというのが主催者である当協会の使命であり、このサロンの目的です。
以上、表題にある前回のサロンにおけるご質問に対する回答を、話題提供者の小川様の了解を得て補足しました。
引き続き、このサロンで皆様とお会いできることを楽しみにしております。
  けいはんな文化学術協会  理事長   高 橋 克 忠


第1回「けいはんな国際中学生キャンプ」開催

2013年01月11日 | 活動報告

「けいはんな文化学術協会」は皆様から非常にご賛同をいただいている小学生のための科学キャンプの経験を生かして初めての試みとして中学生のためのキャンプを開催しました。



12月22日から2泊3日で公益財団法人京都地域創造基金のご支援ご協力のもと(公財)関西文化学術研究都市推進機構、(株)けいはんなの協賛及び生駒市ならびに精華町・木津川市・京田辺市・城陽市・交野市・生駒市の各教育委員会の御後援のお陰で開催し、素晴らしい成果をおさめました。



このキャンプは「グローバルな視点を持ち明日の世界を力強く生きるために中学生が考えるべきことは何だろう?」を主旨にKeihanna Global Camp 2012「けいはんな国際中学生キャンプ」英語タイトルを“Explore the Invisible; Feel, Touch and Explore the World”  として第1回目を無事終えました。





キャンプで直接子ども達の指導にあたるスタッフをキャンプ・カウンセラーといいますが、今回は世界5ヵ国から5人の留学生、Benjamin(ベンジャミン、オーストリア)、Gala(ガラ、ブルガリア)、Javier(ハビエル、ボリビア)、Tharaka(タラ、スリランカ)、Victor(ビクター、ロシア、Chief Counselor)をカウンセラーとして迎えました。



これらの方々、特にチーフカウンセラーの周到な準備及び臨機応変に対処する能力に助けられ、また留学生達のまとまった力、そしてインターンとして参加して下さった立派な人格の持ち主である3人の大学生、竹本享世さん、長島瑠美さん、山本晃平さんの助けもあり期待以上の成果がありました。





 第1日目は親子で参加していただいた開会式、ホテル等のオリエンテーションに続き、アイスブレーキングゲームをして少し打ち解けた後、パネルディスカッションをしました。
「ファストフードの話」と「100人の村の話」では参加者が感想を活発に述べ、楽しい時間になりました。夕食後はNHKのクローズアップ現代「震災漂流物」を鑑賞してみんなで感想を述べ、グローバルな視点で問題を話し合う場としました。その後、キャンパーが自己紹介をしましたが、みんなが個性を打ち出してのびのびと紹介できました。夜9時過ぎにホテルに移動し、そこでもそれぞれ楽しい時間を過ごしました。



第2日目は五人の留学生達が自分のお国の「学校制度」を紹介して下さり、どこの国でも教育を大切にしていることが理解できました。午後は「留学」、「みんなの将来」をテーマにThara を中心にプレゼンテーションがあり、他の留学生たちの将来計画も聞くことができて有意義な時間を過ごしました。

休憩の後「地球人として」をテーマにキャンパーと留学生カウンセラーとが活発な意見交換をしました。飢餓の問題や環境問題、資源の問題など、日頃知る機会の少ない国々の状況も含め、キャンパー達が大きく視野を広げて考える動機となったと思っています。
夕食はけいはんなホテルのレストランラ・セーヌでみんなディスカッションの余韻にひたり、仲良く話をしながら戴きました。その後は「20歳の私へ」というテーマでパワーポイントによる発表のための資料を作成し、終了したのは9時半を過ぎていました。




第3日目は前夜作成したパワーポイント資料をそれぞれが披露しました。ご覧いただいた保護者の方々も満足気でした。その後の閉会式では修了証をカウンセラーから授与されとてもいい雰囲気でした。
スタッフの竹本さん親子のバイオリン生演奏を聴いたり、サインを交換したり素晴らしいフェアウェルパーティーを最後に終了しました。


 第1回「けいはんな国際中学生キャンプ」の立派な成果で次回への期待を持つことが出来ました。参加者の皆さん、保護者の方々、そして留学生カウンセラーの皆さん、インターンの皆さんにスタッフ一同感謝です。






第162回暮らしの中の科学を考える[けいはんなサロン]開催

2013年01月09日 | 活動報告
第162回暮らしの中の科学を考える「けいはんなサロン」が開催されました。

日時:平成24年12月21日 14時=16時30分

テーマ:「食品の安全・安心」~補助食品をめぐる問題点~

話題提供者:けいはんな文化学術協会 理事 澤田玄道氏 元日本新薬㈱ 食品開発研究所長


冒頭でマクロ的な視点で食品は生命の維持および成長期にあっては成長に欠くことのできないものとしたうえ、現在世界の飢餓人口は8億6800万人と8人に1人が飢餓に苦しんでおり、毎年約1500万人、4秒に1人の割合で飢餓が原因で死亡しているという実情が報告された。そのような状況下、我が国では、食料の自給率が40%を切っているにも拘わらず、食べ物の廃棄率が40%にも達する、とムダの多い食生活に対し厳しい指摘があった。

少し固い話になったが食品の定義に始まり、食品安全基本法、食品衛生法等が制定された経緯と薬事法との関連について説明があった。話題提供者の体験に基づいた赤裸々な裏話や縦割り行政の不条理な話がところどころに折り込まれていて、参加者になるほどと思わせる話の組み立てが印象的であった。


最近の新聞等にみられる補助食品の過大な広告は行政の制約をかいくぐるようなかたちで広がっており、実際の新聞広告例を数多く提示して、それらの問題点について解説がなされた。我々消費者は飽くまで冷静に見極める知識を持ち自己責任で利用すべきであると結論された。


初参加の主婦の1人は、法律の話は難しい点はあったが、自分で納得して使うことが大切だと思ったとの感想を述べられていた。また連れの方は、食品を管轄する省庁の施策は意外と歴史が浅く未熟な感じがしたとのことでした。役人の縄張り争いは古くて新しい問題であり、消費者不在は相変わらずだとの食品行政に対する批判の声も聞かれた。


師走も押しせまった寒い中40名を越す多数の参加者があり、食の問題が身近かなテーマとして関心の高いものであることを改めて実感させられた。




  次回は第163回テーマ「微生物」~小さな命の大きな働き~
    日 時:平成25年1月18日(金) 午後2時~4時30分 けいはんなプラザラボ棟 2階「天の川」に於
   話題提供者に 崇城大学(旧名 熊本工業大学)理事・名誉教授 小川 隆平 氏(応用微生物工学)をお迎えして開催致します。
   皆様のご参加お待ち申し上げます。