けいはんな文化学術協会ブログ

私達は2001年6月に認証されたNPO法人でけいはんな文化学術協会と称します。

第1回「けいはんな国際中学生キャンプ」開催

2013年01月11日 | 活動報告

「けいはんな文化学術協会」は皆様から非常にご賛同をいただいている小学生のための科学キャンプの経験を生かして初めての試みとして中学生のためのキャンプを開催しました。



12月22日から2泊3日で公益財団法人京都地域創造基金のご支援ご協力のもと(公財)関西文化学術研究都市推進機構、(株)けいはんなの協賛及び生駒市ならびに精華町・木津川市・京田辺市・城陽市・交野市・生駒市の各教育委員会の御後援のお陰で開催し、素晴らしい成果をおさめました。



このキャンプは「グローバルな視点を持ち明日の世界を力強く生きるために中学生が考えるべきことは何だろう?」を主旨にKeihanna Global Camp 2012「けいはんな国際中学生キャンプ」英語タイトルを“Explore the Invisible; Feel, Touch and Explore the World”  として第1回目を無事終えました。





キャンプで直接子ども達の指導にあたるスタッフをキャンプ・カウンセラーといいますが、今回は世界5ヵ国から5人の留学生、Benjamin(ベンジャミン、オーストリア)、Gala(ガラ、ブルガリア)、Javier(ハビエル、ボリビア)、Tharaka(タラ、スリランカ)、Victor(ビクター、ロシア、Chief Counselor)をカウンセラーとして迎えました。



これらの方々、特にチーフカウンセラーの周到な準備及び臨機応変に対処する能力に助けられ、また留学生達のまとまった力、そしてインターンとして参加して下さった立派な人格の持ち主である3人の大学生、竹本享世さん、長島瑠美さん、山本晃平さんの助けもあり期待以上の成果がありました。





 第1日目は親子で参加していただいた開会式、ホテル等のオリエンテーションに続き、アイスブレーキングゲームをして少し打ち解けた後、パネルディスカッションをしました。
「ファストフードの話」と「100人の村の話」では参加者が感想を活発に述べ、楽しい時間になりました。夕食後はNHKのクローズアップ現代「震災漂流物」を鑑賞してみんなで感想を述べ、グローバルな視点で問題を話し合う場としました。その後、キャンパーが自己紹介をしましたが、みんなが個性を打ち出してのびのびと紹介できました。夜9時過ぎにホテルに移動し、そこでもそれぞれ楽しい時間を過ごしました。



第2日目は五人の留学生達が自分のお国の「学校制度」を紹介して下さり、どこの国でも教育を大切にしていることが理解できました。午後は「留学」、「みんなの将来」をテーマにThara を中心にプレゼンテーションがあり、他の留学生たちの将来計画も聞くことができて有意義な時間を過ごしました。

休憩の後「地球人として」をテーマにキャンパーと留学生カウンセラーとが活発な意見交換をしました。飢餓の問題や環境問題、資源の問題など、日頃知る機会の少ない国々の状況も含め、キャンパー達が大きく視野を広げて考える動機となったと思っています。
夕食はけいはんなホテルのレストランラ・セーヌでみんなディスカッションの余韻にひたり、仲良く話をしながら戴きました。その後は「20歳の私へ」というテーマでパワーポイントによる発表のための資料を作成し、終了したのは9時半を過ぎていました。




第3日目は前夜作成したパワーポイント資料をそれぞれが披露しました。ご覧いただいた保護者の方々も満足気でした。その後の閉会式では修了証をカウンセラーから授与されとてもいい雰囲気でした。
スタッフの竹本さん親子のバイオリン生演奏を聴いたり、サインを交換したり素晴らしいフェアウェルパーティーを最後に終了しました。


 第1回「けいはんな国際中学生キャンプ」の立派な成果で次回への期待を持つことが出来ました。参加者の皆さん、保護者の方々、そして留学生カウンセラーの皆さん、インターンの皆さんにスタッフ一同感謝です。






第162回暮らしの中の科学を考える[けいはんなサロン]開催

2013年01月09日 | 活動報告
第162回暮らしの中の科学を考える「けいはんなサロン」が開催されました。

日時:平成24年12月21日 14時=16時30分

テーマ:「食品の安全・安心」~補助食品をめぐる問題点~

話題提供者:けいはんな文化学術協会 理事 澤田玄道氏 元日本新薬㈱ 食品開発研究所長


冒頭でマクロ的な視点で食品は生命の維持および成長期にあっては成長に欠くことのできないものとしたうえ、現在世界の飢餓人口は8億6800万人と8人に1人が飢餓に苦しんでおり、毎年約1500万人、4秒に1人の割合で飢餓が原因で死亡しているという実情が報告された。そのような状況下、我が国では、食料の自給率が40%を切っているにも拘わらず、食べ物の廃棄率が40%にも達する、とムダの多い食生活に対し厳しい指摘があった。

少し固い話になったが食品の定義に始まり、食品安全基本法、食品衛生法等が制定された経緯と薬事法との関連について説明があった。話題提供者の体験に基づいた赤裸々な裏話や縦割り行政の不条理な話がところどころに折り込まれていて、参加者になるほどと思わせる話の組み立てが印象的であった。


最近の新聞等にみられる補助食品の過大な広告は行政の制約をかいくぐるようなかたちで広がっており、実際の新聞広告例を数多く提示して、それらの問題点について解説がなされた。我々消費者は飽くまで冷静に見極める知識を持ち自己責任で利用すべきであると結論された。


初参加の主婦の1人は、法律の話は難しい点はあったが、自分で納得して使うことが大切だと思ったとの感想を述べられていた。また連れの方は、食品を管轄する省庁の施策は意外と歴史が浅く未熟な感じがしたとのことでした。役人の縄張り争いは古くて新しい問題であり、消費者不在は相変わらずだとの食品行政に対する批判の声も聞かれた。


師走も押しせまった寒い中40名を越す多数の参加者があり、食の問題が身近かなテーマとして関心の高いものであることを改めて実感させられた。




  次回は第163回テーマ「微生物」~小さな命の大きな働き~
    日 時:平成25年1月18日(金) 午後2時~4時30分 けいはんなプラザラボ棟 2階「天の川」に於
   話題提供者に 崇城大学(旧名 熊本工業大学)理事・名誉教授 小川 隆平 氏(応用微生物工学)をお迎えして開催致します。
   皆様のご参加お待ち申し上げます。





第159回けいはんなサロン「外国人にとって日本語はどう映るか」開催

2012年12月10日 | 活動報告
外国人にとって日本語はどう映るか ~ 私が日本で言語学を研究する理由
日時:平成24年9月21日(金) 午後2時~4時30分
話題提供者:イローナ・アレクシウナイテ氏 京都大学言語学研究室大学院
(リトアニア出身)

イタリア人とポルトガル人が同じ家に住んでもコミュニケーションに困ることはない。それぞれの言語が同じラテン系の言葉であり、個々の単語はもとより文法や発音においても類縁関係があるからである。しかし、日本語には近隣にそのような類縁関係にある言語は存在しない。私たちは日本語におけるこのような特殊性を日常的に意識することはない。では外国人からみた場合、日本語はどのように映るのであろうか。第159回けいはんなサロンでは、これまでとは趣を変え、日本で言語学を研究する方をお招きし、普段意識することのない日本語について考えることとした。話題提供者はリトアニア出身のイローナ・アレクシウナイテ氏である。


彼女の話は当然のことながら、日本人にとって話題になることの少ないリトアニアという国の紹介から始まった。言うまでもなくラトビア、エストニアと並ぶバルト三国の一つであるが、面積は日本のおよそ1/6、人口はおよそ京都市なみの300万人という小国である。その首都ビリニュスにある国立ビリニュス大学の比較アジア学研究科で日本語について少し学び、その後、来日して京都大学の言語学研究室で修士課程の2年目を迎える大学院生である。

まず、冒頭に書いたような世界の中での日本語の位置づけについて話された。使用する言語を人口との対比からみると、その第1位は中国語、次いで英語、スペイン語と言う順番であり、日本語は第9番目に位置する。世界人口に占める日本人口の割合は1.92%にしか過ぎないから、これは世界に現存する言語の種類が如何に多いかということを示している。実際、世界中には7,000語の言語が存在するそうである。



言語は語源的に印欧語族とウラル・アルタイ語族の二語族にわけて考えられているが、日本語はその内の後者に属するというのが言語学での考え方であり、現在では北方からの影響を受けたアルタイ語族の一つという説が有力なようである。しかし、他の言語との類縁性に乏しく、孤立した状態にある。これを言語学では「ミッシングリンケージ(失われた連鎖)にある」という。

しかし、イローナさんの場合には、だから日本語は難しいという考え方には否定的な見解を示された。彼女が学ばれたビリニュス大学で、日本語を学ぶ人というのは毎年ほんの一握りの学生しかいないということである。しかし、アジア圏の言語では中国語を学ぼうとする人が多いのは、中国をビジネスの対象として、そのための必要性が動機になっている。ところが、日本に来て周辺を見渡してみると、学生(院生)として日本語を研究しようという若者で将来ビジネスに役立てようとすするものはいることはいるが、日本文化に対する探求心が動機となっている人が多いという。彼女が日本語は難しいという言い方に否定的なのは、日本語を仮に流暢に喋ったとしても、考え方が母国のままであれば良くないという言い方をされていることに通じるものがあると感じられる。比較言語学のように他の言語との関係の中でその特質を見ようとしているのでなく、文化を深く理解するためにということである。


さて彼女にとっての日本語はというと容易に想像されることだが、敬語ならびに丁寧語の使い方がもっとも難しいとのことであった。島国という外部に閉ざされた環境で表現力豊かな(冗長度の大きな)発達を遂げた結果であろう。しかし、わずか1年半の滞在で、市民の前で日本語で講演(話題提供)をするというのはおよそ我々には考えられないことではないだろうか。その点はいくら好きだからと言っても、あるいは日本文化を探求したいと言っても日本人の外国語習得の様子からみてとうてい信じられないと思われた人は多かったに違いない。しかし、これは他の外国人にあたってみても同じようなものであることがわかる。日本の外国語教育が如何に間違ったものかを如実に物語っていると言えないだろうか。ちなみに日本では誰もが義務教育6年の間に英語を学ぶが、外国へ行き、何年英語を勉強したかと尋ねられても、恥ずかしくて「6年間学びました」などとは絶対に言えない。

小国リトアニアはソビエト連邦の崩壊に至るまで、長くロシアに占領されていた。なぜロシアのような大国が小さなバルト三国を占領下においていたか、そのことも参加者の間で話題になった。これはバルト海沿岸を軍港として活用するためであり、実際バルチック艦隊は日本海海戦で東郷平八郎率いる大日本帝国海軍に敗れるまでに、母港であるバルト海を出港して喜望峰を回る長い航海を経てようやく日本海にたどり着いた時にはすでに水兵は疲弊した状態にあり、日本のような小国にも敗れて当然であったわけである。一方興味深いのはソ連崩壊後独立した国々はいずれもロシアの影響で宗教はロシア正教であったのに対し、リトアニアはローマカトリックの国であるという事実である。ポーランドにも接している地理的な事情によるようである。しかし、日本人にとっては、多くのユダヤ人を救ったという杉原千畝の美談を知る人の方が多いかもしれない。

そうした過去の歴史と同時に、もう一つ知っておかねばならないのは、私たちが想像する以上に日本文化が外国に向けて、したがってリトアニアという小国にも発信されていることである。その代表としてイローナ氏はロボット技術、寿司、茶道を挙げられた。
結局、一般論としては外国語への探求心はすなわちその国の文化への探求心であり、自身としても言語を介して日本文化・社会の内面を理解したいと結ばれた。
外国語と言えばまず英語というのが一般的な風潮であるが、それでよいのだろうか?日本人の英語下手は国際的に有名であるが、私たちが英語を学ぶのは学ばされているのであって、英語圏の文化を知ろうとして学んでいるわけでないことを、参加者の多くがあらためて気付かされる契機になったのではないだろうか。いつかもう一度場を設け、外国語教育について考える機会があれば有意義であろうと感じた。



やましろタカラフェスティバル開催

2012年12月08日 | 活動報告
11月25日山城広域振興局主催の「やましろのタカラフェスティバル」が京都府立けいはんなホールに於いて開催されました。


メインホールでは文化活動、イベントホールでは地域活動、ラボ棟のイベントホール2では科学体験が催されましたが「けいはんな文化学術協会」では「宇宙航空研究開発機構(JAXA)」との共催で「ペットボトルロケットの工作と発射実験」をしました。応募者が多数だった為抽選で選ばれた午前32名と午後32名の小学生、中学生とそのご家族が参加されました。

初めに当協会のメンバーでJAXAの宇宙教育センターの宇宙教育リーダーに登録されている松尾氏と井上氏がJAXAの紹介とロケットの構造やなぜ宇宙まで飛んで行けるのか、どのような開発の歴史をたどったかを分かりやすく説明されました。子供達、その家族の皆さんも興味深く大変熱心に聞いていました

その後2グループに分かれて実験室に移動しペットボトルを組み合わせてロケットを組み立て自分の好きなデザインの模様を描き名前の代わりにオリジナルのロケットを制作して楽しみました。


その後けいはんなプラザの駐車場でロケット発射を楽しみました。参加者は皆何度も飛ばしたかったのですが時間いっぱいそれぞれ3回飛ばしました。


広い駐車場の端から端まで飛ぶのを見て、通りかかった人達も一緒に「普通の水が入っているだけですか?なぜ飛ぶんですか?凄いなぁ」と感動の瞬間でした。帰りには参加者全員が自分の作ったロケットとJAXAからの“お土産”を貰い嬉しそうに持ち帰りました。


中学生のためのグローバルキャンプ参加者募集中!!

2012年12月08日 | 活動報告
中学生のみなさん
ホテルに滞在してクリスマスを外国人留学生と一緒に過ごしませんか。そしてグローバルな視点で自分の将来を考えてみませんか。私たちNPO法人「けいはんな文化学術協会」は公益財団法人「京都地域創造基金」のご支援とご賛同をいただきこのプロジェクトを立ち上げました。このチャンスをいかして一生の思い出に残る体験をして下さい。






第157回けいはんなサロン「体臭の発生要因と効果的な対処法」を開催

2012年12月03日 | 活動報告
 第157回けいはんなサロン開催
 日時:平成24年7月20日(金) 午後2時~4時30分
 場所:けいはんなラボ棟2階 天の川
 テーマ:日本人の体臭の実態 
 話題提供者:マンダム中央研究所 基盤研究室 志水弘典氏


7月の第157回けいはんなサロンは体臭が気になる季節でもありましたので、男性化粧品でおなじみの株式会社マンダムから志水弘典氏をお迎えし、「日本人の体臭の実態 ~ 体臭の発生要因と効果的な対処法について」というタイトルで話題提供して頂きました。志水氏は同社中央研究所の基盤研究室主任研究員で、大学との共同研究も多く立派な論文を協会誌に発表しておられる方です。体臭とはどういう仕組みで発生し、それに対してどのような対処の方法があるかについて科学的な立場から話を伺い、参加者で考える場としました。

臭いに関してはすでに2月に資生堂から神田様をお招きし、第2回イグノーベル賞の受賞につながった「足の臭い」の研究についてお話し頂きました。その際は化学分析によりただ1種の物質(脂肪酸)が要因であることを突き止められたお話しでしたが、今回の体臭については、腋臭がその大部分であり、腋の下から集めた汗を同じ質量分析法という方法で分析して、326種の成分が認められたというところからスタートされました。さらに、日本人の男性の臭いで特に不快とされるのは酸臭(A型)とカレースパイス臭(C型)の2タイプがあるようで、それぞれの特異成分も解明されたとのことです


汗は皮膚から分泌されるわけですが、皮膚には汗腺ならびにアポクリン腺の二種があります。しかし、足の裏あるいは胸、腋下というように部位によってはその分布が異なり、したがって、分泌物もそれぞれに特徴があるようです。一方、汗の量と臭いとの間には相関がなく、太っている人は体臭が強いようにイメージしがちですが、それは間違いとのことです。しかし、汗が体臭の要因になっていることは明白であり、どのような仕組で臭い成分が生成されるのかも研究されました


それによると腋の下からの分泌物の分泌とそれを栄養源とする微生物の繁殖の2段階で臭い成分が形成されることが基本であること。そうであればそれへの対処の方法としては、頻繁にこの分泌物を除去すると同時に、それを餌とする特定の微生物の増殖を抑制する薬剤を開発することにつきることになります。こうした研究はボランティアを使って進められましたが、その様子をNHKの番組でも採りあげられたことが映像資料とともに紹介されました


志水氏は、企業における研究開発者は常に生活者のニーズと向き合う必要性があることを強調されておられましたが、特性に応じた臭い取りのための拭き取りシート(ボディペーパー)など、上記を基本とする対処法に沿うかたちで商品も開発され、現在若い世代を中心に、幅広く受け入れられているようです。また、体臭といえば香水や香辛料が発達したヨーロッパを思い浮かべる人も多いかと思いますが、現在ではこうした体臭対策のための商品はアジアを中心にそのマーケットが拡大されているとのことでした

要約すれば、臭いのもととなる皮膚からの分泌物は分泌直後は無臭ですが、これを微生物が分解することで臭い成分に変えられます。ということは寝ている間にもこれらの微生物の餌となる分泌物が皮膚表面に堆積しているわけで、出勤した頃に微生物の増殖が始まるということを避けるため、出掛ける前に、就寝中に堆積した分泌物をシャワーで洗い流すというのがもっとも効果的な対処の方法であると結ばれました。

第161回けいはんなサロン「有機化学からみたアルツハイマー病の診断」開催

2012年12月02日 | 活動報告
第161回けいはんなサロン開催
日時:平成24年11月16日(金) 14時~16時30分
場所:けいはんなプラザラボ棟2階 天の川
テーマ:有機化学からみたアルツハイマー病の診断
話題提供者 田口弘康 氏( 滋賀医科大学分子神経科学研究センター特任教授)

以下二つの話題に絞り詳しい説明があった

1.アルツハイマー型認知症(以下アルツハイマー病)の症状と脳内の変化
アルツハイマー病で死亡した人は全て脳に老人斑が観察されている。これはたんぱく質の一種であるβアミロイドが凝集してできた凝集体であり、脳神経細胞の内部でなく、神経細胞と神経細胞の間に蓄積されるものである。しかし、βアミロイドが決定的な原因物質であると確認されたわけでなく、その意味では仮説であり、専門家は「βアミロイド仮説」と呼んでいる。
なお、アルツハイマー病で死亡した人の脳には老人班が必ず観察されるが、老人斑がある方は必ずしもアルツハイマー病ではないところが複雑で悩ましいところだ。
アルツハイマー型認知症の病状は3段階に分かれ、第1期(1~3年)は「時間」、第2期(2~数年)は「場所」、第3期(発症後数年~)は「人」の失見当識が見られる。



2.早期に診断するための研究についてのご紹介
話題提供者はβアミロイド仮説に立ち、アルツハイマー病の原因物質である老人斑の検出が早期診断に役立ち重要であると考えておられる。その上でアミロイドの凝集体と特異的に結合する物質で、大病院ではごく一般的になっている検査機器「MRI(核磁気共鳴画像化法)」 ならびに「 PET(陽電子放出画像化法)」で識別できる化合物(Shiga-Y5)を有機化学的に作製され、その化合物の構造や性質について丁寧に説明された。それによると、老人斑に結合する化合物は、①分子構造が環状で平面であり、②その環内を電子が自由に動き回ることができ、③分子の両端に結合しやすい部分(官能基)がなければならず、この3つの条件が必要であるとのことである。

 実際、この化合物Shiga-Y5については、これをアルツハイマー病で亡くなった患者の脳切片に振りかけて蛍光顕微鏡で観察して確かめられた。また、他にはアルツハイマー病の遺伝子を持つマウスに注射してMRI装置で観察し、診断に供することができることを示された。
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さらに強調されたのは、これを用いたアルツハイマー病の診断が体外でも可能である点である。現在、少量の血液を採取して、それで各種の疾患の診断することが広く行われているが、ここでもShiga-Y5を用いてこの体外診断が可能なことを理論的に示されたが、実用的には感度がまだ足らないために、この障壁を乗り越える必要があることを強調された。
一方で、この Shiga-Y5 はアルツハイマー病の治療薬としての可能性を秘めており、根拠となるマウスを使った学習効果の実証実験の模様も紹介された。まだ道のりはあるようにみえるが、この学習効果の実験を鋭意進めているところであると締めくくられた。



なお、一般市民にとってはどうしたらアルツハイマー病に罹らなくてすむか、どのようにしたら発症を遅らせることができるか、というのが最大関心事であるが、発症のメカニズムの詳細がまだ解明されていないために、その学術的な正答を誰も提示できる段階でない。しかし、この質問には「良く身体を動かすこと」と単純明快に回答された。その理由は体内における代謝反応を促進し、アミロイドならびにその前駆物質であるアミロイドオリゴマーの体内濃度を低くすることにある。


一部の参加者には些か難解な面もあったが最後は明るく希望の持てる話でアルツハイマー病に対する理解が深まった。現在の科学ではその要因の一つは老人斑であり、家族性アルツハイマー病の場合にはその遺伝子も解っているのに、それ以外は殆んど解明されず謎に包まれている現状を聞き、まだ時間が必要だと感じた。

次回162回は「食品の安全・安心」~補助食品をめぐる問題点~
  平成24年12月21日(金)午後2時~4時30分
   話題提供者:KVC理事 元日本新薬(株)食品開発研究所所長  澤田玄道氏
 皆様のご参加お待ちしております。




第7回やましろサイエンスフェスティバルで水ロケット発射実験を開催

2012年12月02日 | 活動報告


去る11月4日木津川市梅美台にある関西光科学研究所「きっづ光科学館ふぉとん」で山城広域振興局主催、JAXA共済催で「ペットボトルロケット発射実験」をしました。

初めにホールでわがNPO法人「けいはんな文化学術協会」会員で宇航空研究開発機構の宇宙教育リーダーに登録されている松尾氏と井上氏の「JAXAの紹介とロケットのしくみと開発の歴史」についてのお話がありました。

そのあと外に出てペットボトルロケットを発射しました。水と圧力をかけた空気で
高速で噴き出させるだけで50メートル近くも飛び

参加者親子は全員とても感動して何度も打ち上げたい様子でしたが時間がなく残念そうでした。周りで見学している大人の人達まで興奮する瞬間でした


帰りには子供全員がJAXAからの“お土産”を貰い大喜びでした。

第2回 科学で楽しむ親子自然観察会開催

2012年10月28日 | 活動報告

10月27日土曜日好天に恵まれ心地よい秋の日けいはんな記念公園内で「親子で楽しむ自然観察会」を9人の参加者で開催しました。
記念公園の位田さんのご挨拶のあとけいはんな文化学術協会のスタッフ瀬崎さんの解説を聞きながら公園の「さえずりの小道」を散歩しました。


ガマズミの赤い実に秋を感じました


秋を代表するような赤い実をつけたガマズミ、高野山のお坊様がほうきを作ったというコウヤボウキ、可愛らしい赤い実のニシキギ等々の説明を聞き


ピンク色のかわいい花ですが枝は固くほうきが作れるの説明に皆感動!



またアカマツとクロマツの見分け方や竹と笹の見分け方に耳を傾けているうちに池のほとりに出て池の中を飛び石つたいに観月楼へ進み学習室に到達しました。


みんな元気に楽しく歩きました


学習室ではレプリカ法で葉っぱの表裏を顕微鏡で観察「気孔」を見つけました。その後ヤブツバキの葉でぞうり、薬味入れを、イヌマキの葉でしゅりけん、クマササ
の葉で果物籠を作ってかわいい幼児から中年のご夫妻まで楽しく盛り上がりました。皆さんから大変興味深かったとご感想を頂ました。


出来栄えに喜びいくつも作りました


第40(通算160)回けいはんなサロン「自分の家で電気を作る家庭用発電システムの開発」開催

2012年10月28日 | 活動報告
 

第160回(第40回)けいはんなサロン開催

・日時:平成24年10月19日(金)14時~16時30分 

・場所:けいはんなプラザ交流棟2F「天の川」

・テーマ:自分の家で電気を作る、家庭用発電システムの開発
     夢の高効率エネルギー機器が糧に入る時代に!

・話題提供者 大倉良一氏 
 公益財団法人 地球環境産業技術研究機構 産業連携推進本部 専門役


 話題提供者の大倉氏は大阪ガス時代に関ってきた家庭用コージェネレーション
システムについて開発経緯や現状について、豊富なデータを基に詳細な説明がなされた。




 殊に本年4月に発売された最新鋭の製品「エネファームtype  S」は天然ガスから
水素を取り出し、空気中の酸素と化学反応させて電気を発生させる仕組みで、世界最高の
発電効率46.5%を実現した優れた製品である。これまでガスや灯油燃料の使用でCO2が
発生するので評価は比較的低かったが、3.11東北大震災以来俄かに脚光を浴びて内外の
注目を集めている。優れた性能と小型化効を奏し次第に販売が伸びてきているが最大の課題は
コストダウンである。現在価格が約275万円と一般家庭には負担が大きく補助金制度もあるが
矢張りハードルは高い。ブレークするには50万円程度が目標になると話されていた。



参加者も強い関心を示して活発な議論が展開され熱のこもったサロンとなった。



次回のご案内

・日時:平成24年11月16日(金) 午後2時~4時30分

・テーマ:有機化学からみたアルツハイマー病の診断

・話題提供者:田口 弘康 氏

  滋賀県立医科大学 特任教授 分子神経科学研究センター