↑八幡野港からシーサイドを望む
2006年も今日が最後。そう大晦日なのである。普通の人たちはこの日は家の大掃除や片付け、土壇場の年賀状書き、年末の買い物など家の用事をすませて新しい年を迎える準備をしているはずだ。
しかし年中無休でクライミングのことから頭が離れないバカどもは盆だろうが、正月だろうが、クリスマスイブだろうが、結婚記念日だろうが、はたまたご先祖様の命日だろうが岩場に出かけるのである。
そして今年中に落とす!!
と宣言した私も例外ではなく、マリオネットの待つ(別におまえなんか待っちゃいねーよ)アストロドームに出かけた。今日のパートナーはやはり家庭持ちのM川さんである。大丈夫なの?そして抑えにS太郎をキープして万全の準備を整える
「絶対に登る!!」
あとは精神集中と気合だ。 登れるも登れないも気持ちの問題だ。 幸い風邪も抜けて体調はまずまず。 トレーニングはできなかったが、そんなことは問題ではない。
今朝の寒さは今年一番ではないかと思われるが、風はおだやかで波も先週とはうってかわって静かだ。 いつものRPトライのように気持ちを集中させながら入念にストレッチを行う。 ここで筋肉を暖めておかないとアップなしで取り付くので、身体が動かない。 30分以上かけてストレッチ。
ギアを手順どおり左右にラッキングしてロープを結び、シューズも念入りにレースアップ。 再度イメージトレーニング。ルートはあえて見ずに、すべてのムーブとプロテクションセットをシュミレーションしてから離陸する。
出だしから2本目まで、身体のキレがいい。 1つ目のチムニーで3本目のヘキセンのセットに手間取るが、落ち着いて最適なポジションに設置。 いつもはここから外に身体を出すときにジタバタするのだが、今日は足のポジションがいいのかすんなりガバに手が届いた。
2つ目のチムニーに身体を滑り込ませてレスト。 ここでのプロテクションを今日は変えてみた。いままではC4のタイトフィットだったが、F4にサイズ変更。 本当はヘキセンにしたかったが、RPトライでのサイズエラーが怖くてカムに頼った。 しかしこの選択は少々誤りで上部にフレアしたクラックは少しの動きでカムが開いてしまう。 できるだけ入り口にリセットしてから核心部へ突っ込む。
いつもは身体が引き剥がされそうな感覚が、なんだか今日は壁に張り付いているかのような安定感がある。 これはいけるかも。 最後のキャメ2を放り込んで、意識的にゆっくりとゴールに向う。
ここであせってはいけない。 ひとつひとつのジャミングを丁寧に、足も何度か切れたが、そのたびに落ち着いて捌きなおす。 先人の流血のあとが生々しいノブに押さえ込むようにヒールを決めて、最終ホールドへガストンをひきつける。
少し遠いか。
腰を入れ、右足を決めなおしてゆっくり左手を伸ばす。捕らえた。 あとはヌンチャクをかけてクリップするだけ。
最後の最後で手間取る。 カムの出し入れに邪魔にならないようにヌンチャクを最後部につけていたため、手がなかなか届かない。 ちょっとあせって落してしまう。落ち着け!大丈夫もう1本ある。 右手では探れないため、ホールドを持ち替えて無事にクリップ。 やった・・・・
地上にロワーダウンしている最中に遠くからピアノソナタが聞こえてきた。
今回のトライ中は眼下の波しぶきがやけに鮮明に見えたり、潮騒やビレイヤーの声がはっきりと耳に響いたり、ホールドやスタンスがすごく近くに見えたり、不思議な感覚に包まれていた気がする。リラックスと集中がうまくいったせいだろうか。 今年を締めくくる最高の登攀は軽い疲労感と解放感で心地よかった。
今年1年ビレイをしてくださった皆さんありがとうございました。 ひとつひとつのRPはつきあってくれた皆さんのおかげです。 また一緒に登ってくれたヒトたちにも感謝。その背中からいろいろ勉強させてもらいました。
来年もよろしくお願いします。 そして皆さんにとって来年もよきクライミングができますように
↓山野井の3部作のもうひとつ「ビッグマウンテンダイレクト」上部を見学に行きました。漁港のすぐそばで取り付きやすいが、ちょっともろそう。 気合がのったらやろうかな。