NHKドラマ 「限界集落株式会社」を見てて、不覚にも目に涙が・・・
それほどお涙頂戴の物語ではないのだが、日頃の想いが重なってしまった。
過疎化の進む村で若い娘が農業法人を立ち上げ、苦労の末に3年目、ようやく軌道に乗りかけたときに
有機栽培をうたった名物作物から農薬が検出された。
殺到する注文にこたえようと増産に次ぐ増産で疲れ切った生産者が、有機の除虫剤である「木酢液」と
間違えて「農薬」を散布してしまった。 本人はそれと気づかず直売所で有機農産物として販売
農林水産省の抜き打ち検査で発覚し、地元紙にも「食品偽装の疑い」として取り上げられる。
経営コンサルタントは問題が大きくなる前に、その当事者の農家を切り捨てる決断をするのだが・・・・
私は私的なブログに仕事のことは書かないようにしているのだが、今回はいろいろ思うことがあった。
仕事柄食品のクレームを受けることが多い。 直接ではないが、様々なところから毎日のようにクレームが寄せられてくる。
特に中国での腐肉事件、ペヤングの異物混入事件などをきっかけに、その件数は増え続けている。
大半は品質に問題ない思い過ごしや、疑心暗鬼、いやがらせなどである。
特に最近はすぐに「保健所に訴える」とか「ネットにばらまく」など恐喝まがいのクレームが目立つ。
ここ10年で食品にかかわる偽装や事故がクローズアップされ、世間の見る目が厳しくなったことを感じるが
日本におけるほとんどの食品業界者は厳しい自主基準をもって、品質管理していると思う。
もちろん人の口に入るものを作って流通している業者には間違いがあってはならない。 事故はなくて当たり前という気構えで仕事を
しなくてはならないと思う。
しかし、仕事で失敗をしないものがあるだろうか。 悪意を持って、または消費者を欺いて利益をあげようという業者は糾弾、退場させられて
致し方ないが、過失をもって再生が厳しいほどリンチに等しい叩かれ方をする世間の風潮というものには違和感を感じる。
もちろん失敗した際には即座に公表し、回収し、説明責任を果たしたうえで再発防止に向けた取組に向かうべきだ。
異物混入にしてもどこで混入したかが検証されない段階でネットにばらまいて、風評被害にあったとき、それがいたずらであったらその発言者、リツイートした人間はどのように責任をとるのだろう。
クレーマーの中には自らの不満のはけ口として、執拗にメールでいいがかりを付けてくる輩も多い。 彼らは決して自分の連絡先を教えず、会うことを拒否し終わることのない攻撃を続けるのだ。
ドラマのハナシに戻ると、記者会見の場で若き代表の娘が失敗した農家の除名を発表しようとしたその肩を抑え、父親である反町がこういった。
「〇〇の処分は考えてない。 俺たち農家は失敗だらけだ。 しかし畑は何度でも許してくれる。 だから失敗した奴を許せないようなのは農家じゃない。」
記者:「世間は許しませんよ。 不正をした農家を守って会社をつぶすんですか。」
「野菜で失った信頼は野菜で取り戻す、何より大事なのは人だ」
私は物流部門にいる。 ここでも昨年いろいろな事故が起きた。 運送業者に対して是正の詰問状を書かなければならなかった私はいろいろ考えさせられた。 倉庫で働くひとたちがいなければ出荷は出来ない。 毎日それを運んでくれるドライバーがいなければペットボトル1本届かない。
「なにやってんだ。 しっかりやれ」というのは簡単だが、彼らを追い詰めて解決することではない。 便利な世の中に慣れきった私たちは大事なことを忘れているのではないか。
食べ物をつくってくれるひと、それを運んでくれるひとが居て、初めて生きていくことが出来るということを。