噂には聞いていたがずっと非公開だった岩場が整備が終わり、FreeFanで発表された。
正直言えば非公開のままでも、近く行きたいと計画していただけに、公開されて混み合ったらやだな。
といろいろ心配していた。
<どこまでも青い熊野の海>
11月に入るとさっそくツアーの計画を立ち上げ、まずは開拓グループの名張ラーの人たちに声をかけた。
初めての岩場で不案内の場合、エリアにたどり着くのに余計な時間を取られたくなかったし、クライミング以外の
宿屋やメシなどの情報を得ておきたかったからだ。
幸いにしてK美さんが年末の2日間付き合って下さることになり、企画は大きく前進。
関西のクライマー集めはK美さんにお任せし、自分は関東チームの人選に入った。
開拓されたばかりの岩場、55mの懸垂下降、同じ距離の荷物を担いでのユマーリング、プロテクションデフィカルトの5.11のシンクラック、的確なチョックワーク、こうした条件をクリアできる腕利きのクライマーを集めなくては成功はおぼつかない。
何人かの旧知のトラッドマスターに声をかけたが、年末はいろいろと他の予定があるようで、なかなか思うように集まらない。 また後輩のアッキーも行く気は200%だったのだが、家庭の決済が下りず断念。
12月も中旬になって、ようやく4人のメンバーが決定した。
左よりメンバー紹介、チッペ、ソウタ、ナカイくん、
若くてパワフルな奴らばかりだ。 自分のコドモのような年齢の若者とのツアー、どうなることやら。
ソウタは別のグループで面識はあるが、一緒にクライミングに行くのは初めて。 フリークライミングのチカラはわからないが、 アルパインクライミングでバリバリやっているようなのでなんとかなるでしょう。
ナカイくんはアッキーの知り合いの学生。 経験は浅いけれども一緒に登っていた師匠の名前を聞いて、その老師なら大丈夫だろうというかなり適当な決定。 事前に城ヶ崎でリハーサルしたところかなり力があると見受けられたのでOK。
チッペは旧知の間柄であるが、こちらもロープを組むのは初めて? しかしボルダーも段もちだし、5.13も登っている?くらいの実力があり、アイスもアルパインもバリバリこなすオールラウンダーである。 秋にトワイライトもRPしていま最も乗っているパワフル女子(なんとツアー前日まで2泊3日で北岳バットレスに行ってたというからオドロキ)
さて、言いだしっぺの自分、アニマルが一番やばいんじゃないか。 トラッドを熱心に登っていたのは随分昔のハナシ。
ここ数年はロープさえ結ばず、ボルダーで遊んでばかり。 ようやく1年前から外岩リードに復帰したが、クラックはほとんどやってない。 ナカイくんとあかねの浜でリハビリしてきたが、かなり心もとない。 プロテククションテクニックだけは衰えていなかったが唯一の安心材料。
< 青い空と白い花崗岩>
熊野までは横浜の自宅から530㎞ 夜間のロングドライブは疲れるし、危険だし、仮眠場所もないので29日休暇をとって朝出発とした。 うちのレガシィを自分とチッペで交代しながら、東名をひたすら西進。 岡崎付近で渋滞にはまり、尾鷲市についたのは夕方の4時過ぎであった。 7時間半! 疲れた。
宿には見知った顔が一杯。
UTAさん夫妻、エノキッド、石田塾、コメケンさんなどなど。 明日はよろしくお願いします。
明けて30日 7時にK美さんと無事合流。 予定していた開拓者のO藪さんは急用ができて不参加。残念です。
宿から車で20分国道脇の駐車スペースに車を停めて約30分のアプローチ
<えっ! K美さん、ここを左ですかい>
懸垂下降の準備
<懸垂ポイント>
アンカーが2か所ある。 ロープを3本フィックスして降りる。
<テンションうなぎのチッペ>
<でっかいザック背負って行ってきます>
この懸垂下降、ラストの私はユマーリングに備えてロープの養生をしながら降りなくてはならず、相当面倒くさい。
ロープが岩角にこすれて、万一切れたらユマール持ったまま地面まで落ちるからね。
でも結果的にロープの伸び縮みや、風のあおりでロープにつけた当て布がずれてしまい、役に立たなかったけど。
<キター!>
すごい景色!
もうどこでも登り放題だ。
<青い空に向かって真っすぐに登っていく>
<ことぶき左 5.11->
この岩場について
【ロケーションと気候】
リアス式海岸の突き出た岬にある。 「神須ノ鼻」という突端にある。一日中日当たりがよく、冬でもTシャツで十分登れる、
しかし風が強いときはそれなりに寒そう。 2日目雨に降られたときはダウンを着ても肌寒かった。
ここは、釣り客も多く無用な摩擦は避けたい。 でも船でアプローチできる釣り師がうらやましかった。
我々クライマーは毎日フィックスロープを延々とユマーリングしなくてはならず、終了点から駐車場までも30分くらい歩く。
登るのと同等の体力を削れられた。
【岩質とルートの特徴】
花崗岩でフリクションはとても良い。 脆いかもと思われたが実際はそんなこともなく安心したが、まだあまり登られていないためか、ルートによっては表面の粒子がポロポロと欠けるので、マイクロカムや細いストッパーは怖い。
プロテクションは紹介されていたほど厳しくはないが、効くポイントが限られるので、見極める眼力が必要である。
それを見落とすと危険なランナウトを強いられてしまう。 ワイドはほとんどないので、大きなカムは必要ないと思う。
クラックの奥行きが浅いので、セットの角度や位置に頭を使う。 フィンガーサイズが80%、指が入らないところも多いが
カチとして使えるので、どちらかというとフェースムーブを駆使する。
意外と下部が悪いルートが多いので、そのグレードを確実にこなせる実力が必要だ。 10台がやっとのひとには厳しいエリアである。
<この解放感、昼寝したら起きないかも。 でも寝てる暇はない!>
<懸垂ポイントの夕暮れ>
初日はみんなテンションあがりすぎて夕方まで登っていたため、ユマールで上がりきったときには日が暮れていた。真っ暗な山道をヘッドランプで戻る。 幸い間違えずに国道に出られた。
宿に戻ったのは19時を回っていた。 すぐに夕飯。 「腹減ったー」 あんまり期待してなかったけど、この宿のごはんは美味しい。 別に凝ったメニューじゃないし、見栄えもイマイチだけど、こういう家庭のメシが一番ほっとする。
今日の疲れを癒すために、家から持ってきた大吟醸酒でみんなで乾杯。 ほたるいかが日本酒にぴったり!
食後は部屋で「りんごのタルト」とチッペの持ってきたシャルドネやコニャックで盛り上がる。
でも今日は疲れたから早く寝よ。
明けて2日目12月31日 今年も終わりだ。
せっかく早くでたのに、どんよりした空は下におりて1時間もしないうちに泣き出した。
< 岩の洞窟で雨宿り。 これはこれで楽しい。>
でもこのまま登れなかったら、こんなに遠くまで遠征に来たのに哀しい。
とりあえずタイムリミットの昼過ぎまで粘ることにした。
祈りが通じたのか、昼前から急速に天候快復。 これならいける。
何をやろうか迷ったが、昨日触った「ことぶき左」もいい課題だけど、どうせなら違う課題を登ってみたい。
北東面にある日陰のエリア。 それも一番右端にある「カムイ」5.11-をトライ。
一見するとカムも指も受け付けないようなヘアラインクラックが続いているが、なにか魅かれるものを感じて、このルートにオンサイトトライ。
中間部までは、問題なく進んだが、途中本当にクラックが毛筋のように細くなり、プロテクションが取れない。 その上もフレア気味のグルーブが続いていて、プロテクションのイメージが出来ない。
BDのマイクロナッツ#2を極めてみる。 静荷重しか耐えないようなナッツである。 少し上がって、グルーブの中のピンポイントのスロットに新しく買ったメトリュースのアストロナッツ#9を慎重に極めた。
形の上では決まったように見えるが、このルートは表面が脆くて登っている最中もポロポロと粒子が落ちる。
マイクロナッツを支えている粒子は持ちこたえるのか? そしてこの先プロテクションは決まるのか。
何度か行ったり来たりを繰り返したが、踏ん切りがつかずバックアップを極めて一旦降りる。
オンサイト失敗だ。 なんともひ弱な自分に腹が立つ。
もう一度上部を観察する。 2mくらいを頑張れば、ガバに届く。 その間一か所エイリアンが決まりそうな箇所が見つかった。 今度こそ登りきる。 こんなところまで来てイレブンを持ち帰らずに帰れるか。
先ほどカムエイドで回収しながら降りたので、RPトライが可能だ。
<カムイ 5.11- を登る アニマル>
案ずるより産むが易し。 その上部を触ってみると2か所カムを極めることが出来た。 レイバックで豪快に越すと終了点だった。 テクニカルで緊張するいい課題だった。
南側に戻ると、チッペが「とこしへ」を登り終えたところだった。
なんと5.11+の25Mをオンサイトしやがった!!
今回の彼女の登りは圧巻で、トライしたイレブンはすべてオンサイト。 その強さは輝いていた。
ナカイくんもソウタもそれなりに充実したようで、みんな楽しく怪我なく遠征を終えられたことがなによりも嬉しかった。
<帰りの55mユマーリング 魂が抜けそうな天国への階段>
最高だったぜ神須ノ鼻よ。 また来てやるぜ!