習近平の夢は世界文化大革命
“シーチン”修一 2.0
【雀庵の「大戦序章」173/通算604 2023(令和5)/5/8/月】中国共産党の軍は「紅軍」と呼ばれていた。マルクス&レーニンは「共産党軍にはルンペン・プロレタリアート(ルンプロ)を入れてはならない、奴らは目先の利益で資本家階級に就くから危険分子だ」と警戒していた。
支那ではルンプロはゴロツキ、ヤクザ、町や村の厄介者である。お上から「5人出せ」と徴兵の命令が来ると町村長は魯迅の「阿Q」みたいな厄介者を差し出すのが数千年来の伝統だった。支那の格言「良い鉄は釘にならない」、かくして兵士は箸にも棒にも掛からぬクズばかりになった。
秦始皇帝陵・兵馬俑坑の兵士は力強く毅然としているが、それなのに紀元前221年に秦朝を創立してからわずか15年の紀元前206年に漢の劉邦により滅亡してしまった。なぜか? 現実の兵士はクズばかりで戦意なしの軟弱、兵馬俑坑建設に回された兵士曰く「どうせ俺たちは機密保持で生贄になるだけだ」。
「上に政策あれば下に対策あり」、支那兵は民が逃げ出した屋敷で金目のものを物色し、ドンパチの前線にあっては督戦隊の目を盗んで三十六計逃げるに如かず。日清戦争の従軍記者だった岡本綺堂もビックリ、「戦線離脱した支那兵が我が記者団の炊事洗濯係になった!」。
今のワグネル傭兵みたいな殺人鬼、強盗、強姦魔もいて、部隊から逃げ出してもすぐにとっ捕まえられるよう蒋介石軍は逃亡常習兵のオデコに入れ墨をさせた。マルクス&レーニンが「ルンプロはろくでなし、使い物にならない」というのは当時は良識だったのである。
ところが中学校の先生だった毛沢東は「先輩の皆さんはルンプロはダメダメとおっしゃいますが、不良でもきちんと指導すれば党の重要な戦闘力になります。私に任せてください」と主張した。
欧州帰りのマルクス&レーニン原理主義ボーイが多い中共幹部の中で、ニューフェイスの毛沢東が「支那には支那のやり方がある」と主張しても“腐敗分子”として排除されなかったのはなぜか。西洋風に染まった留学組にはない、教師、詩人であり、武装蜂起経験があり、奥さんが反動派に殺されている毛沢東には大人としてのオーラがあったからだろう。
意地悪な見方をすれば、ルンプロの乞食部隊だった紅軍兵士は郷土からも家族からも見捨てられた存在だったから、いくら戦死しても党や幹部はちっとも痛痒を感じない“消耗品”だったのではないか。それは有史以来の支那の伝統でもある。
乞食部隊の紅軍は1949年の建国後は「人民解放軍」と改称された。しかし国家の軍隊ではなく、今でも中国共産党の軍「党軍」のままだ。中国共産党中央軍事委員会が党軍を指揮し、党総書記が軍事委員会主席を兼ねている。党を守るのが第一なのだから内外の反党分子を叩き潰すのが仕事で、「人民解放軍」どころか本質は「共産党防衛軍」である。
中共は一党独裁だが、党内派閥があるから政治も中共軍も一枚岩ではなかった。毛沢東ブランド、周恩来社長という体制でも、派閥間の対立、競争があり、老人性妄想の文化大革命(1966~1976年)という毛の大失敗と死後は“辛酸舐男”の苦労人、トウ小平が復活し実権を握った。中国はトウ小平の資本主義導入・改革開放政策でそれなりに“普通の国”へ脱皮しつつあったのだが好事魔多し。
諸悪の根源は習近平だ。習は「建国の父・毛沢東に並ぶ“中興の父”を目指す」という時代錯誤の夢を抱いているのだろう。アンシャン・レジーム「赤色共産主義独裁体制」に戻そうという習近平が、国境を超えて、毛のなし得なかった世界革命をインド太平洋から始めたくて機会を狙っている。完全なビョーキ! BBC 2022/10/17「習近平氏の絶対性、どうやって自ら作り出したのか」から。
<10年前、習近平党総書記(国家主席)はほぼ無名だった。父親が革命指導者の1人で、そのため特権的な地位にある「太子党」だということくらいしか知られていなかった。
彼がそうした家系の人物であることは、党の長老たちの支持を得るのに役立った。長老たちは引退後も政治的影響力をもち続けることが多く、その支持を得ることは、中国共産党内で権力の階段を上るうえで極めて重要だった。
「上り詰めるまでは、習近平は誰とでも妥協できる人物と考えられていた」。米ボストン大学のジョセフ・ヒュースミスはそう話す。しかし、10年たった今、習の権威は揺るぎないものとなり、その権力は他の追随を許さないように見える。なぜ、そうなったのか。
【銃口を統制】共産主義の中国で建国の父とされる毛沢東が「政権は銃口から生まれる」と言ったのは、よく知られている。毛は1949年に中華人民共和国を建国すると、人民解放軍(PLA、以下、中共軍)を統制するのは国家ではなく党であることを徹底させた。以来、共産党の指導者が中央軍事委員会(CMC、以下、軍事委員会)の主席を兼務している。
習は即座に軍事委員会主席に就任し、すぐに軍内の反対勢力の排除に乗り出した。最も衝撃的だったのは、2014年と2015年に、元軍事委員会副主席の徐才厚と元中共軍上将の郭伯雄が汚職で訴追されたことだ。
「斧が振り下ろされたとき、二人はすでに引退していた。だが、習が彼らを狙い撃ちにしたことで、中国元指導者の江沢民の中共軍に残っていた影響力が低下した」。米国防総合大学のシニアフェロー、ジョエル・ウスノウは、そう話す。「そして、習の支配に抵抗する者は危害を免れないという強力なシグナルを、現役将校たちに送った」
習は2015年、軍の抜本的な構造改革も進めた。参謀、政治、後勤(兵站)、装備の「4総部」を廃止し、15の小さな機関に置き換えた。この新体制により、軍事委員会は軍の各部門に直接命令できるようになった。
そして何より、習への絶対的な忠誠心が強調されるようになった。これは今なお繰り返されていることだ。軍機関紙の解放軍報は先月、軍事委員会が総指揮を取る立場であることを強調する記事を掲載した。
「このメッセージは、習に対抗するかもしれない中共軍幹部に忠誠心を抱く流れが軍内に生まれるのを防ぐのに役立つ」。米シンクタンク、ランド研究所の国際防衛上級研究員ティモシー・ヒースは、そう指摘する。「党に忠誠を尽くすことは、中共軍が党と、とりわけ習に権力を維持させるため、あらゆる命令を実行することを意味する」
【忠誠心を最優先】銃口を確保した後は、ナイフ(国内の治安組織)を完全に統制することが重要になる。習政権の誕生から2年後、当局は「虎」と呼ばれた元公安部長の周永康を汚職で逮捕した。周は、習のライバルで「太子党」だった薄熙来と密接な関係にあった。
この捜査は、最も強力な意思決定機関である政治局常務委員会のメンバーは刑事罰の対象にはならないという暗黙のルールを打ち砕き、政治的衝撃を与えた。
「習近平は、支配の瞬間をつかむまで忍耐強く制度を利用して昇進した、非常に優秀な政治家であることが明らかになった」。そう話すのは、米コンサルティング会社ユーラシア・グループのシニア中国アナリスト、ニール・トーマスだ。「習の台頭を支持した共産党の長老たちは、彼の権力奪取のスピードと規模に驚いたことだろう」
習の特徴である反腐敗キャンペーンは、彼の政敵や党内の他の派閥を排除するためにも利用されていると観測筋は指摘する。過去10年間で、反腐敗当局の調査を受けたのは470万人以上に上る。
「この2年間で習は、彼の政権獲得を支えた治安当局者たちをさらに一掃した」と、米カリフォルニア大学サンディエゴ校の政治学者、ビクター・シーは話す。「習と過去につながりがあり、彼から信頼されていると思われる官僚が、ほぼ独占的に治安機関を動かしている」
習はまた、北京、上海、重慶などの主要都市の党書記など、地域の重要なポストにも彼に忠誠を誓う人たちを起用してきた。前出のアナリストのトーマスによれば、省レベルの党書記31人のうち少なくとも24人は、習の政治的な仲間だという。習の家族と知り合いで、彼とともに学び、彼の下で働いたことがあるか、彼の側近に仕えたことがある人たちだという。
一方、カナダ・ヴィクトリア大学の政治学教授の呉国光がまとめたデータによると、各省の常務委員281人のほぼ全員が、習に推挙された人物だという。
【個人ブランドを築く】2018年になると「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」が中国の憲法に明記された。習の名前を冠した「思想」ができたことは、彼のレガシーを確固たるものとした。
習の前にこれを成し遂げたのは毛沢東しかいない。中国の近代化の立役者として知られるトウ小平でさえ、その名は「トウ小平理論」にとどまった。
習近平思想が具体的に何を意味するのかは議論の余地がある。だが、それは重要ではなく、実体は権力闘争だと、アナリストらは分析する。
「習の思想は、彼自身の正当性と権力を、中国共産党および国内の誰のものよりも強くするのが主な目的だ。習を毛だけでなく、往年の最も輝かしい成功を収めた中国皇帝たちと並べる、新たな個人崇拝の一部だ」。香港バプティスト大学名誉教授(政治学)のジャン=ピエール・カベスタンはそう言う。
香港紙「明報」によれば、名門の北京大学や清華大学を含む数十の大学や研究機関が、習の名をつけた研究所を設立したという。中国の教育部(教育省に相当)は8月、国家カリキュラムに「習近平思想」を普及させる計画を発表した。2019年には、習近平思想に関するクイズを盛り込んだモバイルアプリ「学習強国」(習に学び国を強くしよう、の意)がリリースされた。
習は「自分には正しい思想があり、誰もがそれを受け入れなければならない」と考えていると、米コロンビア大学教授(政治学)のアンドリュー・ネイサンは言う。「毛が政策的立場をとれば、他の誰もがそれに従わなければならなかった。それは習についても言えることだ」>(以上)
習近平版の「第2次文化大革命」・・・当然ながら基幹経済をすべて国有にするのが「マルクス・レーニン&毛沢東流」である。いわゆる「計画経済」、名称はヨサゲだが成功した国はひとつもない。派閥党争でスターリンに殺されそうになったトロツキーは亡命先のメキシコで「計画経済」がいかにソ連経済をボロボロにしたかを鬱憤晴らしで書いていたが、スターリンはトロツキーの頭蓋骨をピッケルで破壊したもののソ連経済は結局自滅した。
習近平は毛沢東と並ぶ、さらに毛沢東を乗り越えるのが「夢」だろうから「計画経済」化を徐々に進めてきた。コロナ禍が一段落し政権も3期目に入ったから一気呵成に「計画経済」という亡国策を進めるに違いない。WSJ 2023/5/1「中国政府、経済情報へのアクセス制限強める」から。
<中国は、同国の経済に関する情報を「ブラックボックス化」しており、各国の企業や投資家らはこれについて警戒している。
中国当局は、国家安全保障を重視する習近平国家主席の意向を受け、企業の登録情報や特許、調達文書、学術誌、さらには公式統計年鑑などに対する海外からのアクセスを制限、もしくは全面的に遮断している。
中でも特に大きな懸念となっているのが、中国で最も重要なデータベースの一つを提供している上海拠点の金融情報サービス大手「万得信息技術(ウインド)」へのアクセスが断たれたことだ。同社の経済や金融に関するデータは国内外のアナリストや投資家らが幅広く活用している。
欧米の研究者やマクロ経済のアナリストらによれば、中国では反スパイ法が改正された後、国外のシンクタンクや調査会社などがウインドとの購読契約を更新できなくなっている。ウインド側は「コンプライアンス(法令遵守)」面の問題を理由としているという>
万得信息技術(ウインド)は英語では Wande Financial Terminal らしいが、同社のサイトにはこうあった。
<株式、債券、商品先物、外国為替、ファンド、インデックス、さまざまなデリバティブおよびワラント、その他の種類を含む金融資産クラスをカバーするグローバルな金融およびビジネス情報およびアプリケーション分析ソフトウェア・・・あらゆる種類の顧客に正確でタイムリーかつ完全なグローバル情報を提供し、さまざまなハイエンドの財務およびビジネス分析モジュールを統合して、ビジネス上の意思決定を効率的に強化します>
「法令遵守」の名目で中国の経済情報を「ブラックボックス化」・・・つまりは資本主義経済から「共産主義計画経済」へ移行するということだ。何のために? 中露軍事経済同盟(16億人)のパワーで日米&EUなど自由民主陣営(10億人+α)と開戦する準備を進めるためだろう。
軍需品の備蓄などコロナ禍での遅れを取り戻す必要から“戦狼”習近平による開戦は、早ければ雨期が終わる今秋から来春あたりか。
西側諸国の中国進出企業は第3国への工場移転などを上手くやらなければ当然接収されて国営企業になるが、それに逆らえば刑務所行きだろう。早め逃げ出すか、中共と運命を共にするか。
日系の中国進出企業は危機意識が薄過ぎるように思えるのだが、現代史を振り返れば中国で日本人が虐殺された事件は多く、まさに死屍累々だ。ついこの間の2012年には「習近平が主導した」と言われる組織的な日本企業襲撃があった。日本企業の中国進出に先鞭をつけた“古い友人”のパナソニック、さらにトヨタまでが襲撃された。戦狼妄想の習近平&中共に警戒せよ! 中共殲滅、支那解放へ! 有事に備えるべし。
*読者諸兄の皆さま、御意見を! ishiifam@minos.ocn.ne.jp
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
目安箱:ishiifam@minos.ocn.ne.jp
https://blog.goo.ne.jp/annegoftotopapa4646
https://note.com/gifted_hawk281/n/n9b3c7f4231f9
https://www.facebook.com/shuichi.ishii.14
まぐまぐID 0001690154「必殺クロスカウンター」
“シーチン”修一 2.0
【雀庵の「大戦序章」173/通算604 2023(令和5)/5/8/月】中国共産党の軍は「紅軍」と呼ばれていた。マルクス&レーニンは「共産党軍にはルンペン・プロレタリアート(ルンプロ)を入れてはならない、奴らは目先の利益で資本家階級に就くから危険分子だ」と警戒していた。
支那ではルンプロはゴロツキ、ヤクザ、町や村の厄介者である。お上から「5人出せ」と徴兵の命令が来ると町村長は魯迅の「阿Q」みたいな厄介者を差し出すのが数千年来の伝統だった。支那の格言「良い鉄は釘にならない」、かくして兵士は箸にも棒にも掛からぬクズばかりになった。
秦始皇帝陵・兵馬俑坑の兵士は力強く毅然としているが、それなのに紀元前221年に秦朝を創立してからわずか15年の紀元前206年に漢の劉邦により滅亡してしまった。なぜか? 現実の兵士はクズばかりで戦意なしの軟弱、兵馬俑坑建設に回された兵士曰く「どうせ俺たちは機密保持で生贄になるだけだ」。
「上に政策あれば下に対策あり」、支那兵は民が逃げ出した屋敷で金目のものを物色し、ドンパチの前線にあっては督戦隊の目を盗んで三十六計逃げるに如かず。日清戦争の従軍記者だった岡本綺堂もビックリ、「戦線離脱した支那兵が我が記者団の炊事洗濯係になった!」。
今のワグネル傭兵みたいな殺人鬼、強盗、強姦魔もいて、部隊から逃げ出してもすぐにとっ捕まえられるよう蒋介石軍は逃亡常習兵のオデコに入れ墨をさせた。マルクス&レーニンが「ルンプロはろくでなし、使い物にならない」というのは当時は良識だったのである。
ところが中学校の先生だった毛沢東は「先輩の皆さんはルンプロはダメダメとおっしゃいますが、不良でもきちんと指導すれば党の重要な戦闘力になります。私に任せてください」と主張した。
欧州帰りのマルクス&レーニン原理主義ボーイが多い中共幹部の中で、ニューフェイスの毛沢東が「支那には支那のやり方がある」と主張しても“腐敗分子”として排除されなかったのはなぜか。西洋風に染まった留学組にはない、教師、詩人であり、武装蜂起経験があり、奥さんが反動派に殺されている毛沢東には大人としてのオーラがあったからだろう。
意地悪な見方をすれば、ルンプロの乞食部隊だった紅軍兵士は郷土からも家族からも見捨てられた存在だったから、いくら戦死しても党や幹部はちっとも痛痒を感じない“消耗品”だったのではないか。それは有史以来の支那の伝統でもある。
乞食部隊の紅軍は1949年の建国後は「人民解放軍」と改称された。しかし国家の軍隊ではなく、今でも中国共産党の軍「党軍」のままだ。中国共産党中央軍事委員会が党軍を指揮し、党総書記が軍事委員会主席を兼ねている。党を守るのが第一なのだから内外の反党分子を叩き潰すのが仕事で、「人民解放軍」どころか本質は「共産党防衛軍」である。
中共は一党独裁だが、党内派閥があるから政治も中共軍も一枚岩ではなかった。毛沢東ブランド、周恩来社長という体制でも、派閥間の対立、競争があり、老人性妄想の文化大革命(1966~1976年)という毛の大失敗と死後は“辛酸舐男”の苦労人、トウ小平が復活し実権を握った。中国はトウ小平の資本主義導入・改革開放政策でそれなりに“普通の国”へ脱皮しつつあったのだが好事魔多し。
諸悪の根源は習近平だ。習は「建国の父・毛沢東に並ぶ“中興の父”を目指す」という時代錯誤の夢を抱いているのだろう。アンシャン・レジーム「赤色共産主義独裁体制」に戻そうという習近平が、国境を超えて、毛のなし得なかった世界革命をインド太平洋から始めたくて機会を狙っている。完全なビョーキ! BBC 2022/10/17「習近平氏の絶対性、どうやって自ら作り出したのか」から。
<10年前、習近平党総書記(国家主席)はほぼ無名だった。父親が革命指導者の1人で、そのため特権的な地位にある「太子党」だということくらいしか知られていなかった。
彼がそうした家系の人物であることは、党の長老たちの支持を得るのに役立った。長老たちは引退後も政治的影響力をもち続けることが多く、その支持を得ることは、中国共産党内で権力の階段を上るうえで極めて重要だった。
「上り詰めるまでは、習近平は誰とでも妥協できる人物と考えられていた」。米ボストン大学のジョセフ・ヒュースミスはそう話す。しかし、10年たった今、習の権威は揺るぎないものとなり、その権力は他の追随を許さないように見える。なぜ、そうなったのか。
【銃口を統制】共産主義の中国で建国の父とされる毛沢東が「政権は銃口から生まれる」と言ったのは、よく知られている。毛は1949年に中華人民共和国を建国すると、人民解放軍(PLA、以下、中共軍)を統制するのは国家ではなく党であることを徹底させた。以来、共産党の指導者が中央軍事委員会(CMC、以下、軍事委員会)の主席を兼務している。
習は即座に軍事委員会主席に就任し、すぐに軍内の反対勢力の排除に乗り出した。最も衝撃的だったのは、2014年と2015年に、元軍事委員会副主席の徐才厚と元中共軍上将の郭伯雄が汚職で訴追されたことだ。
「斧が振り下ろされたとき、二人はすでに引退していた。だが、習が彼らを狙い撃ちにしたことで、中国元指導者の江沢民の中共軍に残っていた影響力が低下した」。米国防総合大学のシニアフェロー、ジョエル・ウスノウは、そう話す。「そして、習の支配に抵抗する者は危害を免れないという強力なシグナルを、現役将校たちに送った」
習は2015年、軍の抜本的な構造改革も進めた。参謀、政治、後勤(兵站)、装備の「4総部」を廃止し、15の小さな機関に置き換えた。この新体制により、軍事委員会は軍の各部門に直接命令できるようになった。
そして何より、習への絶対的な忠誠心が強調されるようになった。これは今なお繰り返されていることだ。軍機関紙の解放軍報は先月、軍事委員会が総指揮を取る立場であることを強調する記事を掲載した。
「このメッセージは、習に対抗するかもしれない中共軍幹部に忠誠心を抱く流れが軍内に生まれるのを防ぐのに役立つ」。米シンクタンク、ランド研究所の国際防衛上級研究員ティモシー・ヒースは、そう指摘する。「党に忠誠を尽くすことは、中共軍が党と、とりわけ習に権力を維持させるため、あらゆる命令を実行することを意味する」
【忠誠心を最優先】銃口を確保した後は、ナイフ(国内の治安組織)を完全に統制することが重要になる。習政権の誕生から2年後、当局は「虎」と呼ばれた元公安部長の周永康を汚職で逮捕した。周は、習のライバルで「太子党」だった薄熙来と密接な関係にあった。
この捜査は、最も強力な意思決定機関である政治局常務委員会のメンバーは刑事罰の対象にはならないという暗黙のルールを打ち砕き、政治的衝撃を与えた。
「習近平は、支配の瞬間をつかむまで忍耐強く制度を利用して昇進した、非常に優秀な政治家であることが明らかになった」。そう話すのは、米コンサルティング会社ユーラシア・グループのシニア中国アナリスト、ニール・トーマスだ。「習の台頭を支持した共産党の長老たちは、彼の権力奪取のスピードと規模に驚いたことだろう」
習の特徴である反腐敗キャンペーンは、彼の政敵や党内の他の派閥を排除するためにも利用されていると観測筋は指摘する。過去10年間で、反腐敗当局の調査を受けたのは470万人以上に上る。
「この2年間で習は、彼の政権獲得を支えた治安当局者たちをさらに一掃した」と、米カリフォルニア大学サンディエゴ校の政治学者、ビクター・シーは話す。「習と過去につながりがあり、彼から信頼されていると思われる官僚が、ほぼ独占的に治安機関を動かしている」
習はまた、北京、上海、重慶などの主要都市の党書記など、地域の重要なポストにも彼に忠誠を誓う人たちを起用してきた。前出のアナリストのトーマスによれば、省レベルの党書記31人のうち少なくとも24人は、習の政治的な仲間だという。習の家族と知り合いで、彼とともに学び、彼の下で働いたことがあるか、彼の側近に仕えたことがある人たちだという。
一方、カナダ・ヴィクトリア大学の政治学教授の呉国光がまとめたデータによると、各省の常務委員281人のほぼ全員が、習に推挙された人物だという。
【個人ブランドを築く】2018年になると「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」が中国の憲法に明記された。習の名前を冠した「思想」ができたことは、彼のレガシーを確固たるものとした。
習の前にこれを成し遂げたのは毛沢東しかいない。中国の近代化の立役者として知られるトウ小平でさえ、その名は「トウ小平理論」にとどまった。
習近平思想が具体的に何を意味するのかは議論の余地がある。だが、それは重要ではなく、実体は権力闘争だと、アナリストらは分析する。
「習の思想は、彼自身の正当性と権力を、中国共産党および国内の誰のものよりも強くするのが主な目的だ。習を毛だけでなく、往年の最も輝かしい成功を収めた中国皇帝たちと並べる、新たな個人崇拝の一部だ」。香港バプティスト大学名誉教授(政治学)のジャン=ピエール・カベスタンはそう言う。
香港紙「明報」によれば、名門の北京大学や清華大学を含む数十の大学や研究機関が、習の名をつけた研究所を設立したという。中国の教育部(教育省に相当)は8月、国家カリキュラムに「習近平思想」を普及させる計画を発表した。2019年には、習近平思想に関するクイズを盛り込んだモバイルアプリ「学習強国」(習に学び国を強くしよう、の意)がリリースされた。
習は「自分には正しい思想があり、誰もがそれを受け入れなければならない」と考えていると、米コロンビア大学教授(政治学)のアンドリュー・ネイサンは言う。「毛が政策的立場をとれば、他の誰もがそれに従わなければならなかった。それは習についても言えることだ」>(以上)
習近平版の「第2次文化大革命」・・・当然ながら基幹経済をすべて国有にするのが「マルクス・レーニン&毛沢東流」である。いわゆる「計画経済」、名称はヨサゲだが成功した国はひとつもない。派閥党争でスターリンに殺されそうになったトロツキーは亡命先のメキシコで「計画経済」がいかにソ連経済をボロボロにしたかを鬱憤晴らしで書いていたが、スターリンはトロツキーの頭蓋骨をピッケルで破壊したもののソ連経済は結局自滅した。
習近平は毛沢東と並ぶ、さらに毛沢東を乗り越えるのが「夢」だろうから「計画経済」化を徐々に進めてきた。コロナ禍が一段落し政権も3期目に入ったから一気呵成に「計画経済」という亡国策を進めるに違いない。WSJ 2023/5/1「中国政府、経済情報へのアクセス制限強める」から。
<中国は、同国の経済に関する情報を「ブラックボックス化」しており、各国の企業や投資家らはこれについて警戒している。
中国当局は、国家安全保障を重視する習近平国家主席の意向を受け、企業の登録情報や特許、調達文書、学術誌、さらには公式統計年鑑などに対する海外からのアクセスを制限、もしくは全面的に遮断している。
中でも特に大きな懸念となっているのが、中国で最も重要なデータベースの一つを提供している上海拠点の金融情報サービス大手「万得信息技術(ウインド)」へのアクセスが断たれたことだ。同社の経済や金融に関するデータは国内外のアナリストや投資家らが幅広く活用している。
欧米の研究者やマクロ経済のアナリストらによれば、中国では反スパイ法が改正された後、国外のシンクタンクや調査会社などがウインドとの購読契約を更新できなくなっている。ウインド側は「コンプライアンス(法令遵守)」面の問題を理由としているという>
万得信息技術(ウインド)は英語では Wande Financial Terminal らしいが、同社のサイトにはこうあった。
<株式、債券、商品先物、外国為替、ファンド、インデックス、さまざまなデリバティブおよびワラント、その他の種類を含む金融資産クラスをカバーするグローバルな金融およびビジネス情報およびアプリケーション分析ソフトウェア・・・あらゆる種類の顧客に正確でタイムリーかつ完全なグローバル情報を提供し、さまざまなハイエンドの財務およびビジネス分析モジュールを統合して、ビジネス上の意思決定を効率的に強化します>
「法令遵守」の名目で中国の経済情報を「ブラックボックス化」・・・つまりは資本主義経済から「共産主義計画経済」へ移行するということだ。何のために? 中露軍事経済同盟(16億人)のパワーで日米&EUなど自由民主陣営(10億人+α)と開戦する準備を進めるためだろう。
軍需品の備蓄などコロナ禍での遅れを取り戻す必要から“戦狼”習近平による開戦は、早ければ雨期が終わる今秋から来春あたりか。
西側諸国の中国進出企業は第3国への工場移転などを上手くやらなければ当然接収されて国営企業になるが、それに逆らえば刑務所行きだろう。早め逃げ出すか、中共と運命を共にするか。
日系の中国進出企業は危機意識が薄過ぎるように思えるのだが、現代史を振り返れば中国で日本人が虐殺された事件は多く、まさに死屍累々だ。ついこの間の2012年には「習近平が主導した」と言われる組織的な日本企業襲撃があった。日本企業の中国進出に先鞭をつけた“古い友人”のパナソニック、さらにトヨタまでが襲撃された。戦狼妄想の習近平&中共に警戒せよ! 中共殲滅、支那解放へ! 有事に備えるべし。
*読者諸兄の皆さま、御意見を! ishiifam@minos.ocn.ne.jp
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