けいはんな文化学術協会ブログ

私達は2001年6月に認証されたNPO法人でけいはんな文化学術協会と称します。

第164回けいはんなサロン「お湯と水で作動するポータブル型小型発電システム」開催

2013年03月04日 | 活動報告
第164回けいはんなサロン開催
  平成25年2月15日(金)14時~16時30分
   場所:けいはんなプラザ交流棟2F「天の川」
   テーマ: お湯と水で作動するポータブル型小型発電システム
   話題提供者:アルバック理工株式会社 五戸 成史市
当システム開発の背景は、化石燃料の枯渇が懸念され、さらにCO2 による地球温暖化が進むなか、新たな発電の仕組みが必要となってきていることにある。話題提供者が代表を務めるアルバック理工株式会社(本社:横浜市)では、未利用で廃棄されるエネルギー、とりわけ200℃以下の低温度領域の熱を回収して、これを電気エネルギーに変えるシステムを開発した。

熱を電気に変える方法の一つに物理学でいうゼーベック効果を利用するものがあり、これはすでに草津温泉でフィールドテストが実施されていることが紹介されたが、今回のものはこれとは異なり、さらに発電効率の良い蒸気発電を基礎技術とするものである。既存の火力発電と原理は同じに見えるが、タービンに代えて小型発電に適したスクロール型の駆動装置を開発し、これを採用したところが特徴とのことである。

まず、未利用で廃棄されている低温熱源にはどんなものがあるかを詳しく述べられた。具体的には工場等の排熱、すなわち製造工程で使用した冷却水は廃棄されるときには70~80℃に達しているし、ゴミ焼却機の炉や煙突はさわれば火傷をする、あるいは温泉で湧き出る湯の大部分は湯船に導かれるのではなく垂れ流しの状態であること、また、太陽光は発電に利用されるものの、そこに含まれる熱は利用されていないこと、などの事例である。



近年かなり普及してきている太陽光パネルは雨天の日や夜間は稼働しないため、1日当たりの平均発電時間は3時間ということである(太陽光発電協会の資料による)。新規に開発した発電装置は日照とは関係ないため、24時間稼働で太陽光発電の8倍、12時間稼働で4倍に及ぶことになる。講演では自動販売機よりも少し小さな発電装置の映像とともに、テレビで放映された鹿児島の焼酎メーカーにおける排熱を利用した6.3kWの発電の模様や菓子工場における発電の実例などが紹介された。


資源のない日本ではエネルギー問題についての関心が高いものの、今回のテーマのように捨てられていたエネルギーを活用しようという発想やその実用化のための取組みが乏しい。参加者の多くからこうした点で今回の小型発電システムに大きな期待が寄せられ、それに関連した質問や提案が続出し熱い議論が展開された。特に小型ごみ焼却炉から出る熱を利用した発電では1時間当たり100kgのごみを焼却すると約3.6kWの発電ができることに大きな注目が集まった。参加者の多くが新しい視点での環境問題への取組みに感動を新たにしたサロンであった。



お湯と水で作動するポータブル型小型発電システムに関する精華町への提案:

上記のテーマで紹介されたシステムは小さな事業所が導入するには手ごろな規模のもの(価格は800万円)であるため、参加者の一人(元消防署長の浅田氏)が精華町へとりついで下さり、2月26日に町長室で木村 要 町長と関連部局のお二人に当協会の高橋克忠理事長、当協会技術移転グループの角野建作会員、それに精華地区まちづくり協議会の廣瀬亮二会長(いずれもが精華町環境プラットフォーム・メンバー)がお会いした。



けいはんな文化学術協会は従来から、精華町は国家プロジェクトである関西学研都市の中核ゾーンを擁し、なおかつ人口が36,000人で、何をするにも適切なサイズの街であるため、このことを意識して他の自治体のモデルになるような先導的取組みをすべきであると主張している(将来計画策定におけるヒアリング、環境プラットフォームの会合など)。その具体的な方策の一つとして、(1)上記サロンのテーマである小型発電システムを役場内に設置して、その発電エネルギーで風呂を沸かし「精華温泉」として町民に開放すること、(2)環境保全に関していつも町民から提起されている竹林の繁茂への対応として、これを資源として竹パルプ紙を製造し、役場内で使用する紙を全てこの竹パルプ紙とすること、の2点を提案させて頂いた。


環境問題では「川をきれいに」とか、「里山の保全」とか、はたまた「生ごみの堆肥化」などはどこの自治体でもなされている取り組みである。一方、エネルギー問題については原子力発電や再生可能エネルギーの導入など生活実感とは程遠い次元の議論に終始しているという現状を立ち止まって考えてみる必要があるというのが私たちの主張である。資源の乏しい我が国にあって、一人一人の生活周辺でエネルギーをどれだけ生産しているかということをもっと意識しなければならない、言い換えれば環境ならびにエネルギー問題をいう時になぜエネルギー自給率を考慮しないかという問題提起でもある。ちなみに環境意識が非常に強いドイツでは、国民議会(国会に相当するもの)議事堂のエネルギー自給率がなんと80%にも達する。国が率先して見本を示すわけだから国民の意識も高くならないわけがない。今回の私たちの精華町への提案は、行政が主導してそこに住まいする人々がグローバルな視点での環境意識を持つように仕向ける必要があるということに他ならない。



今回はいつも真摯な対応をされる木村町長の人柄を知っての面談であるが、この日も生活環境部の担当者2人を同席させ、持参した資料や熱電変換装置を用いた実験を見ながら真面目に耳を傾けて下さったことに感謝している。財政状況の厳しい折から容易に実現することは無理としても、同席された担当部局のお二人に適切な検討を指示しておられたこともあり、地方自治体のあり方としての精華町のあらたな展開へつながる一つの契機となることを念じているし、遠くない時期に具体的な策が講じられることを期待している。


次回165回は「人に”やさしい”車とは~車はどこまで安全なのか?~」をテーマで平成25年3月15日(金)午後2時~4時30分
けいはんなプラザラボ棟2階「天の川」で開催致しますのでおそろいでご参加いただきますようお待ち申し上げます。